博士(医学)廣上 貢 学位論文題名
The functional role of opioid receptors 1n acetylcholine release in the rat adrenal medulla
( ラ ッ卜 副 腎髄質ア セチルコリ ン遊離機 構におけ る オ ピ オ イ ド 受 容 体 の 役 割 に 関 す る 研 究 )
学位論文内容の要旨
副腎髄質に おけるク ロム親和 性細胞か らのカテ コールア ミン(CA)分泌は 、主として 副腎交感神 経終末か ら分泌さ れるアセ チルコリ ン(ACh)の刺激によることが知られてい る。 最 近、 副 腎 交感 神経終 末におい て、オピ オイドペ プチドがAChと共に存 在するこ とが証明さ れ、副腎 髄質機能調節において重要な役割を担っていると推測されている。
本 研究 で は 、ラ ッ ト副腎髄 質での交 感神経節 前線維終 末からのACh遊離調節 機構に おけるオピ オイド受 容体の役 割をぬvivoに おいて解 明するこ とを目的と して、新たに 副腎マイク 口ダイア リシス法 を考案し 、基礎的 検討を行 なうと共に 、オピオイド作動 薬と拮抗薬 の影響を 検討した 。
方 法
動物は12‑18週 齢の雄性ウ ィスター 系ラット を用いた 。今回、 新たに考 案した2.5mm の透析膜 を持つ副腎 マイクロ ダイアリ シス用プ ローブを 、ハ口セ ン麻酔下に 背腰部ア プ口ーチにて副腎髄質に挿入し、physostigmineを含むRinger液で持続的に漣流した。プ ローブ挿入後180分よルサンプリングを開始し、内部標準物質としてethylhomocholineを 加え た サン プ リ ング チ ュー ブに 、20分毎に 灌流液を 剛収した 。サンプ ルはHPLC‑ ECD に注入し 、AChを定量し た。サン プリング 開始後60分 と120分に10分 問ずつ、 高濃度カ リウム(K゛ )を含む潅 流液で漣 流した。2度のK゛刺 激に対するACh遊離反応をそれぞれ Sl、S2とし、Slに対するS2の反応比(S2/Sl ratio)を求めて反J芯を標らヒ化し評価した。
オピォイド作動薬であるmorphine(u受容体作動薬)、[D̲Pen2,D‑Pen jenkephalin (DPDPE, 6受容体作動薬)ならぴにU69593(K受容体作動薬)は、21亜j目のK゛刺激の際にi饉流液に 加えた。また、オビオイド拮抗薬であるnaltrexone(u受容体拮抗薬)ならびにnaltrindole
(6受容 体 拮抗 薬 ) は、 各 オピ オ イ ド作 動 薬を 瀧 流 する203Jx前に 腹腔内投 与した。
結果
1.基礎的検討
(1)回収率:副腎髄質の細胞外液から回収される物質の回収率は漣流速度に依存した。
単位時間(20分)あた り瀧流液 巾に囘収 されるACh量は2ul/minの湛流速度で最大となっ た。
(2)アセチル コリンエ ステラー ゼ阻害薬 :瀧流液巾の可逆的アセチルコリンエステラ ーゼ阻害 薬(physostigmine)濃度と回収された副腎ACh遊離量の問には有意な正の相関関 係が 認 め られ た 。 濯流 液 中のACh量 を安 定 した 状 態 で定 量 する た め に、 以 下の実験 では100ルM physo・stigmineを使用した。
(3)K゛刺激によるACh遊離反応:ACh遊離量は、漣流するK゛の濃度に依存して増加し た 。50mMと100mMのKClを10分 問瀧 流 す るとACh遊 離量 は それ ぞ れ 前値 の1.85倍 と 3.21倍に増加した。対照群での2度の100mMK゛刺激によるACh遊離反応比(S2/Slratio) はO.961であった。
2.K゛ 刺 激 に よ るACh遊 離 に 対 す る オ ピ オ イ ド 作 動 薬 な ら び に 拮 抗 薬 の 効 果 (1)p受容 体作動薬 と拮抗薬 の効果:1uMm0叩hineを投与 した場合 のS2/S1ratioは 0.843、10uMmorphineを投与した場合のSりS1ratioはO.712と対照群に比べて有意に低 値となっ た。すな わち、K゛ 刺激によ るACh遊離反 応はmorphineによ り用量依存的に抑 制された 。さらに 、nal譱xoneを前 投与してmorphineのACh遊離抑 制効果を検討した。
Naltrexone3mぴ〈gを前投与した場合にtまS2/S1ratioは0.764とmo叩hineの効果に影響|まな いが、na1眈xone9mg爪gを前投与した場合にはS2/S1ratioは0.946と、morpMneのK゛刺激 に よ るACh遊 離 抑 制 効 果 は 消 失 し 、 ほ ぼ 対 照 群 の レ ベ ´ レ ま で 同 復 し た 。 (2)6受容体作動薬と拮抗薬の効果:1uMDPDPEを投与した場合のS2/S1ratioは0.714、 10uMDPDPEを投与した場合のS2/S1rati0はO.687と共にK゛刺激によるACh遊離反応は、
対照群に比較して有意に抑制された。さらに、naltrindole3m凹(gを前投与・した場合には S2/Slratioは0.606とDPDPEの効果に影響はないが、nalmndole9mg瓜gを前投与した場合 にはS 2/S1ratioは0.968とDPDPEのK 弗4激によるACh遊離抑制効果は消失し、対照群の レベルまで回復した。
(3).K受容体作動薬の効果:10斗MU69593を投与した場合のJS2/S11ぬ岫は1.028とK゛刺 激によるACh遊離反応に影響はなかった。
考案
本研 究では、f胞vlivoに於て、 ラット刷 腎交感神経終末からのACh遊離調節機構に関 与す るオピオイ ド受容体のサブタイプおよびその役割を解明するために、新たに副腎 マイ クロダイア リ シズ 法を考案 して、u、6ならびにKオピオイド作動薬と拮抗薬によ る影響を検討したd
K゛刺 激による副 腎ACh遊離増 加反応は 、u受容体作動薬であるmorphineにより有意に 抑制され、p受容体拮抗薬であるnaltrexoneを前投与すると、このmorphineの捫亅制効果は 消失 した。また 、6受容体作動薬であるDPDPEにより、K゛刺激による副腎ACh遊離増カri
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反応 は有意に抑制され、6受容体拮抗薬であるnaltrindoleを前投与すると、このDPDPE の 抑 制 効 果 は 消 失 し た 。 この こ と か ら 、 副 腎 髄 質 で のK゛ 刺 激 に よ るACh遊離 増加 反 応 に は ロ 受 容 体 と6受 容 体 を 介 す る 抑 制 機 構 が 関 与 し て い るこ と が 示 さ れ た 。 副 腎髄 質に はu、6お よびK型オ ピオイド受容体が存在し、ク口ム親和性i山胞中に存 在す るオ ピオ イド ペプ チド は、uおよび6受容体に親和性が高いことが報告されている (Castanasら)。また、Jarryらは、ラット副腎髄質における内因性のオピオイドペプチド がクロム親和性細胞からの(ニA分泌を抑制することを報告している。しかし、副腎交感 神経 終末 から 分泌 され るAChに対 する オピ オイ ド受 容体 の機 能的役割に関しては、こ れま で報 告が なか った 。本 研究 の結果は、副腎交感神経終末にはク口ム親和性細胞と 同じ くuおよ ぴ6受 容体 が存 在し て、ACh遊 離調 節に おい て抑 制的に関与している可能 性を 示す もの であ る。 一方 、K受 容体作動薬であるU69593はACh遊離増カlI反応に影響 を与えなかった。Castanasらによると牛副腎髄質には3種類のK受容体(K.、K2、K丿の存 在が 証明 され てい る。 また 、K受 容体 作動 薬に よっ て副 腎髄 質由来の利尿因子の分泌 が刺 激さ れる と報 告さ れて いる(BorkowskiK.R.)。したがって、ラット副腎髄質に存 在 し て いるK受容 体は 、副 腎交 感神 経終 末か らのACh遊 離と ク口 ム親 和性 細胞か らの CA分 泌に おけ るuおよ び6受 容体 を介する抑制機構とは異なった役割を担っている可能 性がある。、
本 研究 では 、ラ ット 副腎 髄質 の細 胞外ACh量 を測 定す るた め新たに副腎マイクロダ イアリシス法を考案した。Ungerstedtらによって開発され|たマイクロダイアリシス法は、
in vivoで細胞外液中のネIll経伝達物質を測定する方法とされている。副腎髄質機能は、
神経 性お よび 体液 性因 子に よっ て生理的条件下で様々な影響を受けており、従来から 用いられている副腎髄質の細胞培養やi門vitrolin situの漣流モデルでは、種々の調節因 子に 変化 が生 じる 可能 性が ある 。今回新たに考案した副腎マイクロダイアリシス法は in vivoの条 件下 で細 胞外ACh量 を測定できると同時に、副腎髄質に種々の薬物を局所 的に 投与 でき るた め、 副腎 髄質 機能の生理的ならびに薬理学的研究を行う上で非常に 有用な方法と考えられる。
結 語
新た に考案した副腎マイクロダイアリシス法を用いることにより、ラット副腎髄質 に おけ る交感神経終末からのACh遊離調節にオピオイド斗受容体と5受容体の両方が機 能l的 役割を 担っ てい る可 能性 が示 され た。
学位論文審査の要旨 主 査 教 授 斎 藤 秀 哉 副 査 教 授 本 間 研 一 副 査 教 授 小 山 司
学 位 論 文 題 名
The functional role of opioid receptors 1n acetylcholine release in the rat adrenal medulla
( ラ ッ 卜 副 腎 髄 質 ア セ チ ル コ リ ン 遊 離 機 構 に お け る オ ピ オ イ ド 受 容 体 の 役 割 に 関 す る 研 究 )
副 腎 髄 質 で の 交 感 神 経 節 前 線 維 終 末 に お い て 、 オ ピ オ イ ド ペ プ チ ド が ア セ チ ル コ リ ン(ACh)と 共 に 存 在 す る こ と が 証 明 さ れ 、 副 腎 髄 質 機 能 調 節 に 韜 い て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る と 推 測 さ れ て い る 。 本 研 究 で は 、 ラ ッ ト 副 腎 交 感 神 経 節 前 線 維 終 末 か ら のACh 遊 離 調 節 機 構 に お け る オ ピ オ イ ド 受 容 体 の 役 割 を 珈vivoに お い て 解 明 す る こ と を 目 的 と し て 、 新 た に 副 腎 マ イ ク ロ ダ イ ア リ シ ス 法 を 考 案 し 、 基 礎 的 検 討 を 行 う と 共 に 、 オ ピオイ ド受容体作動薬と拮抗薬の影響を検討した。
方 法 : 動 物 は12‑18週 齢 の 雄 性 ウ ィ ス タ ー 系 ラ ッ ト を 用 い た 。 今 回 、 新 た に 考 案 し た 2.5mmの 透 析 膜 を 持 つ 副 腎 マ イ ク ロ ダ イ ア リ シ ス 用 プ ロ ー ブ を 、 ハ ロ セ ン 麻 酔 下 に 背 腰 部 ア プ ロ ー チ に て 左 副 腎 髄 質 に 挿 入 し 、Ringer液 で 持 続 的 に 灌 流 し た 。 プ ロ ー ブ 挿 入 後180分 よ ル サ ン プ リ ン グ を 開 始 し 、 内 部 標 準 物 質 と し てethylhomocholineを加 えた サ ン プ リ ン グ チ ュ ー ブ に20分 毎 に 灌 流 液 を 回 収 し た 。 得 ら れ た サ ン プ ル はHPLC‑ ECDに 注 入 しAChを 定 量 し た 。 サ ン プ リ ン グ 開 始 後60分 と120分 に10分 間 ず つ 、100mMK゛ を 合 む 灌 流 液 で 灌 流 し た 。 オ ピ オ イ ド 受 容 体 作 動 薬 で あ るmorphine( い 受 容 体 作 動 薬 ) 、 [D̲Pen2 D‑Pen5] enkephalin (DPDPE,6受容 体作動薬)ならびにU69593くK受容体作動菊は、
2回 目 のK゛ 刺 激 の 際 に 灌 流 液 に 加 え た 。 ま た 、 オ ピ オ イ ド 受 容 体 拮 抗 薬 で あ る naltrexone(u受容体拮抗薬)なら びにnaltrindole(6受容体拮抗薬)は、各オピオイド受 容体 作 動 薬 を 灌 流 す る20分 前 に 腹 腔 内 投 与 し た 。 こ れ ら の 反 応 は 、2度 のK゛ 刺 激 に よ るACh 遊 離 反 応 を そ れ ぞ れS1、S2と し 、S1に 対 す るS2の 反 応 比(S2/S1 ratio)を 求 め て 標 準 化 し評価 した。
結 果 :1. 副 腎 マ イ ク ロ ダ イ ア リ シ ス 法 の 基 礎 的 検 討(1)プ ロ ー ブ の 回 収 率 は 灌 流 速 度 に 依 存 し て い た 。 単 位 時 間(20分 ) あ た り 灌 流 液 中 に 回 収 さ れ るACh量 は2yl/minの 灌
流 速度 で最 大と なっ た。(2)副 腎マ イクロダイアリシスで回収されたACh量は、灌流液 に 加え たphysostlgmme濃度に依存して増加した。灌流液中のACh量を安定した状態で定 エ. ● 一
量するために、10・ MphysostIgmmeを使用した。(3)対照群において2度の100mMK゛刺 激に対するACh遊離反応比(S2/S1rati0)は0.961であった。
2. ぐ刺 激によ るACh遊 離反 応に 対するオピオイド受容体作動薬ならびに拮抗薬の影 響(1)K十刺激による´丶Ch遊離反応は、morphinelpM投与群ならびに10いM投与群におい て 用量 依存 的に 抑制 され た。 また 、naltrexone9m眺gを前 投与 してm0叩hine10pMを灌 流すると、morphineのACh遊離抑制効果は消失した。(2)DPDPE1いM投与群、10いM投与 群 共 に 、K゛刺 激に よるAQl遊離反 応は 対照 群に 対し て有 意に 抑制 され た。 さら に、
naltrindole9mg/kgを前 投与 してDPDPE10pMを灌 流す ると 、DPDPEのACh遊離抑制効果 は消失した。(3)U6959310山涯を投与した場合、K゛刺激によるACh遊離反応に影響はな かった。
考 案 お よ び 結語 :今 回新 たに考 案し た副 腎マ イク ロダ イア リシ ス法 は、 めWmで副 腎 髄質 にお ける 細胞 外液 中ACh量を 測定 でき ると 同時 に種 々の 薬物を局所的に投与で き るた め、 副腎 髄質 機能 の生 理的 韜よび薬理学的研究を行ううえで非常に有用な方法 で あ る こ と が 示さ れた 。こ の方法 の応 用に より 、ラ ット 副腎 交感 神経 節前 線維 終末 か らのACh遊離調 節に オピ オイ ドp受容 体と6受容 体の 両方 が機 能的役割を担っている 可能性が示された。
口頭 発表 に際 して 、本 間教 授よ り、副腎髄質に存在している内因性オピオイドベプ チ ドの 種類 、オ ピオ イド 受容 体拮 抗薬 の単独 投与 によ ってA01遊離に影響が出なぃ理 由、小山(司)教授より、オピオイド受容体を介するAChの遊離抑制はtonicな状態でもお こりうるか否カ丶AChの遊離抑制に対してfR!emeuronの関与の可能性、菅野教授より、
オ ピ オ イ ド 受 容 体 が 刺 激 さ れ てAalの 遊 離 抑制 がお きる まで の細 胞内 情報 伝達 系、
AChと 同時 に測定 され るコ リン の存 在意 義に つい て質 問が なさ れたが、申請者はおお むね妥当な回答をなしえたと考える。また、副査の本間および小山(司)両教授から、
詳細なる論文審査な゛らびに面接試験が課せられた。
本研 究は 、ラ ット 副腎 交感 神経 節前 線維終 末か らのACh遊離 調節機構におけるオピ オ イド 受容 体の 役割 をmW地に おい て解明するために、副腎マイクロダイアリシス法、
を 考案 し、 オピ オイ ドp受 容体 と6受容体の両方が機能的役割を担っている可能性を明 らかにしたものであり、有意義な研究と考えら,れ、学位授与に値すると判定された。