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博 士 ( 農 学 ) 名 和 規 夫 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 名 和 規 夫

学 位 論 文 題 名

   塩 水 浸 入 阻 止 型 地 下 ダ ム 計 画 の た め の 塩 水 浸 入 予 測 解 析 と 塩 水 管 理 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本論文 は、米 須地下ダムを例として、塩水浸入阻止型地下ダム計画のための塩水浸入解析と塩水 管理について検討したものである。

  農林水 産省が 南西諸島で国営かんがい排水事業により完成させた大規模な地下ダムは、米須地下 ダムを 除くと全 て堰上げ型の地下ダムであり、米須地下ダムは本邦初の本格的な塩水浸入阻止型地 下ダム である。 米須地下ダムでは、止水壁建設後に東西の基盤の凹所に残留塩水塊が残った。残留 塩水塊 域の鉛直 方向の電気伝導度は、5,000肛S/cm前後で大きく変曲し、下位に濃い塩水が存在す ることから、鉛直塩分I濃度が・5,00011S/cmの水位を淡水と塩水塊の境界面とし、この水位を塩淡境 界位と した。締 切後の塩淡麑界位は、西部でEL.−30. Om、東部でEL.―40. Omの位置にある。米須 地下ダ ムは、供 用時に貯水位が海水面より大幅に低下するため、貯水位低下時には止水壁及ぴ止水 壁基礎 部から新 たな塩水が浸入し、貯水池内の残留塩水塊と合流して塩水塊が増大する。その塩水 が取水井に引き寄せられ、潅漑用水の塩分濃度が許容塩分濃度(200mg胞)を上回ることが危瞑される。

このた め、飽和 ・不飽和浸透流モデル、密度を考慮した移流分散モデルを作成し、潅漑用水の塩分 濃度を事前に予測すると共に、必要な対策を検討することとした。

  移流分 散モデ ルの基本理論である移流分散方程式には、計算の安定性に大きな影響を及ぽ朝多流 項が含 まれてい る。そのため、水槽模型実験による塩水濃度分布状況の再現計算の比較により、解 析プロ グラムと してDTRANSUを選定 した。 更に、 選定し たDTRANSUによる水槽模型実験を検証した 結果、 止水壁の 越流状態の流速分布や拡散部分の広がりを明瞭に再現でき、米須地下ダムの塩水浸 入予測 解析に適 用できると判断した。また、移流分散方程式には分散項を含み、分散の効果は、物 質が移 流のみに よって通常占有する領域を越えて広がるため、分散の特性を左右する縦分散長を適 切に捉 えること が重要となる。このため、米須地下ダムの取水井付近でトレーサー試験を行い、縦 分散長 を1〜5mと 推定し た。更 に、西部 残留塩水塊域で揚水試験を行い、残留塩水塊域の電気伝導 度の変 化を解析 し、残留塩水塊域の縦分散長はlmと推定した。これらにより、取水井周辺の縦分散 長は安 全陸を考 慮して5mとし、 残留塩 水塊付 近の縦 分散長 は1m、取水井ーの影響度が低いことを 考慮して上流域の縦分散長は1mと推定した。

  断面2次元水理モデルによる解析は、取水井近くの集中流を表現できず全体が平行流となるため、

取水井 近くの漏 斗状水位低下による流速の増大は生じず、塩水の到達時間は実際よりも遅くなり、

取水濃 度は低め に計算 される 。この ため、 平面2次元モデルを用いて、取水井周りの漏斗状の水位     ー130―

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低下を考慮した場合 と考慮しない場合について 、塩水が取水井ヘ到達する過程を追った計算によっ てその差を求め、断面2次元水理モラシレによる解析結果を補正した。

  計画基準年で、止 水壁等からの浸入塩水、残 留塩水塊による取水井への影響、更に島尻層群泥岩 に 挟 在 す る 凝 灰 質 砂 層 を 通 じ た 浸 入 塩 水 を 加 え た 取水 井へ の 影響 につ いて 検討 を 行っ た。

  残留塩水塊が存在 する箇所では、残留塩水塊 の影響が大きく、締切後の塩淡境界位のままで計画 取水を行った場合、 許容値を大幅に超えること が予測される。このため、西部及ぴ東部残留塩水塊 の塩水を除去し、残 留塩水塊の塩淡境界位を西部EL.−35. Om、東部EL.―43. 5mまで下げる管理を 行えぱ、計画基準年 相当の渇水においても、残 留塩水塊域近傍の取水井の取水塩分濃度は許容値を 下回る。そこで、こ の水準を管理塩淡境界位と し、本隆的な潅漑期前に除塩して管理レベルまで低 下させることとした。その除塩対象量は西部残留域でQ=38,500rrr、東部残留域でQニ40,000m3となる。

  残留塩水塊は存在 しないが、止水壁に近い箇 所は、取水最高塩分濃度が許容値を超えると予想さ れる。このため、浸 入塩水の影響を受けない上 流側取水井からの取水用水と合流させることで許容 濃度以下となること 、対象井の取水期間が3日間 と短いことから、混合希釈管理することとした。

  計画基準年以外の 渇水年に諮ける塩水浸ス解 析を、最も残留塩水塊及て隈入塩水の影響を受ける 箇所で行った。計画 基準年に近い渇水年におい ては、取水塩分濃度は許容値以下であり、本格的な 潅漑期前に除塩を行 い、管理塩淡境刷立までに 低下させる管理を行えぱ、潅漑用水の塩分濃度を許 容値以下に維持でき る。また、計画基準年を超 える大きな渇水年では、取水制限をせずに貯水位を 低下させると大量の 塩水が浸入し、取水塩分濃 度は許容値を大幅に超える。このため、米須地下ダ ムからの取水制限を行い、貯水位が計画最低貯水位(LwL.―11.6m冫を絶対に越えない取水・貯水位管 理を行う必要がある。

  両残留塩水塊域の 除塩対象量を、除塩期間を1カ月(平日実施)と推定して除塩施設の必要能カを 計算し、両域に各3基の除塩井を設置した。西部 残留塩水塊の長期除塩試験は、5日間(120時間)

連続揚水、揚水停止2日問(48時間)を1スパン とした除塩を12回実施した。2カ月(8スパン)まで の除塩で概ね管理塩淡境界位のEL.―35.0m以下になり、除塩効果が明瞭に現われた。しかし、除塩 回数を重ねても電気 伝導度の変化が小さい地点 があるため、残留塩水塊域の全てで管理塩淡境界位 を満足するのではな く、全体を平均して管理塩 淡境界位を満足していることを確認して試験を終了 した。計画では除塩 期間を1カ月としていたが、 西部残留域の除塩期間は約2カ月程度必要と考え る。東部残留塩水塊 の長期除塩試験は、全体的 に効率よく除塩され、計画通りの1カ月(4スパン)

の除塩により、西部 と同様に全体を平均して管 理塩淡境界位(EL.―43.5m)にまで低下させた。

  これらの成果に基 づき、実際の管理に反映さ せるために、米須地下ダム塩水管理マニュアルを整 備した。また、以上 の調査、解析、対策などの 一童の検討は、塩水浸入阻止型地下ダム計画の塩水 浸入予測解析と塩水 管理に関する基本的技術と して位置づけることができ、今後の塩水浸入阻止型 地下ダム等の事業計画樹立及て鰈実施にあたって活用されるものである。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 准教授

長澤 長谷川 井上

学 位 論 文 題 名

徹明 周一     ――L     jR

   塩 水 浸 入 阻 止 型 地 下 ダ ム 計 画 の た め の 塩水 浸入 予測 解析と塩水管 理に関する研究

  地 下ダ ム の 一形 式 で ある 塩 水 浸入 阻 止 型地 下 ダ ム は、止 水壁設置 後、基 盤上に塩 水塊が 残 留 す る場 合 が あり 、 こ の挙 動 把 握と 管 理 対策 が 重 要な 課題とな る。本 研究は、 沖繩県米 須 地 下 ダム を 対 象と し て 残留 塩 水 塊、 及 ぴ 塩水 浸 入 の挙 動を把握 し、農 業用水供 用を目途 と し た ダ ム 管 理 に 具 体 的 な 指 針 を 与 え る こ と を 目 的 と し た も の で あ る 。   米 須地 下 ダ ムは 供 用 時に 貯 水 位が 海 水 面よ り 大 幅 に低下 するため 、貯水 位低下時 には止 水 壁 及 び止 水 壁 基礎 部 か ら新 た な 塩水 が 浸 入し 、 貯 水池 内の残留 塩水塊 と合流し て塩水塊 が 増 大 す る 。 そ の 塩 水 が 取 水 井 に 引 き 寄 せ ら れ 、 潅 漑 用 水 の 塩 分 濃 度 が 許 容 塩 分濃 度 (200mg/2)を 上 回る こ と が危 惧 さ れる 。 こ の ため 、 飽 和・ 不 飽 和浸 透 流 モデ ル 、 密度を 考 慮 し た 移流 分 散 モデ ル を 作成 し 、 潅漑 用 水 の塩 分 濃 度を 事前に予 測する と共に、 必要な対 策 を 検 討す る こ とと し た 。

  移 流分 散 モ デル の 移 流分 散 方 程式 に は 、計 算 の 安 定性に 影響を及 ばす移 流項が含 まれて い る 。 水槽 模 型 実験 に よ る塩 水 濃 度分 布 状 況の 再 現 計算 の比較に より、 解析プロ グラムと し てDTRANSUを 選 定 し た 。 更 に 、 選 定 し たDTRANSUに よ る 水 槽 模 型 実 験 を 検 証 し た 結 果 、 流速 分 布 や拡 散 部 分の 広 が りを 明 瞭 に再 現 で き、 米須地下 ダムの 塩水浸入 予測解析 に 適 用 でき る と 判断 さ れ た。 ま た 、移 流 分 散方 程 式 には 分散項を 含み、 分散の特 性を左右 す る 縦 分散 長 を 適切 に 捉 える こ と が重 要 と なる 。 こ のた め、米須 地下ダ ムの取水 井付近で ト レ ー サー 試 験 、残 留 塩 水塊 域 で 揚水 試 験 を行 い 、 取水 井周辺の 縦分散 長は安全 性を考慮 し て5mと し 、 残 留 塩 水 塊 付 近 の 縦 分 散 長 はIm、 取 水 井 へ の 影 響 度 が 低 い こ とを 考 慮 し て 上 流 域の 縦 分 散長 を1mと 推 定 した 。

  計 画基 準 年 で、 止 水 壁等 か ら の浸 入 塩 水、 残 留 塩 水塊に よる取水 井への 影響、更 に島尻 層 群 泥 岩に 挟 在 する 凝 灰 質砂 層 を 通じ た 浸 入塩 水 を 加え た取水井 への影 響につい て、断面 2次 元 水理 モ デ ルに よ り 検討 を 行 った 。 残 留塩 水 塊 が 存在 す る 箇所 で は 、残 留 塩 水塊の影 響 が 大 きく 、 締 切り 後 の 塩淡 境 界 位の ま ま で計 画 取 水を 行った場 合、許 容値を大 幅に超え る こ と が 予 測 さ れ る 。 こ の た め 、 残 留 塩 水 塊 の 塩 水 を 除去 し 、 塩淡 境 界 位を 西 部EL.― 35.Om、 東 部EL.―43.5mま で 下 げ る こ と に よ っ て 、計 画 基 準年 相 当 の渇 水 に 韜 いて も 、 残 留 塩 水塊 域 近 傍の 取 水 井の 取 水 塩分 濃 度 を許 容 値 以下 にするこ とがで きた。そ こで、こ

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の水準を管理塩淡境界位とし、本格的な潅漑期前に除塩して管理レベルまで低下させるこ ととした。その除塩対象量は西部残留域で

Q=38

,500:013、東部残留域でQ=40,OOOD13とな る。

  

残留塩水塊が存在しなくとも、止水壁に近い箇所では、取水最高塩分濃度が許容値を超 えることが予想された。この場合には、浸入塩水の影響を受けない上流側取水井からの取 水用水と合流させることで許容濃度以下とすることができることから、混合希釈管理する ことで農業用水に供用できることを確認した。

  

計画基準年以外の渇水年における塩水浸入解析を、最も残留塩水塊及び浸入塩水の影響 を受ける箇所で行った。計画基準年に近い渇水年においては、取水塩分濃度は許容値以下 であり、本格的な潅漑期前に除塩を行い、管理塩淡境界位までに低下させる管理を行えば、

潅漑用水の塩分濃度を許容値以下に維持できる。また、計画基準年を超える渇水年では、

取水制限をせずに貯水位を低下させると大量の塩水が浸入し、取水塩分濃度は許容値を大 幅に超える。このため、米須地下ダムからの取水制限を行い、貯水位が計画最低貯水位

(LWL.

一11.6m)を絶対に越えない取水・貯水位管理を行う必要があることを指摘した。

  

残留塩水塊域に設置した東西各3基の除塩井による長期除塩試験の結果、西部残留塩水 塊では、5日間(120時間)連続揚水〜揚水停止2目間(48時間)を1スパンとした2カ月(

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スパン)の除塩で、全体を平均して管理塩淡境界位(EL.−35.Om)を満足することを確認、し た。また、東部残留塩水塊の長期除塩試験では、計画通りの1カ月(4スパン)の除塩によ り、西部と同様に全体を平均して管理塩淡境界位(EL.−4.3.5m)にまで低下させることがで きた。

  

これらの一連の研究成果は、米須地下ダム塩水管理マニュアルとして実際の管理に反映 させると共に、塩水浸入阻止型地下ダム計画の塩水浸入予測解析と塩水管理に関する基本 的技術として位置づけられ、今後の同形式地下ダム事業計画樹立及び事業実施に活用され るものと期待される。よって審査員一同は、名和規夫が博士(農学)の学位を受けるに十 分な資格を有するものと認めた。

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参照

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