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博士(理学)伊藤進一 学´位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(理学)伊藤進一 学´位論文題名

Interdecadal self − sustained oscillations     1nOCeanthern10halineClrCulation .      (海洋熱塩循環における数十年周期の自励振動)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近年 、大気や 海洋の長 期間に渡 るデータが 得られる ようにな り、大気 海洋系に 数十 年と いう長い 時間スケ ールをも った変動が あること が発見さ れ、注目 されてい る。こ れら の変動を 引き起こ す原因の ひとっとし て、高緯 度で生じ る海洋の 自励振動 が考え ら れ て い る 。 こ の 自 励 振 動 は 、 海 表 面 に お け る 熱 塩 の 境 界 条 件 をm奴cdboundaヴ condmo僞 と 呼ば れ る方 法 で 与え た とき に 、 海洋 大 循 環モ デ ルを用 いた数値 実験にお いて 見出され ることが わかって いる。しか レ、これ らの振動 は非常に 複雑な構 造を伴 って おり、そ のメカニ ズムは明 らかにされ ていない 。また、 各々のモ デルによ って、

振動 の形態も 違ってお り、統一 的な解釈が できるの かどうか も定かで はなく、 さらに は、 何 故m故cdboundaづconditio懲のと きにだけ 起こるのか も明らか にはされ ていな い。 一方、長 期にわた って得ら れる海洋デ ータは海 表面温度 だけなの で、複雑 な構造 を持 った自励 振動が、 現実に存 在するかど うかも明 らかにさ れていな い。そこ で本研 究で は、海洋 自励振動 のメカニ ズムを明確 にするこ と、そし て海洋自 励振動が 現実の 海洋 に存在で きるかど うかを明 らかにする ことを目 的とし、 理論解析 、数値実 験、デ ー夕解析と幅広い方向から海洋自励振動を考察した。

  まず、二 種類の簡 単な解析 モデルを用いて、自励振動が起こる必要十分条件を求め、

その 条件が海 表面での 熱塩の境 界条件にど のように 依存する かを調べ た。用い た解析 モデ ルのーっ は、上層 と下層を 表すニつの 箱で構成 される鉛 直一次元 モデルで あり、

亜寒 帯を代表 するもの である。 もうーつの モデルは 、前述の モデルの 上層の側 方に亜 熱帯 上層を代 表するも うーつの 箱を加え、 子午面循 環の効果 を取り入 れたモデ ルであ る。これらの解析モデルを、restoriコng,m故cd,餓cboundaづConditionsという三つの境 界条 件のもと で解析し た。rest而ngboundaづconditio恥のもとで は、温度 ,塩分の 両     ―194―

(2)

方 の海 表面 フラ ック スが 、海 表面 での 値と 境界 条件として与えた平衡値との差に比例 し た形 で与 えら れる 。従 って 、温 度, 塩分 の両 方に平衡値へ引き戻そうとする負のフ イードバ ックが働くことになる。この負のフィードバックは温度に関しては、海表面 温 度が 大気 の温 度に 馴染 むと いう 現象 を考 えれ ば理解できるし、理論的な裏付けもあ る 。し かレ なが ら、 塩分 につ いて はそ れを 支持 する理論がないばかりでなく、非現実 的 なメ カニ ズム が働 くこ とが 考え られ る。 例え ば、海表面塩分が平衡塩分より高くな る と、 負の フィ ード バッ クが 働き 、降 水が 強制 的に引き起こされ、塩分が低くなる。

こ のよ うに 非現 実的 な機 構が 働く こと を避 ける ーつの方法として、海表面で降水と蒸 発の差を直接与える境界条件が使われるようになった。これがmixed boundary condi― tionsである。mixed  boundary conditionsは、restoring boundary conditionsに比べれば、

現 実の 大気 海洋 系に よく 対応 して いる が、 欠点 もある。例えば、海表面温度が大気の 温 度よ りも 高く なり 海洋 が大 気に 熱を 放出 した ときには、大気の温度も上がるはずで あ り、 平衡 温度 が一 定であるmixed boundary conditionsの場合よりも温度にかかるフ イ ード バッ クが 弱い はず であ る。 フィ ード バッ クが弱い極端な場合として、海表面の 熱 フラ ック ス自 体を 与え るfree boundary conditionsを考えた。現実の大気海洋系は mixed boundary conditionsとfree boundary conditionsの間にあり、しかもmixed boun− dary conditionsに 近い状態であると考えられる。従って、このニつの境界条件のもと で の自 励振 動の 振る 舞い を調 べる こと によ って 、現実の大気海洋系で自励振動が存在 可 能で ある かど うか 推測 でき る。 解析 の結 果、 どの境界条件のもとでも、ある条件を 満たせば自励振動が存在可能であることが示された。restoring boun(laヴconditionsの ときには、海表面での熱と塩の交換係数が違うことが必要条件となることがわかった。

従 って 、r鵠t面ngboundaびConditionsを用 いた 数値実験で自励振動が起きないのは、

境 界条 件そ のも のが 原因 では なく 、熱 と塩 の交 換係数を同じにとっているためである 可 能性 が示 され た。I血【edboundaづConditionsのときには、鉛直一次元モデルでは、

蒸 発過 剰の とき だけ 振動 可能 であ り、 降水 過剰 のときに振動するには、もう一方の解 析 モデ ルで 取り 入れ た亜 熱帯 の効 果が 必要 であ ること が示 され た。 また 、蝕cboun― daづconditionsのと きに は、 自励 振動 が存 在可 能であるが、そのための必要十分条件 は かな り厳 しい こと が示 され た。 現実 の大 気海 洋系は 、m故cdboundaづ00nditionsと 血eboundaづconditonsの 間にあ り、 しか も前 者に より 近い 状態 にあ るの で、 これ ら の 理論 的解 析の 結果 から 、海 洋自 励振 動は 自然 界に存在する可能性が十分にあること が示された。

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  次に、大循環モデルを用いた数値実験を行い、mixed boundary conditionsのもとで 周期28年という海洋自励振動を得た。この自励振動は、亜寒帯にその中心を持ち、

成層が卓越する状態と鉛直対流混合が卓越する状態が繰り返し現れることによって起 きていた。この振動の三次元的な解析および種々の数値実験によって、東岸で維持さ れている鉛直対流、非常に強い塩分フロント、亜熱帯との熱塩交換、海表面での熱と 塩の交換係数の違い(mixed boundary conditions)、亜寒帯循環という五つの要素が自 励振動にとって重要であることが示された。

  次に、大循環モデルで現れた自励振動を解析モデルによって導かれた理論で説明で きるかどうか検討した。まず、大循環モデルの環境条件は、子午面循環の効果を取り 入れた解析モデルから導かれた自励振動条件を満たしていた。その環境条件を用いて、

解析モデルで振動を再現し、大循環モデルの振動と比較レた結果、温度一塩分平面 上での振動の軌跡が似ていることが示された。これらの結果から、大循環モデルに現 れた自励振動は、簡単な解析モデルで基本的に説明できることが示され、自励振動が 起こるためには亜熱帯と亜寒帯の熱塩交換が重要であることが明らかにされた。亜熱 帯と亜寒帯の熱塩交換が自励振動に取って必要であるという結果は、数値実験による case studyの結果とも一致していた。

  このように高緯度で成層と鉛直対流を繰り返す自励振動に対応するような現象とし て、ラブラドル深層水の形成量の変動をあげ、他の研究者らの解析結果をもとに検討 した。また、アラスカ湾にあるSt.Pという観測点のデータを用いて、デ一夕解析を 行い、自励振動が現実の海洋に存在するかどうか検討した。その結果、密度の鉛直構 造の時間変動に対する主成分分析によって、十年より長い時間スケールを持った変動 を表すモードが得られた。このモードは、亜表層で成層が強くなったり、弱くなった り を す る 変 動 を 表 し て お り 、 自 励 振 動 に 対 応 し て い る 可 能 性 が 示 さ れ た 。   現在までに得られている観測データだけからでは、海洋の自励振動の存在の是非を 明らかにすることはできないが、本研究の結果から、数十年の周期を持つ海洋自身が 引き起こす自励振動が、現実の海洋にも存在する可能性が十分にあることが示唆され る。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

竹内 若土 久保川 日比谷

学 位 論 文 題 名

謙 介 正 暁     厚 紀 之

Interdecadal Self‑Sustained Oscillations  in Ocean Thermohaline Circulation.

(海洋熱塩循環における数十年周期の自励振動)

  

海洋は風応カとともに、熱や塩分の海面からの入出によって駆動されている。前者 はかなり理解が進んでいるのに対し、密度による駆動についてはまだ多くの課題が残 り、特に、熱と塩分の違いによって起きる現象については、解明されているものは非 常に少ない。この問題に関して、近年話題になっているのが数十年スケールの海洋自 励振動である。本研究はこの自励振動のメカニズム、条件を明らかにすることを目的 としている。

  

海洋数値モデルの海面での境界条件として、モデルの海面水温、塩分の値が実測値 に近づく様な負帰還として表現される事が多い。しかし、熱の入カに対しては負帰還 が働くが、塩分に関しては海面塩分が増加しても降水が増加するような事はなく負帰 還は働かない。塩分に関して負帰還型の境界条件を用いることは物理過程を歪めてい る可能性がある。その為、熱には負帰還型、塩分フラックスは固定して与える混合型 と呼ばれる境界条件が最近数年試みられるようになった。

  

ところが、このような混合型海面境界条件を使用した数値モデルの高緯度域で、十 年から数十年の時間スケールの自励振動を起こすものがあることが報告されるように なり、数例に上っている。一方、デー夕解析から気候にやはりその位の時間スケール の変動があることが次第に明らかになってきて、研究者の関心を集めている。海洋の 自 励 振 動 も 有 カ な メ カ ニ ズ ム の 候 補 と し て 注 目 を 集 め て き て い る 。

  

しかし、これまで数値モデルで示されてきた自励振動は、個々の機構も明快に解明

‑ 197

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されておらず、どうして混合型の境界条件でのみ自励振動がおきるか等、統一的な理 解にはほど遠い状況であった。その為、実際の海洋でその様な現象が起こり得るのか についての議論は困難であった。

  

本研 究で は先 ず、 高緯度 海洋 の上 層と下 層を 表す

2Box

モデル の振 る舞 いを 、負 帰還型、混合型および熱、塩分とも負帰還を伴わない自由型の海面境界条件の元で調 べている。この解析により、どの境界条件の元でも自励振動は可能であるが、混合型 の場合、蒸発が過剰で有ることが条件となり、数値モデルで示された、降水が過剰な 高緯度域での振動を説明出来ないことが示された。そこで中、低緯度との海水交換を 表 現 す る た め に 第

3

B

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を っ け 加 え た モ デ ル の 振 る 舞 い が 解 析 さ れ た 。

  

この 結果 、次 の事が明らかになった。1) 混合型の境界条件では降水過剰な場合、

成層と 混合 を繰 り返す数十年周期の振動が起こり得る。2) 負帰還型では熱と塩分の 時定 数 が 異 ナ ょ っ た 場 合 の み 振動 が 可 能 。

3)

自 由 型 で は 振動 は 起こ りに くい。

  

次に、数値モデルとの対応をより詳しく調べるため、数値モデルによって自励振動 を再現している。これまでのモデルに比べ、比較的単純な地形や塩分フラックス分布 を用い、より一般的な特性を指向している点に特徴がある。このモデルでは高緯度域 に海洋 上層 に成 層が発達する時期と、混合が卓越する時期が交互に現れる周期約28 年の自 励振 動が 再現 されて いる 。こ の数値 モデ ルとBox モデルの比較や、さらに追 加され て行 われ た条 件を変 えた 数値 モデル によ る実験により、Box モデルが数値モ デ ル で 起 き て い る 自 励 振 動 の 本 質 を 抽 出 し た も の で あ る こ と が 示 さ れ た 。

  

最後に、これらで示された自励振動が実際の海洋で起きている可能性があるかが観 測データの解析により調べられた。海面以外の観測は長い期間に亘ものが少なく、確 定的な結諭を出すには至らなかったが、北大西洋と北太平洋で自励振動と関連する可 能性がある現象が示された。

  

以上本研究は、これまで数値モデルに現れていた自励振動の本質を単純なモデルで エレガントに示したもので、統一的な理解を可能にした点で高い価値が認められる。

また、自励振動の条件が明確になり、実際の海洋でも起こり得ることが示されたこと も重要な成果である。さらに、中、低緯度との海水交換が自励振動に必須であること を示したこと等、この分野の研究にとっての貢献は小さくない。審査員一同は本研究 の価値と申請者の高い研究能カを評価し、申請者が博士の学位を受けるのに十分な資 格を有するものと認定した。

―198―.

参照

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