博士(農学)江面 学位論文題名
メロンの組織培養において出現する体細胞突然変異と その利用に関する研究
学位論文内容の要旨
浩
メロンの細胞・組織培養における再生植物体には体細胞突然変異,が 高 頻 ・ 度 に 発 生 す る が 、 そ れ ら の 変 異 の 中 に は 育 種 的 に 重 要 な 諸 形 質に関す る有用な変異 が含まれてお り、植物育種 における重要な 遺 伝 的変異拡 大方法のーつ である。しか し、体細胞突 然変異の出現頻 度 は 培養系の 違いにより異 なると考えら れ、体細胞突 然変異を利用し た 育 種では変 異出現頻度の 高い培養系を 選び、種苗の 大量増殖では変 異 出 現頻度の 低い培養系を 選ぷなど目的 に応じて培養 系を選定するこ と が 必 要 とな る 。こ の よう に 、各 種培 養 系を 利 用す る 場合 、培 養 系と 体 細胞突然 変異の出現頻 度の関係を明 らかにしてお くことが極めて 重 要であ る。
本研究 では、1)倍数性 変異を指標と したメ口ン゛の各種細胞・組織 培 養系(不 定胚形成、不 定芽形成、苗 条原基形成お よび腋芽伸長培 養 系 )に お ける 体 細胞 突 然変 異の 出 現頻 度の評価、2)倍数性変異の 出 現 機 構 の解 析 、3)高 頻度 に 出現 す る倍 数 性変 異の 利 用、4) 体 細胞 突 然変異を 利用した低温 伸長性メロン の選抜を行い 、メロンの細胞 ・ 組 織培養に よる再生植物 体に生じる体 細胞突然変異 の出現様相を明 ら かにし 、その実用的 な有効性を検 証した。
1)倍r倥 変冥 をt標と し たメ ロ ンの 各 種の 培 蹇系 にお ′ ナる 触 細艚 突
#.e変冥の出 現頻度の評毎
不定胚由来 の再生植物体 を調査した結果 、四倍体が高 頻度に出現し て おり、こ の頻度は培養 系における他 の体細胞突然 変異の出現頻度 を 推 定する指 標のーっとし て有効である と考えられた 。そこで不定芽 形 成 、不定胚 形成、苗条原 基形成および 腋芽伸長培養 系による再生植 物 体 での四倍 体の出現頻度 について調査 したところ、 不定胚または不 定 芽 由 来 の 植 物 体 で 高 く 、 そ れ ぞ れ31% 、30% で あ り 、 苗 条 原 基 由 来 の植 物 体で は4%で あ った 。 腋芽 伸 長培養系によ る再生植物体に は 四 倍体が確 認できなかっ た。これらの 点からメロン の培養系の中の 不 ‑ 318―
定芽形成および不定胚形成培養系では、倍数性以外の体細胞突然変異 の発生も多いものと推察された。また、組織培養技術はメロンの新し い倍数体作出技術になると考えられた。
2)倍数讎変冥の出現椶緯の解析
二倍体メ口ンを外植片とした場合の不定芽形成および不定胚形成培 養系の培養初期から植物体再生までの培養細胞の染色体数変化を調べ るとともに、四倍体メロンを外植片とした場合の両培養系における再 生植物体の染色体数を観察し、組織培養に伴う倍数性変異の出現機構 につ いて考察した。不定芽形成培養系では培養開始1週間後から2週 間後という早い時期に培養細胞の倍数性変異が急速に拡大すること、
植物体再生過程で二倍性および四倍性細胞から選択的に植物体が再生 していることが明らかになった。不定胚形成培養系では、培養の進行 に伴い細胞中の染色体数の倍数化が急速に進行し、このような細胞の 中のニ倍性、四倍性および八倍性細胞から選択的に不定胚が形成され、
更に、その中のニ倍性および四倍性不定胚から植物体が再生してくる ことが明らかになった。また五倍性以上の高次倍数性細胞からの植物 体再生は困難であると推測された。以上のことから、メ口ンの不定芽 形成または不定胚形成培養系では以下の経過で四倍体が高頻度に出現 すると考えられる。即ち、1)組織培養の進行に伴い培養細胞の倍数 性変 異が急速に拡大する。2)不定芽および不定胚の分化過程で、こ れらの多様な細胞中のニ倍性、四倍性および八倍性細胞から選択的に 不定芽および不定胚が形成され、この段階で異数性や他の倍数性細胞 は排除される。3)更に植物体再生の段階でニ倍性および四倍性の不 定芽および不定胚から植物体が再生する。
3´席 t7度に出現する倍数盤変興の利用
メロンの細胞・組織培養における再生植物体は、ニ倍体、四倍体お よ.びニ倍性と四倍性細胞をキメラにもつ混数体のみであった。そこで 組織培養によって作出した四倍体を利用して育種や遺伝分析に役立つ 三倍体や異数体の作出を試みた。三倍体は二倍体X四倍体の交雑で得 られた発育不全胚を、異数体は三倍体Xニ倍体の交配より得られた未 成 熟 種 子 を MS培 地 に 無 菌 播 種 す る こ と で 作 出 で き た 。 4)鉢 細 胞 突 然 変 興 を ,f用 し た 低 温 伸 長 讎 メ ロ ン の 選 抜 休細胞突然変異の出現頻度が高いとみられる不定芽形成および不定 胚形成培養系を利用して、有用変異体として、低温下で果実肥大性に
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優れた個体の選抜を試みた。まず効率的な選抜法の開発を行ったとこ ろ低温発芽性を指標として母集団の中から果実肥大性が不良な個体を 多量に排除することが可能であると考えられた。そこで、この方法を 用いて低温下で発芽する個体を不定芽形成および不定胚形成培養系に より再生した植物体の後代から選抜した。低温下における選抜系統の 発芽率は、選抜を繰り返すことによって向上し、系統により発芽率に 10% から100% までの 変異 幅があ ったことから、低温発芽形質は、
複数の遺伝子に支配される遺伝形質であると推定された。これら低温 発芽性により再生植物体の後代から選抜した47系統を低温条件下で 栽培した結果、着果が不良な系統と裂果の多い系統が総計で16系統 合まれており、最終的には31系統で果実の収穫調査が可能であっ.た。
こ の 中で48% に相当 する15系統 が果実 肥大性 におい て元 系統よ り 優れており、低温発芽性によって選抜した系統には、低温下での果実 肥大も良好な系統がかなり高い確率で含まれていた。果実の発育時期 別の肥大速度を品種・系統間で比較すると、初期、中期および終期の 肥 大 速度 が元 系統よ り大 きい系 統は、 初期で43%、 中期 で65% お よび終期で19%となり、特に、中期の肥大速度の大きな系統が選抜 されたと考えられる。
本 研究 の成 果は、 更に 次のよ うな示 唆と課 題を提 起し ている 。 1)メ口ンでは、四倍体が他の植物より多く出現するので、それらを 様々な場面で利用するため、培養方法の改良などにより倍数性変異を 制御することが必要である。2)不定胚形成または不定芽形成培養系 が新しい染色体倍加法となることが明らかになったので、半数体作出 技術と組み合わせて、形質の早期固定法の開発が期待される。3)体 細胞突然変異を利用して低温発芽性や低温果実肥大性に優れた変異体 を選抜できたので、今後は耐病性、品質、生態的特性などに関しても 有用変異体の選抜が期待される。4)低温発芽性は、作物栽培におい て極めて重要な形質であり、選抜系統を生理学的に解析することによ り、低温発芽性の出現機作が明らかになる可能性がある。5)低温発 芽性や果実低温肥大性を育種に利用するには、両形質に関与する遺伝 子の固定、数の推定、優劣および両遺伝子の連鎖などについての解析 を進る必要がある。
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主 副 副
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
メロ ンの 組織培 養に おい て出現 する 体細 胞突然変異と その 利用に 関す る研 究
本 論 文  ̄ は ,6章 およ び 緒言 ,摘 要, 弓f用文 献か らなり ,図40, 表27 を 含 む151頁 の 和 文 論 文 で , 別 に 参 考 論 文13編 が 添 ・ え ら れ て い る 。 メ ロ ン の 細 胞 ・ 組織 培 養 によ り体 細胞突 然変 異を 高頻度 に発 生さ せ,
こ れ を 品 種 改 良 に 利用 す る こと が望 まれて いる 。し かし, 体細 胞突 然変 異 の 出 現 頻 度 は 培 養系 の 違 いに より 異なる と考 えら れ,体 細胞 突然 変異 を 利 用 し た 育 種 で は変 異 出 現頻 度の 高い培 養系 を選 ぷなど ,目 的に 応じ て 培 養 系 を 選 定 す るこ と が 必要 とな る。し たか って ,培養 系を 利用 する 場 合 , 培 養 系 と 体 細胞 突 然 変異 の出 現頻度 との 関係 を明ら かに して おく こ と が 極 め て 重 要 であ る 。
本 研 究 で は ,1) 倍数 性 変 異 を 指 標 と し た メ ロン の 各 種 細胞 ・組 織培 養 系 ( 不 定 胚 形 成 ,不 定 芽 形成 ,苗 条原基 形成 およ び腋芽 伸長 培養 系)
に お け る 体 細 胞 突 然変 異 の 出 現 頻 度 の 評 価 ,2)倍 数 性 変 異の 出現 機構 の 解 析 ,3) 高 頻 度 に 出現 す る 倍 数 性 変 異 の 利 用 ,4) 体 細 胞 突 然 変 異 を 利 用 し た 低 温 伸 長性 メ ロ ンの 選抜 につい て検 討し ,メロ ンの 細胞 ・組 織 培 養 系 に お け る 体細 胞 突 然変 異の 出現な らぴ にそ の実用 的な 有効 性を 明 ら か に し た 。
隆郎 郎 俊嘉 田下 田 久 原木 喜 授授 授 教教 教 査査 査
1) 倍数性変異を 指標としたメロンの各種培養系における体細胞突然変 異の出現頻度の評価
不定胚由来の再生植物体を調査した結果,四倍体が高頻度に出現して おり,この頻度は培養系における他の体細胞突然変異の出現頻度を推定 する指標のーっとして有効であると考えられた。そこで,不定胚形成,
不定芽形成,苗条原基形成およぴ腋芽伸長培養系による再生植物体での 四倍体の出現頻度について調査したところ,不定胚または不定芽由来の 植物体では高く,それぞれ31%,30%であったが,苗条原基由来の植物 体 では4%と低く ,腋芽伸長培養系では四倍体が確認できなかった。こ れらの点からメロンの培養系の中の不定胚および不定芽形成培養系では,
倍 数 性 以 外 の 体 細 胞 突 然 変 異 の 発 生 も 多 い も の と 推 察 さ れ た 。 2)倍数性変異の出現機構の解析
二倍体メロンを外植片とした場合の不定胚形成およぴ不定芽形成培養 系における・培養初期から植物体再生までの染色体数の変化について調べ るとともに,四倍体メロンを外植体とした場合の両培養系における再生 植物体の染色体数を観察し,組織培養に伴う倍数性変異の出現機構につ い て検討した。 不定芽形成培 養系では,培養 開始1週間後か ら2週間後 の早い時期に培養細胞の倍数性変異が急速に拡大すること,植物体再生 過程で二倍性およぴ四倍性細胞から選択的に植物体が再生することが確 認された。また,不定胚形成培養系では,培養の進行に伴い細胞の染色 体数の倍加が急速に進行し,このような細胞の中の二倍性,四倍性およ ぴ八倍性細胞から選択的に不定胚が形成され,更に,その中の二倍性お よ ぴ 四 倍 性 不 定 胚 か ら 植 物 体 が 再 生 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。 3)高頻度に出現する倍数性変異の利用
メロンの細胞・組織培養における再生植物体は,二倍体,四倍体およ ぴ二倍性と四倍性細胞をキメラにもつ混数体のみであった。そこで,組 織培養によって作出した四倍体を利用して育種や遺伝分析に役立つ三倍
体 お よ ぴ 異 数体 の 作出 を 試 みた 。 三倍 体 は二 倍 体x四 倍体 の 交雑 で 得ら れ た 発 育 不 全胚 を ,異 数 体 は三 倍 体x二 倍体 の 交配 か ら得 ら れた 未 成熟 種 子 をMS培 地 に 無 菌 播 種 . す る こ と に よ り 作 出 す る こ と が で き た 。 4)体細胞突然変異を利用した低温伸長性メロンの選抜
体 細 胞突 然 変異 の 出現 頻 度 が高 い とみ ら れる不 定胚形成お よぴ不定芽 形 成培 養 系を 利 用し て ,低 温 下で の 果実 肥 大 性に優れた 個体の選抜 を試 み た。 こ の場 合 ,低 温 発芽 性 を指 標 とし て 母 集団の中か ら果実肥大 性の 不 良な 個 体を 大 量に 排 除す る こと が 可能 で あ り効率的で あることが 明ら かにな ったの.で ,この方法 を用いて, 不定胚形成 およぴ不定芽形成培養 系によ り再生した 植物体の後 代から,低 温下で発芽 する個体を選抜した。
こ れら の 低温 発 芽性 に より 選 抜し た47系 統 を低温 条件下で栽 培したとこ る.,48.%に相当する15系統が果実肥大性において元系統より優れており,
低温発 芽性.によ って選抜し た系統には ,低温下で の果実肥大も良好な系 統がかナょり高い確率で含まれることが確認された。
以 上 のよ う に, 本 研究 の 成 果は , 不定 胚 または 不定芽形成 培養系を用 い るこ と によ り 体細 胞 突然 変 異が 出 現し , こ れにより低 温伸長性お よぴ 果 実低 温 肥大 性 の高 い メロ ン 系統 の 作出 が 可 能であるこ とを実証し てお り,学 術的にも重 要であり, ヌロン栽培 技術の改良 に寄.与するところが 大きい。
よ っ て, 審 査員 一 同は , 別 に行 っ た学 力 確認試 験の結果と 合わせて,
本 論 文 の 提 出 者 江 面 浩 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格があるものと認定した。