博 士 ( 医 学 ) 近 陏 次 郎
学 位 論 文 題 名
SL/Kh マウス胸腺における Va14 invariant NKT 細胞の 分化成熟障害についての研究
学位論文内容の要旨
I.背景
SL/Khマウスは自血病自 然発症マウスで,内在´陸のマウス白血病ウイル′;く(murineleukemia晒n驫MuIV)によって,
きわ めて 高 率に ,ま た 短い 潜伏 期 間で 卩B細 胞リ ン パ腫 をき たす.SI瓜1マウス がpBリンバ腫を発症 するのは,内在性 のM1dVプ 口 ウ イ ル ス カ ミmゆ , 馳 師 ,NIMycな どの 多 数の 漕幽 瞳 雛汗 のイ ン テグ レシ ョ ンサ イト に 挿入 され る ため と考えられてレゝる.しカゝし,さまざ勃奮環姻子やf凸の遺伝的背景なども,これらの造血暑黜重瘍発生に寄:ち4ていると考え られており,正確な発症メカニズムは明らかIaまなってい弧ゝ.
弧wiantMr¢ 圷NKD細 胞 は ,CDld拘 束 出 こ 糖 脂 質 を 認 識L′ て , 感 染 , 腫 瘍 , ア レ ル ギ ー , 自 己 抗 原 に 対す る免疫反応を調節 する重要な役害| 嶐果す.NKrの分イb戎熟の仕組み↓ま ,通常のT聶田包とは大きく異なっており賄腺内 くニI)4十CD8十両陽陸(以下DP)ネほ胞ヒの(:D1d分子によって正の遥尠聡ぢ瓢づ.る.その後,小Krネ田蝕ま,胸腺内におしrて CD44bwN耐 .11(S噂1) →CD4hN耐 .r(S噂2) → の4炒NH.1十 (S噂3) と 慮 紛 化 す る , 跚 汀 細 胞 の 機 能 について,腫瘍の 進展・転移に促進 的,あるいは逆に抑 制的に作用すると いう相反する藷繊 皖逑れている.造血暑朋重瘍 については,玳Krネ田包がこれらの腫瘍毒田胞を抑制するという幸購とコカミ主であり,SI凪1マウスのりンパ腫の進展に対Iて 小ほ汀ネ田脆!分イb戎熟嶂害が何らかの関与カゞあるのではないかと考えた.
n.目的
SI瓜1マウスにおける胸 腺ボKT細脆め分化 成熟異常の検討と ,その桟瞬耳こ膜め っている因子の検 討を目的とした,
m. 方法
SL/Khマウスの胸腺,脾 臓,胛勘flxTKl'のポピュレ ーションサイズをFACSで解析1た.さらにどの 分イtニ,の段階で iNKI'細胞 の成 勳 渭碧 され て し堵 のカ 邊 検ptする た めに ,invariant Vo&91のPCRに よ る増 幅と , 胸腺 内BIKI'細胞の NKマーカーとCD44の発現をFACSで検 討iた.
NK受 容 体 の 解 析の ため に ,各 系統 の マウ スの 抗NK l.1抗 体 で検 出さ れ る分 吁をPCR法 に より 詳細 に 検謝 た. ま た, 脾脯 購 田脆 虻お け る瀾Krネ 田 胞のNKマ ーカーの検討,H卑廢蘇 田餌こおけるNK細雛 瞠贓)検討をFACSで行い,烈Kr
6rr卸 機 肓 旨 こ 関 し て は ,aGalactosy】…rnide( 以FaG)腹 腔内 投 与後 のば 伽1こ お 嶋M,IFNッ の産 生能 をHエsA 法で検謝′た. ―40―
最後 に ,iNKI'細 胞 の威 議 嚆 齔 機 能低 下 の 要 因 を探 る た め に 胸 腺DP細 脆 の数 ,CDldの 発 現をFACSで解 析Lit:.
さ らに,NK細胞 ,lほr細 緲分 イけ勘 画こ関 わづて いると 報告 のある 遺伝子 群を, 全胸 腺糸田 包のRNAを抽出レてRIギCR 法 ,およ びReむ 血n.ePCR滋ご て検 ヰ闇売 .
W.結果と考察
SL/Khマウ ス胸腺 にお いて,AKRマ ウス,B6マウ スと比 ベ, JKr紐膿! の比率 の低下傾向を認め,また,実嬲こおい ては,AKR,B6マウスいずれに比1ても有意に減少I ていた.ー^方,購曠畦舸璃駅:おいてはNKrネ圖包の比率および実数 に ,S:UKh,AKR,B6間 で 有 意 差 は 認め ら れ カ め ヒた .SL/Khマ ウ ス のVa14Ja18のmRNA量 はB6マ ウ ス と 同等 で あ っ た.すぬわち,SL/B:hマウスではTCRの再構成に障害ぬなく,そIオ1D,l降の荊KT紐吻成譲洲はこ障害.・カミ生I;ているこ とカ嵩与えられた.B6マウスの小ほd ̄ff田J魁ま大多数がStage3にまで分イは丿ていているのと比べて,SL/KhマウスのBIKI' 細 卸 大 音 蹴 ま Stage2でlT匕 カ 滞1ヒL凧 北 . 同 様 にCD44lwjl CD122+棚 包 の 害 恰 は AKR,B6マウ ス い ず れ に比 し て も減 少 し て い た .ま た ,CD44igr'Ly49A採 田 胞 の 割合 で は ,AKRマ ウ ス と 比べ る と 有 意 に低 下 し ていた が,B6 マ ウ ス と は 差 が 認 め ら れ な か っ た . 以 上 の 結 果 よ り ,SL/Khマ ウ ス の胸 腺 に お け る 玳Kr細 胞 分化 成 熟 障 害 は , Stage2からStage3への街溯に存在することカ瀧認された.
PCR法に て ,SL/Khマ ウ スで はNKR.P1Cは ほと ら ど 発現 尅ず, 抑制シ グナ ルを伝 達ずるNKR−P1Bが 主僻 て噛渇 こ と が 判明 し た.RkCSによ る解析 では,SL瓜1マウ スH繊NK1.1゛iNKr細脆 瞎帷nま著 :明に 減少1てい た. また,NK細脚 害帷抖こ関Iても,B6マウス鵬轍比し有意に低羽ていた.
続 いて末 梢のNKT細胞 の機能 を検i叩′ た.aGC刺 激後のuイ と正N.Y産生 能を検 討t虎とこ ろ,い ずれの サイトカイ ン も ,SI瓜1マ ウスで 有意に 低用て しゝ た.SI瓜1マ ウスで はボKr細胞の 分イ匕 停止の ため ,末梢iNKT細胞 の機能 が低 下レていることを示.,すと考えられた.
績 い て ,SI/Khマウ ス のDP細 脆 歩 趣 印 靖 恰カ 靭 聽 に 低 珊′ てI壊 こ とが 判 明 し た .ま た ,DP胸腺 細胞 ヒのCDld 分 う 切平 均 螢 光 ヨ 鋤 ミ,B6マ ウス に 比 べ てSI瓜1で 低 いこ とが半IJ明した .し カゝし ,AKRマウス のCDldは ,SUKhの CDldに比べさらに発現量カゞ低p辷:とカミ判明した.
分 化 成蒙 黼こ 影響を 与える ことカq嚇 璽さゎ る遺伝 子Iし15は ,B6マウ スと の比較 ではmRNAレベル ′の差 異は認 め ら れ なか っ た . 次 に ,Iし15Rの 下 流 の シ グナ ル に 関 与 し,NK細 胞機 能に影 響のあ る馳6bの発現 を検iポ売 が,SI瓜1 マウ スで量 的な低 下竃 輯ま認 められ なかっ た.従づて,SI瓜1マウスの荊Krネ嚠包分化威蒙黼ま,Iし15/Iし15R,および その下流分子の量的低下によるわけではないと考えられた.さらに,うM脚章害が報告さ捫ている1、・betおよびHe)【b遺伝子 を検剞たが,AKR,B6マI奴と比ぺてSI/,Khマウスに量的異常め句蝕此が示された.
V.結語
本 研 究こ よ り ,SL/Khマ ウヌ 丶 で はflKr棚c創 蹴 烈 啅 害 を来 たIで お り,Stage2か らStage3への 彡Mヴ ロ セス に 障 勧 ゞ あ る こ とを 滅 丿 た . 創匕 谿 勦 ヌ カ ニズZ淵 て, 分匕成 熟こ! 嵶すm IL‑15と その ―F流 のStat5b,Stage2→3の 段 階に障魯こ関与・すーるT‑betやHexbの量的異潮まSIー/Khマウスでは認めら捫なかった.ただし,DP胸勝囃髄め減少,およ びCDld発現 の但汀 功ゞ同 時に 存在う ‐《と ,NK1.1の主体 めミNKR‐P1Bで あるこ となど が,SI瓜1マウスにおける蝋Kr
細胞 の分化 障害に 関与 する可 能性カ 舗艶繋 さ捫 た.SL/Khマウスの 1K1'細胞の分イb閲熱の異常メカニズムの解明をする こ と によ っ て , 造 讎 瑚輸 み な ら ず ,悪 幽 鋤 こ 対 勢砧 櫨 蕩 効 果 や免 勢 鰤 甲 椦 購 の解 明 に っ な カ迎 , 今 後 のiNKI'細 胞の 治療へ の応用 のー 一助と なると 考え甜1た .
学位論文審査の要旨 主査 教授 小 池隆夫 副査 教授 小野江和則 副査 教授 笠.原正典
学 位 論 文 題 名
SL/Kh マ ウス胸腺 における Va14 invariant NKT 細胞の 分化成熟障害についての研究
SL/Kh マウ スは白 血病自 然発症マ ウスで, 内在性 のマウス 自血病 ウイルス (murine leukemia vlrus , MuLV) によっ て,き わめて高 率に, また短い 潜伏期間 で preB 細胞リン パ腫をきたす.さまざまな環境因子や他の遺伝的背景なども,これらの造血器腫瘍発生に 寄与し ていると 考えら れており ,正確な 発症メ カニズムは明らかにはなっていない.一 方, invariant NKT (以 下 iNKT) 細 胞は, CDld 拘束性に糖脂質を認識して,感染,腫瘍,
アレル ギー,自 己抗原 に対する 免疫反応 を調節 する重要な役割を果す.iNKT の分化成熟 の仕組 みは胸腺 内 CD4 ゛ CD8 ゛両陽性(以下 DP) 細胞上の CDld 分子によって正の選択を受け る,その後, iNKT 細胞は,胸腺内においてCD4410w NKl.1 −(Stage1 )→ CD44r'ighNKl.1 ー(Stage 2 )→ CD44high NKl.1 ゛(Stage3 )と成熟分化する.
SL/I くh マウス の胸腺, 脾臓,肝 臓の iNKT の ポピュ レーショ ンサイズ を FACS で解析 したと ころ,SL/Kh マウ ス胸腺で は,実 数においては, AKR ,B6 マウスいずれに比しても 有意に減少していた.さらにどの分化の段階でiNKT 細胞の成熟が障害されているのかを検 討するために,invariant Va 鎖の PCR による増幅を行ったところ,SL/Kh マウスの Vor,14Ja18 のmRNA 量は B6 マウ ス と 同等 で あ り, SL/Kh マ ウス で は TCR の 再 構成 に 障害はな く,そ れ以降 のiNKT 細胞の 成熟分 化に障害 が生じ ていることが考えられた.胸腺内 iNKT 細胞の NK マ ー カ ーと CD44 の 発 現を FACS で 検 討し た . B6 マ ウ ス の iNKT 細 胞 は大 多数が Stage3 にまで 分化して いてい るのと比 べて,SL/Kh マウ スの iNKT 細 胞の大部 分はStage2 で分化 が停止していた,
末梢に おけるiNKT 細胞の解 析では , SL/Kh マウス脾臓 NKl.1 ゛iNKT 細胞割合は著明に 減少し ていた. また, NK 細胞の割 合に関 しても,B6 マウス脾臓と比し有意に低下してい た.次 に末梢iNKT 細 胞の機能を検討したところ, aGalactosylceramide (以下aGC) 腹腔内
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投与後のばvivo に おけるIL‑4 ,IFN‑y の産生能 をELISA 法で検討したところ ,いずれのサ イトカインも,SL/Kh マウスで有意に低下していた.
NK 受容 体の 解析 のた めに PCR 法 によ り詳 細に 検討 した .SL/Kh マ ウス では NKR‑PIC はほとんど発現せず,抑制シグ ナルを伝達するNKR‑PIB が主 体であることが判明した.さ らに,NK 細胞,iNKT 細胞の分化増殖に関わっていると報告のある遺伝子群 を,全胸腺細 胞の RNA を 抽出 して RT‑PCR 法 ,お よ びReal time PCR 法にて検討した.分 化成熟障害に 影響 を 与え るこ とが 予想 される遺伝子IL‑15 は,B6 マウスとの比較ではmRNA レベルの差 異は認められなかった.他にも 分化障害が報告されているT‑bet およびHexb 遺伝子などの さま ざ まな 遺伝 子群 を検 討し たが ,AKR ,B6 マウ スと 比べてSL/Kh マウス に量的異常の あるものはなぃことが示された .
最後に,iNKT 細胞の成熟障害と機能低下の要因を探るために胸腺DP 細 胞の数,CDld の発 現 をFACS で 解析 した .SL/Kh マウスのDP 細胞分画の割合が有意に低下 していること が判 明 し, また ,DP 胸腺 細胞上のCDld 分子の 平均螢光強度が,B6 マウスに比べてSL/Kh で 低 い こ と が 判 明 し た .し か し, AKR マウ スの CDld は, SL/Kh のCDld に 比べ さら に発 現量が低いことが判明した.
本 研 究に より ,SL/Kh マウ スではiNKT 細胞の分化成熟障害を来たしてお り,Stage2 か らStage3 への分化プロセスに障 害があることを示した.分化異常のメカニズムとして,DP 胸腺細胞の減少およぴCDld 発現 の低下が同時に存在すること,NKl.1 の主体がNKR −PIB で あることなどが,SL/Kh マウスにおけるiNKT 細胞の分化障害 に関与する可能性が推察され た.SL/Kh マウスのiNKT 細胞の分化成熟の異常メカニズムの 解明をすることによって,造 血器腫瘍のみならず,悪性腫瘍 に対する抗腫瘍効果や免疫制御機構の解明にっながり,今 後 の iNKT 細 胞 の 治 療 へ の応 用 にっ なが る可 能性 があ り, 今後 の発 展が 期待 され る.
公 開 発表 にあ たっ ては ,副 査の 笠原 教授 から ,「 iNKT 分化障害とDP 胸 腺細胞の減少 およ び CDld 発現 低下 の関 連性 」の コメ ント の後 ,「 iNKT 分化障害とりン パ腫発症の因 果関係について」,「iNKT 細胞 のりガンドに関する最近の知見について」,っいで副査の 小野 江 教授 から 「NKl.1 のsubtype とiNKT 細 胞の 機能 について」,「iNKT 細胞上のNK 受 容体 の 発現 の違 いに つい て」 ,「 SL/Kh マウ スの 脾臓 のiNKT 細胞でNKl.1 が発現してい ない理由について」,主査の小 池教授からは,「AKR マウス でCDld 発現の低下があるが,
iNKT 細 胞の 分化 が正 常で ある理由について」 ,「SL/Ni マウスの血管炎に iNKT 細胞が関 与している可能性について」, 「iNKT 細胞異常とヒトの疾患との関係について」,それぞ れ質問があった. いずれの質問に対しても,申請者は実験結果や文献およ びスライドの 図を引用して説明し,おおむね 適切に解答した.
審査 員 一同 は, これ らの 成果 を高 く評 価し ,大 学院 課程における研鑽や 取得単位など も併せ申請者が博 士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するもの と判定した.
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