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博士(獣医学)桐澤力雄 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)桐澤力雄 学位論文題名

ウマ ヘル ペス ウイ ルス 1 型感染症の 遺伝子診断と      ウ イ ル ス DNA の 解 析 に 関 す る 研 究

学位 論文内容の要旨

  ウ マ ヘ ル ペ ス ウ イ ルス1型(EHV−1) は、ア ルフ ァヘ ルベ スウ イル ス亜 科に 属 し、妊娠馬の死流産や子ウマの鼻肺炎、また、ときには神経疾患を引き起こす。同 じ 亜 科 に 属 す る ウ マ ヘル ベス ウイ ルス4型(EHV‑4)は主 とし て子 ウマ に呼 吸器 疾 患 、また 、ま れに 妊娠 馬に 死流 産を 起こ すウイルスでEHVー1と抗原的に近縁であ る。EHV−1による流産は毎年発生し、軽種馬生産業界に多大の経済損失を与えてい ることから、ウマのウイルス性疾病の中で最も重要視されている。流産防止用に不 活化ワクチンが応用されているが、その効果が不充分であるため、有効なワクチン の開発が切望されている。

  本研究 では 、EHV―1によ る流 産の 防止 対策の一環として、EHV−1感染症の迅速 な 確定診 断法 の確立、日本で分離されたEHV−1のDNA解析ならびに遺伝子組み換え に よ る ワ ク チ ン 開 発 に 必 要 な 基 礎 的 検 討 を 行 い 、 以 下 の 成 績 を 得 た 。

  1.EHV−1とEHV一4感 染 症 を 迅 速 に 診 断 す る 目 的 で ポ リ ヌ ラ ーゼ 連 鎖 反 応 (PCR)の 応用 を試 みた 。プ ライマ ーは 両ウ イル スの エンベ口ープ糖夕ンパクgB遺 伝子の塩基配列をもとに設定し、それぞれのウイルスに特異的なプライマーを混合 してPCRを行うことによって、容易に両ウイルスを型別する.ことが可能となった。

野外のウマ流産例に本法を応用したところ、PCRの成績はウイルス分離の成績と完 全に一致した。このことから、本PCR法は両ウイルス感染症の優れた迅速確定診断 法であることが示唆された。

  2. 日 本 で 分 離 さ れ た9株 のEHV−1の ウイ ルスDNAを 制限 酵素Bam HIで 切断 し て電気泳動プ口ファイルを比較したところ、EHV―1不活化ワクチンの実用化前に分 離された3株と実用化後に分離された6株との間に大きな変化はなかったが、9株の 問ではいくっかの断片で分子量の違いが認められた。そこで、これらの断片をサザ

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ン ハイプ リダ イゼ ーシ ョン で調 べたところ、Bam HI消化で得られるA‑‑‑Tの20断片 の う ち 、A、D、E、N、P、QR、SとTの8断 片 に 変 化 を 認 め た 。 特 に 、A断 片の 分 子 量 の 変 化 は こ れ ま で に 報 告 が な く 、 今 回 の 研 究 で 初 め て 明 ら か に な っ た 。   3. 日 本 で 初 め て 分 離 さ れ たEHV―1の 強 毒HH1株 と こ れ を ウ シ 腎 臓(BK)細 胞 で77代(BK77株 ) 、161代(BK161株 ) 、271代(BK271株 ) と343代(BK343 株 ) 連 続 継 代し て作 出され た株 のウ イル スDNAをBam HIで切 断し て電 気泳 動プ ロ フ ァ イ ル を 比 較 し た と こ ろ 、BK77株 とBK161株は 親株 のHH1株と 同一 のプ ロフ ァ イ ルを示 した が、BK271株 とBK343株 では 明ら かに 親株 と異 なっていた。この変化 を 認めた 株の 継代 数は ウマ に対 する 病原 性低 下を 示し た株 の継代数と一致してい た 。BK343株 で 変 化 を 認 め た 断 片 は 、BammA、B、D、E、N、P、QR、Sお よ ぴ T断 片と 同定 され た。 各断 片の 変化領域を特定したところ、T断片上の1番遺伝子、

A断 片上 の2蟠 ・遺 伝子 とD断片 上の71番遺 伝子 に変 化を 認め た。他の6断片には非 コード領域あるいは繰り返し配列部位に変化を認めた。変化を認めた3遺伝子の塩基 配列を決定したところ、1)1番遺伝子内には299塩基を単位とする繰り返し配列の挿 入 、2)24番遺伝子には繰り返し配列のコピー数の変化、3)71番遺伝子では繰り返 し配列のコピー数の変化とアミノ酸置換を伴う2箇所の塩基置換が認められた。以上 の 成績よ り、BK細 胞に よる 長期 間の 連続 継代 で変 化し たウ イルスゲノム領域のう ち 、 こ れ ら3種 類 の 遺 伝 子 が 病 原 性 に 関 与 し て い る 可 能 性 が 推 察 さ れ た 。   4.BK343株 でみ られ た71番遺 伝子 の変 異と 病原 性と の関 連を調べるために、相 同 組み換 えに より 、親 株で あるHH1株の71番遺伝子内にロ―ガラクトシダーゼ遺伝 子を挿入したもの(ロ―71株)、ロー71株の71番・ローガラクトシダーゼ結合遺伝子 をBK343株 の71番 遺 伝 子 あ る い はHH1株 の71番 遺 伝 子 に 置 き 換 え た も の ( そ れ ぞ れ、3F‑71株、Res−71株)を作出した。これらのウイルスの生物性状を培養細胞 を用bゝて検討したところ、ウイルス複製に大きな差はみられなかったが、ロ−71株の 細 胞外へのウイルス放出量が他の株に比べて減少する傾向にあった。これらのウイ ルスをマウスに経鼻接種してマウス肺でのウイルス感染価を調べたところ、ロ‑71株 とBK343株 の 感 染 価 はHH1株 の 約1/100で あ っ た が、3Fー71株 とRes−71株 で は HH1株と 同様 であ った 。以 上の 成績より、71番遺伝子産物は病原性に関与すること が 示 唆 さ れ た。 しか し、BK343株の71番 遺伝 子で 置き換 えら れた3F―71株 の増 殖 性 は 低 下 し なか った ことか ら、BK343株 の病 原性 低下が71番 遺伝 子の 変異 だけ に よるものではないことが示唆された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ウマヘルペスウイルス 1 型感染症の遺伝子診断と      ウ イ ル ス DNA の 解 析 に 関 す る 研 究

  ウマヘ少ベスウイルス1型(EHV‑I)は、妊娠馬に死流産を、またEHV‑1と抗原的に近縁であるEFN‑4 型(EHV‑4)は子ウマに呼吸器疾患をおこす。EHV‑1による流産は毎年発生し、軽種馬生産業界に多大 な経済損失を与えており、有効なワクチンの開発が切望されている。本研究では、EHV−1感染症の迅速 な確定診断法の確立、日本で分離されたEHV‑1のDNA解析ならびに遺伝子組み換えによるワクチン開 発に必要な基礎的検討を行った。  .

  まずEHV‑1とEHV‑4感染症を迅速に診断する目的で両ウイルスのエンベロープ糖夕ンパクが遺伝子 の塩基配列をもとにプライマーを設定し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の応用を試みた。野外のウマ 流産例に本法を応用したところ、PCRの成績はウイ´レス分離の成績と完全に一致したことから、本PCR 法 は 両 ウ イ ル ス 感 染 症 の 優 れ た 迅 速 確 定 診 断 法 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。   次に日本で分離された9株のEHV‑1のウイルスDNAを制限酵素Bam HIで切断して電気泳動プロファ イルを比較したところ、いくっかの断片で分子量の違いが認められた。そこで、これらの断片をサザン ハイブリダイゼーションで調べたところ、Bam HI消化で得られるA〜Tの20断片のうち、A、D、E、 N、P、QR、SおよびTの8断片に変化を認めた。

  また、日本で初めて分離されたEI‑Nー1の強毒HH1株とこれをウシ腎臓(BK細胞で連続継代して作 出された株のウイルスDNAをBaねmで切断して電気泳動プロフんイルを比較したところ、271代と343 代毋K343)継代株では明らかに親株と異なっていた。この変化を認めた株はウマに対する病原性も低下 していた。BK343株で変化を認めた断片は、T断片上の1番遺伝子、A断片上の24番遺伝子とD断片上 の71番 遺 伝 子で あ り、 こ れ ら3種類 の 遺伝 子 が 病原 性 に関 与し ている可 能性が推 察された 。   最後にBK343株でみられた71番遺伝子の変異と病原性との関連を調べるために、相同組み換えによ り、親株であるHH1株の71番遺伝子内にp‐ガラクトシダーゼ遺伝子を挿入したもの(p‐71株)、p

‐71株の71番.p‐ガラクトシダーゼ結合遺伝子をBK343株の71番遺伝子あるいはHH1株の71番遺伝 子に置き換えたもの(ぞれぞれ、3F一71株、Res・71株)を作出した。これらのウイルスをマウスに経鼻 接種して肺での増殖能を調べたところ、p‐71株とB悶43株の感染価|よHm株の約1/looであったが、

3F‐71株とR懿‐71株でIまHm株と同様であった。以上の成績より、71番遺伝子産物は病原性に関与す ることが示唆された。

  本研究によりEHV−1の病原性に関与する遺伝子が推定され、遺伝子組み換えヮクチンの開発およぴ本 病の制圧にとり重要な知見を提供するものである。よって審査員一同は桐沢力雄氏が博士(獣医学)の 学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた。

操 夫

宏 則

   

   

信  

  克

沼 本

田 崎

小 橋

喜 岡

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

参照

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