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雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

子どもの帰納的推論に及ぼす前提事例の典型性と結 論事例の水準の効果

著者 飯倉 由美子, 杉村 健

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 43

号 1

ページ 163‑171

発行年 1994‑11‑25

その他のタイトル Effects of Typicality of Premise Instances and Level of Conclusion Instances on Children's Category‑based Induction

URL http://hdl.handle.net/10105/1663

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子どもの帰納的推論に及ぼす前提事例の典型性と 結論事例の水準の効果

飯 倉 由美子' ・杉 村  健

(奈良教育大学心理学教室) Gf成6年4月1日受理)

推論とは前提から結論を導きだす過程であり、前提文と結論文の両方にカテゴリー名が含まれ ている場合は"カテゴリーに基づく推論"と呼ばれている(Gelman, 1988; Gelman&O'Reilly, 1988; Lopezら, 1992; Oshersonら, 1990)。カテゴリーに基づく推論は次の2つに分けるこ

とができる。 1つはカテゴリーに基づく帰納的推論で、結論文のカテゴリー水準が前提文の水準 と同じか、それよりも上位の場合である。もう1つはカテゴリーに基づく演樺的推論で、結論文 のカテゴリー水準が前提文の水準よりも下位の場合である(Sugimura, 1993)。本研究では、前 提事例の典型性と結論事例のカテゴリー水準が、幼児と小学2年生の帰納的推論の成績にどのよ

うな影響を及ぼすかについて検討する。

子どもの帰納的推論に関する最近の研究は、主として2つの推論課題を用ている。 1つは単一 前提文課題で、 1つの前提文からなっている(Gelraan, 1988; Gelraan&O'Reilly, 1988)(もう 1つは複数前提文課題で、 2つの前提文からなっている(Lopezら, 1992; Oshersonら, 1990)。

単一前提文課題を用いたGelman (1988)は、幼児と2年生の帰納的推論に及ぼすカテゴリー 領域(自然物と人工物)と結論事例のカテゴリー水準の影響を検討した。例えば、前提事例が赤 いリンゴの場合には、赤いリンゴの絵を提示して"これはチャトニーというソースを作ることが できる"といった新奇な情報を与え、そのあとで、その情報が赤いリンゴ(下位水準)、黄色い リンゴ(基礎水準)あるいはバナナ(中位水準)を含む結論文にも当てはまるかどうかを判断さ せた。被験者が当てはまる("はいつ と答えた場合に、帰納的推論ができたと判定された。その 結果、下位水準での推論が最もやさしく、カテゴリーの水準が高くなるにつれて推論が困難になっ た。全体として幼児よりも2年生の成績がよく、幼児ではカテゴリー領域による違いがなかった が、 2年生では自然物の方がよかった。 Gelman andO'Reilly (1988)も単一前提文課題で、中 位水準よりも基礎水準で推論がよくできることを兄いだした。しかし、中位水準の結論文に含ま れている典型事例と非典型事例の間には有意差がなかった。

これに対して、 Oshersonら(1990)が考案した複数前提文課題では、 "イヌにはへモグロがあ ります。キクにはアドレナがあります"という2つの前提文を与え、そのあとで"それでは、ネ コにはイヌと同じようにへモグロがありますか、それとも、キクと同じようにアドレナがありま すが'と尋ねるO被験者が"イヌと同じ"と答えた場合に、カテゴリーに基づく帰納的推論がで

きたと判定する。

Lopezら(1992)はこのような複数前提文課題を用いて、 2つの前提文に含まれる事例と結論 文に含まれる事例を操作し、幼児と2年生の帰納的推論について検討した。 6つの要因を操作し

'現在 奈良県高tIH‑e童相談所

163

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164 飯 倉 由美子・杉 村   健

て得られた結果は、カテゴリー類似性、カテゴリー成員性、およびカテゴリー生成によって説明 された。例えば、前提事例がイヌとヘビで結論事例がネコの場合、前提事例がイヌのときにより 推論ができるのは、前提事例(イヌ)と結論事例(ネコ)のカテゴリーの類似性が認識され、そ れに基づいて推論が行なわれるからである。前提事例がライオンとメダカで結論事例が動物の場 合、前提事例がライオンのときにより推論ができるのは、前提事例(ライオン)が結論事例(動 物)に含まれているというカテゴリー成員性が認識され、それによって推論が行なわれるからで ある。また、前提事例がイヌとネコの対とイヌとヘビの対で結論事例が動物の場合、イヌとネコ の対でより推論ができるのは、イヌとヘビよりもイヌとネコから上位カテゴリ一名(動物)が生 成されやすいためである。幼児と小学2年生の実験結果に基づき、複数前提文課題における帰納 的推論の発達的変化について、彼らは次のように結論した。幼児の帰納的推論は主としてカテゴ リー類似性により、 2年生の推論は主としてカテゴリー類似性とカテゴリー成員性によって行な われる。カテゴリー生成による推論は2年生でも困難であり、大人になれば可能である。

本研究で取り上げる前提事例の典型性について、複数前提文課題を用いたLopezら(1992)の 研究では、次のような質問を行なっている。 "イヌ(典型事例)の体の中にはⅩ (新奇特性)が あります。コウモリ(非典型事例)の体の中にはY (別の新奇特性)があります。それでは、

すべての動物の体の中には、イヌと同じようにXがありますか、それとも、コウモリと同じよ うにYがありますか。"この質問に対して、被験者が"イヌと同じものがある"と答えた場合に 典型性の効果があると判定した。その結果、幼児では81%、 2年生では96%の者が"イヌと同じ''

と答え、著しい典型性の効果が兄いだされた。これについて彼らは、結論事例の動物は前提事例 のコウモリよりもイヌに似ているので、カテゴリー類似性によって推論ができると説明した。

本研究の目的は、複数前提文課題の代わりに単一前提文課題を用いて、前提事例の典型性が、

異なる水準の結論文の推論に及ぼす影響について、幼児と2年生で検討することである。

単一前提文課題では、結論文に典型事例と非典型事例を用いたGelman & O'Reilly (1988)の 研究があるが、前提事例の典型性を操作した研究は行なわれていない。そこで、複数前提文課題

と同じように、推論に対して典型性の効果があるかどうかを確かめる必要がある。単一前提文課 題でも典型性効果があるならば、幼児も2年生もともに、非典型事例を含む前提文よりも典型事 例を含む前提文で、推論の成績がよくなるという典型性効果が予想される。

Gelmanら(Gelman, 1988 ; Gelman & 0'Reilly,  の研究で、結論事例が黄色いリンゴ、

バナナというように、前提事例(赤いリンゴ)から離れるにつれて推論の成績が低下したという 結果は、 Lopezら(1992)のいうカテゴリー類似性によって説明できるであろう。本研究では、

帰納的推論がどの水準まで及ぶかを確かめるために、前提文に基礎事例を用い、結論文に果物や 動物といった中位事例と、食べ物や生き物といった上位事例を追加した。 Gelmanらの結果が本 研究にも当てはまるならば、前提文に典型事例を用いた場合は、基礎事例を含む前提文よりも中 位事例や上位事例を含む前提文の場合に、帰納的推論の成績が低下すると予想される。

従来の研究と同じように、本研究でも幼児と2年生を被験者にした。一般的な認知発達の考え によれば、特に概念的階層構造の知識は、幼児よりも2年生の方が豊富であるといわれているの で、 Gelman (1988)の結果と同様に、全体的に2年生の推論の方が幼児よりもすぐれていると 予想される。これに対して、質問法で階層関係の理解を調べた杉村・多喜(1990)の研究では、

幼児と2年生の成績にあまり違いがないことが兄いだされている。もし、その研究で査定したよ うな階層関係の理解が、本研究の帰納的推論に反映されるならば、幼児と2年生の推論の成績に

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はあまり違いがないことが予想される。

先に述べたように、 Gelman (1988)は幼児ではカテゴリー領域による違いがないが、 2年生 では人二̲1二物よりも自然物で推論の成績がよいことを示した。一方、 Sugimura (1993)の研究では、

幼児でも機能情報を与えれば生き物課題で、部分情報を与えれば食べ物課題での推論の成績がよ くなるというように、同じ自然物の領域でも推論の成績が異なることが報告されている。そこで 本研究でも、カテゴリー領域として生き物と食べ物を取り上げることにした。方法のところで述 べるように、本研究の前提文で与える情報はSugimura (1993)の研究の部分情報に相当するも のであるので、動的な動物課題よりも静的な果物課題で推論が促進されるかもしれない。

方   法 実験計画と被験者

2×2×3×2の要因計画が用いられた。第1の要因は被験者の年齢(幼児、小学2年生)、

第2の要因は前提事例の典型性(典型、非典型)、第3の要因は結論事例の水準(基礎、中位、

上位)、第4の要因はカテゴリー領域(生き物、食べ物)であり、第1の要因のみ被験者間要因 であった。被験者は幼稚園年長児48名(男児25名、女児23名)とノj、学2年生62名(男子32名、女 子30名)であった。幼児の平均年齢は  (5 :02‑  01)であった。

推論課題

国立国語研究所(1981)と干・杉村(1993)を参考にして、表1に示す典型事例と非典型事例 を前提事例として選んだO結論事例はすべて典型事例とし、新奇語はいずれも4文字としたO 以 下に示すように、前提文にはそれぞれ2つずつの典型または非典型事例が含まれ、結論文には基 礎、中位、上位水準のいずれか1つの事例が含まれている。

表1前提事例、結論事例および新奇語

カテゴリー      前提事例       結論事例      新奇譜 ゾウ      基礎 ライオン

中位 動物      へモグロ キリン     上位 生き物

動物

果物

非典型

モグラ     基礎 ライオン

中位 動物      アドレナ ビーバー    上位 生き物

リンゴ     基礎 ミカン

中位 果物      ペクチン バナナ     上位 食べ物

イチジク    基礎 ミカン

中位 果物      セルロス ザクロ     上位 食べ物

①動物の典型事例課題

前提文:ゾウとキリンの体の中にはヘモグロがあります。

結論文:ライオンの体の中には、ゾウやキリンと同じようにヘモグロがありますか。

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166 飯 倉 由美子・杉 村   健

動物の体に中には、ゾウやキリンと同じようにヘモグロがありますか。

生き物の体の中には、ゾウやキリンと同じようにへモグロがありますか。

②動物の非典型課題

前提文:モグラとビーバーの体の中にはアドレナがあります。

結論文:ライオンの体の中には、モグラやビーバーと同じようにアドレナがありますか。

動物の体の中には、モグラやビーバーと同じようにアドレナがありますか。

生き物の体の中には、モグラやビーバーと同じようにアドレナがありますか。

③果物の典型事例課題

前提文:リンゴとバナナの中にはペクチンがあります。

結論文:ミカンの中には、リンゴやバナナと同じようにペクチンがありますか0 果物の中には、リンゴやバナナと同じようにペクチンがありますか。

食べ物の中には、リンゴやバナナと同じようにペクチンがありますか。

④果物の非典型課題

前提文:イチジクとザクロの中にはセルロスがあります。

結論文:ミカンの中には、イチジクやザクロと同じようにセルロスがありますか。

果物の中には、イチジクやザクロと同じようにセルロスがありますか。

食べ物の中には、イチジクやザクロと同じようにセルロスがありますか。

手続き

幼児の場合は、幼稚園の一室で個別実験を行なった。実験者は被験者と机を挟んで向かい合っ て座り、名前や年齢を尋ねたあとで、 "これから、お姉さんがいろいろ尋ねるから、よく考えて 答えてね。"と教示してから推論課題を実施した。 4つの課題の提示順序はカウンターバランス

したが、結論文はどの課題でも基礎、中位、上位水準の順に提示した。以下では、動物の典型事 例課題の質問について例示する。

"ゾウとキリンの体の中にはヘモグロがあります。それでは、ライオンの体の中には、ゾウや キリンと同じようにヘモグロがありますか。" ("はい" "いいえ"の回答を記録)

"では次にいきます。ゾウとキリンの体の中にはヘモグロがあります。それでは、動物の体の 中には、ゾウやキリンと同じようにヘモグロがありますか。" (回答を記録)

"よく聞いてね。ゾウとキリンの体の中にはヘモグロがあります。それでは、生き物の体の中 には、ゾウやキリンと同じようにヘモグロがありますか。" (回答を記録)

小学生の場合は、 1から12までの番号を印刷した回答用紙を配布し、 "これから幾つかの質問 をします。成績には関係がないから、よく考えて、思ったとおりに答えてください。"と教示した。

続いて、番号と質問を読み上げ、 "はい"のときには番号を○で囲み、 "いいえ"のときには番号 に×印を付けてもらった。

結   果

それぞれの質問に対して、幼児では"はい''と答えた場合、 2年生では○印を付けた場合に、

推論ができたと判定した。表2は、推論ができた者の割合(%)を示したものである。差の値は 典型事例から非典型事例の割合を引いたものであり、正の値が典型性効果を示す。前提事例の典 型性効果、結論事例の水準の効果および課題の効果について、幼児と2年生別々にMcNemarの

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変化の検定を適用した。幼児と2年生の比較には通常のx2検定を用いた。

表2 推論ができた者の割合(%)

Ti'iiふ・ifii]

カテゴリー  被験者  前提事例

I,Li.淀  I 'K‑:

典型 非典雅

I. .. I.

; l̲ .

I

3 4

3 4

2年生  典型

‑l│ lillW,'l

典型!

一汁l.ltLサ>¥

・V:

5 7

3 3 '/

n r a

7 7

3 3 2 4

4 5

2年牛  典型

Jl iiti *'(

6 0

5 4 7 92 2

差      27  16   ‑2

動物課題

幼児では、前提事例の典型性効果は有意でなかった。典型事例の場合は、中位水準の成績が上 位水準よりもよがったが(pく.05)、非典型事例の場合には水準間に有意差がなかった。 2年生 では、結論事例が基礎水準の場合に典型性効果が有意であった(p <.01)< 典型事例の場合は基 礎水準の成績が最もよかったが(p<‑01)、非典型事例の場合は水準間に有意差がなかった。

幼児と2年生を比べると、典型事例の場合は、基礎水準の成績は2年生の方がよかったが(p

<.Ol上 中位水準の成績は幼児の方がよかった(p<.05)。非典型事例の場合は、基礎水準の成 績は幼児の方がよかった(pく.01)。

ill課田

幼児では、結論事例が基礎水準と中位水準の場合に典型性効果があるが、有意ではなかった。

典型事例の場合は水準間に有意差がなかったが、非典型事例の場合は上位水準の成績が最もよ かった(p<.10)<

2年生では、結論事例が基礎水準(p<.Ol)と中位水準(pく.10)の場合に典型性効果が有 意であった。典型事例の場合は、基礎水準と中位水準の間(pく.10)および中位水準と上位水 準の間(p<.Ol)に有意差があり、基礎水準から上位水準へと成績が低下した。非典型事例の 場合は、基礎水準の成績が上位水準よりもよかった(p<.05)。

幼児と2年生を比べると、典型事例の場合は、基礎水準の成績は2年生の方がよがったが(p

<.05)、非典型事例の場合は、上位水準の成績は幼児の方がよかった(p<.01)。

果物課題と動物課題を比べると、 2年生の典型事例の場合は中位水準で果物課題の成績がよく (p <.05)、非典型事例の場合は基礎水準で果物課題の成績がよかった(p<.01)。幼児ではど の場合も諜顎間に有意差がなかった。

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lliS 鈍if illlhl r‑‑ トJ   鯉

議   論

複数前提文課題を用いたLopezら(1992)の研究では、幼児も2年生も典型件効果があったの で、本研究の単一前提文課題でも、非典型事例を含む前提文よりも典型事例を含む前提文で推論 がよくできるという典型性効果を予想した。結論事例の水準を込みにした平均の割合を算出する と、幼児では、前提文に典型事例を含む場合も非典型事例を含む場合もともに45%であり、典型 性効果は全くなかった。表2からわかるように、典型性効果はいずれも有意ではないが、課題と 結論事例の水準による変動が大きく、不安定である。これに対して2年生では、典型事例を含む 場合は50%、非典型事例を含む場合は37%であり、全体として典型性効果があった。表2からわ

かるように、この効果は結論事例が基礎水準の場合に顕著であり、果物課題では中位水準でも有 意であったが、上位水準では両課題とも典型性効果がなかった。以上のように、 Lopezらの複数 前提文課題では幼児も2年生も典型性効果があったが、本研究の単・ ‑・前提文課題では2年生だけ

で典型性効果があった。

この違いを明確にするためには、同じ事例を用いた実験の中で2つの課題を比較しなくてはな らないが、本研究の結果については次のように考察することができる。典型性効果が生じるため には、被験者が典型事例と非典型事例の相違に気づき、さらに、典型事例と結論事例の関係およ び非典型事例と結論事例の関係の相違を認識しなくてはならない。例えば動物課題では、前提事 例のゾウ・キリンとモグラ・ビーバーが異なることに気づき、さらに、結論事例が基礎水準の場

合は、ゾウ・キリンとライオンの類似性の方がモグラ・ビーバーとライオンの類似性よりも高い ことを認識しなくてはならない。また、結論事例が中位水準の場合には、ゾウ・キリンがともに 動物であるというカテゴリー成員性の方がモグラ・ビーバーのそれよりも強いことを認識しなく

てはならない。

幼児も2年生もともに、典型事例と非典型事例の棚遠に気づくと考えられるので、典型性効果 は、主に上述のカテゴリー類似性とカテゴリー成員性によるものであろう。この観点から結果を みると、 2年生では、結論事例が基礎水準の場合は前提事例と結論事例の類似性の相違が認識で き、中位水準の場合は前提事例と結論事例のカテゴリー成員性の相違が認識できたのであろう。

動物課題の中位水準と上位水準および果物課題の上位水準で典型性効果がなかったのは、典型事 例の場合に、基礎水準から中位水準、上位水準‑と推論できた者の割合が低下したことによるも

のである。この点についてはあとで言及する。これに対して幼児では、果物課題で幾分その傾向 はあるが、全体として典型性効果が顕著でないことから、前提事例と結論事例の類似件およびカ テゴリー成員性の相違が十分に認識されなかったのかもしれない。

幼児の場合には、典型性効果が課題と水準によって変動しており、また、動物の非典型事例で は全体的に2年生よりも高く、果物課題の上位水準でもかなり高い割合を示している。このよう な結果から、結論文の判断を歪めるような要因が作用しているのではないかと考えられる。例え ば、非典型事例を知らなかったのかもしれない。もしそうなら、新奇語とともに未知の言葉を2 つも提示されたので、混乱して適切な判断ができなかったのかもしれない.また、結論文の上位 事例である"生き物''や"食べ物"について、言葉は知っていても外延的知識が乏しいために、

適切な判断ができなかったかもしれない。さらに、質問に対して"はい"と答えやすい傾向があ ることを反映しているのかもしれない。これらの要凶が幼児の結果に複雑に影響していると考え られる。今後の研究では、前提事例と結論事例を幼児が知っているかどうかをチェックすること

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や、種々の概念的知識と推論との関係などの検討が必要である。

次に、 Gelmanら(Gelman, 1988 ; Gelman & O'Reilly, 1988)の結果から、前提文に典型事例 を用いた場合には、結論事例の水準が基礎から中位、中位から上位と高くなるにつれて、推論の 成績が低下すると予想した。幼児では水準間に有意差がなく、推論の成績は結論事例の水準の影 響を受けなかった。 2年生の場合は、動物課題では基礎水準(72%)から中位水準(35%)にか けて、果物課題では基礎水準(74%)から上位水準(27%)にかけて推論できた者が有意に減少

した。これは予想と‑‑・致する結果であった。非典型事例の場合には特に予想をしなかったが、 2 年生の果物課題では基礎水準(47%)から上位水準(29%)にかけて有意に減少した。

先に述べたように、 Gelmanらの研究では前提文に下位事例(例:赤いリンゴ)が、結論文に はil‑位事例(例:黄色いリンゴ)と基礎事例(例:バナナ)が絵で視覚的に提示されたので、そ の結果は、前提事例と結論事例の知覚的類似性で説明することができる。即ち、黄色いリンゴの 方がバナナよりも赤いリンゴと知覚的に類似しているので、黄色いリンゴでの推論の成績がよく なったといえる。しかし本研究では、絵ではなく言葉で事例を提示しており、さらに、結論文に は基礎事例だけでなく、視覚的にイメージしにくい中位事例と上位事例を用いているので、前提 事例と結論事例の知覚的類似性では説明できない。

それでは、基礎事例(ゾウ・キリン)に与えた新奇特性が他の基礎事例(ライオン)にも当て はまると推論する場合と、中位事例(動物)や上位事例(生き物)に当てはまると推論する場合 では、その認知過程にどのような違いがあるだろうか。前提文も結論文もともに典型的な基礎事 例の場合には、前提事例と結論事例のカテゴリー類似性(Lopezら, 1992)の認識だけでなく、

3つの事例がすべて同じ中位カテゴリー(動物)に属しているといったカテゴリー成員性の認識 ができる。そのために、推論ができた者が7割を超えたのであろう。

これに対して、基礎事例から中位事例や上位事例を推論する場合には、前提文が与えられたと きに、 2つの基礎事例から結論文に含まれる中位カテゴリー名や上位カテゴリー名を生成しなく てはならない。前提文で与えられたゾウ・キリンから"動物"や"生き物"が生成でき、それら がゾウ・キリンと同じ新奇特性をもっているという認識ができるならば、動物や生き物が含まれ ている結論文に対して旨定的な判断を下すことができる。従って、結論事例が中位水準と上位水 準の場合に推論の成績が低下したという結果は、 Lopezら(1992)が指摘しているように、カテ

ゴリー名の生成が困難であったことを示唆する。結論文に中位事例が含まれている場合は、動物 (35%)よりも果物(56%)の成績がよかった。これは、果物というカテゴ.)一名の生成の方が 容易であることを示唆するが、この違いについては今後さらに検討する必要がある。

Gelman (1988)の研究から、 2年生の推論の方が幼児よりもすぐれていると予想した。しか し前提事例と結論事例をすべて込みにした割合は、幼児が45%、 2年生が44%で殆ど同じてあり、

予想と一致しなかった。一方、杉村・多喜(1990)の研究からの予想とは一致する。しかし、階 層的理解が幼児と2年生であまり違いがないと考えるよりも、 2年生では前提事例の典型性と結 論事例の水準の効果があったが、幼児ではこれら2つの要因の影響があまりなかったことから、

先に述べたような別の要因が作用したことによると考えた方がよいO年齢差があったGelmanら の研究では結論事例が基礎水準までであったが、本研究では、新たに取り入れた中位水準と上位 水準で幼児が高い割合を示す傾向があった。このことも全体として年齢差が生じなかった原因で あると考えられる。

最後に、 Sugimura (1993)の研究から動物課題よりも果物課題で推論の成績がよくなると予

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170 飯 倉Ifl美子・杉 村   健

想した。全部で12個の比較を行なったうち、 2年生の場合、典型事例の中位水準と非典型事例の 基礎水準で、動物課題よりも果物課題での推論の成績がよかった。このように、あまり強力な証 拠とはいえないが、先の研究とともに、 "00がある"といったような対象の部分にかかわる表 現で特性を与えた場合には、動物のような動的カテゴリーよりも果物のような静的カテゴリーで

の推論が促進されることが示唆される。

^^Hfri

本研究の目的は、幼児と2年生の帰納的推論に及ぼす前提事例の典型性(典型事例、非典型事 例)と結論事例の水準(基礎、中位、上位)の効果を検討することであった。前提文では、 2つ

の基礎事例が共通な新奇特性を持っていることを教えられた。そのあとで、基礎事例を含む結論 文、中位事例を含む結論文、上位事例を含む結論文で、前提文と同じ新奇特性が当てはまるかど

うかを判断させた。当てはまると答えた場合に帰納的推論ができたと判定した(a)非典型事例 を含む前提文よりも典型事例を含む前提文で推論の成績がよくなるという典型性効果は、 2年生 で示され、特に結論事例が基礎水準と中位水準の場合に有意であった。この結果は、前提事例と 結論事例のカテゴリー類似性とカテゴリー成員性によって考察された(b)結論事例の水準が高

くなると、典型事例を含む前提文では2年生の推論の成績が低下した。この結果は、カテゴリー 類似性、カテゴリー成員性および上位カテゴリー名の生成によって考察された。幼児では典型効 果も結論事例の水準の効果も明確ではなかった。この点については、結論文に対する判断を歪め

る要因が作用しているのではないかと考えた。

引用文献

Gelman, S.A. 1988 The development of induction within natural kinds and artifact categories. Cognitil,e Psychology, 20, 65‑95.

Gelman, S.A. & O'Reilly, A.W. 1988 Children's inductive inferences within superordinate categories: The role of language and category structure. Child Development, 59, 876‑887.

国立国語研究所1981幼児・児童の連想語裏表 東京:東京書籍.

Lopez, A., Gelman, S.A.. Gutheil, G., & Smith, E.E. 1992 The development of category‑based induction. Child

Del・elopment, 63, 1070‑1090.

Osherson, D.D., Smith, E.E., Wilkie, 0., Lopez, A., & Shafir. E. 1990 Category‑based induction. Psychological Review, 97, 185‑200.

Sugimura, T, 1993 Effects of category domains and information types on category‑based inferences in child‑

ren and adults. Psvchologia, 36, 225‑234.

杉村 健・多喜裕美1990 概念的階層関係の理解における発達的研究 奈良教育大学紀要, 39(1), 123‑135.

Jニ  斌・杉村 健1993 中国とH本におけるカテゴリ一興卿年の比較 奈良教育大学紀要, 42(1), 133‑

141.

(付記) 本研究を行なうにあたり、大分市立津留幼稚園の先生と園児、香芝市立関屋小学校および人和郡 山市立筒井小学校の先生と児童の協ノ」をえました。記して感謝の意を表します。

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Effects of Typicality of Premise Instances and Level of Conclusion Instances on Children s Category‑based Induction

Yumiko Il ra and Takeshi SLIGIMLTRA

(Depaγtment of Psychology. Nara University of Education, Nara 630, Japan)

(Received April 1, 1994)

Inferences are assumed as processes which one draws some conclusions from the given premises. The inferences which have category terms in the premise and the conclusion state‑

ments are called category‑based inferences. The inferences that the category levels in the conclusion are the same as or higher than those in the premise are called category‑based in‑

auctions. The purpose of this experiment was to examine the effects of typicality of premise instances and level of conclusion instances on kindergartners'and second graders'category‑

based inductions.

For the animal task the subjects were taught the novel information to the typical in‑

stances (an elephant and a giraffe) in the premise statement, "An elehpant and a giraffe have hemoguro inside. Then they were presented three conclusion statements one by one and asked to judge whether the novel information was true for each conclusion statement, "Does a lion (basic instance) have hemoguro inside as an elephant and a giraffe?", "Does an animal (intermediate instance) have hemoguro inside as an elephant and a girafe?", and "Does a liv‑

ing thing (superordinate instance) have hemoguro inside as an elephant and a giraffe?" The atypical instances in the premise statement were a beaver and a mole, and the novel word was adorena. For the fruit task the typical instances were an apple and a banana, and the novel word waspekuchin. The atypical instances were a fig and a pomegranate, and the novel word was se糊γosu. The conclusion sinstances were an orange (basic), fruits (intermediate), and food (superordinate). When the subjects responded with "Yes''to the conclusion state‑

merits. they are assumed to have drew the category‑based induction.

(a) The typicality effect was defined as the case which the subjects drew more indue‑

tion with the typical premise instances than with the atypical ones. This effectwas found only for second graders, especially on the basic conclusion in the two tasks and on the intermedi‑

ate conclusion in the fruit task. The findings were discussed with reference to category simi‑

larity and category membership in the premise and the conclusion instances. The typicality effect was not found for kindergartners.

(b) With ascending category levels in the conclusion instances, second graders'indue‑

tion on the typical premise instances became difficult in the two tasks, which were discussed with reference to category similarity, category membership, and category‑term production.

Such results were not found for kmdergartners.

参照

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