• 検索結果がありません。

博士(農学)浦野 知 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(農学)浦野 知 学位論文題名"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(農学)浦野   知 学位論文題名

性比と分散率の決定要因に関する理論的解析      および個体群構造の推定法

学位論文内容の要旨

  生態学とその関連分野―行動学、進化学、集団遺伝学、個体群生態学などの基礎分 野、およぴ農学、野生動物管理学、環境保全学などの応用分野においては、小個体群 間のっながり、ひぃては個体群の全容を推定・把握することがきわめて重要である。

しかしながら実証研究において、個体群の構造を定量的に把握することは、多くの場 合技術的に大きな困難を伴う。比較的小さな動物については個体にマークすることや 再捕獲の困難さ、また比較的大きな動物についてiま、その世代時間が長いことから、

生 涯 に わ た る 移 動 や 生 死 を 数 多 く の 個 体 で 追 跡 す る こ と6妻 困 難 で あ る 。   本研究の目的は、このような観点から直接に計測することの困難な個体群構造の推 定方法を開発ることである。そのために、特に個体群構造と密接な結ぴつきを持つ性 比(母親による両性の子どもへの投資比)と小個体群からの個体の分散率をとりあ げ、まず様々な構造の個体群に期待される進化的安定状態の理論的解析を行なった。

  性比を偏らせる要因について従来多くの論議があったが、あるESS(進化的安定 戦略)に含まれる要因すべてを抽出した研究はこれまでなかった。本研究ではバッチ 状に 構造化した個体群に有り得るすぺての生活史を想定して、7つのESSを算出し た。 この7っは、オス の分散範囲 がメスより 小さいよう なLMC(局 所的配偶者競 争)モデルと、逆にメスの方の分散範囲が小さいようなLRC(局所的資源競争)モ デ ル を 含 み 、 他 の5っは 本 研 究で 新 しく 提 出す るESS解で あ る 。こ れ ら7つ の ESS解それぞれを、仮定された生活史のパターンに従って要因の項に分割すること により、各ESSが含むすべての要因に関する理論解を得ることができた。これによ り性比を偏らせる要因を、@息子間競争率、◎娘問競争率、◎近親交配により娘に与 えられる遺伝的「ボーナス」、およぴ@異なるメスの体を運び手とした同祖精子集団 どうしの競争率の4つであることを明示した。@、@はオス、メスの分散範囲から、

◎は近親交配率から、また@は息子を配偶者競争に投入する母親数と、娘世代の分散 範囲により規定される。親による子への性投資比を偏らせるすべての要因を具体化す ることにより、任意の個体群構造と生活史パターンについて直接ESSを害き下せる ようになり、従来のような微分方程式を解く必要はなくなった。また理論解を構築す る際に明らかにしたルールから、個体群構造が同じであっても、生活史のエピソード

(交配、両性の分散時期および競争時期)の起こる順序によって、進化的に安定な性 投資比が変わるであろうことが示された。

  分散 率について は、ESS性 比を求めた のと同様のバッチ状個体群モデルを用い て、母親が息子を小個体群から分散させる場合のESS分散率と子世代のオス自身が

(2)

決 めるESS分 散確率 をそれぞれ 新しく提出 した。このESS解によ ルパッチか らの 分散がオスの子ども自身の戦略であるとき、一腹のオス子数(兄弟数)が増えるにつ れ、分散率が減少するとぃう結果が予測された。この傾向は、哺乳類や烏類など一腹 子数の比較的少ない種について顕著になるであろうことが判った。また、その理論的 背景として、ある1頭のオスからみて遺伝的利益を同じくする集団の割合:(自分十 兄弟数x血縁度)/(バッチ内オス数)が、一腹子数とともに減少することを示し た。これは、分散率のみならず、あらゆる個体間相互作用について、一腹子数の増加 とともに子の利己性が増すことを意味しており、進化生物学的にきわめて重要と考え ら れる 。 さ らにLMCによるオス の分散率と して求めた 上記のESS解が、小個 体群 内で競争する血縁集団の数が同じであればLRCによるメスの分散率と等しいこと、

集合・離散を繰り返すバッチにおいても、片方の性が常にパッチに留まる持続バッチ においても同.じ解となることを確かめ、一般化した。

  性比と分散率がともに血縁間の局所競争の回避のために可変であるとき、両戦略が 同時に最適化するような場合の両ESSの組み合わせ(同時最適解)を算出し、その パラメー夕反応性を調ぺた。性比は分散率に依存して変化するが、分散率は性比に依 存しない。同時最適解は分散生存率、バッチ創始メス数、個体群内バッチ数、オス子 数の4パラメータに対し、それぞれ特徴的なふるまいを示すが、特にパッチ創始メス 数に対し非線形的に反応した。これにより分散率がESSをとるような自然個体群に おいては、従来の理論研究の結論とiま逆に、小個体群が大きくなるにつれ性比がさら に偏る場合の有り得ることが判明した。

  以上の結果を踏まえて、現実に測定できるパラメータのみから、測定困難な個体群 の全容を推定する方法を開発した。観測できるパラメータは、@小個体群の大きさ、

@小個体群からの個体の分散率、◎一腹子数、および.@性比である。通常、測定が困 難であって、しかも小個体群間のつながりと個体群全体の規模を表すようなパラメー タと して、分散 生存率(a)と個体群中にある小個体群の数(M)を推定の対象とし た。

  推定の手順は、以下のようになった。

1)観察対象としている小個体群について、データセットとして上記@、@、◎、@

を計測する。

2)ESS分散 率を 仮定して得 たMとaの関係 式に@・@ .◎(およ び@)を代 入し て右下がりのM―a曲線を得る。

3)ESS性比 を仮 定して得た 別のMとaの関 係式に@. @.◎(お よび@)を 代入 して右上がりのM―a曲線を得る。

4)両曲線の 交点として 個体群内に ある小個体 群数、およ び分散生存率の推定値

(M,a)を得る。

  この方法により、いままで測定することのほとんど不可能であった分散生存率と、

個体の分散範囲となる個体群全体の規模を推定できる。また、こうして得た推定値を より確からしいものにする手法として、特定の推定値を得た際に期待される分子レベ ルのデータとの関係を明らかにした。

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    阿部    永 副 査    教授    斎藤    裕 副査    助教授   秋元信一

学 位 論 文 題 名

性比と分散率の決定要因に関する理論的解析      および個体群構造の推定法

  本 論 文 は 総 頁 数 149頁 、 図 52、 表 4を 含 み 和 文 で 書 か れ て い る 。   本 研 究 の 目 的 は 、 野 外 の 生 物 個 体 群 の 中 で 、 直 接 に 計 測 す る こ と の 困 難 な 個 体 群 構 造 を 、 計 測 可 能 な 少 数 の 要 素 か ら 理 論 的 に 推 定 す る こ と で あ る 。 特 に 個 体 群 構 造 と 密 接 な 関 係 を 持 つ 性 比 と 小 個 体 群 か ら の 個 体 の 分 散 率 を と り あ げ 、 ま ず 様 々 な 構 造 の 個 体 群 に 期 待 さ れ る 進 化 的 安 定 状 態 の 理 論 的 解 析 を 行 な っ た 。   性 比 を 偏 ら せ る 要 因 に つ い て 従 来 多 く の 論 議 が あ っ た が 、 あ る 進 化 的 安 定 戦 略

ESS) に 含 ま れ る 要 因 す べ て を 抽 出 し た 研 究 は こ れ ま で な か っ た 。 本 研 究 で は バ ッ チ 状 に 構 造 化 し た 個 体 群 に あ り う る す べ て の 生 活 史 を 想 定 し て 、 新 し く 提 出 し た 5つ のESS解 を 含 む7つ のESSを 算 出 し た 。 こ れ に よ り 性 比 を 偏 ら せ る も の と し て 自 然 界 に4つ の 要 因 が あ る こ と を 明 示 し た 。 こ の よ う に し て 、 親 に よ る 子 へ の 性 投 資 比 ( 性 比 ) を 偏 ら せ る す べ て の 要 因 を 具 体 化 す る こ と に よ り 、 任 意 の 個 体 群 構 造 と 生 活 史/ヾ 夕 ー ン に つ い て 直 接ESSを 書 き 下 せ る よ う に な り 、 従 来 の よ う な 微 分 方 程 式 を 解 く 必 要 は な く な っ た 。 ま た 理 論 解 を う る 際 に 明 ら か に し た ル ー ル か ら 、 個 体 群 構 造 が 同 じ で も 、 生 活 史 エ ピ ソ ー ド の 生 起 順 序 に よ っ て 、 進 化 的 に 安 定 な 性 投 資 比 が 変 わ り う る こ と 示 し た 。

  分 散 率 に つ い て も 、 同 様 の パ ッ チ 状 個 体 群 モ デ ル を 用 い て 、 母 親 が 息 子 を 生 息 地

( バ ッ チ ) か ら 分 散 さ せ る 場 合 のESS分 散 率 と 子 世 代 の オ ス 自 身 が 決 め るESS 散 確 率 を そ れ ぞ れ 新 し く 提 出 し た 。 こ のESS解 に よ り 分 散 が オ ス の 子 ど も 自 身 の 戦 略 で あ る と き 、 一 腹 の オ ス 子 数 が 増 え る に つ れ 、 分 散 率 が 減 少 す る と ぃ う 結 果 が 予 測 さ れ た 。 ま た 、 あ る1頭 の オ ス か ら み て 遺 伝 的 利 益 を 同 じ く す る 集 団 の 割 合 が 、 一 腹 子 数 と と も に 減 少 す る こ と を 示 し た 。 こ れ は 、 分 散 率 の み な ら ず 、 あ ら ゆ る 個 体 間 相 互 作 用 に つ い て 、 一 腹 子 数 の 増 加 と と も に 子 の 利 己 性 が 増 す こ と を 意 味 し て お り 、 進 化 生 物 学 的 視 点 か ら も き わ め て 重 要 と 考 え ら れ る 。

  性 比 と 分 散 率 が と も に 血 縁 間 の 局 所 的 競 争 の 回 避 の た め に 可 変 で あ る と き 、 両 戦 略 が 同 時 に 最 適 化 す る よ う な 場 合 の 両ESSの 組 み 合 わ せ ( 同 時 最 適 解 ) を 算 出 し 、 そ の パ ラ メ ー タ ー 反 応 性 を 調 ぺ た 。 性 比 は 分 散 率 に 依 存 し て 変 化 す る が 、 分 散 率 は 性 比 に 依 存 し な い 。 同 時 最 適 解 は 分 散 生 存 率 、 バ ッ チ 創 始 メ ス 数 、 個 体 群 内 パ ッ チ 数 、 オ

(4)

ス子数の4バラメーターに対し、それぞれ特徴的なふるまいを示すが、特にバッチ創 始メス数に対し非線形的に反応した。これにより分散率がESSをとるような自然個 体群においては、従来の理論研究の結論とは逆に、パッチ内小個体群が大きくなるに つれ性比がさらに偏る場合の有り得ることが判明した。

  以上の結果を踏まえて、現実に測定できるバラメーター、すなわち@/ヾッチ内小個 体群の大きさ、◎小個体群からの個体の分散率、◎了腹子数、および@性比等の測定 から、通常測定が困難で、しかも小個体群間のっながりと個体群全体の規模を表すよ うなノヾラメーターとして、分散生存率と個体群中にある小個体群(バッチ)の数を次 のように推定することができる。

1)ESS分散率を仮定して得たパッチ数と分散生存率の関係式に上の測定値を代入 して両者の関係を示すグラフを得る。

2)ESS性比を仮定して得た別のパッチ数と分散生存率の関係式に同じく測定値を 代入し、もうーつの、両者の関係を示すグラフを得る。  .

3)グラフの両曲線は、一方が増加関数、もう一方は減少関数であるところから、そ れらの交点として個体群内にあるバッチ数、および分散生存率の推定値を得ることが できる。

  この方法により、これまで測定することがほとんど不可能であった分散生存率と、

個体の分散範囲となる個体群全体の規模を推定できる。また、この推定値は分子レベ ル の 遺 伝 的 多 様 性 を 個 体 群 の 構 造 と 対 比 さ せ る 上 で も 有 用 で あ る 。   以上のように、本研究はこれまで実測が困難であった野生動物個体群の全容把握に 関して理論的な推定法を開発したもので、生態学、野生動物管理学等の応用分野に資 するところきわめて大である。よって審査員一同は最終試験の結果と合わせて、本論 文の提出者浦野知は博士(農学)の学位をうけるのに十分な資格があるものと認定 した。

参照

関連したドキュメント

)で比較すると,初冬播栽培は春播栽培と比べ窒素吸収量では大差がないものの,生育量お

とor./2(SK PV) にコードされるタンノくク質が、どのようにc,y II (SK W) の発現に関

   第

   本 研究 の成 果は、 更に 次のよ うな示 唆と課 題を提 起し ている

  RRSV のゲ ノム核酸を電気 泳動したところ,S9 の位置で 2 本のバンドが生ずるウイル ス株

  

I̲Ab 、k 分子a 鎖の56 番残基のアミノ酸が、 p43‑58 類似ペプチド上のアグレトープである 46

   エチレンとホスフィンが配位した低原子価ジルコノセン錯体Cp22r (CH2CHZ) (PMe3 )に種々 の 14 族元素 クロリド CIER3 ( E =Si , Ge , Sn)