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博 士 ( 工 学 ) 長 尾 覚 博

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 長 尾 覚 博

学 位 論 文 題 名

高 温 加 熱 を 受 け る マス コ ン ク リー ト 部 材 内の 水 分 移 動 と 物 性 変 化 に 関す る 研 究

学 位 論 文 内容 の 要 旨

  近年、大型コンクリー卜構造物の建設が増大し、コンクリートに要求される性能も より高度化している。特に原子カ発電所施設に用いられるコンクリートは、原子炉運 転時あるいは事故時に高温を受けることを想定し、高温を受けてもコンクリートが健 全であることが要求されている。このため、その設計ではあらかじめ想定された高温 条件下でのコンクリートの品質評価が重要となり、これが構造物の安全性確保に不可 欠なものとなっている。

  従来、゛高温を受けるコンクリートの物性評価は、主として通常の建築構造物を対象 としたものであり、火災時の熱応力評価、ある`ヽは火災を受けたコンクリートの品質 評価を目的とした研究が主流である。このため、対象とするコンクリート部材も寸法 が小さく、断面寸法の大きな部材が高温を受けた場合を想定した研究事例弦、その実 験の困難さもあって非常に少ないのが現状である。

  そこで、本研究では高温加熱を受けるコンクリート部材の品質評価を行うにあたり、

マスコンクリートの条件を考慮し、部材内部の水分移動に着目して、水分移動の特性、

お よ び 水 分 移 動 が コ ン グ リ ー ト の 物 性 に 与 える 影 響 につ い て 検討 を 試 みた 。

  第1章は序論であり、高温を受けるマスコンクリート部材の物性評価の現状と問題 点にっいて述ベ、高温を受ける部材の物性評価が適正に行われていないことを指摘し た後、本研究の意義、目的について述べた。

  第2章は、高温域での含水率測定法の開発に関するものである。独じめに、コンク リート中の水分移動の測定法に関する既往の技術とその特徴を調査し、コンクリート 断面内の含水分布を測定する方法として、電気抵抗を利用した電極法が最適であるこ とを指摘した。さらに、この方法を高温域にまで拡張するため、校正曲線を作成する 際の供試体のシール方法を確立し、高温域におけるコンクリート部材内の含水分布の 測定を可能にした。また、常温において乾燥が持続する実際の構造体コンクリ,ート部 材 によ る 実 験か ら 、 この 方 法 が十 分 に 実構造 物に適用 し得る ことを確 認した 。

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  第3章で は、 小型 のテ ス卜 ピースを用いて常温から600℃までの温度範囲におけ るコ ンク リ ート 物性 を温 度および 水分移動の影響を考慮して実験的に検討した。

  コンクリートの物性として、力学特性にっいては圧縮強度、弾性係数、割裂強度、

熱特性については熱伝導率・熱拡散率、比熱、密度、線膨張率(温度一熱変形特性)

をとりあげ、加熱中の水分移動とその逸散を許容したアンシール条件と、水分移動を 拘束し た175℃までのシール条件を 主要な実験要因として実験方法を検討し、その 影響を考察した。ここでは、実験の困難さから、これまでその値が明確ではなかった シール条件下の各特性値を求めたほか、加熱中に水分移動が生じるアンシール条件で は弾性係数をはじめとして各物性値の変化が大きいものの、シール条件ではその変化 が小さぃことを示し、従来アンシール条件下のもとで評価されていた高温下のコンク リー卜の物性が、加熱時の水分移動の条件を考慮することにより異なるものとなるこ とを明らかにした。

  第4章は、実断面をもっ模擬部材による実験 である。原子カ発電所施設などのマス コンクリートでは 加熱が全面にわたることはない。このため、ここでは従来ほとんど 例のなぃ部材の一面が高温加熱された場合の内部温度と水分状態を実験的に検討した。

この結果、高温加 熱されるコンクリ―ト部材内部には、温度と含水率の分布に応じた 蒸気圧が発生し、 水分移動にはこの圧力形成が寄与していることを示した。また、高 温加熱されるマスコンクリート部材には水分移動が顕著な乾燥した(アンシール条件)

ゾーンと、高温域 ではあっても水分を保持している(シニル条件)ゾーンが併存する こと、、このシー ル条件のゾーンとアンシール条件のゾーンとの境界には極めて含水 率の高いゾーンが 形成され、この高含水率のゾーンが水分の移動をさまたげ、乾燥の 進行を遅らせてい ることを明らかとし、マスコンクリート部材では加熱時の挙動が断 面の小さな一般部 材とは異なることを指摘した。さらに、加熱終了後の模擬部材から コアを採取し、加 熱後のコンクリートの圧縮強度、弾性係数の分布と温度、含水率と の関係を検討し、 含水率と弾性係数の低下との関係が明瞭であることを指 摘した。

  第5章では、第3章および第4章の結果に基づき温度、水分移動と物性との関係を 整理し、その影響を総括的に考察した。ここでは、一面を高温加熱されるマスコンク リート部材内の物性変化を、温度分布の計算および小型テストピースの実験結果にも とづぃて考察し、マスコンクリート部材内で生じるコンクリー卜の物性変化を経時的 に示した。

第6章は結諭であり、得られた結諭をまとめている。

  以上、高温加熱を受けるマスコンクリー卜部材の水分移動および物性変化に関する 研究検討を行I、、原子カ発電所施設などの高温を受ける、ことが想定される大型構造部 材の品質評価を行う上で有用な結果と知見を得た。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

高温加熱を受けるマスコンク リート部材内の 水分移動と物性変化に関する研究

  近年 、大型 コンクリート構造物の建設が増大し、コンクリートに要求される性能も より 高度化 している。特に原子カ発電所施設に用いられるコンクリートは、原子炉運 転時 あるい は事故時に高温を受けることを想定し、高温を受けてもコンクリー卜が健 全で あるこ とが要求されている。このため、その設計ではあらかじめ想定された高温 条件 下での コンクリートの品貫評価が重要となり、これが構造物の安全性確保に不可 欠な ものと なっている。しかし、従来高温を受けるコンクリートの物性評価は、主と して 通常の 建築構遺物を対象としたものであり、火災時の熱応力評価、あるいは火災 を受 けたコ ンクリートの品貫評価を目的とした研究が主流である。このため、対象と する コンク リート部材も寸法が小さく、断面寸法の大きな部材が高温を受けた場合を 想 定 した 研 究 事例 は 、 その 実 験 の 困難 さもあっ て非常 に少ない のが現状 である 。   本研 究は、 高温加熱を受けるコンクリートの物性変化の状況を小型供試体による実 験お よび実 大模擬部材による実験により明らかにしたものであるが、実験にあたって

・高温時のマスコンクリート部材内の含水状況の変化を重要な要因として取り上げ、こ れを 洞定す るための水分計の開発から取り組むなど、従来の研究では見られなかった 新たな見地から研究を進め成果を得ている。

    本研究の成果とその評価を要約すると以下のようになる。

  1)コンクリート内部の含水率の瀾定法として、常温域のコンクリートを対象に一部 の研 究者に よって用いられてきた電極法に検討を加え、校正曲線を作成するための実 験を 工夫す るなど、著者はこれを高温域での潤定法として拡張することに成功してい   る。100℃ を上回る 高温条 件下のコ ンクリート部材内の含水率の瀾定はとれまで行   われておらず、その確立は、本研究の成果を得るうえで重要な役割を果たしている。

  2)小型 供試体に よる実験 では、 常温から600℃ までの範 囲で、 圧縮強度、弾性係 数、 鋼裂強 度値を、熱特性値として熱伝導率、熱拡散率、比熱、密度、隷膨張率(温

治 智 昇 攻 英 田 野 伯 鎌 井 佐 城 授 授 授 授 教 教 教 教        

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度ー熱変形特性)を得ている。従来、このような特性値の瀾定が加熱時にコンクリー トからの水分の拡散を許容したアンシール条件でなされているため、著者はこれに加 えて175℃ までの温 度範囲 で、水分 の移動を 拘束し たシール 条件で の実験を行い、

この結果として、水分移助が拘束されたシール条件下では、高温加熱を受けたコンク リー卜の物性変化が従来知られていたものよりも小さく、加熱時の水分条件がコンク リ ー ト の 物 性 変 化 に 及 ば す 影 Iの 大 き い こ と を 明 ら か に し て い る 。 3つ 実断 面 を もっ 模擬部 材による600℃ までの高 温加熱 実験では 、実際の 部材が 加 熱さ れる状 況を考1して部材の一面から加熱が進行する条件を採用している。このよ うな実験は、従来ほとんどなされておらず、これにより、高温加熱を受けるマスコン クリー卜内部の温度、水分、圧力形成の状況を初めて明らかにして`ヽる。この実験で は、高温加熱を受けるマスコンクリート部材内には温度と含水率の分布に応じた蒸気 圧が生じ、水分移動にはこの圧カが寄与していること、また一方で倣、部材内に極度 に乾 燥した ゾーンと100℃ を上回る 高温域で あって も水分を 保持し ているゾーンが 併存し、この境界に極めて含水率の高いゾーンが形成され、この高含水率ゾーンが水 分の移動をさまたげているなどの新知見を得ている。この結果は、マスコンクリート 部材が高温加熱を受けた場合の状況が断面の小さな一般部材とはかなり異なって`ヽる ことを示している。

4)高温 加熱を受 ける部材の温度履歴を解析し、その結果をもとに部材の物性変化を 検討している。この結果、高温加熱を受けるマスコンクリート部材内で生じる物性変 化が小型のテス卜ピースによる実験では充分に再現することが困難であること、この 理由が、マスコンクリート部材が高温加熱を受けた場合に生じる特異な水分・圧力状 況によることを示している。

  以上、本研究は、これまでその実態が明らかではなかった高温加熱を受けたマスコ ンクリー卜部材内で生じる物性変化を明確に示したもので、建築構造・材料学分野に 新 知 見 を 与 え 、 そ の 進 歩 に 寄 与 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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