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博 士 ( 農 学 ) 峯 村 伸 哉 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 峯 村 伸 哉

学 位 論 文 題 名

木 材 の 調 色 に 関 す る 基 礎 的研 究

学 位 論 文 内 容の 要旨

木 材 は 、 建 物 の 内 装 材 や 外 装 材 、 室 内 の 装 飾 品 な ど と し て 化 粧 的 な 用 途 に 広く 使わ れ て し 、 る 。 し か し 最近 は優 良大 径材 が少 なく なり 、同 じ樹 種 であ りな がら 固有 の色 調 と は 異 な る 材 も 目 立 っ よ う に な っ て き た 。 ま た 木 材 は 有 機 物 で あ る た め、 伐倒 後の 保 存 や 製 品 化 ま で の 加 工 工 程 、 さ ら に は 製 品 と な っ た 後 の 使 用 で 、 さ ま ざ ま な色 の変 化 を 伴 う こ と が 多 い 。 実 際 の 利 用 で は 、 変 色 の 除 去 あ る い は 、 着 色 し て 新 た な色 調の 材 にす るこ とが求められる。

色 は 強 度 の よ う に 根 幹 に か か わ る 物 性 で は な い が 、 製 品 の 良 否 を 左 右 す る 。 した が っ て 色 の 問 題 は 木 材 の 利 用 上 極 め て 重 要 な 課 題 の ー つ で あ る 。 本 研究 は木 材の 調色 に 関 す る 材 色 、 変 色 原 因 の 解 明 と そ の 除 去 、 着 色 お よ び 塗 装 に よ る 改 質 に 関し て行 った も の で あ る 。

(1)  材 の 色 に つ い て 、 色 の 評 価 や 、 変 色 あ る い は 着 色 の 度 合 い を 正 確 に 把 握 す る 測 定 法 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 三 次 元 の 座 標 で 数 値 化 で き る 表 色 系 の 使 用 が 適 し てい る こ と が わ か っ た 。 一 般 的 に 木 材 は ほ と ん ど が 赤 〜 橙 〜 黄 の 範 囲 に 分 布 し て い た 。代 表 的 樹 種170種 の 三 属 性 の 特 徴 を 針 葉 樹 と 広 葉 樹 で 比 較 す る と 、 広 葉 樹 の 色 相 の 分 布 範 囲 は 針 葉 樹 の そ れ よ り も 広 か っ た 。 広 葉 樹 の 明 度 の 分 布 範 囲 は 針 葉 樹 の そ れ よ りも     一

広 く 、 明 度 の 高 い 領 域 の 分 布 数 は 針 葉 樹 と 広 葉 樹 で は 差 が な い も の の 、 低 い 領 域 では 広 葉 樹 が 多 か っ た 。 彩 度 に つL、 て は 針 葉 樹 は 広 葉 樹 より も鮮 や かさ の高 い範 囲に 分布     一‑ 442―

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していた。地域別の特徴に関し、日本産材、北米材、南洋材は、明度が高くなると黄 色味が増し、彩度が高くなると赤味が増す傾向が認められた。また、寒い地域に生育 する材は暖かい地域のものに比べて、明度が高く、彩度が低かった。

色と用途の関連では、白色材は神聖あるいは清潔な用途に、黒色材は厳粛で高級な 感じの用途に適すること等が明らかとなった。また、樹種単独の使い方のほか、辺材 と心材の同一材面での組み合わせ、異樹種同志の組み合わせ、木材と他材料との組み 合わせ等、二種以上の色を組み合わせる可能性が明らかとなった。

(2)  木材に変色を生ぜしめる10の要因を取り上げ、変色の発生状況、特徴、除去、

防止を検討した。

実用面で最も問題となる変色は、鉄イオンと木材のフェノール性水酸基との反応に よる黒色の汚染(鉄汚染)である。この除去にはシュウ酸が有効だが、酸やけによる 赤 変と 光照 射で 黒色 に戻 ると いう 欠点 がある 。これに対しては、材面のpHを弱酸性 に保 ち、 安定な 錯体を作る弱酸性含リン無機塩(例リン酸二水素ナトリウム)の処 理で 解決 できた 。

光変色のーつの経路は、リグニン中のカルボニル基が光を吸収して励起し、空気中 の酸素が介在して進行するものであり、ラジカルの生成や光酸化反応を伴うことが明 らかとなった。光変色は、濃色化のみ、濃色化と退色化の混合、退色化のみに大別さ れた。一般に濃色化する材が多く、とくに材色の白い材は彩度の高い橙色方向に変化 した。紫外光は濃色化を、390nmから580nmまでの可視光は明色化を、580nm以上の波 長光はほとんど光変色を引き起こさないことが、それぞれ明らかとなった。

光変色の抑制は、カルボニル基との反応性が高いセミカルバジド処理に効果があっ た。この薬剤は多くの木材の初期の光変色をとくに抑制した。これにさらに紫外線遮

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蔽 に優れる白色顔料を、木目がぼけない程度に添着すると一層抑制効果が高まった。

ポリエチ レングリ コール(PEG),は、 光吸収で励起したりグニンのカルボニル基に よる水素 の引き抜 によって或いは自身の光分解によってラジカルを生成し、さらに空 気中の酸素と反応して過酸化ラジカルとなり、着色物質或L、は着色前駆物質と反応し てその 共役系を 切断する ことが示唆された。したがって本来の材色が白い木材への塗 布は、変色を効果的に抑制した。

酵素によ る変色の防 止は、熱 、酸、アルカりなどを付与し、酵素の活性を逓減させ ることである。トドマツ辺材割箸の黄変は、沸騰水浸漬で除去と防止が可能であった。

挽材後のスギの黒心は挽材直後の材面への酸またはキレート剤の塗布で防止できた。

  樹脂の滲 出による変 色は、水 蒸気蒸煮 と加熱または減圧との組み合わせによる脱脂 およびポ リウレタン 塗装で効 果的に防 止し得た 。

(3)  埋れ 木の着色は 、鉄イオ ンがフェ ノール性 水酸基と 結合して 錯体を作ること によ り 達成 し 得 た。 鉄 塩と し て は硫 酸 第 一鉄 の 希薄 水 溶 液が 最 も良 好 で あった。

  ハルニレ の色をケヤ キの色に すること 、或いは、チークの不良材色を健全な褐色の 色調にす ることは、 ニトロ化 と酸化が 期待できる硝酸の塗布により達成された。処理 後の材面 は、炭酸塩 の希薄水 溶液の塗 布により、変色を伴なわずに弱酸性にできた。

  木材をア ンモニアガ スの雰囲 気中に放 置すると、重厚な褐色の色調になった。着色 は褐色の 高分子物質 の生成に よること が示唆された。ホルムアルデヒド系接着剤の接 着製品へ の処理は、 材の着色 、ホルム アルデヒド臭の除去、酸性硬化剤の中和による 接着カの 向上という 三:つの 効果をも たらした 。

(4)  塗膜 を作らない 撥水剤の 塗布材の 表面は光 照射でり グニンが 分解し、その分     一

解物およ び撥水剤が 降雨にと もなって 流出することが示唆された。材面をあらかじめ

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耐光性顔料で着色しておくと、材面への照射光量が減少し、劣化が抑制され、美的効 果も 得ら れた 。ワッ クス 剤とPEGの併 用塗 布は、 光変 色抑 制を 兼ね た表 面保 護法と     ―,

して、内装用の白木材の表面仕上げに有効であった。

  塗 膜を 形成 する塗 料6種類の処理では、溶剤揮散型塗料は反応硬化型塗料よりも塗 膜の保持時間が短い結果を得た。また透明塗料は不透明塗料よりも光変色が大きく、

塗膜の保持時間が短かかった。塗装材の光変色では、塗料溶媒に可溶な木材抽出成分が 塗膜に集積し光変色に関与することが示唆された。フタル酸樹脂系塗料は塗膜の保持 にすぐれていた。

  アクリル系樹脂含浸木材のポリウレタン塗装処理で、カラマツとエゾマツでは樹脂 含浸処理により、塗膜割れと波打ちの発生の遅延、光変色および熱変色の低減が認め られた。両樹種の樹脂含浸材は、塗膜割れ指数から屋外使用が可能との結果を得た。

  以上、本研究の結果、変色や着色にはフェノール性水酸基が大きく関与しているこ とが明らかとなった。化学薬剤による着色では暗色系の色調が得られるので、汚染の 混入した材も十分活用でき、安価な材から付加価値の高い製品への変換が可能となっ た。変色の除去あるいは防止の方法は、安価な 薬剤を使用した簡便な作業であり、木 材 加 工 工 業 で の 実 用 面 に 十 分 取 り 入 れ る , こ と が で き る こ と を 示 し た 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

木材の調色に関する基礎的研究

  本 論 文 は6章 か ら な り 、 図120、 表57、 附 表1、 引 用 文 献153を 含 む 総 頁 数21 7頁の和文論文である。別に参考論文42編が添えられている。

  木材は構造材、パルプ以外に内・外装材、家具、什器および装飾用として化粧的用途に 用いられ、その材色は強度のように根幹に関わる物性ではないが、製品の良否を左右する。

従って材色、変色に関わる問題の解明、高付加価値製品への着色、塗装による色調の評価 は木材利用上極めて重要ナょ課題の1っである。

  本論文はこれらの観点から材色の特徴、変色の原因解明と改善、着色および塗装による 色調の改質に関する諸点にっいて研究を行ったものである。

  本研究の結果は次のように要約される。

1)材色の測定は表色系(Lab表色系)により行い、測色には照射方向、材面の微細な凸 凹、合水率が強く影響することを見いだした0170樹種の測色の結果、色相の分布は広 葉樹の分布範囲は針葉樹のそれより広く、高い明度領域では差がない。一方彩度|ま針葉樹 は広葉樹より鮮やかさの高い範囲に分布する。日本産材、北米材、南洋材は明度が高くな ると黄色味が増し、彩度が高くなると赤色味が増す傾向が認められた。これらの結果は色 調の観点から樹種単独での利用、同ー面での辺材と心材、異樹種間、木材と他材料との組 合せに利用し得ることを示唆した。

2)光 照射 に 伴 う材 の 変色 は 紫 外線 に よ り濃 色 化、390nm〜580nmの可視 光で明色化 を発現し、一方58 0nm以上の波長では殆ど光変色を起こさナょいことを明らかにした。光 変色には木材成分中リグニンが強く関与している事をりグニンモデル化合物の固相での光 照射により確認した。これは構造中のa―カルボニル基および芳香環共役二重結合の励起に 伴い励起酸素(102)を発生せしめ、これがフェノール性水酸基からフェノキシラジカルを 生成させ、さらにキノンの生成およびビフェニル構造の生ずることを示唆した。一方、こ のカルボニル基の効果を逓減させるため、セミカルパシドの材面への塗布が初期光変色を

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志 實 三 拓 宜     和 嘉 谷 澤 澤 野 笹 寺 深 佐 授 授 授 授         教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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抑制することを見出した。ポリエチレングリコール(PEG)は光照射により、生成するラジ カルが着色に帰因するラジカルおよび着色物質と反応し、着色構造の生成を抑制すること を砕木パルプ(GP)を用いたモデル実験で明らかにした。これは白色化の現象と強く関係 し、本来、材色が白い材に対しそ優れた変色抑制剤になることを指摘した。木材中のフェ ノールと鉄により生じる鉄汚染はシュウ酸で除去されるが、酸ヤケによる赤変と光照射に よる黒変を併発する。シュウ酸に弱酸性のりン酸二水素ナトリウムを併用することで解決 されるが、これは形成する金属醋体のりン酸鉄がシュウ酸鉄より光に安定であることに依 ることを明らかにした。

3)着色による高付加価値化処理で、前章の金属醋体形成による汚染の生成が着色操作に おける重要な方法のーっであり、埋れ木の色調の発現に極めて有用である。アンモニアは 木材の比較的内部まで浸透可能であり、重厚な褐色の色調を与える。これは木材中のフェ ノ―ル性抽出成分がァンモニアによルフェノラートイオンを形成し、その酸化重合により、

水や有機溶媒不溶の濃褐色成分への化学変換による。この結果、材の死節やシミの存在感 が希薄になる。またホルムアルデヒド系接着剤を用いた複合製品へのこの処理は材の着色、

ホ ル ム ア ル デ ヒ ド 臭 の 除 去 、 接 着 カ の 向 上 に 寄 与 す る こ と を 見 い だ し た 。 4)木製品表面の塗装で、塗膜を形成しないパラフィンおよびロウは撥水性に比較的優れ、

一方はシリコン系撥水剤は初期段階での塗装性能保持に効果があるが、経時劣化が認めら れた。ワックス剤とPEGの併用塗布は光変色抑制を兼ねた表面保護法として、特に内装用 の白木材の表面仕上げに有効である事を明らかにした。塗膜を形成する溶媒揮散型のニト 口セル口ースラッカ一塗料は、反応硬化型フタル酸樹脂塗料に比ベ塗膜の保持時間が短い。

後者は 促進耐候 試験で1000時間処理後も健全な塗膜を保持していた。あらかじめアク リル系樹脂を含浸させた木材へのポリウレタン塗装は、塗膜割れと波打ちの発生遅延、光 変色および熱変色の逓減が認められた。特に環孔材のミズナラの塗装仕上げにおいてこれ らの逓減効果が顕著であった。

  以上のように本研究は木材の色調に関わる材色、変色、着色および塗装の基礎的問題を 検討し、欠点の発生機構を明らかにし、またこれらの改善および高付加価値材料への改質 法を具体的に提示したものである。・これらの成果は関連分野で高い評価を受けているばか り で な く 、 実 用 面 で の 応 用 に 重 要 な 知 見 と 指 針 を 与 え る も の で あ る 。   よって審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文の提出者 峯村伸 哉は博士 (農学)の 学位を受 けるのに 十分ナよ資格があるものと認定した。

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参照

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