博士(獣医学)テイラジットルングルアングキジクライ
学位論文題名
The Cellular Distribution of Src‑suppressedCKinase Substrate (SSeCKS) in the IvIouse :
In Sitrt Hybridization and Immunohistochemical Study (マウスにおけるsrc 抑制C キナーゼ基質SSeCKS の細胞発現 一励situ ハイブリダイゼーションと免疫組織化学的研究)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
src‑suppressedCkinase substarte (SSeCKS、エセックス)は細胞骨格の再構築を 介して、細胞の形、動き、分化を調節する重要な蛋白質キナーゼCの基質である。
本研究科の北村らは、大腸菌リポポリサッカライド(LPS)投与によルマウスの脳 において発現量が著しく増加する遺伝子を探索し、そのうちのーっを同定したと こ ろ 、SSeCKSで あった 。SSeCKSは、脳 を含 むい くっ かの臓 器の 血管 内皮 とり ン パ性 組織の 細網 細胞 に選 択的に 発現 して いた 。SSeCKSはLPSに反応して早期 に特定の細胞に発現することから、炎症状態における働きをはじめその機能解析 が 待た れる。 本研 究の 目的は、機能と関連づけてSSeCKSの細胞および細胞内発 現 を明 らかに する こと である。検索の主な手法は、SSeCKSに対する特異抗体に よ る免 疫組織 化学 的染 色とSSeCKS mRNAに 特異 的な アン チセンスオリゴヌクレ オチドをアイソトープ標識したものをプローブに用いたin situハイブリダイゼ ーションである。
第1章では、肝臓とりンパ節における詳細な局在と異物取り込み能との関係を 扱 った 。正常 マウ スの 肝臓とりンパ節でのSSeCKSの発現は免疫組織化学では検 出 でき なかっ た。LPS刺激 によ り、SSeCKSの強 い免 疫活 性が肝類洞の内皮細胞 と りン パ節髄 質の 細網 細胞に認められた。電顕下では、SSeCKSの免疫活性は両 細 胞に おいて 細胞 膜に 沿って局在した。これらSSeCKS発現細胞は正常では炭素 粒 子と20 nmラ テッ クスビ ーズを少量取り込んだだけであるが、LPS刺激により 取 り込 み能が 著し く上 昇した。このときの内皮細胞では、SSeCKSは飲み込み小 胞 や空 胞と密 接な 位置 関係にあったことからも、SSeCKSが外来粒子の取り込み に 関 係 が あ るこ とが示 唆さ れた 。SSeCKS含 有細 胞は 細網内 皮系(RES)の 重要 なメンバーであり、LPSによる炎症状態において異物を盛んに取り込む。現在、
RESの概 念は否 定さ れた 感があ るが 、SSeCKSはRESに 共通の 機能 分子 とし て位 置づ ける こと がで きるで あろ う。RESにお けるSSeCKSの存在はこの異物処理シ ス テ ム と し て の 再 評 価 が 必 要 で あ る こ と を 意 味 し て い る 。 第2章では 、SSeCKSの神 経系に おけ る細 胞同 定が混乱をきたしていることか ら、 末梢 神経 系と 感覚器 にお けるSSeCKSの発 現を免疫組織化学とin situハイ ブリ ダイ ゼー ション法によって調べた。末梢神経系では、SSeCKSの免疫活性と mRNA発現 は知 覚神経節と自律神経節に認められたが、発現細胞は神経節および 神経細胞のタイプによってやや異なっていた。知覚神経節(背根神経節と三又神 経節 )で は小 型および中型の神経節細胞がSSeCKSを発現し、大型の神経節細胞 は陰性であった。また、神経節内のシュワン細胞と一部の衛星細胞(外套細胞)
もSSeCKSを含 有していた。一方、自律神経節(腹腔神経節、骨盤神経節、腸の 筋層間神経叢)では、衛星細胞とシュワン細胞のみが陽性で、神経節細胞は陰性 であ った 。SSeCKSの発現は多くの感覚器、すなわち網膜、コルチ器、味蕾、嗅 粘膜 では 認め られなかった。唯一SSeCKSの強い発現が観察されたのは鋤鼻器で あり 、す でに 新生子においても鋤鼻器がSSeCKSを発現していた。そこでは、感 覚上 皮内 の支 持細胞が選択的に染め出された。鋤鼻器でのSSeCKSの発現は、そ こから出る鋤鼻神経のシュワン細胞に連続的に受け継がれ、さらに副嗅球まで追 うことができた。
以 上の よう に、SSeCKSの発 現に は2通り の発 現様式がある。すなわち、炎症 などによって誘導される発現と限tられた細胞における恒常的な発現である。前者 の場 合、SSeCKSは血中およびりンパ中の外来粒子や老廃物の除去に関係してい ることが示された。後者の持続的に発現する細胞として、これまで報告されてい る星状膠細胞と知覚神経節細胞のほかに、神経節衛星細胞、シュワン細胞、およ び鋤 鼻器 のグ リア要素(支持細胞)が加わった。星状膠細胞に発現するSSeCKS は血 液脳 関門 の成熟を誘導することが知られている。今回の観察から、SSeCKS が末梢神経系と鋤鼻器における機能調節や組織の恒常性維持に関わっていること が示 唆さ れた 。生体におけるSSeCKSの発現様式についてのデータはまだ断片的 であ るが 、タ ンパ ク質キ ナー ゼCの基 質で あるSSeCKSおよび関連蛋白質の今後 の研 究展 開に より、細胞の機能解析や病態解明にっながることが期待される。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査 教授 昆 泰寛 副査 教授 斉藤昌之 副査 助教授 橋本善春
副査 教授 岩永敏彦(医学研究科)
学位論文題名
The Cellular Distribution ofS ダ C − SuppreSSedCKinaSe Substrate (SSeCKS ) intheMouse :
み zS カ 勿 HybridizationandImmunohistochemicalSthdy (マウスにおけるsrc 抑制C キナーゼ基質SSeCKS の細胞発現 ―励 sZ 彪ハイブリダイゼーションと免疫組織化学的研究)
src‑suppressedC kinase substrate (SSeCIくs)は細胞骨格の再構築を介して、形態維持、運動、分化、
増 殖 な ど を 調 節 す る 重 要 な 蛋 白 質 キ ナ ー ゼCの 基 質 で あ る。SSeCIくsは りポ ポ リ サ ッカ ラ イ ド (LPS)に 反 応 し て 早 期 に 特 定 の 細 胞 に 発 現 す る こ と から 、 炎 症 状態 に お け る働 き を 含 めそ の 機 能 解 析 が 待 た れ る 。 本 研 究 の 目 的 は、 機 能 と 関連 づ け てSSeCKSの 細 胞 お よび 細 胞 内 発現 を 明 ら かにすることである。
ま ず 、肝 臓 と り ンパ 節 に お ける 詳 細 な 局在 と 異 物 取り 込 み 能 との 関 係 を 扱っ た 。LPS刺激 に よ り 、SSeCKSの 強 い 免 疫 活 性 が肝 類 洞 の 内皮 細 胞 と りン パ 節 髄 質の 細 網 細 胞に 認 め ら れた 。 電 顕 下 で は 、SSeCKSの 免 疫 活 性 は 両 細 胞 に お い て 細 胞 膜 に 沿 っ て 存 在 し た 。 こ れ らSSeCKS発 現 細 胞 は 正 常 では 炭 素 粒 子と ラ テ ッ クス ピ ー ズ を少 量 取 り 込ん だ だ け であ る が 、LPS刺 激 に よ り取 り 込 み 能 が 著 し く 上 昇 し た 。 っ ぎ に 、SSeCKSを 恒 常 的に 発 現 す る細 胞 系 を 探る た め 、 末梢 神 経 系 と 感 覚 器 に お け るSSeCKSの 発現 を 調 べ た。 知 覚 神 経節 で は 、 小型 お よ び 中型 の 神 経 節細 胞 と 一 部 の 衛 星 細 胞 がSSeCKSを 発 現し て い た 。一 方 、 自 律神 経 節 で は、 衛 星 細 胞と シ ュ ワ ン細 胞 の み が 陽 性 で 、 神 経 節 細 胞 は 陰 性 で あ った 。 感 覚 器で は 、 鋤 鼻器 に お い ての みSSeCKSの 強い 発 現 が 観 察 さ れ 、陽 性 反 応 は感 覚 上 皮 (支 持 細 胞 )と 、 そ こ から 出 る 鋤 鼻神 経 のシュワ ン細胞 に連続 的 に受け継がれ、さらに副嗅球まで迫うことができた。
以 上 の よ う に 、SSeCKSは2通 り の 発 現 様 式 、 す な わ ち 、 炎症 な ど に よっ て 誘 導 され る 発 現 と 限 ら れ た 細 胞 に お け る 恒 常 的 な 発 現を 示 し た 。前 者 の 場 合、SSeCKSは 血 中お よ び り ンパ 中 の 外 来 粒 子 や 老廃 物 の 除 去に 関 係 し てい る こ と が示 さ れ た 。後 者 の 持 続的 に 発現する 細胞と して、 こ れ ま で 報 告さ れ て い る星 状 膠 細 胞と 知 覚 神 経節 細 胞 に 、神 経 節 衛 星細 胞 、シュワ ン細胞 および 鋤 鼻 器 の グ リ ア 要 素 ( 支 持 細 胞 ) が 加わ っ た 。 星状 膠 細 胞 に発 現 す るSSeCKSは 血 液 脳 関門 の 構 築 を 誘 導 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 今回 の 観 察 から 、SSeCKSが 末梢 神 経 系 と鋤 鼻 器 に おけ る 機 能 調 節 や 組 織 の 恒 常 性 維 持 に 関 わ っ てい る こ と が示 唆 さ れ た。 生 体 に おけ るSSeCKSの 発現 様 式 に ―177−
つ いてのデータはまだ断片的であるが、夕ンパク質キナーゼCの基質であるSSeCIくsおよび関連 蛋 白 質の 今後 の研 究展開により、細胞の機能解析や病 態解明にっながることが期待される。
よって、審査委員一同は、上記博士論文提出者Tilladit Rung‑ruangkijkrai氏の博士論文が、北海 道 大学大学院獣医学研究科規程第6条の規定による本研究科の行う博士譌文の審査等に合格と 認めた。
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