発達カウンセリング・療法理論における認知発達的 視点の拡大に関する実験的研究
著者 玉瀬 耕治, 福田 依知子
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 47
号 1
ページ 197‑207
発行年 1998‑11‑10
その他のタイトル An Experimental Study on Expanding Participant Cognitive Developmental Perspectives on the Basis of Developmental Counseling and Therapy Assumptions
URL http://hdl.handle.net/10105/1496
Bull. Nara Univ. Educ, Vol.47, No. 1 (Cult. & Soc), 1998
発達カウンセリング・療法理論における 認知発達的視点の拡大に関する実験的研究
玉 瀬 耕 治・福 田 依知子*
(奈良教育大学心理学教室) (平成10年4月20日受理) キーワード:発達カウンセリング・療法、認知発達的定位、三世代同居
カウンセリング実践と発達理論とを統合する試みとし て、 Iveyとその共同研究者は発達カウンセリング・療 法の考え方を提唱し、発展させてきた(Ivey, 1986,1991 ; Ivey & Gongalves, 1987 ; Tamase & Rigazio‑DiGilio,
1997)。その基本となる考え方は、クライエントの認知 発達の状態を理解し、クライエントの認知的枠組みに 沿ってカウンセリングや心理療法を行うべきであるとい
う考え方である(玉瀬, 1998,第5章)0
我々は視覚、聴覚、皮膚感覚などの感覚受容器を通し て外界のできごとを知覚し、その経験に基づいて物事を 認知し、自己および外界についての認識の基礎を築いて いく。その人が実際に何を経験し、どのような生活体験 をしてきたかによって、その人の人生観や世界観はでき ていくものといえる。しかし、人間は直接経験のみなら ず、書物や映像、あるいは周囲の人から聞いた話など、
多くの情報を通しても認識を深めていくことができる。
現在では、我々は直接経験に基づくよりもはるかに多く のことを情報のみに依存して認識を形成しているといえ
よう。本稿では、認識とは個々の情報や経験に基づく認 知の集合または統合体であるとみなしているが、そのよ
うな認識の変容に関わる問題に焦点を当てている。
上述したように、発達カウンセリング・療法ではクラ イエントの認知的枠組みに沿ってカウンセリングや心理 療法を行うことが憩調される。理論的にはPiagetの認 知発達理論が援用されている。認知発達に関わる査定や 介入については、すでにある程度実証的な資料が蓄積さ れてきているが(Rigazio‑DiGilio & Ivey, 1990, Ivey
& Ivey, 1990; Tamase & Rigazio‑DiGilio, 1997)、い まだ充分なものとはいえない。
発達カウンセリング・療法では、まず初めにクライエ ントの認知発達の状態を理解することから面接が始めら
* 現在 奈良教育大学大学院教育学研究科
れることになる。しかし、比職的とはいえ、ピアジェの 認知発達理論の考え方を成人に適用することが果たして 可能なのかという疑問が生じるかもしれない。この点に 関して、大学生を用いて認知発達的査定を行ってきた 我々の先行研究から、成人に関する認知発達的査定につ いては、査定は可能であり、成人といえども日常的には その認知様式は必ずしも形式操作的水準にあるとはいえ ないことを示唆している(光武・玉瀬, 1995;玉瀬・
光武, 1993;玉瀬・島本, 1995)c
本稿では、認知発達の状態を表すのにRigazio‑
DiGilio, Gongalves, & Ivey (1994)に従って"定位"
(Orientation)という用語を用いる。 "定位"とは、人 の多様な認識の枠組みを表現するために用いられるもの である。 "認知発達的定位".として、基本的には4つの 定位が仮定されている。それらは、感覚運動的定位、貝 体操作的定位、形式操作的定位、および弁証・組織的定 位である。認知発達は抽象の水準において感覚運動的、
貝体操作的、形式操作的、弁証・組織的定位の順に高次 なものになる。この点に着目すると、発達は階層として 捉えられる。我々の先行研究(たとえば,光武・玉瀬, 1995;玉瀬・光武, 1993)でも、認知発達は"水準"と
して扱われた。しかしその一方で、いずれの認知の仕方 も、その個人にとっては付加的価値をもつものであり、
機能的側面においてはどの水準も対等であるとみなされ
る(Ivey, 1991 ; Tamase & Rigazio‑DiGilio, 1997)。こ れらのことから、本研究ではこのような機能的側面を強 調するために、あえて"定位"という用語を用いている。
Iveyらは、人はある状況に対処する際に1つの定位 を優先させており、その優位な定位を査定することは可 能であると仮定している(Ivey & Ivey, 1990; Rigazio‑
DiGilio & Ivey, 1990)。この仮定に関わる実証的研究は、
抑うつ患者や虐待を受けた子ども、あるいは家族などの いくつかの標本集団について行われている(Rigazio‑
DiGilio & Ivey, 1990; Ivey & Ivey, 1990)c
また、 Iveyらは、治療的介入の中で1つの定位を充 実させる水平的発達と劣位の定位を活性化する垂直的発 達を促進することによって全人的な発達を促すことの重 要性を指摘している(Ivey, 1986; Ivey & Ivey, 1990;
Rigazio‑DiGilio, Gongalves, & Ivey, 1994, Tamase &
Rigazio‑DiGilio, 1997)。これに関連して、いくつかの 実証的研究が行われている。
例えば、玉瀬・加藤(1990)は実験的介入によって参 加者の"認知発達的水準が変化した"ことから、限られ た数の質問であっても垂直的発達を促すことは可能であ ると報告している。しかし、この研究における"水準"
の変化は必ずしも垂直的発達を意味しているとはみなさ れない。なぜなら、ほとんどの人は複数の定位を利用で きるからである(Ivey, 1991)。もし複数の定位を容易 に利用できる参加者が、状況的な必要から複数の質問に 対していくつかの異なる定位で応答したのであれば、こ の研究における複数の定位の利用は垂直的発達とはいえ ない。しかし、このように考えた場合、先の結果は、介 入によって複数の定位を利用することが可能になったと いう点でただ1つの定位に依存してしまう場合に比べて 発達的には好ましく、介入の効果があったとみなすこと はできる。多様な定位を利用することによって、人はよ り柔軟に環境に適応しうると考えられるからである。
個人が環境によりよく適応するために、多様な定位を 利用するのにどのような要因を考えればよいであろうか。
その要因の1つとして、経験や経験について行われてい る認知の再検討(フィードバック)が考えられるかもし れない。本研究では、発達カウンセリング・療法理論の 考え方に従って、これらの2つの要因が認知発達を促進 するかどうかについて検討する。
独立変数としての2つの要因について説明しよう。ま ず、経験の効果について述べる。人の認知的枠組みは、
経験に基づく情報が集められ、それらがさまざまな様式 で組立てられて形成されると考えられる。経験の量が少 なければ少ないほどそれが組み立てられる過程は限定さ れる。従って、そこから生み出される認知的枠組みは未 熟なものになりやすい。認知的枠組みが未熟なものであ ると、新たな経験や事象を多面的に理解することは困難 となる。言い換えれば、限定された視点に固執してしま う可能性が高いといえる。一方、経験の量が豊富であれ ばそれらが組み立てられる方法と過程は多様になり、認 知的枠組みはより充実したものになると考えられる。充 実した認知的枠組みにおいては、類似した経験や事象の 比較や評価が容易になり、多面的な認知が行われやすく なる。
本研究では、家族の問題(Rigazio‑DiGilio, 1993;
Rigazio‑DiGilio & Anderson, 1994)に焦点をあて、三 世代同居の問題にあてはめて認知発達に及ぼす経験の影 響について考えてみたい。総務庁国勢調査報告、普通世 帯(住居を共にしている人の集まりまたは一戸を構えて 住んでいる単身者をいう)の家族類型別割合によると、
三世代同居をしている世帯は減少の一途をたどっている。
一方、高齢者人口は急激に増加しており、国民の4人に 1人が高齢者という状態が21世紀に1世紀近くも続く と見込まれている(厚生白書平成8年度版、 1996)。ほ とんどの人は、三世代同居についてその経験の有無にか かわらず何らかの知識は持っている。例えば、 "寝たき りの祖父母を介護するのは大変だ"というものである。
おそらくそれは事実である。しかし、実際の介護場面で は、大変ということだけでなくもっと様々なことが認知 されると考えられる。そのような複雑な認知を整理する ことを通して、祖父母の介護をはじめとして、関連する 様々な内容の意味(玉瀬, 1998)が発見される。意味が
発見されることによって、そのような経験はただ否定さ れるべきものとはみなされず、環境に適合した考え方が できるようになる。高齢者の介護について単なる知識し かなく、それに対して否定的な感情しかもたない者が、
その認知を変換することは難しいであろう。
このような認知的枠組みは、関連する内容の経験の繰 り返しによって修正されるかもしれない。経験のくり返 しは、認知的枠組みをより豊かなものにし、その経験を より環境に適応できるものへと修正しうると考えられる。
しかし、全ての過去経験が認知的枠組みに取り入れられ るわけではない。認知的枠組みは主観的に形成されやす いので、少なくとも経験の一部分はそれが認知に取り入 れられる過程で歪められたり排除されたりするはずであ る。経験を深く見つめ直すことによって、そのような経 験の部分に気づくことが容易になると考えられる。この 気づきもまた自己の認知的枠組みに修正を促すものにな りうる。認知的枠組みが経験とより一致したものに変換 されることは、思い込みによる認知の歪みや固執傾向を 減らし、経験の正しい認識を促すといえる。すなわち、
経験を再検討することによって認知的枠組みは修正され、
環境への適応はより容易になると考えられる。
本研究では、参加者に経験を再検討する機会を与える ことによってその効果を検討する。具体的には、面接場 面を録音したオーディオテープを参加者自身に聴かせる。
面接場面では、話し手の経験を聴き手が話し手に的確に 伝え返すことによって、話し手は自己の認知を見つめ直 すことができると考えられる。実験場面においては条件 を統制するために話し手の応答はオーディオテープで提 示される。
以上のように、経験は多面的な認知を可能にするよう
な認知的枠組みの形成を促すと仮定された。したがって、
それらの要因はいずれの定位の利用をも促進すると予想 される。また、経験を再検討することは、認知的枠組み の修正を促すと考えられるので、再検討が行われない場 合と比べて、より認知的抽象度の高い定位である形式操 作的定位および弁証・組織的定位の利用が促されると予 想される。
方 法 imm国
2 ×2の要因計画が用いられた。第1の要因は経験の 有無(三世代同居経験有、無)、第2の要因は面接内容 聴かせ条件の有無であった。両要因とも参加者(被験 者)間要因であった。
参加者
実験の参加者は教員養成系大学の1回生から3回生ま での学生83名であった。参加者のうち、男子は25名、
女子は58名であった。これらの参加者は、 4つの群に割 り当てられた。内訳は、同居経験有・聴かせ有群20名 (男子6名、女子14名)、経験有・聴かせ無群21名(男 子6名、女子15名)、経験無・聴かせ有群20名(男子 6名、女子14名、)、経験無・聴かせ無群22名(男子7 名、女子15名)であった。
また、経験有群における三世代同居経験期間の範囲は、
半年から21年(最頻値18年)であった。
材 料 (1)評定基準
評定基準は、 Ivey (1991)、玉瀬・光武(1993)、玉 瀬・島本(1995)、光武・玉瀬(1995)を参考にして作 成された。 4つの定位はそれぞれ2つに分けることがで きる。表1は実際に評定時に用いられた8つの評定基準 をキーワードとともに示したものである。
(2)事前調査用紙
事前調査は個別実験を行う前に配布し、回収された。
この用紙には、披調査者の生活形態についての次のよう な質問が記されていた。 ①親と同居しているか否か、
②披調査者(あるいはその家族)はその祖父母のうち の誰かと一緒に暮らしているか否か、 ③②で一緒に暮 らしていると回答した披調査者(あるいはその家族)は いっ(現在あるいは過去)どのくらいの期間一緒に暮ら している(あるいは暮らしていた)のか、 ④②で一緒 に暮らしていると回答した被調査者(あるいはその家 族)が同居している祖父母は、どちらの家系(父方ある いは母方)の誰(祖父母、祖父のみ、あるいは祖母のみ) なのかが尋ねられた。ただし、家族と離れて暮らしてい る披調査者は、 ②以後の質問に対して実家の状況を回 答するように指示された。
(3)各定位促進質問
各定位促進質問は、 Ivey (1991)、玉瀬・光武(1993)、
玉瀬・島本(1995)、光武・玉瀬(1995)を参考にして 作成された。質問は、感覚運動的定位、貝体操作的定位、
形式操作的定位、弁証・組織的定位の各認知発達的定位 の応答を促す質問で、各1問、合計4問で構成されてい る。これらの質問は、各被験者が応答しうる定位を調べ るために設けられた。表2はその具体的内容を示したも のである。
(4)実験装置
参加者の面接内容を録音するために2台のテープレ コーダーが用いられた。そのうち、 1台は面接の逐語記 録を作成するためのもので、面接が始まってから終了す るまでの間、録音スイッチが入れられていた。もう1台 は聴かせ有群の参加者に面接内容を聴かせるためのもの であった。面接時に時間を計るためにストップウォッチ が使用された。
手続き (1)事前調査
事前調査用紙が配布され、被調査者が質問項目につい て回答を行った後、回収された。
(2)参加者の選定
事前調査用紙の回答をもとに、経験有群、経験無群の 条件を満たす参加者が選出された。この2群の参加者は それぞれ無作為に聴かせ有群と聴かせ無群に割り当てら れた。
(3)実験の開始
実験は実験室で個別に行われた。実験者は、参加者に まずプライバシーを厳守することを約束し、面接内容を 録音することへの同意を求めた。次に、実験者は三世代 同居について説明し、 "三世代同居について、あなたが 感じていること、経験していること、考えていることな ど、どんなことでも結構です。今から三世代同居につい て自由に話してみてください。"と教示した。 3分後に 1度話を中断すること、および手渡した小さな用紙は参 考にしてもよいことを伝えた。その用紙には"三世代同 居について、感じていること、経験していること、考え ていること等どんなことでも結構です。自由に話してく ださい。"と書かれていた。この後、聴かせ有群では2 台の、聴かせ無群では1台のカセットテープレコーダー のスイッチを入れ、参加者に話し始めるよう促した。
(4)応答の中断
参加者は3分後に実験者の指示に従って話を中断した。
ここで、聴かせ有群の参加者の1台のカセットテープレ コーダ‑が止められた。聴かせ有群の参加者には、 ■こ れから、今のあなたの話を録音したテープを聴いてもら います。内容について後から尋ねますので、しっかりと 聴いておいてください。"と教示し、参加者の面接の内
表1 評定基準と回答例 感覚運動的定位
(キーワード:見える、聞こえる、感じる)
●経験が、 "見える" "聞こえる" "感じる"というように感覚的に捉えられており、断片的に表現されている。
(例)三世代同居だと家の中に人がたくさんいて楽しそう。
●経験が、感情的要素の強い表現で述べられている。現在の自己の状態が感情的に表現されている。
(例)楽しそうだけれど、少し不安で、少しうっとうしそう。
(キーワード:思い込む、信じる)
●勝手につくりあげたイメージや思い込みが表現されている。
(例)三世代同居をすると、嫁と姑がもめるんだよ。
●限られた経験が、過度に一般化して表現されている。
(例)祖父が痴呆症になってから亡くなったように、亡くなる前には人はぼけるものである。
具体操作的定位 (キーワード:‑する)
●経験が、順序よく具体的かつ詳細に述べられている。
(例)祖父母と一緒に住んでいると祖父母の話し方が移ってくるようで、時々「老人のような言葉づかいをするねえ」って友達 に言われます。
●感情が対象化された形で述べられている(例:〜な気分である。 〜な感じがする。)。感情について述べられてはいるが、それ についての分析は行われていない。過去の感情が述べられている。
(例)祖父母と同居するのは楽しそうな気がする。
(キーワード:もし〜なら‑する)
● 「もし〜なら‑する」というように、出来事の原因と結果の関係が述べられている。
(例)将来、もし親が私と同居することを希望したなら私は親と同居するだろう。
●自己の思考が表現されている。
(例)母親は父方の祖父をすごく大事にしている。私が母の立場になったとき、私は同じようにできるだろうか。
形式操作的定位
(キーワード:パターン、自己)
●自己の思考、行動、感情のパターンが述べられている。
(例)私はいっも、子どもに話しかけるように祖父に話しかけてしまう。
●自己のパターンが分析・評価され、抽象的な言葉で表現されている0
(例)私はいっも高齢者に対して、高齢者が喜ぶような接し方をしている。このような接し方は、その場が気まずくなるのを避 ける無難な接し方である。
(キーワード:パターンのパターン)
●いくつかのパターンに共通するパターンが表現されている。
(例)僕は祖父に対するストレスを兄にぶつけることが多いです。兄は僕に対するストレスを父にぶつけ、父は祖父に、祖父は 僕にストレスをぶつける傾向があるようです。家族全体がストレスのぶつけ合いをしているようです。
●いくつかの異なった状況を比較・対比して、これを1つの形態にまとめている。
(例)結婚した2人が男性の両親と同居する場合、女性は男性の親をおまけ、男性の親は女性を家庭への侵入者だと感じるだろ う。このような状況の相違についてお互いに理解することが必要である。
弁証的・組織的定位 (キーワード:統合)
●自己や状況について、様々な視点から分析・評価されている。
(例)祖母の過干渉をうっとうしく感じていた。しかし、祖母は親からは教えてもらえないようなことをたくさん教えてくれ た。そういう点では、祖母と一緒に暮らすことができてよかったと思います。
●感情や思考のパターンが自己のシステムとして表現されている。
(例)言葉に障害をもっている祖父の言っていることが理解できたときはほんとにうれしくなってしまう。そしてそのうれしさ は、祖父の言葉を理解してあげられない自分の不甲斐なさを消し去り、また祖父と話をしたいという気持ちを起こすのです。
(キーワード:変換、再統合への挑戦)
●自己の統合されたシステムにさまざまな視点が導入され、その進化の方向が述べられている。
(例)高齢者は大事にするものだという思いから、今まで高齢者に対していろいろ親切にはしてきたが、相手がどんな気持ちで 何を望んでいるのかとかはほとんど考えなかった。これは単なる一人善がりであると思う。もっと高齢者一人一人と向かい 合って理解しあえるような関係になりたい。
●システムを変えるための行動計画が述べられている。
(例)高齢者と接する機会がほどんどなく、高齢者と接することに不安を感じそれを避けてきた。しかし、高齢者と接する機会 は自分からつくっていくものであると思う。電車の席を譲るようなことからでもそのような機会を増やしていこうと思う。
表2 各定位促進質問リスト 感覚運動的定位促進質問
(1)あなたが3世代同居という言葉を聞いたとき、あなたに沸き起こる感情を教えてください。
具体操作的定位促進質問
(2) 3世代同居という言糞を聞いたとき、いっのどのような経験が思い出されますか。 それを1つ具体的に教えてください。
形式操作的定位促進質問
(3)あなたの高齢者に対する接し方はしばしばどのようなものですか。その理由も含めて簡潔に教えてください。
弁証・組織的定位促進質問
(4) (1)‑(3)で回答した内容等から、あな 含めて教えてください。
たと高齢者はどのような関係であると分析しますか。そのように考える理由も
容を聴かせた。聴かせ無群の参加者には、聴かせ有群が テープを聴くのに要する時間として3分間雑誌を読んで 待つように指示した。
(5)応答の再開
テープを聴かせ終わった後(聴かせ無群は3分経過 後)、 "何か話したくなったこと、先はどの話の続き等、
三世代同居に関することについて何かあればお話くださ い。なければ結構です。"という教示が与えられ、参加 者は再び応答を始めた。参加者に話すことがなくなった 時点で面接は終了した。ここで面接の間中録音スイッチ がオンになっていたカセットテープレコーダーが止めら れた。
(6)定位促進質問
次に、参加者に各定位促進質問用紙と筆記用貝が手渡 され、 "先はどの話と内容が重なっても構いません。用 紙の質問それぞれに対して回答してください。"という 教示が与えられ、参加者は各質問に回答することを求め
られた。
(7)逐語記録の作成
逐語記録作成用のテープレコ‑ダーに録音された面接 での応答と、各定位促進質問に対する応答はワープロで 逐語記録として転記された。逐語記録は、参加者がどの 群に属していたかが分からないように並べ変えられた。
(8)評 定
逐語記録の評定は、それぞれ、実験者を含む3名の評 定者によって独立に行われた。これらの評定者は、発達 カウンセリング・療法の理論に習熟し、所定の訓練 (Ivey, 1991)を受け、基準に達して評定者として的確 であるとみなされた者である。面接の逐語記録について は、利用された定位、 "最上伎"の定位、および最も優 位な定位が評定された。各定位促進質問の逐語記録につ いては、各質問それぞれに対する応答に利用された定位 が評定された。評定は、 2名の評定者間の一致によって 決定された。一致しなかったものについては、第3の評 定者を含む評定者間の合議によって決定された。
結 果 発達的定位の評定における一致率
面接場面における各定位の利用の有無、最も複雑な定 位、および優位な定位の評定の一致率を測定するために、
Hill (1985)のkappa係数が用いられた。各評定の kappa係数は次の通りである。感覚運動的定位におい てk‑.57具体操作的定位においてk‑.66、形式操作的 定位においてk‑.35、弁証・組織的定位においてk‑
.48であった。 "最上位"の定位においてk‑.49であり、
優位な定位においてk‑.70であった。このように評定 段階における一致率はかなり低い。これは、主として、
逐語記録に示された応答文が従来のものよりもはるかに 長いことや、利用されたかされていないかを判断するこ とはかなり微妙であることが関係している。一致しな かったものについては評定者間の徹底的な議論によって 合意され、決定されたので、最終的評定については特に 問題はないと考えられる。
面接場面で自発的に利用された定位 (1)利用された定位の評定
表3は、各群の参加者が面接場面において利用した定 位について4定位法で評定した結果をまとめたものであ る。複数の定位を利用した者がいるため、これについて の検定は行われなかったが、表3からいずれの群におい ても貝体操作的定位はほとんどすべての参加者(99%) によって利用されているといえる。また、聴かせの有無 にかかわらず、経験有群では経験無群に比べて弁証・組 織的定位を利用した者が多く、逆に経験無群では経験有 群に比べて感覚運動的定位を利用した者が多い傾向が読 みとれる。
(2)利用された定位の数
表4は、各群の参加者が面接場面において利用した定 位数についてまとめたものである。さらに表4の結果を 集約して、各群が利用した定位数が少なかったか(定位 数が1または2)あるいは多かったか(定位数が3また は4)を調べた。その人数について4×2のx2検定を 行ったところ、 x2(3)‑9.78となり5%水準で有意で あった。残差分析の結果、定位数の多い者が経験有・聴
表3 各群の面接場面において各定位を利用した人数とその割合
群 全体 感覚運動的定位 具体操作的定位 形式操作的定位 弁証・組織的定位 経験有・聴かせ有
経験有・聴かせ無 経験無・聴かせ有 経験無・聴かせ無
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合 計 83 36 (43.4) 82 ( 98.8) 60 (72.3) 17 (20.5) 請: ( )内は各定位ごとに全体のうちで占める人数の%を示す。
表4 各群の面接場面で用いられた定位数ごとの人数とその割合
群 定位数 1 2 3
汁
経験有・聴かせ有経験有・聴かせ無 経験無・聴かせ有 経験無・聴かせ無
5 1i Z
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O H O N
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合計 11 (13.3) 38 3 1 ..‑ヽ3 7 3 ) 註: ( )内はそれぞれの群において各セルが占める%を示す。
表5 各群の面接場面において用いられた最上位の定位ごとの人数とその割合 群 定位 感覚運動的定位 具体操作的定位 形式操作的定位 弁証・組織的定位 経験有・聴かせ有
経験有・聴かせ無 経験無・聴かせ有 経験無・聴かせ無
ヽ ノ ヽ J ヽ J ヽ J
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経験有 経験無
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2 (10.0) 3 (14.3) 9 (45.0) 3 (13.6)
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計 1 (1.2) 17 4 7 ′̲\ 5 6 6 Cid 詰: ( )内はそれぞれの群において各セルが占める%を示す。
表6 各群の面接場面における優位な定位ごとの人数とその割合
群 定位 感覚運動的定位 具体操作的定位 形式操作的定位 弁証・組織的定位
汁
経験有・聴かせ有経験有・聴かせ無 経験無・聴かせ有 経験無・聴かせ無
0 ( 0.0) 12 (60.0) 8 (40.0) 0 ( 0.0) 15 (71.4) 6 (28.6) 2 (10.0) 14 (70.0) 4 (20.0) 1 ( 4.5) 15 (68.2) 6 (27.3)
ヽ ノ ヽ J ヽ ノ
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O O O O o o o o
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^ O O O O
0 ‑H O CO
N N N
計 3 ( 3.6) 56 (67.5) 24 (28.9) N
註: ( )内はそれぞれの群において各セルが占める%を示す。
かせ有群においてその他の群よりも多かった(p<.01)。
(3)利用された最上位の定位
表5は、各群の参加者が面接場面で利用した中で認知 発達論的に最も"高い水準"の定位を評定した結果をま とめたものである。聴かせ条件を込みにした人数につい て2×4のx2検定を行ったところ、x2(3)‑ll.32とな り5%水準で有意であった。残差分析の結果、最上位の 定位として弁証・組織的定位を利用した者は、経験無群
に比べて経験有群で有意に多かった(p<.01)。
(4)利用された優位な定位
表6は、各群の参加者が面接場面で利用した中で最も 優位な定位を査定した結果をまとめたものである。優位
な定位とは、各参加者が主に利用した定位であり、いく つかの先行研究(例えば,玉瀬・光武, 1993)において参 加者の定位として評定されてきたものである。全群をま
とめて1標本のx2検定を行ったところ、 x2(3)‑96.33
となり1%水準で有意であった。残差分析の結果、貝体 操作的定位が優位である者が多く(p<.01)、感覚運動 的定位および弁証・組織的定位が優位である者は少な かった(p<.Oi)。表7は、評定と若干のコメントを加 えて面接場面における参加者の応答例を示したものであ
る。
各定位促進質問に対する記述応答で利用された定位 表8は、各群の参加者が定位促進質問のそれぞれ対し て応答した定位を評定し、その結果をまとめたものであ る。どの定位を促進する質問においても、応答に利用さ れた定位は各群で同様の傾向にある。そこで、 4群を込 みにした全体で、定位促進質問のそれぞれに対する応答 で利用された定位に一定の傾向があるかどうかを調べた。
それぞれの質問に対して応答された定位について1標本 のx2検定を行ったところ、感覚運動的定位促進質問で は、 Z2(4)‑ 179.71となり1%水準で有意であった。残
表8 経験有群と経験無群か質問に対して記述応答した定位ごとの人数とその割合 群 定位 感覚運動的定位 具体操作的定位 形式操作的定位 弁証・組織的定位 無回答
計
感覚運動的定位促進質問経験有 31 (75.6) 経験無 33 (78.6)
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全体 64 (77.1) 1 6 (1 9 3 bd 具体操作的定位促進質問
経験有 7 (17.1) 経験無 10 (23.8) 全体 17 ( 3.6)
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形式操作的定位促進質問 経験有 0 ( 0.0) 経験無 0 ( 0.0)
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全体 0 ( 0.0) 2 3 /.1 2 7 7 ヽノ 弁証・組織的定位促進質問
経験有 1 ( 2.4) 経験無 2 ( 4.8)
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1 (2.4) 5 (ll.9) 6 (28.9)
註: ( )内は経験有群と経験無群において各セルが占める%を示す。
表9 各定位促進質問に対する記述応答例 ( 1 )感覚運動的定位促進質問
経験有群
ほんわかした感じ。 (コメント:感覚的な表現である。) 経験無群
やさしい、温かい気持ち。 (コメント:感覚的な表現である。) (2)具体操作的定位促進質問
経験有群
二、三年前に祖母と母がけんかをしたとき。それまでは三世代同居ということに関して何も意識していなかったし、また、
一緒に暮らしているのが当たり前だったのに、このとき初めて、三世代で住んでいるから、こんな独特の言い争いが生じろ のだと恩いました。 (コメント:自己の思考が述べられている。)
経験無群
(省略)田舎に帰ったとき、祖母と母が夕食を一緒に作ったりして、あとで母が、祖母と料理する方法が違って、注意され たとこぼしていたのを思い出しました。 (コメント:経験が述べられている。)
(3)形式操作的定位促進質問 経験有群
ふだんは"お年寄りを大切にしなければ"と患っていますが、祖母と話しているときなど、その考え方の古さやテンポに っいて行けず、面倒臭そうに接してしまうときがあります。 (コメント:自己のパターンについて述べられている。) 経験無群
自分よりもいろんなことを経験されてきたし、いろんなことを知っていると思うので、高齢者との関わりを大切にしたい と思っている。だが、積極的にはかかわろうとしていない。祖父・祖母以外の高齢者とは、あまり深く接しようとしていな いと恩う。 (コメント:自己について分析している。)
(4)弁証・組織的定位促進質問 眉LvTHii
私はよく、祖母と話をするので、家族とのクッション役。母親はど近くないので感情的にならないでいられるから。しか し、祖母と母親の問題に入り込んで母を追いっめてしまうことがある。 (コメント:家族関係をシステム的に捉えている。) 誰: (4)において経験無群は該当者なし。
差分析の結果、感覚運動的定位で応答した者が多いとい える(p<.01)。具体操作的定位促進質問では、 *2(4)‑
139.47となり1 %水準で有意であった。これは具体操作 的定位で応答した者が多いことを示している(p<.01)。
形式操作的定位促進質問でも、 x2(4)‑ 165.74となり 1 %水準で有意であった。これは形式操作的定位で応答 した者が多いことを示している(p<.01)。弁証・組織 的定位促進質問では*2(4)‑87.06となり1 %水準で有 意であったが、残差分析によって異体操作的定位およ び形式操作的定位で応答した者が多いことが示された
(p<.01)。
表9はコメントを加えて、各定位促進質問に対してそ れぞれ促された定位で応答した例を示したものである。
議 論
本研究では、発達カウンセリング・療法(Ivey, 1986, 1991; Tamase & Rigazio‑DiGilio, 1997)の考え方に 従って、主題として用いた"三世代同居"について尋ね、
その経験の有無および面接内容を聴かせる処遇によって 応答にどのような違いが見られるのかを検討した。経験 の有無は認知発達的定位の豊かさにおける違いを生じる と期待された。面接の内容を聴かせるという処遇は、参 加者の認知的枠組みに修正を加えるのに役立っと考えら
れた。
自発的に利用された定位
初めに、面接場面において自発的に利用された定位に 関する結果について述べる。 ①各群の参加者が利用し た定位について、いずれの群においてもほとんどの参加 者が具体操作的定位を利用した。 ②各群の参加者が利 用した定位数について、定位数の多い者が経験有・聴か せ有群でその他の群よりも多かった。 ③最上位の定位 に関しては、弁証・組織的定位は経験有群での方が経験 無群でよりも利用されやすかった。 ④優位な定位につ いては、全群を込みにした場合、具体操作的定位がもっ とも多く、感覚運動的定位および弁証・組織的定位は少 なかった。
結果①について、いずれの群においてもほとんどの 参加者が具体操作的定位を利用したという結果から、具 体操作的定位は"三世代同居"という領域に関する認知 に非常に利用されやすい定位であるといえる。これは、
具体操作的定位がもっとも日常的に利用されていること と関係があると考えられる。 "三世代同居"以外の話題 においても具体操作的定位は利用されやすいと推測でき
る。この点については、さらに後の優位な定位のところ でも述べる。
結果②の参加者が利用した定位数について、経験と
"聴かせ"の相乗効果が出ているようにみえる。しかし、
各群における聴かせ前と聴かせ後の定位の変動を調べた ところ、聴かせ後に聴かせ前に認められなかったより高 い水準の定位が認められたという証拠はなかった。従っ て、相乗効果は本研究の当初のねらいではあったが、そ
れが実証されたとはいえない。今後、実験の手続きを改 良してさらに検討を重ねる必要があろう。
結果③は、経験によって人は弁証・組織的定位まで 利用しうることを示唆している。この定位は、 4定位の 中で最も複雑でシステム的(玉瀬1998, pp.24‑27) であり、認知的統合や変換を図っていくような定位であ る。したがって、多様な認知や抽象的な思考能力などが なければこの定位を利用することは困難である。経験は、
多くの情報を提供するので、弁証・組織的定位の利用を 可能にする1要因であるといえる。ある程度抽象的な恩 考能力を持っている人であれば、経験によって、 "最上 位"の定位として弁証・組織的定位を利用することが可 能になるといえる。
優位な定位は、人が主に利用した定位であるので、そ の人にとって最も利用しやすい定位であり、その人の認 知的枠組みの基本となるものと考えられる。結果④か ら、具体操作的定位は利用しやすい定位であり、感覚運 動的定位および弁証・組織的定位は利用しにくい定位で あることが示唆された。玉瀬・光武(1993)では、 "負 体操作的水準"と"感覚運動的水準"を主として利用し た者が多かったと報告されている。彼らの研究でも、
"具体操作的水準"を利用した者がもっとも多かったと いう点では、本研究と一致している。
本研究で、優位な定位は実験条件にかかわらず具体操 作的定位に該当する者が多かったことは、優位な定位は、
経験や"聴かせ"によってあまり変動しないことを示唆 している。先にも述べたように、人は、具体操作的定位 を利用することに慣れていると考えられる。友人関係を 扱った玉瀬・光武(1993)の研究および本研究のいずれ の群においても、主に具体操作的定位を利用した者が多 かったのはこのような理由からであると考えられる。こ れらのことから、話題の領域に関係なく、主として貝体 操作的定位を利用する人が多いといえよう Rigazio‑
DiGilio & Ivey (1990)においても55%のうつ病クラ イエントが具体操作的水準で応答していることもこのこ との傍証となろう。
定位促進質問への記述応答
次に、各定位促進質問に対する記述応答で利用された 定位について述べる。全体の傾向として、感覚運動的定 位、具体操作的定位あるいは形式操作的定位のそれぞれ の応答が促された場合、それぞれに該当する定位で応答 されることが多かった。ただし、弁証・組織的定位促進 質問に対しては、これに該当する定位よりも具体操作的 定位、あるいは形式操作的定位で応答する者が多かった。
このことは、感覚運動的定位、具体操作的定位、あるい は形式操作的定位が促されると、促された定位を利用す ることは比較的容易であるが、弁証・組織的定位は促さ れてもその定位を利用することは必ずしも容易ではない
ことを示唆している。
臨床的示唆
経験の効果については、表3および表5において、
我々がねらいとした方向での結果が示されている。経験 のある問題への理解や認識は、その経験がない場合に比 べて認知発達的定位が弁証・組織的定位にまで達する可 能性がより高くなると期待できる。クライエントに対す る場合に、そのクライエントにとってすでに経験済みの ことを話題にする方が、未経験な問題を話題にするより も、認知発達的定位を広げたり移行させたりすることが より容易に行いうるものと考えられる。カウンセリング においてラポートづくりや関係性の碓立をねらいとする 際に、話題の選定に留意し、可能なかぎりクライエント の経験を重視することが面接を効果的にするものと思わ れる。
各定位促進質問で利用された定位に関する結果から、
促進質問によって促された定位で容易に応答できること が示された。ただし、弁証・組織的定位は促されても利 用できない場合が多いといえる。この水準の認知はクラ
イエントに限らず、日常場面で利用されることは少ない といえよう。まして、健康な状態に比べて認知発達の機 能的水準が低下しているクライェントにとっては、弁 証・組織的定位での応答は極めて困難であると考えてお
く方が現実的であろう。要するに、あまり抽象的なこと を話題にしても、それを認知的に処理することは困難で あると考えておくべきであろう。
要 約
Ivey (1986, 1991)の提唱する発達カウンセリング・
療法理論を実証的に検討するために, 83名の大学生を 参加者として,家族の三世代同居の問題について面接し, 参加者がそれをどのように捉えているかを調べた。実験 条件として,三世代同居経験の有無と面接時の応答の再 坐(聴かせ)の有無が設けられた。従って,参加者は同 居の経験有・聴かせ有群,経験有・聴かせ無群,経験 無・聴かせ有群,経験無・聴かせ無群のいずれかに割り 当てられた。面接は個別に行われた。参加者は三世代同 居についての考えを3分間自由に話すよう求められた。
聴かせ有群では,録音された自分の応答を聴かされた。
聴かせ無群では雑誌を読んで3分間を過ごした。すべて の参加者は,その後再び三世代同居について話すよう求 められた。面接の後, 4つの認知発達的定位を誘発する ための質問用紙が手渡され,記述応答するよう求められ た。これらの質問では,感覚運動的定位,具体操作的定 位,形式操作的定位,および弁証・組織的定位を促すこ とがねらいとされている。
実験の結果,聴かせの効果は認められなかったが,同