奈良教育大学学術リポジトリNEAR
自閉症児のコミュニケ‑ショソ機能の発達と療育(1) −前言語的コミュニケ‑ショソから言語的コミュ ニケーションへの移行に視点をあてて−
著者 田村 浩子, 田辺 正友
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 44
号 1
ページ 127‑138
発行年 1995‑11‑24
その他のタイトル Developmental Process of Communicative Functoins and Remedial Education in an Autistic Child (1)
URL http://hdl.handle.net/10105/1625
奈良教育大学紀要 第44巻 第1号(人文・社会)平成7年 Bull. NaraUniv. Educ., Vol. 44, No. 1 (Cult. &Soc.), 1995
自閉症児のコミュニケ‑ショソ機能の発達と療育(1)
一前言語的コミュニケ‑ショソから言語的コミュニケーション‑の移行に視点をあてて‑
田 村 浩 子* ・ 田 辺 正 友
(奈良教育大学障害児教育教室) (平成7年4月3日受理)
問題の所在
本研究は、自閉症児における「対人・社会関係」障害の基本的内容としてのコミュニケーショ ン機能の発達と障害の問題を明らかにするとともに、彼らの発達を援助する教育的活動の在り方 を探ろうとして計痢した 一連の研究のひとつである。本論では、ひとりの自閉症児の療育場面で のコミュニケーション機能の発達変容を縦断的に分析し、そこで得られた知見をもとに療育課題 についての検討を試みるものである。
自閉症の基本的障害については、現時点では未解明で様々な議論がある。自閉症にみられる広 範な多様性を考えると、多面的な理論的見地が必要となろう。それでも、最近の研究(Shan and Wing,1986 ; Baron‑Cohen,1988 ; Rutter and Lord,1988)は、 「対人・社会関係」障害
としてのコミュニケ‑ショソ機能の障害を強調している。そして、自閉症児のコミュニケ‑ショ ソ機能の問題は、言語によるコミュニケ‑ショソの問題のみでなく、視線の共有、身ぶり、指さ しといった前言語期における非言語的なコミュニケ‑ショソ機能の問題も含めた重篤なものであ ることが示唆されている(Lovelandら, 1986 ; Mundyら, 1986)
教育は、ある意味で子どもたちとわれわれ指導者とのコミュニケーション活動といえるのでは ないだろうか。コミュニケ‑ショソが取れないと予どもの姿が見えなくなってしまうことがある。
また、石井(1978)は、 16歳以上の自閉症者の予後、とくに社会的予後について考察し、コミュ ニケ‑ショソ機能と予後との関連を指摘している。学校卒業後の社会生活上でもコミュニケ‑ショ ソ機能は大きな意味をもっており、実践的な観点からも、幼児期から成人期を通じての自閉症の 中心的課題であろう。
筆者らは、これまでに自閉症児のコミュニケ‑ショソ機能の発達と障害の問題について検討を 試みてきた。そして、ひとりの自閉症児の小学校6年間の発達過程を縦断的に分析した結果から、
彼女が言語によるコミュニケ‑ショソを成立させるまでの過程で、まず、前言語的コミュニケ‑
ショソ機能において質的な変化がみられたこと、そして、その過程において他者の行動の「模倣」
が重要な役割を果たしていたことを報告した(岡本ら、 1988) さらに、そこで得られた結果を 横断的な資料の分析を通じて検討を試みた。前言語的コミュニケ‑ショソから言語的コミュニケ‑
ショソへの移行期にある自閉症児と精神発達遅滞児の発達検査項目の通過状況の分析結果および
「模倣」の成\lF̲状況をみた実験的観察課題の結果から、自閉症児にあっては、言語の発生を支え
*耳原総合病院小児科
127
128 田 村 浩 子・田 辺lE 友
る背景としての前言語的コミュニケーショソ機能や認知機能の獲得に弱きを有していることを指 摘した。そして、こうした前言語期での問題が、一語発語や二語発語が認められるようになって もそれらをコミュニケ‑ショソ手段として使用することに困難さがあるといった問題の背景をな
しているのではないか、また、言語が獲得されていても「伝達性」 、 「共感性」に乏しいといっ た問題を提起した。さらに、こうした問題が基盤となって「模倣」そのものが成立しにくいとい えるが、模倣を介してコミュニケーションが成立した場合でも、それを自己の活動文脈に位置づ けることに困難さを有しているのではないか、つまり、他者の行動の形式的側面だけを取り込ん でいて、他者の行為に内包された「意味」の獲得を困難にさせているのではないかといった問題 を指摘した(田村・田辺、 1994) 。
本論は、上記問題を療育の問題とも関連させて、さらに検討することを目的としたものである。
筆者らが療育活動で関わっているひとりの自閉症児の前言語的コミュニケ‑ショソから言語的コ ミュニケ‑ショソへの移行に視点をあてて、その発達変容を縦断的に分析するなかで、前言語的・
言語的コミュニケーショソの形成がいかに対人的な関わりの問題に依拠しているかを、療育の問 題とも関連させながら検討を試みる。
方 法
対象児 本児は、 1986年7月生まれ、現在8歳8ヵ月の男児で、 DSM‑III‑Rの診断基準を 満たす自閉性障害児である。 2歳9ヵ月から奈良県K市の障害児通園事業での療育に週2回通園、
4歳8ヵ月からK市の公立幼稚園に通園。生IF時体重3296g、熱産、自然分娩、生後1年までの
「定頚」、 「寝返り」、 「座位」、 「‑イ‑イ」、 「初歩」等の運動性発達は正常であった。脳 波異常、てんかん発作等の問題は現在までみられていない。 10カ月時に「マソマ」と始語があっ てから1歳半頃までは語嚢数が増えていったが、その後、徐々に消失0 「視線があわない」 、
「呼んでもふりむかない」 、 「ひとり遊びが多い」、 「人みしりをしない」 、 「クレーン現象が 長く続く」といった行動特徴がみられた。
本児は、筆者らが実施しているN教育大学障害児教育教室の教育相談に2歳の時に来室し、そ の後、就学前障害児治療教育教室での週1回、 1時間半の療育に2歳9カ月から参加し、 6歳9カ 月の小学校入学(障害児学級)と共に、月1回2時間の療育活動に参加している。
治療教育教室 本児を除く、治療教育教室参加児をTablelに、また、年間プログラムおよび 一・一日の流れをTable2に示した。
分析資料・手続 本児の前言語的コミュニケーションから言語的コミュニケーション‑の移行 Table l 教室参加児童(1989・1990年度)
氏 名 性別 生年月日 障 害 教育・保育機関 備 考 Y. I. 女 1984.10.31
K. W. 男 1985. 8.19 T. O. 男 1985.ll.13 T. K. 男 1987.12.30 T. H. 男 1986. 8.22 M. S. 女 1986.ll. 7 D. K. 男 1984. 9.19
West症候群 障害児通園事業・私立保育所 1991. 3終了 精神発達遅滞
精神発達遅滞 Reye症候群
「1 1V】ft.
精神発達遅滞 Down症
公立保育所
障害児通園事業・公立幼椎園 障害児通園施設
障害児通園施設 私立幼椎園 公立幼稚園
1990. 3転居
1991. 4‑
自閉症児のコミュニケ‑ショソ機能の発達と療育
Table 2 年間プログラムおよび1日の流れ
129
年 間 プ ロ グ ラ ム 1 日 の 流 れ
先生、ともだちを知ろう/場所に慣れよう 先生、ともだちと散歩をしよう
器具遊びを楽しもう<I>
砂や水で遊ぼう
水遊びを楽しもう(プール) 小麦粉粘土で遊ぼう 自然のなかで遊ぼう 器具遊びを楽しもう<II>
クリスマスを楽しもう 絵の具で遊ぼう クッキーを作ろう
(発達診断)
◆来室
・シ‑ル貼り
◆自由遊び
・遊具、器具遊び
◆かたづけ
◆始まりの集い
・挨拶/手遊び
◆設定保育
◆おやつ
◆お話しをきく(絵本)
◆終わりの集い
・カード返し/挨拶
期にあたる、 2歳9ヵ月から4歳7カ月の間の療育活動を通して得られた行動観察記録によって その発達的変化を分析した。療育場面での行動観察記録は記述法により、 2名の担当者(主任担 当者と担当学生)が個別に行った。そして、毎回の療育終了後および原則として月1回のケ‑ス 検討会議で討議した。さらにビデオ撮影を行った。観察結果の補助資料として、本児の日常生活 場面の様子を母親から事情聴取した。また、本児の発達状況を知るために、適宜、新版K式発達 検査を実施した。その2歳時からの結果を示したものが、 Table3、 Table4である。
結 果
L記分析結果から、本児のCA2 : 9からCA4 : 7までの発達過程を、前言語的コミュニケー ション機能から言語的コミュニケーショソ機能への移行に視点をあてて3期に時期区分した。そ れぞれの時期のコミュニケーションの質、認識発達、行動特徴および療育課題についてまとめた
ものが、 Table5である。
第I期:CA2 : 9 : 5
療育開始当初は、新しい場所・器具への興味・関心が強く、部屋の中をウロウロするといった 行動が顕著であった。また、換気扇への固執がみられた時期でもあった。これは、 2歳をすぎて からのミニカー・自転車のタイヤといった「まわる」もの‑の興味の延長上にあるものと考えら れるが、この時期の固執のしかたは、動かす、操作するといったものではなく、 「じっとみる」
といったものであった。この時期の療育では、本児の換気扇‑の固執を否定的にとらえて対症療 法的に消去しようとするのではなく、そうした行動に指導者が共感を示し、さらに、 「ソウネ、
カンキセソネ」、 「カンキセソ、マワッテルネ」といったことばをそえっつ共有していくことを たいせつにした。こうした取り組みを通して、本児は、 2歳10カ月時に換気扇を定位して指さし、
「カソキセソ」のことばを表出している。本児は10ヵ月時に「マソマ」と始語があってから1歳 半頃までは語乗数が増加しているが、その後、徐々に消失。再び、発語がみられたのが、この
「カソキセソ」であった。この頃から自分の興味のあるもの(換気扇・ミニカー・電車など)へ の指さし(定位の指さし)が散見され始める。
130 田 村 浩 子・田 辺iK 友
同時期(2 :ll)に、 2歳4ヵ月頃からみられ始めていた母親への志向性が強まり、母親を求 めて大泣きし、指導者の手をひっぼってドアを開けてほしいと要求する姿がみられる。その後、
母親を求める行動が多くなり、母子分離不安がみられはじめている。またそこには、それまでM 親との間でしかみられなかったクレーソ現象での要求表出がI珪親以外の人に対しても示されてい
る。しかし、この時期は、まだ特定の「もの」 (換気扇)との結びつきが強く、こうした人‑の 志向性は高まりをみせるまでに至らず、指導者に対して、自ら要求を表HIJする姿はほとんどみら れていない。遊びの場面でも、指導者が門にみたてた積木を「トンネル、トソネル」とミニカー を動かそうとするものの、その操作は本児のなかで自己展開しており、指導者との遊びの「共有」
には至っていない。また、運動機能面では、 「両足とび」 、 「とびおり」 、 「片足立ち」といっ たようにかなり高い力量を獲得しており、 Fig.1のような器其遊びでも、とび箱8段の「両」に 登って行く。そして、高さを確かめて自分で飛び降りることができないとわかると、傍にいる指 導者には介助を求めず、登ってきた場所からもどろうとする。指導者が「テヲモッテアゲヨウ九」
と手を差し,4J,すと、 1本指の支持のみでとびおりる。しかし、とびおりた後の「ヤッタ!」といっ た達成感の表出はほとんどみられない。
この時期、母親を「特定の第二者」として形成し てきており、また、 「ギュウニュウ」、 「1)ソゴジュ‑
ス」といった限られたものではあるが、 [珪親には 一 語発語での要求表現がみられるものの、 「第 ‑̲者」
の広がりが示されなかった時期であった。
療育場面では、指導者から本児の遊び・活動に)t‑
感を示しながら寄りそうことを基本に、手を糾して 介助したり、 「もの」との関わりに音声刺激をそえ
るといった遊びを示すことを通して、本児の遊び Fig. 1器具遊び配躍図
活動を自己感覚的なものから他者との共有感覚・関係へと導くといったことをたいせつにした。
第II期:CA3 :6‑3 :8
この時期でも、母子分離不安がみられるが、それは、自分の知らないあるいは自分で予測やみ とおしがつかない新しい場所・活動・人などに対しての4く安の結児となって出現しているものと 考えられる。活動範脚が拡大し、外界への興味・関心の広がりがみられるにつれて、以前よりも 場面の変化に対して敏感になるといった傾向が示されているO こうした分離不安を呈しつつも、
母親を支え・安全基地として指導者との新しい活動へと踏みHiしていく姿がみられている。柑親 以外の人(指導者)へのコミュニケーショソの対象の広がりがみられた時期でもある。この時期 の発達検査結果では、認識機能のレベルでも1歳半の発達的力葺を獲得していくが、しかし、そ の遊びは目的性や発展性をもった遊びへと展開されにくく、また、一一人遊びが中心で人をとり込 んだ遊びへと発展しにくい傾向がみられた。例えば、療育場面では部屋に置かれているすべり台 に登ってはすべることを繰り返すといったことがしばしばみられている。そこで、本児のこうし た活動を十台として、その活動をFl的性をもったものへ高める、さらに、人との関係で意味をもっ た活動にすることを目的として、すべり台での遊びの中で、指導者2名が持った新聞紙をトソネ ルにみたててくぐるといった取り組みを 一定期間行った。その後、指導者がすべっている本児の 前を新聞紙で完全に遮断すると、すべることを止めてしまう。そこで、新聞紙に小さな穴をあけ、
自閉症児のコミュニケ‑ショソ機能の発達と療育
Table 3 K児の新版K式発達検査結果
131
実 施 日 1988 . 7 1988 .1 1 1989 . 3 198 9 . 6 1989 .10 1990 . 1 199 0 . 5 1990 .10
C A 2 : 0 2 : 4 2 : 2 : 10 3 : 3 ‥6 3 ‥9 4 ‥2
D
A
全 領 域 1 : 4 1 : 7 1 : 1 : 9 1 : 9 2 : 4 ‥6 2 ‥8
姿 勢 . 運 動 1 ‥11 2 : 4 2 : 4 2 : 4 ‥11 2 : 11 2 : 11 ‥11
認 知 . 適応 1 : 3 1 : 7 1 : 1 : 10 ‥10 2 : 4 2 : 9 3 : 0
話語 . 社 会 1 : 0 ‥ 0 : 11 1 : 1 ‥ 2 : 1 2 : 1 2 : 1
Table 4 K児の新版K式発達検査通過項目
C A
認 知 . 適 応 2 :0 2 :4 2 :8 :l0i3 :3 3 :6 3 :9 4 :2 C A
言 語 . 社 会 i;:ti 2 M 2 :8 LM 3 :3 3 :6 3 :9 4 =2 0 =9
0 :1
バ イ バ イ メ ソ メ
チ ョ ウ ダ イ で 渡 す 指 き し に 反 応
+
+ + + +
+ + 十
+ + +
+ 十 +
+ + + +
十 + + +
+ + + + 0 :ll; * ‑ ル を 押 し 付 け る
: 検 者 と ボ r1 ル 遊 び
+ + + + 十
十 + +
+ +
+ 十 1 =0 枯 ^ ‑" fi 二
丸 棒 例 後 1/3 ピ ソ か ら 出 す な ぐ り が き 例 前
′Jみ 、 む
+ + + +
+ + + 十 十
+ + + + +
+ + 十 + +
+ + + 十 +
十 十 + + +
+ + 十 + +
+ + + + +
rl.三6 指 さ し打 動 + + +
1 :3 積 木 の 塔 3 円 板 回 転 子 期 的 追 祝 2 の コ 、プ 2 / 3
十 + +
+ +
+ +
+ + +
+ 十 + + 十
+ 十 + +
+ + 十 +
1 :3 語 嚢 3 語 + + 十 + + + +
1 :6 積 木 の 塔 5
+
+
+ + 十 + +
+ + + + +
+ 十 1 =6 身 体 各 部 3 /4 + ; + +
角 板 例 後 1 /3 は め 板 全 例 無 は め 板 回 転 全 1 /4 FT]錯 痢 模 倣 入 れ + 3 個
3 個 の コ ッ プ 2/ 3 帆 (‑ ・蝣>輯 バ 角 板 例 前
+ + + +
+ + + +
+ + + +
+ 十 + +
+ + + 十 + +
+ + + + + +
絵 指 示 4/ 6 + + +
1 :9
+ 十 +
+ 十
+ +
十 +
+ + +
+ + +
+ + 十
1 = 絵 の 名 称 I 3 /6 + + +
L':u 積 木 の 堵 = 8 形 の 弁 別 I 3 /′5 横 線 模 倣 1/ 3
十 +
±
+ + +
+ + +
丁 + + +
丁 . + 十 +
2 : 2 数 復 唱 1 /3 絵 の 名 称 I 5 /6
2 :3 トラ ツ模 倣 形 の 弁 別 8 /10 折 り紙 I 入 れ 子 5 個
=11
丁 +
+ +
+ +
+
+ + +
2 = 大 小 比 較 3 /3 5 /6
絵 の 名 称 II 3 /6 + + +
2 :6 家 の 模 倣 四 角 構 成 例 後 2 /3 折 り紙 II 円 模 写 1 /3
>‑・? & 斤II 伊 後 1/ 3
+
+ 丁
+ +
丁 ▼
+ +
2 : 3 数 復 唱 1 /3 長 短 比 較 3 /3 5 /6 絵 の 名 称 II 5 /6 姓 名
性 の E* 別
+ + 十
. :o 門 の 模 倣 例 後 形 の 弁 別 II 1 0/′10 折 り紙 lll 人 物 完 成 3 /9 十 字 模 写 例 前 1/ 3
一さ の 比 、例 後 2 /2
+ +
3 : 短 文 復 唱 I 1/3 4 つ の 積 木 1/3 数 選 び 3 美 の 比 較 3 /3 色 の 名 称 3 /4
√解 I 2 /3 lう:6 門 の 模 倣 例 前
門 角 構 成 例 前 2 / 3 正 方 形 模 写 1 /3 重 さ の 比 較 例 前 2 /3 横 木 た た き 2 /1 2
+ 3 : 4 数 復 唱 1/3 13 の 丸 10 ま で 1/2 数 選 び 4 脱 溝 't li 3 ‑1
汁) +は、当該通過項目
132 田 村 浩 子・田 辺 正 友
Table 5 K児のコミュニケ‑ショソ機能の発達過程と療育課題
時 期 区 第 I 期 (C A 2 : 9 3 : 5 ) 第 II期 (C A 3 : 6 3 ‥8 月 第 III期 (C A 3 : 9 4 : 7 )
コ
ユ 対 象
◆ 母 親 ◆特 定 のお と な ◆ 特定 のお と な
. 母親 . 母 親
. 主 任 指 導 者 (筆 者 ) 、担 当 . 主任 指 導 者 、 担 当 指導 者 指 導 者 (学 生 )
表 現
◆母 親 を 「特 定 の 第 2 着 」 と し ◆ 前 言語 的 コ ミュニ ケー シ ョン ◆ 人 . 場 所 . 場 面 は限 られ るが、
て 形 成 し始 め 、 ..1一語 発 話 で か ら言語 的 コ ミュニ ケ ー シ ヨ 「ことば 」が コミュニケl シ ∃
「要 求」 表 現 ソヘ の移 行 期 ソ機 能 と して 一 定 の 役割 を も
. 「もの」 の世 界 との 結 び つ . 本児 の興 味 . 関 心 の あ る 描 . ち始 め る
き が強 く、 人 へ の 志 向 性 が 痢 活 動 で は 、 そ の 活動 を 介 . 描 痢 活 動 で は 、指 導者 との ケ様 式
特 徴
高 ま りを み せ るに 至 らな い して指 導 者 と 「こと ば」 を こ とば を伴 った 「ふ り遊 び」
伴 った 簡 単 な 「応 答」 が で が 芽 生 え る I
シ ヨ
き る ◆ 他 者 .児 の行 動 を 自 発 的 に 自
. 独 語 様 の 発 語 で あ っ た り、 己の活動 文脈に取 り入れ始 め る 伝 達 意 図 が 不 明 確 で場 面 へ . 他 児 の して い た遊 び . 活 動 の 関 連 性 が 弱 く、 要求 が相 を 時 間 的経 過 を経 て 自 己の 手 に伝 わ りに くい 身 体 上 で 再 現す る ソ
. 指 導 者 が 他 児 と して いた 遊 び . 活 動 を み て い て、 自分 も して ほ しい と 「動 作 」 で 要 求 を 表 現す る
認識 発 、 レベ ル 特
◆ 乳 児 期 後 期 か ら幼 児期 前 期 へ ◆ 幼児 期 前期 獲得 期 (発 達 年齢 、 ◆幼 児 期前 期 充実 期 (発 達 年齢 、 の 移行 期 (発達 年齢 、1 歳 前 半) 1 歳 な か 頃 ) 1 歳 後 半〜 2 歳前 半 )
. 再 び、 有 意 味 語 が 出現 . 可逆 の指 さ し獲 得 ( 「身 体 . 定 位 の 指 さ し獲 得 各 部 」 「絵 指 示 」 )
行動 特
◆ もの (換 気 扇 ) の 固執 ◆ もの (換 気扇 ) の 固執 ◆ もの (換 気扇 ) の 固執
〜 じっ と 「眺 め る」 ー 様 々 な場 所 の換 気 扇 へ の 広 J 「動 かす J 止 め る」 とい つ が り/ 探 索 活 動 た もの の 「操 作 」
◆ 反 響 言語 (即 時 反 響 ) ◆ 反 響 言語 (即 時 / 遅 延 反 響 )
療 育諜
◆ 本 児 の 「もの」 との関 係 の中 ◆ 本 児 の 遊 び . 活 動 を E]的 性 を ◆ 本 児 の 動作 や こ とば で の 要 求 に 、 指 導 者 が 共感 を示 しなが も った もの へ 、 人 と の関 係 で を て いね い に受 け とめ 、 「や ら寄 りそ って い く こと を基 本 意 味 性 を もっ た もの へ と高 め り と り」 関係 へ と 高め るな か
と しつ つ 、 本児 の 自己 感 覚 的 る で 、活 動 そ の もの や 活 動 の結
な 遊 び . 活 動 を他 者 と共 有 す 栗 を 人 と共 有 させ る
る関 係 へ と高 め る
穴の向こう側が見えるようにして、最初のうちは、そこに母親の姿が見える状況をつくると、本 児は母親の存在を視覚的に確かめたあと( 「静観的認識」 ) 、新聞紙をつき破ってすべりおりる ( 「間接性」 ) 、そのうち、新聞紙に穴をあけなくてもすべることを繰り返すのである。これは、
見えないもう一つの世界を認識していく力( 「イメ‑ジ的認識」 )の獲得を示すものと考えられ るが、こうした力は、発達検査結果の「予期的追視」 、 「2個のコップ」の通過でも確認される。
さらには、新聞紙を突き破ってすべりおりた時の「ヤッタ!」といった達成感の表出、新聞紙を もっている指導者との視線の共有( 「共有関係」 )といった行動が表出されている。また、その
自閉症児のコミュニケーション棟能の発達と療育 133
破れた新聞紙をまるめてボ‑ルにみたてて投げ合うといった「やりとり」関係が成立していくの である。
この時期になると、換気扇への固執も、様々な場所の換気扇を見ること‑拡がっていく。そこ では、下から覗きこんだりして見えない部分を見ようとする探索行動がみられる。さらには、ひ もを引っぼって換気扇をまわすといった操作する対象‑と変化していくのである。また、この時 期、本児が関心を示した描画活動では、 Fig.2‑4のように、ことばで指導者に「カソキセソ、
カイテ」と要求し、指導者が「ジブソデ、カイテ」と応じるとグルグル丸を描く。そして、 「ナ ニ?」と問うと、 「カソキセソ」と応答する。また、指導者が「グルグルビュ〜」と描写された 絵の上を音声刺激を入れながら手を動かすと、本児も同じように自分でグルグル丸を描いては、
音声とともに手を動かすといった遊びを繰り返す。このように指導者からのことばがけによって 簡単な応答・やりとりができるといったように、ことばがコミュニケ‑ショソ手段としてI一定の 役割を果たし、活動そのものに意味性が芽生えていることが推察される。こうした行動とこの時 期の発達検査結果での吋逆の指さし( 「身体各部」 、 「絵指示」 )および言語による単発的応答 ( 「絵の名称」 )の獲得から、前言語的コミュニケ‑ショソから言語的コミュニケ‑ショソヘの 移行期と考えられる。
しかしながら、療育全体を通してみると、活動中の発語は多くなったものの、反響言語であっ たり、独語様で要求の相手が明確でないとか、自分の持ちものを取られた時など、それを取った 他児にことばで「アカソ、カシテ」と要求するものの、手を出す行動が伴わず、相手に要求が伝 わりにくいことが多いといった問題を有していた。獲得していることばをコミュニケ‑ショソ手 段として確かなものにしていくためには、指導者が本児のことばを受けとめ(反響言語や独語も
含めて) 、 「やりとり」関係を作り出していく試みが重要であろう。
第I11期 CA3 : 9‑4
まだ、自ら他児の遊び・活動の場に入っていくことはないが、この時期になると、すべり台を すべる、台からとびおりるなど他児がしていた遊び・活動を、他児がその場にいなくなってから とか、少し離れた場所でといったように場所・距離・時間を‑だてて、自分で再現するといった 行動がみられ始めるようになる。さらに、平均台などの器具遊びで自分には少し困難な活動の場 合には、傍にいる指導者に「オテテ、カシテ」とことばで要求を表現する場面もみられる。そし て、その活動をやりとげ、指導者に認められると達成感や得意気な表情までみせるようになる。
また、指導者が他児と関わって遊んでいるのをみていて、後で指導者の手を引っぼってその場所 まで行き、自分にも他児と同じ遊びをしてほしいとの要求を表出する姿も散見され始める。こう した行動は、他者の行動の形式的・形態的側面だけを取り込んでいたこれまでの時期とちがって、
「おもしろそう一日分もやってみたい」といった要求の高まりから出現したものと推察され、そ こに、他者の行動に内包された意味性をある程度認識しつつある姿とみてとれるのである。そし て、こうした姿は、他者と活動そのものや活動の結果を共有していくことを課題としたこの時期 の本児との療育的関わりでたいせつにしてきたものである。
さらには、この時期、じっと眺める対象であった換気扇のひも、スイッチを最初は指導者とと もにひっぼる、押すといった行動の繰り返しを経て、その後、動く‑止まるという変化に興味を 示し、自分で「動かす‑止める」といった対象を操作することへ、その興味を展開させている0 そして、描画でも、 Fig.5、 Fig.6のように、形の先行・先導の傾向を示しつつも、換気扇の形
134 田 村 浩 子・田 辺 正 友
をしっかりと把え、その形が複雑化し、さらに、コソセソト、ひもといった付属品までも描出し ていっている。そして、描写された換気扇の絵を介して指導者と「プチソ」 、 「グルグルビュー ソ」といいながら、スイッチを押して羽のように手を動かすといった「ふり遊び」がみられるよ うになる。この遊びの延長として、 Fig.7のように自動販売機の描写にまで拡がる。さらに、
Fig.8のように「動いている」換気扇、 「とまっている」換気扇とことばで表現しながら描写す るといった、自分の中でイメージ化していく活動が可能になり始める0
このように日常生活の中で、興味・関心のある活動と結びつけながら、積末やブロックなど視 覚的にとらえやすいもの、形のあるものを手がかりにイメージ化していくことが可能となる。し かし、まだ、この時期では、動物ごっこ遊びのように視覚的手がかりのない場面で自らが「〜の つもり」になる活動や、粘土など変化する素材を使っての形のないものから形のあるものを作り 出していく活動には肘難さを残している。いま獲得している力を他者との間で共有する力へ、自 発的に意味づけ活動に展開する力へと高めていくといった療育がたいせつにされた時期である。
考 察
K児は、前言語的コミュニケーションから言語的コミュニケーション‑の移行過程で、母親を
「特定の第二老」として形成し、その母親との関係を土台に母親以外のおとな‑とコミュニケー ショソの対象を広げている。また、その表現様式・方法も、自分の要求を ‑方的にクレーン現象 で、指きしで、そして‑一語発語で表現することから、伝える、さらに、まだ限られた人・場所・
場面ではあるが、ことばでの簡単な応答が可能となり始めるといった変容を示している。そこに は、ことばがコミュニケーショソ機能として一定の役割を発揮し始めてきていることを確認でき るのである。こうしたK児の発達変容をふまえて、自閉症児におけるコミュニケーショソ機能の 特質をめぐる若十の問題について考察しておきたい。
まず第一に、 Bruner (1974)やBatesら(1975) 、 Trevarthenら(1978)が指摘する、コミュ ニケーショソ機能の発達にとっての発達初期における子どもと養育者との情動的共有の重要さの 問題である。筆者らも療育活動で関わっている自閉症S児の前言語的コミュニケ‑ショソから言 語的コミュニケーションへの移行の問題を、特に「養育者との愛着関係の形成・充実」 (特定の 第二者の形成・充実)に視点をあてて縦断的に検討した結果を報告した(田村ら、 1993) そこ では、 S児の外界への超然とした関わりから母親を特定の第二着として認識し始め、母親を「避 難場所」 、 「安全基地」としながら、他者との関係での活動を展開する。そして、母子分離によ る活動への参加、活動の継続へといった変容過程を指摘した。 K児も、療育活動‑の参加がひと つの契機となって母f・分離不安を示し、その後、母親との愛着関係の形成が確かなものになり、
その母親との関係を支えに療育場面での指導者といった母親以外のおとなへとコミュニケ‑ショ ソの対象を広げていっている。 S児、 K児ともに発達経過の良好な、いわゆる「高機能」の自閉 症児であって、前言語的コミュニケーショソから言語的コミュニケーショソへの移行過程に限っ てみれば、 「みかけ」上は同じような経過を'J‑ミしている。しかし、母親を求める「度合い」やそ の形成から充実過程での様相や、さらに、その後の他者・他児への広がりにおいて若十の差異が みられる。この問題の詳細な検討は、さらに長期的・継続的な資料の積みLげによる分析に待ち たい。
第二に、自閉症児といわれるf‑どもたちも、決して非コミュニケーショソ的存在ではないとい
自閉症児のコミュニケ‑ショソ機能の発達と療育 135
う問題である Curcio (1978)やTager‑Flusberg (1981) 、 Wertherbyら(1984)の研究は、
自閉症児は ‑般的にコミュニケ‑ショソ機能が弱いのではなく、ある特定の種類のコミュニケ‑
ショソが弱いといった知見を示している。 [1分の要求を達成するための要求表現活動は可能であ るが、相手に自分の興味の対象を説明するといった叙述行動がみられにくいといった問題である。
こうした問題は、自閉症児にあってはことばを道具的に使っても、コミュニケ‑ショソ的には使
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K 『カ ソキ セ ソ力 イ テ』 T 『自分 で か いて 』 k u /T i ) ‥P
K 『カ ソキ セ ソ カイ テ』 T 『○ ○ ち ゃん か いて 』
自 ら小 さな 円錯 、 線 を描 く0 そ して 、 r グ ル グル』 自 ら内側 か らだ ん だ ん外 側 へ と円 を 描 く
と言 い な が ら大 きな 円錨 を描 く T 『これ何 ? 』 K r カ ソキ セ ソ』
F ig . 2 (C A 3 こ6 ) F ig . 3 (C A 3 : 6 )
一 一
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換 気扇 の 絵 に 「コ ソセ ソ ト」 、 「ひ も」 の描 写 が み ら
‑ * " ' ・.・ '".
K 『チ カ テ ツカ イ テ』 T 『C X⊃ち ゃん かい てl 応 答 の あ と、指 導 者 の 手 を ひ っぼ り、描 い て ほ しい と 要 求す る0 指 導 者 が長 方形 と円 を一 つ描 いて 『C X⊃ち や ん もかい て よJl と誘 うと 、碑 輪 の位 置 に円 を二 つ描 くO 指 導 者 が FC 0 ち ゃん 乗 っ て る よ』 と 四角 と人物 を描 く とそれ を模 倣 して 描 い た後 、 2 本 線 を描 く れ る T r何 か ft ? .1 k r 七 :‑ n J
F ig. 5 (C A 3 : 9 ) Fig . 4 (C A 3 こ6 )
▼義 嘉 島 換 気 甲
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自動 販 売 鞍 を描 い た後 、 rプ ッチ ソ ビ ピビりーJI と言 い な が ら ポ クソ を押 す 「ふ 。遊 び」 を す る I‑
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F ig . 6 (C A 3 : 9 ) F ig . 7 (C A 3 :ll)
萄 笥 ①
Fig.2‑8K児 の 描 画 表 現
① を措 いて F トマ ツテル ナ、 カ ソキセ ソj と言 った後 、 r l7 ワ ッテ ルJ) と言 い なが ら② の換 気 扇 を描 く
F ig . 8 (C A 4 : 7 )
136 田 村 浩 子IF!辺 止 友
用しないとのBaron‑Cohen (1988)の指摘とも共通するものである。 K児の場合にも、 1二記の ようなコミュニケーショソ機能における発達変容がみられ、ことばでの簡単な応答ができ始めて いる。しかし、それは「叙述性」の問題はもちろんのこと、反響言語や独語様発語であって伝達 意図が不明確であるとか、対象(相手・物)が明確でなく要求が柏手に伝わりにくいといった
「伝達性」での問題を残している。障害児の教育や療育に関わるものにとっては、子どもがどの 程度ことばを獲得しているのかというだけでなく、子どもの音声・ことばがどのような状況や文 脈のもとで使用されているのかといったコミュニケーショソの質を細かく検討することの重要性 を示唆するものであろう。
第 三に、コミュニケーション機能の発達の検討にあたっては、前言語的コミュニケーショソか ら言語的コミュニケ‑ショソ‑の移行といった発/I二的な検討と同時に、対人関係・認識発達といっ た他機能や行動特徴との発達連関的視点に立った分析がなされていく必要があることを指摘して おきたい。 K児のコミュニケ‑ショソ機能あるいは要求表現の力量の変容や認識発達レベルと関 連して、行動特徴、行動Lの「問題」もその質を変えていっている。筆者らは、ひとりの年長自 閉症児の小学校1年生から中学校3年生までの9年間の行動上の「問題」の質的変容を発達連関 的視点から検討した結果を報告した(田辺ら、 1990) 。そこでは、それぞれの時期の「問題」行 動の発生内容・頻度・場面状況と発達的力量や状況との間に関連性があることが見出されている。
自閉症児のコミュニケーションの問題や特異な行動特徴といわれる「同一性保持」行動などの問 題は、それ自体が不変的なものではなく変容していくといえるのである。自閉症児の示す つひ とつの行動を単発的な結果としてとらえ、 「特異」な行動とみてその直接的対応に追われるので はなく、コミュニケ‑ショソの意図・文脈やそれぞれの時期の発達レベル・特徴などとも関連さ せて把捉する中で、そうした「特徴」 、 「問題」がどのような状況で起こってきているのか、あ るいは、起こりやすいのかといった検討を進めていくことが重要である。
最後に、自閉症児の前言語的コミュニケ‑ショソから言語的コミュニケーションへの移行に際 して重要な役割を果たしていると考えられる「指さし」の獲得を、療育の問題と関連させて考察 しておきたい。 「指さし」は、現前場面に規定されているという点で、 「ことば」と完全に同質 のものとはいえないが、コミュニケ‑ショソ機能のなかでもとくに言語発達との関連性が指摘さ れる機能であるといえる。十どもが外界への積極的な働きかけを通して外界との関わりをつくり あげていく時、手や日を媒介としての関わりから言語を媒介としての関わり‑と転換していく過 程において、指さし行動が大きな役割を果たしていると考えられるのである。指さし行動は、
「離れた、興味の対象を相手に指でさし示して伝え、共に眺めようとする」行動であると特徴づ けることができるが、 「共有関係」を結びにくい自閉症児にあっては指さしはことば以上に獲得 されにくいものであろう。自閉症児の「指さし」の獲得の閃難さを指摘した報告は多い。例えば、
Lovelandら(1986)は指きしなどによっておとなとの「連帯注意」 ‑Bruner (1974)のいう joint attentionを成立させる能力は、自閉症児の場合、発達性言語障害児に比べて弱く、二語発 話水準の子どもでも容易ではないと指摘している。また、 Mundyら(1986)は、 「指さし」な どの前言語的コミュニケーションの有無が、自閉症児と健常児や精神発達遅滞児とを弁別する巌 も大きな指標であることを明らかにしている。自閉症児のコミュニケーション機能の問題が、こ とばによるコミュニケーショソが成立した後にも、前言語期における非言語的コミュニケ‑ショ ソ機能の重要な問題を内包していることを示唆するものであろう。ところで、療育活動で、いわ ゆる「同 一性保持」的なパターソ化された「もの」 (換気扇)を、基本的にはK児にとっては興
自閉症児のコミュニケーショソ機能の発達と療育 137
味・関心事であると位置づけ、指導者が、 K児のそうした行動に共感を示しながら積極的に入り 込む過程を通して、その「もの」を指さして「ことば」を表出したこと、そして、その「もの」
を介して「ことば」がコミュニケ‑ショソ手段として展開していったことに注目しておきたい。
療育的な関わりにおいて、その+なりの自己表現のあり方に共感しつつ、その興味・関心のある
・好物・遊び・活動を土台に、それらをH的性・意味性をもったものへと展開させていくことの重 要性を示唆するものであろう。 「コミュニケ‑ショソが取れない・うまくいかない」というのは、
子ども側だけの問題ではなく、援助するおとな側の子どもの理解のあり方の問題でもあるといえ よう。
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138
Developmental Process of Communicative Functoins and Remedial Education in an Autistic Child (1)
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{Department of Education for Handica♪'bed Chidren, Nara University of Education, Nara, 630 , Japan) (Received April 3, 1995)
Many researchers and clinicians have pointed out that one of the major deficits in autistic children is in the area of communication. Communication deficits are a central symptom of the autism syndorome. Communication problems seem to be intertwined with the social and cognitive difficulties that also characterize the autism syndorome.
The acquisition of communication ability is one of the most important practical
problems in the education for autistic chi一dren.
This study is one of a series of studies attempting to clarify the communication problems and to seek for the appropriate educational care in autistic children. In the present research, we attempted to analyze the developmental problems from the prelinguistic to the linguistic communicative functions of one autistic child in relation to the other functions such as cognitive development and behavioral problem. The subject was an 8‑year‑old autistic boy. We are training this boy from his 2 years 9 months in our class of remedial education for handicapped children.
In analyzing his developmental process of communicative functions for two years (2 years 9 months to 4 years 7 months old), three stages were divided from the prelinguistic to the linguistic communication.
The results indicated that his communicative skills become more complex with the progress of the cognitive development, but that he has still difficulties in the prelinguistic communicative abilities such as "joint attention and declarative〃 . performance . On the basis of these results, we discussed the problem of communicative function in autistic children from the viewpoint of the development of pragmatic communicative functions.
Various ways of educational care for autistic children must be sought after through grasping the meaning or background of the problems in their developmental process of communicative functions.