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雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

順向抑制の形成と解除に及ぼす再生手がかりの効果 性と項目の弁別性

著者 藤田 正

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 31

号 1

ページ 189‑200

発行年 1982‑11‑25

その他のタイトル Effectiveness of Category Cues and

Discriminability of Items in Buildup and Release of Proactive Inhibition

URL http://hdl.handle.net/10105/2343

(2)

監昆驚冨aUniv.Edu due,V。l.31温(AX‑

1(cult誉)ran s。c).慧

順向抑制の形成と解除に及ぼす

再生手がかりの効果性と項目の弁別性

藤  田     正 (奈良教育大学心理学教室)

(昭和57年4月30日受理)

短期記憶における忘却については、 Brown‑Petersonパラダイム(Brown, 1958 ; Peterson &

Peterson, 1959)を用いた研究が数多く行われている。このパラダイムでは、被験者はまず、 3 項目の単語や子音トリグラムを同時に数秒間呈示され、それを記銘する。その後、 15‑18秒程度 の把持期間が設けられ、その間、リ‑‑サルを妨ぐための作業(例えば、数字の逆算課題など) が課せられ、続いて再生テストが行われる。これを1試行として同種のリストを次々に記銘し、

再生することが繰り返される。一般に、試行を重ねるにつれて次第に再生率が悪くなる。これが 短期記憶における傾向抑制(Proactive Inhibition : PI)と呼ばれる寛象である(Keppel & Un‑

derwood, 1962)c

ところで、 Wickens, Born,andAllen (1963)は、子音トリグラムから成るリストを3試行記 銘させたあとで、 3ケタの数字から成るリストを記銘させたところ、再生率が上昇することを兄 い出したO この寛象をJTB向抑制からの解除(release from PI)と呼んだ。彼らはその後、順向 抑制解除パラダイムを用いて、何らかの属性次元やカテゴリーを利用した符号化がなされていれ ば、傾向抑制の形成と解除が生じるという前提のもとに、言語材料における符号化についての組 織的な研究を行っている(Wickens, 1970, 1972, 1973)。その結果、材料の属性次元のうち意味 的な(semantic)内容(例えば、概念カテゴリー)は、物理的な(physical)内容(例えば、シ ラブル数)よりも傾向抑制からの解除が大きいこと、および変化させるリスト問の意味的な類似 性が小さい程、傾向抑制からの解除の量が大きいことを見出している0

順向抑制解除パラダイムを用いた研究には、次のような意義がある。その1つは、言語材料の 符号化次元に関する情報を提供するので、符号化次元を測定する道具として利用される。したが って、この種の研究では、どのような次元の符号化がなされやすいのか、また、どの次元は何才 ぐらいの年令になれば符号化されるようになるのかといったことが問題にされる(Wickens, 1970, 1972, 1973)c もう1つば、順向抑制の形成や解除の現象の解明であり、記憶のメカニズム に田する情報を提供する。 m向抑制の形成や解除には、どのようなメカニズムや要因が働いてい るか、それは主として記銘、貯蔵、再生のどの段階で生じるのかといった問題の検討がなされて いる(Bennett & Bennett, 1974 ; Conrad, 1967 ; Dillon, 1973 ; Dillon & Bittner, 1975 ;Dillon

& Thomas, 1975 ; Gardiner, Craik & Birtwistle, 1972 ; Mori, 1979 ; Russ‑Eft, 1979)c 本研究での関心は、 )lB向抑制の形成や解除を規定している要因のうちで、再生手がかりの効果 性と項目の弁別可能性を検討することにある Wikens (1970)は、傾向抑制の形成は同種のリ スト項目の記銘が繰り返されることによる項目間の弁別の田難さにより生じ、傾向抑制からの解 除はカテゴリーが変化することによる弁別性の回復によって生じると説明している。一方、Wat‑

kins and Watkins (1975)は、 Cue‑overload仮説でもって傾向抑制の形成と解除を説明してい

189

(3)

190 藤 田   正

る。この仮説の骨子は、項目が再生される確率は、再生手がかりによって包摂される項目数が増 加するにつれ減少するというものである。 1つのカテゴリーのリストが連続して呈示されるとそ のカテゴリーに含まれる項目数が増加するので、そのカテゴリー名の再生手がかりとしての機能 が低下し、項目の再生が減少する。このようにして傾向抑制は形成される。ところが、カテゴリ ーが変化した時には、新しいカテゴリー名には少数の項目しか含まれず、カテゴリ‑名は再生手 がかりとして効果的に機能するので再生は増加し、傾向抑制からの解除が生じる。以上2つの説 明は、それぞれ項目の弁別性か、再生手がかりの効果性という要因によって傾向抑制の形成や解 除を説明したものであるが、 Craik and Birtwistle (1971)は、順向抑制の形成については、同 じカテゴリーから成る項目リストを記銘する場合、試行が進むにつれて貯蔵された項目の弁別性、

および再生手がかりの効果性が減少すると考え、傾向抑制からの解除については、カテゴリーが 変化することにより、項目の弁別性と再生手がかりの効果性が回復すると説明している。

以上のように、傾向抑制の形成と解除は、再生手がかりの効果性とリスト項目間の弁別性とい う、少なくとも2つの要因が効果的に働くか否かによって生じると考えられる。そこで本研究で は、以下に述べるような4つのリスト条件(Table l参照)を設け、これらの要因の働きについ て検討することを目的とした。

リスト条件の内容と再生成績の予想は、次のとおりである。 PI条件では、試行ごとにリスト の項目は変わるが、第1試行から第5試行にかけて、すべて動物(または野菜)のカテゴリ‑の 項目から成るリストであった Release条件では、第1試行から第4試行まではPI条件と同じ であるが、第5試行では動物から野菜(または野菜から動物)という異なるカテゴリーの項目か

ら成るリストに変えられた。これら2つの条件では、同じカテゴリーの項目リストが繰り返され るので、試行が進むについて再生力テゴーの効果性と項目の弁別性が低下するので、再生は困難 になり順向抑制が形成される.しかし、 Release条件の第5試行では新しいカテゴリーに変化す

るので、再生手がかりの効果性と項目の弁別性が回復し、再生は容易になり傾向抑制からの解除 がみられるだろう。カテゴリー変化条件では、第1試行から順に、動物、楽器、花、鳥、果物の ように毎試行リストを構成するカテゴリーは変化した。この条件では、再生手がかりの効果性と 項目の弁別性は、再生に有効に作用するので順向抑性は生じないだろう。無関連語条件では、リ ストはすべて同一のカテゴリーに属さない項目から成っており、第1試行から第5試行まで試行 ごとに変えられた。この条件は、リストにカテゴリーが含まれていないので、再生手がかりの効 果性は関係しないが、試行が進むにつれて項目の弁別性は低下するので再生は減少し、順向抑制 が形成されるだろう。なお、 PI条件やRelease条件は、カテゴリー化されたリストが用いられ ているので、再生手がかりの効果性と項目の弁別性の低下という二重の妨害を受けるので、無関 連語条件の場合よりも大きな傾向抑制を受けるだろう。

なお、本研究では典型的なBrown‑Petersonパラダイムで使用されていた1試行あたり3項目

という短いリストではなく、 1リストあたり15項目を用いた Craik and Birtwistle (1971)や

Brownand Atkinson (1974)に近い条件の比較的項目数の多いリストを用いることにした。その

理由は、 ① Craik and Birtwistle (1971)やBrown and Atkinson (1974)が行ったように1次記

憶(Primary Memory : PM)の成分と2次記憶(Secondary Memory : SM)の成分のいずれが順

向抑制の形成や解除に関係しているかの分析が可能であること、 ②再生率についての系列位置曲

線を分析することにより、リストのどの部位が傾向抑制の形成や解除の影響を受けやすいかを検

討できること、 ③項目数をふやすことにより生起するエラー数の増加が見込まれ、それにより順

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傾向抑制の形成と解除に及ぼす再生手がかりの効果性と項目の弁別性 191

向抑制の形成や解除に関連すると思われるエラー内容の質的な分析が可能になることなどである。

方     法

実験計画  実験計画は4×5の要因計画であった。第1の要因はリスト条件で、 PI条件、

Release条件、カテゴリー変化条件、および無関連語条件であった。第2の要因は試行数で、 1 試行から5試行までであった。

被験者  被験者はこの種の実験に未経験な大学生72名(平均年令19才10か月:範囲18才3か 月〜23才5か月)であった。これらの被験者は、各リスト条件ごとに18名ずつ割りあてられた。

記銘リストおよび装置  記銘リストには小川(1972)のカテゴリー出現頻度表を参考にして 選択された2‑5音節の名詞283語が用いられた。 1リストは10項目から成り、リスト問の平均 出寛頻度はできるだけ等しくなるようにしたO項目はタイプでカタカナ文字に打ったものをスラ イドにした。なお、リストの呈示順序はTablelに示すように、各条件で次のように異なっていた。

PI条件では、リストは第1試行から第5試行にかけて、試行ごとにリストは異なるが、すべ て動物(または野菜)のカテゴリ‑項目から成っていた Release条件では、第1試行から第4 試行まではPI条件と同様、試行ごとにリストは異なるが、すべて動物(または野菜)のカテゴ リーから成っていたが、第5試行では野菜(または動物)のカテゴリーリストの項目に変えられ た。カテゴリー変化条件では、リストは試行ごとに異なり、動物、楽器、花、烏、果物のカテゴ リーから成るリストが用いられた。無関連語条件では、リストはすべて同一のカテゴリーに属さ ない項目から成っており、第1試行から第5試行まで試行ごとに変えられた。なお、それぞれの リスト内の項目の呈示順序は、同じ韻が続かないように考慮され、予めランダムに配列されてい た。また、リストの呈示順序は、各条件とも3種類用意された。

Table 1 An example of presentation order of lists in each list condition

1        2        3        4        5

PI Animals Animals Animals Animals Animals Release Animals Animals Animals Animals Vegeta ble s

c^nge Animals ^usxc^ Flo‑ers Bifds  ‑

Unrelated A B C D

スライドの呈示には、 Kodak Ektagraphic Slide Projectorを用い、項目呈示時間、項目間間 隔などの時間の制細には、三和工業製Digital Time Regulatorを用いた。その他、把持時間、

再生時間、および試行間間隔の測定にはストップウォッチを使用した0

手続き  実験は静かな実験室にて個別に行われた。被験者が所定の位置につくと、氏名、生 年月日などを記入させたあと、次のような教示を与え実験を開始した0

今から、幾つかの言葉をスライドで見せますので、よく覚えていて下さい。次に、数字が出 てきた時には声に出して、その数字から3ずつ小さい方へ引いていって下さい。私が『はい』

といったら、今見たことばをどんな順序でもいいですから、できるだけたくさん想い出して書

(5)

192 藤 田   正

き出して下さい。 『やめ』の合図で書くのをやめて、次のページを開いて待っていて下さい。

教示が終わると、タイムレギュレーターのスイッチを入れ、プロジェクターを作動させたO項目 の呈示時間は1項目1.0秒、項目間隔はコマ送りの装置の最大作動時間の0.5秒であった。

『米では、始めます。』の教示スライドのあと、リスト項目が1枚ずつ呈示された。 1リスト10 項目の呈示直後、 3ケタの数字が30秒間呈示され、その間、被験者には逆算課題を声に出して行 わせた。 『はい』の合図で、 『※どんな順序でもよろしいから、想い出して書いて下さい。』とい う再生用の教示スライドが呈示され、筆答で30秒間の自由再生を行わせた。

算1試行が終わると、 『同じようなやり方で繰り返してもらいます。では、始めます。』という 教示を与え、 10秒間の試行間間隔をとり、第2試行を行った。以下、同様な手続きで第5試行ま で繰り返された。なお、再生用記入用紙は試行ごとに取り替えられた。

結     果

正再生数  呈示順序に関係なく正しく再生された項目の総数を求め、各条件別に平均値を図 示したのがFig. 1である。平均値について4 (リスト条件) ×5 (試行)の分散分析を行った結 果、リスト条件(T‑39.05, df‑3と68, P<.01)と試行(F‑32.86, df‑4と272, P<.01)の 主効果、およびT)スト条件×試行の交互作用(F‑8.12, df‑12と272, P<.01)がそれぞれ有意 であった。交互作用が有意になったので、単純効果の検定を行った。まず、試行にともなう再生 数の変化を条件別にみるために、 DancanのNew Multiple range test (瀧野, 1968)により検 定を行った。その結果、 PI条件では、第2試行と第3試行、第4試行と第5試行の問を除いた すべての試行問において有意差がみられた。これは、第1試行から第5試行にかけて再生数が減 少していることを示している Release条件では、第3試行と第4試行、第5試行と第1試行、

および第5試行と第2試行の問を除いたすべてにおいて有意差がみられた。これは、第1試行か ら第4試行までは再生数が減少し、第5試行において再生数が第1試行や第2試行の水準まで上 昇したことを示している.カテゴ1)‑変化条件では、どの試行間においても有意差はみられなか った。これは、第1試行から第5試行までの再生数は一定であることを示している。無関連語条 件では、第2試行と第3試行、第2試行と第4試行、第3試行と第4試行、第4試行と第5試行 の問を除いたすべてにおいて有意であった。これは、第1試行から第5試行にかけて再生数が減 少していることを示している。

次に、試行ごとにリスト条件間の差について£検定を行った。その結果、第1試行では、PI条 件、 Release条件,カテゴリー変化条件の3条件問に有意な差はみられなかった。しかし、無関 連語条件は、 PI条件とRelease条件よりもそれぞれ有意に再生数が少なかった(∫(340)‑2.00,

<.05; t (340)‑2.13,/><.05)c 第2試行では、カテゴl)‑変化条件が、 PI条件と無閑述語条 件よりも有意に再生数が多かった(∫ (340)‑3.41, ♪<.OOl ; ∫ (340)‑4.56, ♪<.001)e また、

PI条件とRelease条件の間には有意差はみられなかったが、 Release条件は無関連語条件より も有意に再生数が多かった0 (340)‑2.72, /<.01)e 第3試行では、カテゴl)一変化条件は、

PI条件、 Release 条件および無関連語条件よりも有意に再生数が多かった(t (340)‑4.97; t

(340)‑5.56; t (340)‑6.26,いずれも0.1%水準で有意)。しかし,あとの3条件間にはいずれ

も有意差がみられなかった.第4試行でも、欝3試行と同様に、カテゴリー変化条件は、 PI条

件、 Release条件、および無関連語条件よりも有意に再生数が多かった0 (340)‑6.85 ; *(340)

(6)

順向抑制の形成と解除に及ぼす再生手がかりの効果性と項目の弁別性 riw

‑6.85;t (340)‑6.25,いずれも0.1%水準で有意)。第5試行では、 Rease条件はPI条件と無 関連語条件よりも(∫ (340)‑6.72 ; 〜 (340)‑8.13,いずれも0.1%水準で有意)。しかし、 Release 条件とカテゴリー変化条件、およびPI条件と無関連語条件の間には、有意な差はみられなかっ

た。

5

p a i i e o a j   s

∈ 3 ) !   U B 8

│ /

¥ │

1    2    3    4    5

Tria】s

Fig. 1 Mean of items recalled for each condition as a function of trials

PM成分とSM成分の分析 Tulving and Colotla (1970)の技法を用いて、正しく再生 された語を試行内把持インターバルに基づき、 PMから再生された語とSMから再生された語 に分離した。例えば、項目がA、 B、 C、 D、 Eの順序で呈示され、 E、 C、 Aの順序で再生さ れたとし、ある項目の呈示と再生の間で生起している他の項目の呈示と再生の数を数えることで 得点化する。例の場合、 E項目の得点は0点, C項目は3点、 A項目は7点となる。このように して算出された得点が、 7点以下の場合をPM成分に、 8点以上の場合をSM成分として分類 した Fig. 2は、 PM成分とSM成分のそれぞれについてPI条件とRelease条件を比較した ものである。それぞれの成分について2(リスト条件) ×5(試行)の分散分析を行った。その結果、

PM成分では試行(F‑7.87, df‑4と136, P<.01)のみが有意であった。 SM成分では、リ スト条件(F‑19.28, df‑¥ と34, P<.01)と試行(F‑15.52, df‑Aと136, P<.01)の主効 果、およびリスト条件×試行の交互作用CF‑6.43, df‑4と136, P<.01)がそれぞれ有意であ った。これは図から明らかなように、第1試行から第4試行にかけて両条件の差はなく、同じよ うに傾向抑制がみられ、第5試行でRelease条件の得点が高いということを示している。

Fig. 3は、 PM成分とSM成分についてPI条件と無関連語条件を比較したものである。そ

れぞれの成分について分散分析を行ったOその結果、 PM成分では試行(F‑10.81,df‑Aと136,

P<.01)の主効果のみが有意であった。 SM成分では、・試行(F‑10.14, df‑4と136, P<.01)

(7)

194

1  2  3  4  5 1  2  3  4  5 Trials Trials

Fig. 2 The number of items recalled from PM and SM for PI and Release

condition as a function of trials

5 1

Trial Tria一s

Fig. 3 The number of items recalled from PM and SM for PI and Unrelated

condition as a function of trials

の主効果、およびリスト条件×試行の交互作用(F‑ 2.41, df‑Aと136,.05<P<.10)が有意 であった。交互作用については、第1試行での両条件の成績のちがいのみによるものであろう。

Fig. 4は、第5試行におけるPI条件とRelease条件の再生成績について、系列位置曲線を 描いたものである。全体的にRelease条件の成績がPI条件の成績よりもよくなっているが、そ の差はPM成分を反映していると仮定されるリストの終末部よりも、 SM成分を反映している と仮定されるリストの初頭部の方が大きいことがわかる。

散反応  誤反応は、リスト外侵入エラー(先行するリストに含まれていない項目の誤再生) とリスト内侵入エラー(先行するリストに含まれた項目の誤再生)について算出した Table 2 は、各々のエラーの総数を示したものである.なお、リスト内侵入エラーについては、直前の試 行からのエラー数の割合を( )内に%で表わしている。

誤反応数は、正再生数に比べると相対的に頻度は小さかった。したがって、これらに関しては 特に統計的な処理は行わなかったが、次のような傾向がみられた。リスト外侵入エラーでは, 4 条件間に明確な差はみられなかった。一方、リスト内侵入エラーでは、 PI条件とRelease条件、

無関連語条件は、試行とともにエラー数が増加している傾向がみられる。ところが、 Release灸

件の第5試行とカテゴリー変化条件では、リスト内侵入エラーは全くみられなかった。次に、PI

(8)

順向抑制の形成と解除に及ぼす再生手がかりの効果性と項目の弁別性 195

条件と無関連語条件を比較すると、エラー数はPI条件の方が多かったが、直前の試行からのエ ラーの割合は、逆に無関連語条件の方が多かった。

Z j

^ ^

^ ^

^ E j l O 8 J L o o   u o i i j o d o j d

1      5 Serial positions

Fig. 4 Serial position curves for PI and Release condition on Trial 5

次に、各条件ごとに両方のエラーを比較してみた。 PI条件とRelease条件においては、リス ト外侵エラーよりも7)スト内侵入エラーの方が多かった。試行に伴なう変化をみると、両条件 とも3試行目から4試行目にかけてリスト内侵入エラーが著しく増加しているが、 5試行目では Release条件でリスト内侵入エラーはゼロになっている。なお、両条件ともエラーの内のほぼ半 分は直前の試行からのエラーであった。カテゴリ‑変化条件では、リスト内侵入エラーはなく、

すべてがリスト外侵入エラーであった.また、無関連語条件の場合は、両方のエラ‑がほぼ同じ ぐらい生じていた。

Table 2 Total number of intrusion errors

Intra‑list intrusion

1   2    3    4    5 List

condition

PI Release Category

c hange Unrelated

11(64) 21(67) 14(57) 7(57) 17(7) 0 0   0    0    0

Extra‑list intrusion

2    3

5 4  7 7 5  4

5(80) 6(83) 8(63)

1 3  00  4 2 0  2

im in t*  o

(Numbers in parentheses denote the proportions of

the intrusions from the just before trial)

(9)

Mt 藤 田   正

m m

本研究の目的は、傾向抑制の形成と解除の現象が、再生手かかりの効果性とリスト項目間の弁 別性の2つの要因の働きに関係しているという仮説を検討することであった。

主な結果は、次のとおりである(D PI条件は、第1試行から第5試行にかけて再生数が減少 し、順向抑制の形成がみられた(2) Release条件は、第1試行から第4試行にかけてPI条件 と同程度に再生数が減少し、傾向抑制の形成がみられたが、第5試行では再生数の上昇、すなわ ち傾向抑制からの解除がみられた(3)カテゴリー変化条件は、第1試行から第5試行まで再生数 が一定であり、順向抑制は形成されなかった。 (4)無関連語条件は、試行とともに再生数が減少し、

順向抑制の形成がみられた。

PI条件とRelease条件の結果は、 Brown‑Petersonパラダイムを用いた多くの結果(Wickens, 1970, 1972, 1973)と一致するものであった。また、自由再生パラダイムで1リスト15項目を用 いたCraik and Birtwistle (1971)やBrown and Atkinson (1974)らの結果とも一致してい た。また、カテゴリー変化条件の結果は、仝試行にわたって上位カテゴリーは同じであるが、試 行ごとに下位カテゴリーの異なるリストを用いた場合、順向抑制が生じなかった Brown and

Atkinson (1974)の結果と一致するものであった。

カテゴリー変化条件の結果を考慮した場合、 PI条件やRelease条件で順向抑制が形成された り、その解除が生じたことは、次のように考えられる。通常、カテゴリー化されたリストでは、

そのカテゴリー名が記銘や再生の際の手がかりとなる。しかし、次々に同じカテゴリーから成る リストを記銘していくと、カテゴリー名が再生手がかりとして促進的に機能する効果は減少する。

さらには、いま再生すべき項目と以前の試行の項目とを弁別することの困難さも増大してくるの で、順向抑制が生じ項目の再生数は減少してくる。ところが、別のカテゴリーのリストに変えら れると、新しいカテゴリー名は有効な手がかりとして促進的に機能し、またリスト項目間の弁別 の困難さも減るので、傾向抑制が解除され再生数は上昇する。以上のように、カテゴリ‑化され たリストで傾向抑制の形成と解除が生じるには、少なくとも再生時のカテゴリー名手がかりの効 果性とリスト項目間の弁別性が重要な要因であると結論できる。

次に、カテゴリー化されたリスト条件と無関連語リスト条件での順向抑制の形成について比較 した。カテゴリーリストでは、再生手がかりの効果性と項目の弁別性の両方の低下があるので、

項目の弁別性の低下しか関係しない無関連語リストの方が、順向抑制を受けにくいと予想したが、

結果は両条件とも、ほぼ同じように順向抑制を受けていた。この結果から、傾向抑制の形成に関 しては、再生手がかりの効果性よりも、項目の弁別性の要因の方がより強く影響することが示唆 された。

最後に、 PM成分の分析結果についてCraik and Birtwistle (1971)とBrown and Atkinson (1974)らの結果と比較してみた。 PM成分については、 PI条件、 Release条件、無開運語条件 のいずれにおいても、試行に伴って再生の低下がみられ、傾向抑制が生じていた。他方、SM成分 については、 PI条件とRelease条件のいずれにおいても試行に伴う再生の低下、つまり傾向抑 制がみられた。さらに、第5試行ではRelease条件においてのみ再生の上昇つまり傾向抑制か らの解除がみられた。 SM成分が傾向抑制の形成や解除に関係する成分であるという結果は、

Craik and Birtwistle (1971)やBrown and Atkinson (1974)の結果と一致した。しかしなが

(10)

傾向抑制の形成と解除に及ぼす再生手がかりの効果性と項目の弁別性 197

ら、 PM成分についても順向抑制の形成がみられたという結果は、彼らのいずれの結果とも一致 しなかった。この点については、本研究との手続きの違いが関係していると思われる。彼らの研 究では、直後自由再生であったのに対し、本研究では30秒の把持期間にリハーサル妨害作業を課 せられていた。そのため、むしろ本来のPM成分は少なくなっており,順向抑制が生じたと考 えることができる。

ところで、 PI条件とRelease条件の第5試行における再生率の系列位置曲線をみてみると、

PM成分を含むと考えられるリストの終末部では、両条件の差は小さい。それに対し、 SM成分 を含むと考えられるリストの初頭部では、 Release条件の再生率がPI条件のそれを大きく上ま わっていた。この結果は、 PI条件とRelease条件について先に行ったPM、 SM成分の分析結 果の5試行目の成績と対応している。以上の結果を総合して考えると、 Craik and Birtwistle (1971)やBrown and Atkinson (1974)が実証したように、順向抑制の形成や解除の現象はSM 成分に大きく関連していると結論できる。なお、 Wickens, Moody, and Dow (1981)が、最近 Sternberg (1966)流のパラダイムを用いて、順向抑制の形成にはSM成分のみが関係するとい

う結果を兄い出している点にも興味がもたれる。

要     約

本研究では、順向抑制の形成と解除が、再生手がかりの効果性とリスト項目間の弁別性の2つ の要因の働きに関係しているという仮説を、全試行において同一のカテゴリーから成るリストを 用いるPI条件、最後の試行だけ異なるカテゴリーから成るリスト‑と変化するRelease条件, 試行ごとに異なるカテゴリーから成るリストを用いるカテゴリ一変イヒ条件、および全試行に無 関連語リストを用いる無関連語条件を設けることにより検討することを目的とした。

大学生72名が、 PI条件、 Release条件、カテゴリー変化条件、および無関連語条件のいずれ かに割りあてられた.実験は個別に行われた。 1項目1秒の速さで10項目が触時的に呈示され、

30秒のリノ、‑サル妨害課題(逆算課題)を行った後に、 30秒間の再生が行われた。このような手 続きが5試行繰り返された。

主な結果は、次のとおりである(1) PI条件では、試行とともに再生数が減少し、順向抑制の 形成がみられた(2) Release条件では、第1試行から第4試行にかけては、 PI条件と同様に傾 向抑制の形成がみられ、第5試行では再生数の上昇、すなわち順向抑制からの解除がみられた。

(3)カテゴリー変化条件では、再生数の変化はなく、順向抑制はみられなかった(4)無関連語条件 では、 PI条件と同程度の傾向抑制の形成がみられた。

結果(1), (2), (3)より、傾向抑制の形成と解除は、再生手がかりの効果性とリスト項目の弁別性 の2つの要因の働きに関係していると結論することができる。さらに、結果(1), (2), (4)からは、

カテゴリー手がかりの効果性よりも、項目の弁別性の方が順向抑制の形成により強く影響するこ とが示唆された。また、順向抑制の形成と解除は、PM成分よりもSM成分の方で大きく生じ ることも明らかにされた。

引 用 文 献

Bennett, R.W., & Bennett, I.F. 1974 PI release as a function of the number ofprerelease trials. Journal of

(11)

IE? 藤 田   正

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〔付記〕データの収集と分析に際して浅越英子さんの協力を得た。記して厚く御礼申しあげま

す。

(12)

¥S&

Effectiveness of Category Cues and Discriminability of Items in Buildup and Release of Proactive Inhibition

Tadashi Fujita

Department of Psychologyy Nara Univer∫ity of Education, Nara, Japan (Received April 30, 1982)

The purpose of this experiment was to examine effects of effectiveness of category

cues and discriminabi王ity of items upon buildup and release of Proactive Inhibition by the

use of categorized and non‑categorized lists.

A 4×5 factorial design was used, which incorporated list conditions (PI, Release, Category‑change, and Unrelated word conditions) and number of trials (from 1 to 5). The subjects were 72 students at Nara University of Education with a mean age of 19 years and 10 months, who were assigned to one of the four list conditions (see Table 1). Each list was consisted of ten words. Under the PI condition, all lists in five trials were con‑

sisted of words from the same taxonomic category (e.g. animals). Under the Release condition, lists from Trial 1 to 4 were consisted of words from the same category (e.g.

animals) alnd the list category was changed on Trial 5 (e.g. vegetables). Under the Category‑change condition, two lists in adjacent trials were consisted of words from different categories (e.g. animals, music instruments, flowers, etc.). Under the Unrelated word condition, each consisted of words from 10 unrelated categories throughout the trials.

The experiment was conducted individually by Brown‑Peterson paradigm. Each item was presented by the slide projector at a Lsec rate. After 10 items were presented all over, the distractor task (counting backwards by‑three from a three‑digit number) was given during retention interval (30 sec) and then recall test was given for 30 sec. Following the recall test, next trial was introduced untill five trials were completed.

The main results were as follows (see Fig. 1).

(l) Under the PI condition, PI was built up as a function of trials.

(2) Under the Release condition, PI was built up as a function of trials from Trial 1 to 4 and it was released on Trial 5.

(3) Under the Category‑change condition, PI was not built up as a function of trials, and the performances of recall were at a high level and kept constant.

(4) Under the Unrelated word condition, PI was built up as a function of trials, and the performances of recall were about the same as those of PI condition except Trial 1.

(5) Intra‑list intrusions were more related to the sources of buildup of PI than extralist intrusions. Most of the intra‑list intrusions were those from the previous trials (Table 2).

(6) The buildup and the release of PI were mainly attributed to secondary‑memory compo‑

nents rather than to primary memory components (Fig. 2 and 3).

(13)

200

The results of (l), (2) and (3) led us to conclude that the buildup and the release of PI were due to both the effectiveness of retrieval cues and the discriminability of list items.

And the results of (l), (2) and (4) suggested that the discriminability of list items affected

stronger on the buildup of PI than the effectiveness of category cues.

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