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博士(医学)梶野喜一 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)梶野喜一 学位論文題名

マウスクラスn MHC 分子のアレル特異的抗原結合部位の解析 学位 論文内容の要旨

    はじめに

抗 原は 抗原提 示細 胞(APC) の中に取り込まれ、分解処理されてぺプチドになる。このべプ チ ド が 主 要 組 織 適 合 抗 原 (MHC)分子 に結合 し、MHC分子 とと もに 細胞表 面に 輸送 、発 現 さ れて 、T細 胞に 認識 され る。 従っ て、抗 原特 異的T細 胞の活性化には、T細胞レセプタ−

(TCR)、MHC分 子、 抗原 性ペ プチ ド間 の三 分子 複合 体形 成が 必要 である 。し かし 、高 度な 多 形性 を示すMHC分子 と結 合し 、T細 胞反 応を 惹起 でき るぺ プチ ド抗原 は、 一定 のア ミノ 酸配列を持っものに限られる。

  MHGク ラ スII分 子 と 結 合 す るぺ プチ ドは 、15から20個 のア ミノ 酸より 成っ てお り、 ク ラ スII分子上 の抗 原結 合溝 内のポケットにアミノ酸側鎖を入れて結合を安定にしてぃる。

た だし 、クラ スIIの対 立遺 伝子(アレル)産物間でポケットを形成するアミノ酸に変異が あるので、ポケット構造も異なり、結合するぺプチドの種類も異なる。.従って、ペプチド 上 のMHC結 合 部 位 ( ア グ レ ト ― プ ) に 対 応 す るMHC分 子 上 の ぺプ チド結 合部 位( デセ ト

― プ) を同定 する こと は、 重要である。今回は、これまで著者の教室の研究で明らかにな っ て ぃ る ハ ト チ ト ク ロ ― ムcの43番か ら58番残 基由 来のp43‑58お よびp43‑58類似 ペプ チ ド 上 の ア グ レ ト ― プ に 対 応 す る 、1‐ A分 子 上 の デ セ ト ー プ を 決 定 し た 。

    材料及び方法

1)ペ プチ ド: ペプ チド は、 自動 ペプ チド 合成 機430A (Applied Biosystems)で 合成 し、

HPLCに て95% 以 上 に 精 製 し た 。 ベ プ チ ド の アミ ノ 酸 構 成 は 、 質 量分 析装 置JMS−HX110 (JE○L)を用いて確認した。

2)T細 胞 ハ イ ブ リ ド ー マ :T細 胞 ハイ ブリ ドー マKE17‐1およ びKE45ー13はB10.A(4R)マ ウ スを46D50E54R (20nmol)、 またハイブリド―マBD5ー8はBl0マウスをp43‐58 (20nmol) で 免 疫 し 、 通 常 の 方 法 で 作 成 し た 。 各 種 ペ プチ ド に 対 す る 反 応 性は 、ハ イブ リド ーマ (1x105/wel|)をぺプチドおよびAPG (2x105/well)と共に24時間培養し、培養上清中のIL‑2 産生量により表わした。|L‑2の定量は、IL‑2依存性細胞CTLL‑2の[3H]‑thymidine取り込み で行った。

3)L細胞トランスフェクタント:I̲AbとIーAkの各領域(伐鎖シ―ト、矼鎖ヘリックス前半・

後半、p鎖シ―ト、D鎖ヘリックス)を組み合せて合成したりコンビナント|‑A遺伝子を導入

(2)

した細胞(Braunstein博士、Columbia Universityより供与)と、I‐AkoC鎖の53,56,57,59番残 基に点突然変異を加えた遺伝子(Mathis博士、Institut de Chimie Biologique Faculte de Medecineより供与)を導入したL細胞を使用した。

4) ペプ チド 結合 の競合的抑制試験:l‑Aトランスフウクタント(5x105)を、インヒビタ―

の46D50E54Aま た は46F50E54A (300m M)と 共 に37℃ で30分培 養 後 、 イ ン デ ィ ケ ータ ― と し て 用 い た ビ オ チ ン 化46D50E54Aま た は ビ オ チ ン 化46F50E54A (30mM)と 共 に37℃ 、 3時 間培 養し た。 続しヽて、phycoerythrin‑conjugated streptavidin (PE‐SA,Southern Biotechnology Associate,Birmingham,AL)で4℃、30分間染色した。染色の強度を増強 するため、ビオチン化抗streptavidin抗体(Vector Lab.,Buringame,CA)、そして再ぴPE‐ SAで染色した。

    結果

  当教室の以前の実験カ`ら以下のことが判明してし、る。1)p43‑58、およびその類似ペプ チ ド 上 の46番 と54番残 基は アグ レト ープ とし て作 用し、47番 から53番 残基 は主 とし てェ ピ ト ー プ(TCRと 結 合 す る 部 位 )と し て 機 能す る。2)p43‑58のエ ピト ―プ であ る50番残 基 を グ ル タ ミ ン 酸 に 置 換 し た ぺプ チ ド50Eも 、Abマ ウ ス に おぃ て 免 疫 原 性を 示す。3) 50Eの46番残 基に フェ ニル アラ ニン(F)を 持ち 、か つ54番残 基にア ラニン(A)を持つぺプチ ド46F50E54Aが 、50Eよ り もAb分子 に 強 く 結合 する 。4)Iニ 方、50EはAkマ ウス にお ぃて 免 疫原性 を示 さな ぃが 、46番残 基を アス パラ ギン 酸(D)、54番残 基をアラニンに置換レた ぺ プ チ ド46D50E54Aは 、Akマ ウ ス に 対 し て 有 意 のT細 胞 反 応 を 誘 導 す る。 今回 は、p43‑

58類似ペ プチ ド上 のア グレ トー プに 対応するI‐A分子上のデセトープを決定するために、

リコンビナントl‑A分子およびミュ―タント|‐A分子を使用した解析を行った。その結果以 下のことが判明した。

1)l‑A分 子の 抗原 結合 溝の 一方 の側 壁を 形成 するa鎖の 伐ヘ リッ クス部分の前半が、ペプ チド結合に重要であることが判明した。すなわち、この部分がAk由来のりコンビナント|‐

A分子 で は 他 の部 分の 由来に かか わら ず、Akに 結合 する ぺプ チド46D50E54Aが結 合し た。

逆 に、Q鎖のaヘリ ック ス部 分の 前半 がAb由来のりコンビナントI‐A分子には、Abに結合す るぺプチド46F50E54Aが結合した。

2)a鎖 のaヘ リ ッ ク ス 部 分 の 前 半 で は 、AkとAbの 間では53、56、57、59番 残基 にア ミノ 酸の差異が言忍められた。そこで、これらの残基を置換した変異|‐A分子に対するぺプチド の 結合性 を検 討し た。 その 結果 、Akに結 合す るぺ プチ ド46D50E54Aは、|‐Ak分子と同じ ア ル ギ ニ ン をa鎖 の56番 残 基 に 持 つ1‐A分 子 に 結 合 し 、 一 方Abに 結 合 す る べ プ チ ド 46F50E54Aは 、1‐Ab分 子と 同じ アラ ニン をa鎖 の56番残 基に 持つI‐A分子に結合すること が判明した。

3)上 記 の 結 合試 験の 結果は 、T細胞 ハイ ブリ ド― マを使 用し た機 能的 解析 の結 果と 一致 し た 。 特 に、T細 胞ハ イブリ ド― マKE17‑1は、Q鎖56番残 基が ァル ギニ ンで ある |‑A分子 よ り 提 示 さ れ た46D50E54Aに 反 応 し 、a鎖56番 残基 がア ラニ ンで あるl‑A分 子よ り提 示さ れた46F50E54Aに反応した。

(3)

    

考察

I̲Ab

、k 分子a 鎖の56 番残基のアミノ酸が、

p43‑58

類似ペプチド上のアグレトープである

46

番残基のアミノ酸と結合し、結合するぺプチドの特異性を決定すると考えられた。|‑A 分子Q 鎖の56 番残基は、ヒトMHC クラスII 分子で示されたポケット1 を形成する残基に相 当し、ポケット1 がぺプチドとの結合に重要であるとのデータと一致した。これらの知見 は、ベプチドに対する免疫反応を誘導したり、ベプチドワクチンを作成するための重要な 基礎データ―になると考えられる。

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(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

マウスクラスH MHC 分子のアレル特異的抗原結合部位の解析

  蛋白抗原は、抗原提示細胞に取り込まれ、分解処理されてぺプチド分子となる。このぺ プチド分子が、主要組織適合抗原(MHC)分子と結合した時始めて、T細胞に提示され、T細 胞を刺激することができる。従って分解されたぺプチド分子がMHCと結合するか否かは、元 の蛋白が抗原性を示すか否かの決定因子となる。

  本論文1ま、これまでMHC分子との結合様式が、詳細に解明ざれてきたハトチトクロームc 43−58(p43―58)アナログ分子を用い、ペプチド結合において働くIdHCクラスII分子のポケッ ト部位のキーアミノ酸を同定することを目的とした。p43−58アナログのうち、MHCに結合す るアグレトープの46番残基がフェニルアラニンの46F50E54A (46F)はAb分子、46番残基がァ スパラギン酸である46D50E54A(46D)は、A ̄分子と強く結合するoA ̄とAb分子間のりコンビ ナントcDNAを作製して、L細胞にトランスフェクトし、A゜/ ̄リコンピナント分子を発現さ せた。これらのトランスフェクタントと、46Fと46Dとの結合性を直接結合試験とT細胞ハ イブリドーマを用いた機能試験を併用して解析した。

  その結果、I一A分子のゼ鎖ロヘリックス前半が、p43−58アナログペプテドのアグレトープ 46番残基と結合する部位であることが判明した。A`とAb分子間で、ロ鎖aヘリックス前半 には、53.56.57.59番の4っのアミノ酸置換がある。そこでA`分子の4っのアミノ酸を1個 づっ置換して、46F,46Dとの結合性の変化を調べた。A`分子上の56番残基をArと同じアラニ ンに置換したAk(56A)は、他のアミノ酸は全てAk分子と同一にもかかわらず、46Fを結合し、

A゜タイプの結合性に変化した。以上の結果は、T細胞ハイプリドーマを用いた機能試験の 結果と完全に一致した。即ち、1−A分子の56番残基のアミノ酸は、アレル特異的にぺプチド 抗原を結合するポケットの、キーアミノ酸と結諭された。

  学位論文発表は、30名を越える聴衆の参加のもと行われた。上出教授より、p43−58以 外の抗原系でもI一A分子の56番残基が重要と云えるのか、56番目のアミノ酸置換によルポケ ットの構造に変化はないのか、T細胞ハイブリドーマを用いてIL−2産生を計測するアッセ イ系で問題はないか、柿沼教授よりMHC拘束に関わるMHC上の構造、リコンビナントやミュ ータント1一A分子をトランスフェクトする時のコンストラクトについて、トランスフェクタ ントと正常の抗原提示細胞上のI一A分子の発現量にっいて、ヒトのJdHCでもマウスと同様の

‑ 215

則 明

和 光

江 沼

小 柿

授 授

教 教

査 査

主 副

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ことが通用するのか、生田教授より、ウィ,ルスの免疫系からのエスケープ機構としてミュ ーテーションがあるが、エピトープとァグレトープとどちらのミューテーションが実際働 い て い る の か 等 の 質 問 が あ っ た 。 こ れ ら に 対 し て 申 請 者 は 適 切 に 回 答 し 得 た 。   以上、本論文は抗原提示において最も重要な働きをする、IdHC分子の抗原結合構造の詳細 を明らかにした。これらの成果は将来種々のヒト免疫疾患の治療、ワクチぞ合成など、医 学の分野で大いに活用されるもので、博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有す ると判定した。

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参照

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