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博士(理学)野本 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(理学)野本 学位論文題名

肝癌細胞におけるプロテインホスファターゼla 型(PPlQ )の      遺伝子発現に関する研究

学位論文内容の要旨

  蛋白質の可逆的リン酸化は、代謝、細胞増殖、分化、癌化、などの細胞機能の調節において主た る役割を果たしていることが知られている。そのりン酸化をプロテインキナーゼが、脱リン酸化を プロテインホスフんターゼが担っている。チロシンキナーゼに多く癌遺伝子が発見されたことか ら、細胞の癌化において、そのチロシンリン酸化の重要性は良く知られているが、プロテインキ ナーゼCの活性化剤であるTPAに発癌プロモーション活性があること、癌抑制遺伝子RBの活性調 節がセリン・スレオニンリン酸化で行われること、癌遺伝子の多く、特に転写因子がセリン・スレ オニンリン酸化で調節されていること、raf、m0丶mdなどのセリン・スレオニンキナーゼにおいて も癌遺伝子が発見されてきたことなどから、近年、セリン・スレオニンリン酸化とその癌化もしく は癌性変異との関連が注目されつっある。PP1においても、2―ハイブリッドによってRBとの結合 が確認され、また癌抑制遺伝子p53に結合するp53BP2がPPlを阻害すること、分裂異常を起こす酵 母変異株の原因遺伝子d¢および5.・D5班がPP1と高いホモロジーを有すること、などの事例から も、PP1と癌性変異との関連が示唆されている。

  当研究室において、移植性腹水肝癌細胞株AH13内への高グリコーゲン蓄積から、グリコーゲン 合成に必須であることが知られているプロテインホスフんターゼに注目し、酵素精製によりその性 質がウサギでクローニングされていた一型プロテインホスファターゼ(PP1)のものであることが明 らかとなり、ラットでのcDNAクローニングにより、そのーアイソフオームであるPPlacDNAを 得た。ノーザンブロッテイングによって正常肝細胞に対する種々の腹水肝癌細胞でのプロテインホ スファターゼmRNA発現を検討したところPPlaのみ一様に高発現していた。また、、蛋白量、PP1 活性共に上昇して韜り、その増加は核内で見られた。また肝発癌過程でのmRNAの発現上昇、部分 肝切除後の肝再生過程、細胞 周期を同調したNIH3T3細胞でもPPlamRNAの一過性の発現上昇を 観察している。

  以上のような背景により、癌化、癌性変異やその代表的な癌の形質の細胞増殖とPP1との関連 を明らかにするため、本研究ではそのmRNA発現上昇の解析を試みた。本論文の要点を以下の四点 にまとめた。

  1.移植性腹水肝癌細胞株AH13におけるPPla mRNAの高発現の原因を明らかにするため、そ のmRNAの安定性を肝細胞のものと比較したが、AH13では安定性の上昇は見られなかった。その

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結果、同細胞でのPPla mRNAの蓄積は、転写速度の上昇によることが明らかになった。

  2.1.の結果から、PPla転写調節機構を解析することが有意義であると考えられたため、そのプ ロモーター領域の遺伝子、っまりPPla遺伝子5 ‐上流域をラットゲノムライブラリーよルクロー ニングし、その塩基配列を翻訳開始点から上流約1.8 kbp、下流約0.4 kbpを決定した。翻訳開始点上 流約300 bpは、非常に高いGC含量の配列を有し、TATA box、CAAT boxは存在しなかった。これ は、細胞機能を維持する上で必須な蛋白をコードし、常に低レベルの発現を示す遺伝子である、ハ ウスキーピング遺伝子のプロモーターの特徴に一致した。また、第一エクソンは18アミノ酸残基を コードする領域が含まれていた。

  3.転写開始に関係する領域を同定するため、転写開始点の決定と、レポーター遺伝子による転写 活性化能を有する領域の同定を試みた。

  転写開始点は高GC領域内に複数存在しており、ハウスキーピング遺伝子の特徴と一致した。

  また、転写活性化領域を、レポーター遺伝子の実験系で良く用いられるNIH3 13マウス線維芽細 胞株と、腹水肝癌細胞株AH13およびそのコン卜ロールとして初代培養肝細胞を使用し、検討し た。NIH3T3および正常肝細胞では、高GC領域のみがPPlaの転写に影響を及ぼしていた。これに 対しAH13では、高GC領域のみならず、‑ 0.5〜‑0.8 kbpの領域が転写活性化にかかわっていること が明らかとなった。

4.3.に述べた様に、腹水肝癌細胞株AH13では高GC領域および‑ 0.5〜‑0.8 kbpの領域で転写活 性化していることが明らかとなったため、その領域に結合する因子について検討した。その結果、

ゲルシフトアッセイでは、高GC領域に対する転写因子Splの結合量が検討した5種の移植性腹水肝 癌細胞株すべてで正常肝細胞に比ぺ増加していた。また、‑ 0.5〜‑0.8 kbpの約0.3 kbpの領域のう ち、‑ 742   ‑ ‑ 862のフラグメントに対し、正常肝細胞核抽出液ではシフ卜バンドは見られなかった が、AH13核抽出液では、強いシフトバンドが見られた。このシフトバンドは」¥H7974F核抽出液で も観察 された が、AH109A、AH225Aの核抽出液では非常に弱く、AH130核抽出液ではまったく見 られなかった。UVクロスリンクによりそのシフトバンド形成に関係する因子の分子量を検討したと こ ろ、 約39、35、21 kDaの 三 つの 分 子 が結 合 す る可 能 性の あるこ とが明ら かとなっ た。

  以上の結果より、種々の移植性腹水肝癌細胞株においてPPla mRNA発現上昇するメカニズム は、検 討した すべての 細胞に おいてSpl結合量が増加すること、およびこれに加えてAH13、 AH7974Fでは、正常状態では発現、またはDNA結合活性が抑制されている何らかの因子が活性化 していることの両機構によるものであることが明らかとなった。本研究は、腹水肝癌細胞株におけ る PPla高 発 現 の 意 義 を 明 ら か に す る 上 で 、 足 が か り と な る 研 究 で あ る 。

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学位論文審査の要旨 主査    教授   菊池九二三 副 査    教 授    東    市 郎 副 査    教 授    谷 口 和 弥

学 位 論 文 題 名

肝癌細胞におけるプロテインホスファターゼla 型 (PPlQ )の      遺伝子発現に関する研究

   蛋 白質の可 逆的リン 酸化は、 代謝、細 胞増殖、分 化、癌化 、などの 細胞機能の調 節 において 主たる役 割を果た している 。その脱リ ン酸化を プロテイ ンホスフ んター ゼ が担って いる。チ ロシンキ ナーゼに 多く癌遺伝 子が発見 されたこ とから、 細胞の 癌 化におい て、その チロシン リン酸化 の重要性は 良く知ら れている が、プロ テイン キ ナ ー ゼC の活 性 化剤 で あ るTPA に 発癌 プ ロ モー シ ョ ン活性があ ること、 癌抑制遺 伝 子 RB の 活 性 調節 が セリ ン ・ スレ オ ニン リ ン 酸化 で 行われる こと、転 写因子が セ リ ン・スレ オニンリ ン酸化で 調節され ていること 、セリン ・スレオ ニンキナ ーゼに お いても癌 遺伝子が 発見され てきたこ となどから 、近年、 セリン・ スレオニ ンリン 酸 化 と そ の 癌 化 も し く は 癌 性 変 異 と の 関 連 が 注 目 さ れ つ っ あ る 。    当 研 究 室 に お い て 、 種 々 の 腹 水 肝癌 細 胞 でプ ロ テイ ン ホ スフ ん タ ーゼ mRNA 発 現 を検 討 し 、PPla の 特 異的 な 高 発現 を 観察 し て いる 。 また 、 蛋 白量 、 PP1 活 性 共 に 上 昇 し て お り 、 そ の 増 加 は 核 内 で 見ら れ た 。ま た 肝発 癌 過 程で の mRNA の発 現 上 昇 、 部 分 肝 切 除 後 の 肝 再 生 過 程 、 細 胞 周 期 を 同 調 し た NIH3T3 細 胞 で も PPla mRNA の 一過性の 発現上昇 を観察し ている。

   以 上のよう な背景に より、癌 化、癌性 変異やその 代表的な 癌の形質 の細胞増殖と PP1 と の 関 連 を 明 ら か に す る た め 、 本 研 究 で は そ の mRNA 発 現 上 昇 の 解 析 を 試 み た。本論 文の要点 は以下の 四点にま とめられる 。

  1 . 移 植 性 腹 水 肝 癌 細 胞 株 AH13 に お け る PPla mRNA の 高 発 現 の 原 因 を 明 ら か に す る た め 、 そ の mRNA の 安 定性 を 肝細 胞 の もの と 比較 し た が、 AH13 で は安 定 性 の 上 昇 は 見 ら れ な か っ た 。 そ の結 果 、 同細 胞 で のPPlamRNA の 蓄 積は 、 転写 速 度 の 上 昇 に よ る こ と が 明 ら か に な っ た 。

2 . 1 .の 結果か ら、 PPla 転写 調節機構を 解析する ことが有 意義であ ると考え ら

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れたため、そのプロモータ一領域の遺伝子、っまりPPla 遺伝子5 ‐上流域をラッ トゲノムライブラリーよルクローニングし、その塩基配列を翻訳開始点から上流約 1 .8 kbp 、下流約0.4 kbp を決定した。翻訳開始点上流約300 bp は、非常に高いGC 含 量 の 配 列 を 有 し 、 TATA box 、 CAAT box は 存 在 し な か っ た 。

  3 .転写開始点は高GC 領域内に複数存在しており、ハウスキーピング遺伝子の 特徴ど一致した。

   また 、転 写活 性化 領域を 、 NIH3T3 マウス 線維 芽細胞株と、腹水肝癌細胞株 AH13 お よ び そ の コ ン 卜 ロ ー ル とし て 初 代 培養 肝細胞 を使 用し 、検討 した 。 NIH3T3 およ び正 常肝 細胞で は、 高GC 領域の みが PPla の転写に影響を及ぼして いた。これに対しAH13 では、高GC 領域のみならず、―0.5 ‑ −0.8 kbp の領域が転 写活性化にかかわっていることが明らかとなった。

  4 .高GC 領域および‑ 0.5 〜‑0 . 8kbp の領域に結合する因子について検討した。

その結果、ゲルシフトアッセイでは、高GC 領域に対する転写因子Spl の結合量が 検討‐した5 種の移植性腹水肝癌細胞株すべてで正常肝細胞に比べ増加していた。ま た、‑ 0.5 〜ー0.8 kbp の約0.3 kbp の領域のうち、‑ 742 〜ー862 のフラグメン卜に対 し、正常肝細胞核抽出液ではシフトバンドは見られなかったが、AH13 核抽出液で は、強いシフトバンドが見られた。UV クロスリンクによりそのシフトバンド形成 に関係する因子の分子量を検討したところ、約39 、 35 、21 kDa の三つの分子が結 合する可能性がある。

   以上の実験成績より、PPla 遺伝子の5t ・上流域の塩基配列を決定し、転写因子 Spl の結合サイトのクラスターの存在を明らかにし、そのPPla 遺伝子の転写調節 機構を明らかにした。次いでこれを土台にして、肝癌の解析ヘ進み、腹水肝癌細胞 においてSpl の結合量の増大と、さらに上流域でこれと異なる特有なシフトバンド を明らかにした。

   これを要するに、著者は、セリン・スレオニンプロテインホスフんターゼPP1 の イソホームPPla の遺伝子構造を解明してその転写調節機構と肝癌における転写の 癌性変異を明らかにしたもので、プロテインホスフんターゼの遺伝子調節の面で貢 献するところ大なるものがある。

   よって、著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認

める。

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