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博士(工学)亀0谷 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)亀0 谷 学位論文題名

変分原理に基づく熱流体場の有限要素解析

学位論文内容の要旨

  自然 対流の 場や, 熱連成 場は工 学上 しばし ば見ら れるも ので あり, 厳密な 見方を すれば,工学 的な諸 問題は すべ て,そ のいず れか, ある いはそ の両者 を含む 形で存 在す る。た とえば,原子炉 の炉心 におい て, 冷却材 は燃料 体より 受熱 しなが ら流れ るが, 燃料体 内の 温度分 布は燃料被覆管 外面の 熱伝導 率す なわち 冷却材 の流動 状態 に深く 依存し ている にもか かわ らず, その温度分布算 出の境 界条件 とし て燃料 被覆管 の外面 温度 ないし は外面 熱流束 を用い て解 析を進 めなければなら ない。 さらに ,原 子炉事 故時の 安全解 析な どにお いて, 冷却材 流速の 低下 した条 件の下では,流 れの場 に自然 対流 の効果 が強く 顕われ て問 題をさ らに複 雑にす る。同 様な 状況は ,連続鋳造にお ける冷 却や, 半導 体集積 回路な どの際 にも 見られ る。

  熱連 成場を 流体側 ,固体 側に分 離す ること なく, 解析す るこ とがで きるな らば計 算の能率は格 段と向 上する 。そ のため の方法 のーっ とし て,本 論文で は変分 原理に 基づ く熱流 体場の有限要素 解析法 を提案 する 。有限 要素法 による 熱流 体場の 解析は ,比較 的最近 に到 って多 少の試みが成さ れて発 表され てい るが, いまだ 体系的 に確 立され ている とは言 い難く ,特 に流れ 場解析における 浮カの 取り扱 い方 や,流 体中の 温度場 解析 の検討 は,不 充分で あった 。本 論文で は,それらの点 を解決 し,結 果と して固 体内温 度との 連成 場の解 析を可 能とし た。

  熱流 体の挙 動解析 には従 来,流 れの 運動方程式,熱エネルギ式などの基礎式が用いられている。

本論文 では, これ らの基 礎式を 用いな いで ,変分 原理に 基づく 熱流体 のた めの解 析理論を確立し ている 。この 理論 は現象 をエネ ルギ系 で扱 う。現 象をエ ネルギ 系で扱 うた め,物 理的な意味が明 確で, 物理現 象と 対応し やすい 。した がっ て,現象が複雑にナょり,方程式が不明の場合でも,解 析 可 能 に な る と い う 特 徴 を 持 っ て い る 。 本 論 文 の 構 成 と 概 要 は 次 の 通 り で あ る 。   第1章 緒 諭で は,熱 流体の 挙動解 析に 関する 各種理 論の特 徴と研 究の 現状を 調ベ, 本論文 の工 学的意 義と概 要を 述べて いる。

  第2章 で は, 第3〜5章で 提 案 す る 変分 原 理 の 特 徴お よ び 解析方 法とし て用い る有限 要素 法を 概説し ている 。

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  第3章で は, 熱流体 の挙動 解析に おいて 基礎 となる 粘性流 体のた めの 仮想仕 事の原 理を提 案し た 。仮想 仕事の 原理 は通常 ,固体 力学の分野で用いられており,変分原理の一種である。初めに,

流 体中で なされ る各 種仮想 仕事を 誘導し た。 これら の各種 仮想仕 事より 仮想 仕事の方程式を構成 し た。こ の方程 式が 粘性流 体のた めの仮 想仕 事の原 理にな る。こ の原理 に基 づいて,有限要素法 を 定 式化し た。 この有 限要素 法の妥 当性 を検証 するた めに,2次 元の段 付き流 路内 の粘性 流動を 有 限要素 解析し た。 解析結 果は従 来の重 み付 き残差 法を用 いた有 限要素 法の 解と一致することが 確 かめら れた。 した がって ,固体 力学で 用い られる 仮想仕 事の原 理は流 体力 学でも適用可能であ る ことが 判明し た。

  第4章で は , 第3章で 確 認さ れた 粘性流 体のた めの仮 想仕事 の原 理に基 づいて ,熱流 体の ため の 変分原 理を構 築し た。流 体に温 度差が ある と,浮 カが働 く。そ こで, 浮カ を考慮した粘性流体 の ための 仮想仕 事の 原理を 提案し た。ま た浮 カは流 体の温 度場よ り決定 され るので,熱伝導項,

熱 対流項 および 発熱 項を考 慮した 流体の 温度 場解析 のため の変分 原理を 提案 した。これらの変分 原 理は速 度と温 度が 連成項 になっ ている ので ,連立 させる と熱流 体のた めの 変分原理になる。熱 流 体のた めの変 分原 理に基 づいて ,有限要素法を定式化した。この有限要素法を確認するために,

初 め に,2次元 キャビ ティ 内の強 制対流 を有限 要素 解析し た。こ の計算 結果は 従来 の差分 解や重 み 付き残 差法を 用い た有限 要素解 に一致 した 。なお ,この 解析で は流体 はブ ジネスク近似が成立 す ると仮 定して いる 。とこ ろが, 流体内 にお いて温 度差が 大きく なると ,流 れ場と温度場に対す る 密度や 粘性係 数な どの物 性値の 温度依 存性tま無 視で きなく なる。 そこで ,上述の2次元キャビ テ ィ内の 強制対 流に 物性値 の温度 依存性 を考 慮した 有限要 素解析 を行な った 。その結果,本有限 要 素 法が物 性値 の温度 依存性 を考慮 した 場合に も適用 できる ことが 判明 した。 次に,2次 元密閉 容 器内の 自然対 流を 有限要 素解析 した。本解析結果も従来の差分解に一致した。以上のことから,

変 分原理 に基づ く熱 流体場 の有限 要素解 析法 の妥当 性が確 認され た。

  第5章で は , 第4章で 構 築し た熱 流体の ための 変分原 理を発 展さ れて, 固体と 流体と の熱 連成 場 のため の変分 原理 を提案 した。 熱連成 場の 扱い方 として ,固体 と流体 を個 別または一体化して 扱 う方法 がある 。個 別に扱 うと, 境界面 にお いて熱 的境界 条件( 熱流束 の連 続性の条件と温度一 致 の条件 )を満 足さ せるた めの反 復演算 が必 要にな る。こ の反復 演算の アル ゴリズムは複雑で,

ま た演算 時間が 不経 済であ る。一 体化し て扱 うと, 熱的境 界条件 は,自 動的 に満足されるので,

反 復演算 が不要 にな り,上 記の欠 点は解 消さ れる。 ところ が,一 体化し て扱 っている従来の方法 は 境界面 におい て両 者の熱 伝導率 を平均 化す る操作 を用い ている 。この ため 両者の熱伝導率の比 が 大きく なると ,境 界面上 の温度 分布や 熱流 束を正 確に評 価でき なくな る。 本論文で提案する固

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体と 流体と の熟連 成場の ための 変分 原理は ,両者 を一体 化し て扱い ,さら に境界面において両者 の熱 伝導率 を平均 化する 操作を 用い ていな いので ,精度 の高 い解析 が可能 になる。次に,固体と 流体 との熱 連成場 のため の変分 原理 に基づ いて, 有限要 素法 を定式 化した 。この有限要素法を確 認 する ため に, 内部発 熱があ り,厚 みのあ る垂 直平板 と周囲 流体と の2次元定 常お よび非 定常自 然対 流熱連 成場を 有限要 素解析 した 。本解 析モデ ルは固 体部 として 原子炉 の燃料体や電子機器の 半導 体集積 回路素 子など を想定 した モデルである。本解析法による計算結果は実験値に合致した。

した がって ,本変 分原理 に基づ いて 熱連成 場を有 限要素 解析 すると ,原子 炉の燃料体や電子機器 のIC素 子 な ど にお け る 内 部 の温度 分布, 周囲 流体の 温度分 布と流 動状態 ,さ らに境 界面上 にお ける 局所的 な熱伝 達率を 能率良 く求 めるこ とが可 能とな る。 温度場 ,流れ 場および局所熱伝達率 を 知る こ と に よ り 原子 炉 の 安全 設計やIC素子 の信頼 設計な どに役 立つ情 報が 得られ ること にな る。 以上の ことよ り,本 変分原 理に 基づく 熱連成 場の有 限要 素法は 工学的 にも,工業的にも意義 のあ る解析 法であ る。

  第6章 結 諭 では , 第3章 から 第5章 ま でに 著 者 が 提案 した各 種理 論の特 徴と得 られた 結果の ま とめ ,およ び今後 の展望 にっい て述 べた。

学位論文審査の要旨 主査    教授

副査    教授 副査    教授 副査    教授 副査    教授

石 黒 亮 二 石 川 迪 夫 粥 川 尚 之 木 谷    勝 福迫尚一郎

  自然 対流は ,流 れの場 と温度 の場が 相互に 影響 を及ば し合う ので複 雑な 非線形の性質を持つ。

また ,温度 場を形 成する 熱源 は,多 くの場 合は, 流体 と接す る固体 壁の中 に存在するために,流 体と 固体と は界面 を隔て なが らも互 いに熱 的に密 接な 関係を 保って いる。 流体と固体とが熱的に 連成 する場 を本論 文では 熱連 成場と 呼んで いる。

  自然 対流場 や熱 連成場 は工学 上しばしば表れるものである。たとえば,原子炉の炉心において,

冷却 材は燃 料体よ り受熱 しな がら流 れるが ,燃料 体内 の温度 分布倣 燃料外 面の熱伝達率分布,す

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なわち冷却材の流動状態に深く依存しているにもかかわらず,通常用いられている計算方法にお いてtま,流体側温度分布と固体側温度分布の算出を別個に行い,燃料表面の熱的境界条件が合致 するまで繰り返して計算を行なうものである。さらに,原子炉事故時の安全解析などにおいて,

冷却材流速の低下した条件の下では,流れの場に自然対流の効果が強く顕われて問題をさらに複 雑にする。同様な状況は,連続鋳造における冷却や,半導体集積回路の冷却の問題など,多くの 工学問題に見られる。

  熱連成場を流体側,固体側に分離することなく,解析することが出来るならば計算の能率は格 段と向上する。そのための方法とーっとして,本論文では変分原理に基づく有限要素解析を提案 している。有限要素法による熱伝達の解析手法はいまだ体系的に確立されているとは言い難く,

特に流れ場解析における浮カの取り扱い方や,流体中の温度場解析の検討は,充分ではなかった。

本論文では,それらの難点を解決し,結果として流体内温度と固体内温度を同時に解析すること を 可 能 と す る 計 算 方 法 を 新 た に 開 発 し , そ の 検 討 結 果 を6章 に ま と め て い る 。   第1章は緒諭であり,従来同種の問題に広く用いられてきた解析方法を説明すると共に,本論 文で提案する方法の特長を述べている。

  第2章では,本論文で使用する変分原理と有限要素法にっいての基本的考え方と一般的な計算 手法を説明している。

  第3章では,仮想仕事の原理に基づく変分法を用いて粘性流体の流れ場を解くことを検討し,

この原理の下で,有限要素法を定式化すると共に,例題の計算を通じて,この方法の正しいこと を実証している。

  第4章では,浮カのある場の考察を進め,第3章で導いた方法が自然対流場でも使用できるよ う改良を加えている。

  第5章では,前章までの方法を発展させて,熟連成場における固体内と流体内の温度場を一体 的に取り扱うことを可能としている。従来の多くの解析法では,この両者を個別に取り扱い,境 界面において熱的境界条件を満足させるための反復演算を行なうために,複雑なアルゴリズムと 長い演算時間が必要であった。この論文で提案する新しい方法はこの点を根本的に改善する手法 のーっであり,熱連成場解析のための画期的な提案である。

  第6章は結論であり,本論文の全般を総括している。

  これを要するに,本論文は,仮想仕事の原理に基づく変分原理を用いることで,浮カを含む熟 連成場の解析を行い得ることを示している。その結果,この種の系の解法に従来の手法では必要 であった反復演算を省き,計算を大幅に能率化したものであり,熱工学,動力工学に寄与すると

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こ ろ大で ある。 よっ て,著 者は博 士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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