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博士(工学)池田倫子 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)池田倫子 学位論文題名

包接水和物結晶のホストおよびゲスト分子の挙動 学位論文内容の要旨

   気体 と 水 の反 応 生 成物 の 多く は 、包 接水和物 とよばれる 結晶構造 をとる。 包接 水 和 物に お け る気 体 分子 は ゲ スト 分 子とよば れ、水分子 の水素結 合によっ て構成 さ れ るか ご 状 の格 子 中に 包 接 され て 存在する 。近年、温 室効果気 体である 二酸化 炭 素の抑制方 法として 、CO っ包接 水和物を 深海底に 貯留するとぃう案が検討されて い る。また、 極地氷床 中の空気 包接水和 物には過 去の大気 が包接されているため、

過 去 の気 候 と 環境 の 変化 を 把 握す る ための貴 重な情報源 として注 目されて いる。

さ ら に、 近 年 、メ タ ン包 接 水 和物 が 海底に大 量に埋蔵さ れている ことが分 かり、

新 し いエ ネ ル ギー 資 源と し て 注目 さ れている 。このよう に、包接 水和物は 様々な 分 野 で 注 目 さ れ て い る が 、 そ の 基 礎 的 な 性 質 に は 未 解 明 な 点 も 多 い 。    包 接水和物の 安定性は 、van der Waals and Platteeuw の理論を用いて説明されて き た 。こ の 理 論は 、 包接 水 和 物の 安 定性と分 子間相互作 用の関係 を示すも のであ る 。 この 理 論 を基 に 、様 々 な 包接 水 和物の相 平衡が予測 されてき たが、多 くの結 晶 に おい て 、 実験 と 理論 計 算 から 求 めた解離 圧にはかな り大きな 差があっ た。こ の 原因は、次 の点にあ ると考え られている。van der Waals and Platteeuw の理論に お い ては 、 平 衡位 置 に静 止 し た水 分 子とゲス ト分子との 相互作用 のみを考 慮して い た 。し か し 、実 際 には 、 ゲ スト が 存在する ことや、ゲ ストが運 動するこ とによ っ て 、格 子 が 歪む こ とが 予 測 され る 。したが って、包接 水和物の 相平衡と 安定性 を 理 解 す る た め に は 、 ゲ ス ト ― ホ ス ト 相 互 作 用 機 構 を 解 明 す る 必 要 が あ る 。    本 論文は、包 接水和物 における ゲストー ホスト相 互作用機構を解明する目的で、

ラ マ ン分 光 法 、中 性 子回 折 法 を用 い てホスト およぴゲス ト分子の 挙動を明 らかに した一連の研究成果を述べたものである。

   本論文は、6 章から構成されている。

   第1 章では、本研究の背景と目的を述べる。

   第2 章で は 、 南極 Vo stok 氷コ ア 中の 気泡と空 気包接水 和物結晶の ラマンス ベク ト ル の測 定 を おこ な った 結 果 につ い て述べる 。極地氷床 中の空気 包接水和 物は、

氷 、気泡と共 存してい るため、 相平衡の モデル系 として大 変興味深い試料である。

測 定したスベ クトルの N っ、O っ伸 縮モード の散乱強 度比から、空気包接水和物およ ぴ気泡のN2/02 組成比を求めた。その結果、気泡と包接水和物中のN っ/〇っ組成比が、

氷 床 深度 の 変 化に 伴 って 変 化 する こ とを初め て発見した 。この結 果を用い て、氷

床 に おけ る 気 泡と 包 接水 和 物 の共 存 状態、及 び気泡から 包接水和 物への遷 移過程

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を考察し、氷床中の空気分子が気泡と包接水和物の問の氷格子中を拡散すること を示す。また、気体分子と周囲の水分子との分子間相互作用エネルギーを計算す ることにより、O 。分子の拡散速度がN っ分子よりも大きいことを明らかにした。こ の結果から、空気包接水和物および気泡のN ワ/02 組成比の変化は、No `02 の拡散 速度の違いに起因したものであると結論する。

   第 3 章では、グリーンランド Dye‑3 氷コア中の空気包接水和物単結晶のラマンス ベクトルの結晶方位依存性を測定した結果について述べる。測定の結果、N っ、O っ 伸縮振動モードとO ―H 対称伸縮振動モードの散乱強度が、入射電場偏光面方向の 変化に伴って変化することを明らかにした。空気包接水和物結晶の12 面体ケージ は、く 111 〉方向に歪んでいるため、N2 `02 分子が、く 111 >を回転軸として回転 しているとぃうモデルを仮定し、散乱強度の計算をおこなった。計算結果と実験 結果の比較により、散乱強度の異方性は、12 面体ケージ中のN2 `02 の異方的な回 転に起因したものであることを示す。

   第 4 章では、CO 。包接水和物単結晶を生成し、ラマンスベクトルの結晶方位依存 性を測定した結果について述べる。測定の結果、C02 の対称伸縮振動モードと変角 振動モードの倍音の Fermi 共鳴に帰属される 2 本のピークと〇− H 対称伸縮振動モー ドの散乱強度が、入射電場偏光面方向の変化に伴って変化することを明らかにし た。 CO 。包接水和物結晶の14 面体ケージは、く100 >方向に歪んでいるため、CO っ 分子が、く100 >を回転軸として回転しているとぃうモデルを仮定し、散乱強度の 計算をおこなった。計算結果と実験結果の比較により、C02 の散乱強度の異方性は、

14 面体ケージ中の C02 の異方的な回転に起因したものであることを示す。また、O

―H 対称伸縮振動モードの散乱強度の異方性については、水分子の5 体構造モデル を用いて散乱強度の計算をおこなった。計算結果と実験結果の比較により、〇―H 対称伸縮振動モードの散乱強度の異方性は、ゲスト分子の運動状態がホストの水 素結合系におよぽす効果を示すものであると結論した。

   第5 章では、CO っ包接重水和物の粉末中性子回折を測定した結果について述べる。

測定は、 7 、48 、98 、148 、213K の 5 点でおこない、リートベ´レト法を用いて格子 定数と構造パラメータを精密化した。その結果、12 面体ケージ中のC02 分子を構 成する原子 の等方性温 度因子 (B) の値は、温度の低下と共に減少するが、14 面 体ケージ中の C02 を構成する原子のB は、温度変化に伴ってほとんど変化せず、低 温においても非常に大きい値を示すことを明らかにした。この結果から、12 面体 ケージ中の C02 は、低温においてほぼ静止しているが、14 面体ケージ中のC02 は、

低温においても活発に回転運動をしていることを示す。さらに、重水素原子のB の 値のサイト依存性が大きいことから、 CO っ分子―重水素原子間の相互作用が非常に 大きく、特に14 面体ケージ中の CO っの回転面周囲の重水素原子は、CO っの回転運動 の影響を強く受けていることを示す。

   第6 章では、本研究を総括する。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

包接水和物結晶のホストおよびゲスト分子の挙動

  近年、CO:包接水和物はCO:固定化法として、空気包接水和物は極地氷床氷の分析上、ま た、メタ ン包接 水和物 は新エ ネルギ ー資源 として 注目さ れている。しかし、包接水和物の 基礎的な 性質に は未解 明な点 も多い 。包接 水和物 の相平 衡と安定性の研究は、実用上重要 な包接水 和物の 形成や 崩壊の 機構を 解明す る上で 極めて 重要である。従来の研究では、平 衡位置に 静止し た水分 子とゲ スト分 子との 相互作 用のみ を考慮していた。しかし、実際に は、ゲス ト分子 が存在 するこ とや、 ゲスト 分子が 運動す ることによって、格子が歪むこと が予測さ れる。 したが って、 包接水 和物の 相平衡 と安定 性を理解するためには、ゲスト分 子の運動とゲスト―ホスト相互作用機構を解明する必要がある。

  本論文 では、 包接水和 物にお けるゲ スト分 子の運 動とゲスト―ホスト相互作用機構を解 明する目 的で、 高度な 分析技 術であ るラマ ン分光 法や中 性子回折法を用いてホストおよび ゲスト分子の挙動を明らかにした一連の研究成果を述べている。

  本論文は、6章から構成されている。

  第1章では、本研究の背景と目的を述べている。

  第2章で は、南 極Vostok氷コ ア中の 気泡と 空気包 接水和 物結晶 のラマ ンスベク トルの測 定をおこ なった結果について述べている。測定したスベクトルのN:`O:伸縮モードの散乱 強度比か ら、空気包接水和物および気泡のN2/0:組成比を求めた。その結果、気泡と包接水 和物中のN2/0:組成比が、氷床深度の変化に伴って変化することを初めて発見した。気体分 子と周囲 の水分 子との 分子間 相互作 用エネ ルギー を計算 することにより、空気包接水和物 および気泡のN:/O:組成比の変化は、氷中のN:`O:の拡散速度の違いに起因したものである ことを示した。

  第3章 で は 、グ リー ンラン ドDye‑3氷コ ア中の 空気包 接水和 物単結 晶のラマ ンスペ クト ルの結晶 方位依存性を測定した結果について述べている。測定の結果、N:、O:伸縮振動モ ード とO一H対 称 伸縮 振動モー ドの散 乱強度 が、入 射電場 偏光面 方向の 変化に 伴って変 化 すること を明ら かにし た。空 気包接 水和物 結晶の12面体ケ ージは 、く111> 方向に歪んで いるため 、N2`0:分子 が、く111>を回 転軸と して回転 しているというモデルを仮定し、

散乱強度 の計算 をおこ なった 。計算 結果と 実験結 果の比 較により、散乱強度の異方性は、

    ‑ 803―

爾 郎

   

   

晋 健

耀

   

   

川 川

前 丸

授 授

教 教

査 査

主 副

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12面 体ケ ー ジ 中のN: 、Ozの異 方的な回 転に起因 したも のである ことを 示した。

  第4章では、CO:包接水和物単結晶を生成し、ラマンスベクトルの結晶方位依存性を測 定した結果について述べている。測定の結果、CO:の対称伸縮振動モードと変角振動モー ドの倍音のFermi共鳴に帰属される2本のピークと0―H対称伸縮振動モードの散乱強度が、

入射電場偏光面方向の変化に伴って変化することを明らかにした。COよ包接水和物結晶の 14面体ケージは、く100冫方向に歪んでいるため、COユ分子が、く100>を回転軸として回 転しているとぃうモデルを仮定し、散乱強度の計算をおこなった。計算結果と実験結果の 比較により、CO:の散乱強度の異方性は、14面体ケージ中のCO:の異方的な回転に起因した ものであることを示した。また、O―H対称伸縮振動モードの散乱強度の異方性について は、ゲスト分子の運動状態がホストの水素結合系におよぼす効果であることを示した。

  第5章では、CO:包接重水和物の粉末中性子回折を測定した結果について述べている。

測定は、7、48、98、148、213Kの5点でおこない、リートベルト法を用いて格子定数と構 造バラメータを精密化した。その結果、12面体ケージ中のCO:分子を構成する原子の等方 性温度因子(B)の値は、温度の低下と共に減少するが、14面体ケージ中のCO:を構成する 原子のBは、温度変化に伴ってほとんど変化せず、低温においても非常に大きい値を示す ことを明らかにした。この結果から、12面体ケージ中のCO:は、低温においてほぼ静止し ているが、14面体ケージ中のCOユは、低温においても活発に回転運動をしていることを示 した。さらに、重水素原子のBの値のサイト依存性が大きいことから、CO:分子―重水素原 子間の相互作用が非常に大きく、特に14面体ケージ中のCO:の回転面周囲の重水素原子 は、CO:の回転運動の影響を強く受けていることを示した。

  第6章では、本研究を総括する。

  これを要するに、著者は、新たに注目されつっあるCO:および空気包接水和物における CO:分子、窒素分子、酸素分子の挙動を高度な分析技術を使用して測定し、その結果を解 析することにより、これらの分子と水分子の相互作用を新たに発見した。この成果は、応 用物理学の発展に対して貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。

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参照

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