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学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 薬 学 ) 山 本 学 位 論 文 題 名

ヌクレオシド系化合物の細胞膜輸送機構の解明 およびその体内動態への関与に関する研究

学位論文内容の要旨

ーと皇 7ユ く

【序論】

  生 体内 にお い てヌ クレ オシ ドはDNAやRNA合 成の 原料 と して 必要 不可欠である が,水溶性 が高く,細胞膜の透過にはトランスポーターを介した輸送が必要である.ヌクレオシドトランス ポー ター (以 下NT)はヌ クレオシドの細胞膜透過に重 要な輸送担体であり,大き く分けてNa+

依 存性 のCNTとNa+非依 存性 のENTの ニつ のフ ァ ミリ ーに 分類 され る .NTは生 体内 ヌ クレ オ シドだけでなく,抗ウイルス薬や抗腫瘍薬といったヌクレオシド誘導体も輸送することが知られ ている,一方,ー部のヌク レオシド系化合物が有機ア ニオントランスポーター(OAT)に輸送さ れるという報告もあり,これらトランスポーターがヌクレオシド系薬物の体内動態に重要な役割 を有していると考えられている.そこで本研究ではヌクレオシド系化合物の細胞膜輸送機構およ びその体内動態への関与を 明らかにすることを目的と した.

【結果・考 察】

1) ヌ ク レ オ シ ド 系 化 合 物 の 細 胞 膜 透 過 に お け る ト ラ ン ス ポ ー タ ‐ の 関 与   ヌクレオ シド系化合物の細胞膜透過に 各トランスポーターがどの 程度関与しているかを調べ る目 的でhCNT1,2,3,hENTl,2発現Xenqpus laevis oocyte(以下oocyte)を用いて取り 込み 実験を行っ た,基質にはプリンヌクレオシドとしてアデノシンとりバビリン(抗ウイルス薬),

ピリミジン ヌクレオシドとしてウリジンとゲムシタビン(抗腫瘍薬)を用いた.その結果,CNT, ENTと もに報告されている基質認 識性と同様の傾向を示した, さらにこれまでに報告の無 いり バビリン取 り込みに関して詳細に検討し た結果,Km値はhCNT2: 18.0 pM,hの岬3:14.211M, hENT1:3.46mM,hENr2:3.71mMと なり ,そ の 親和 性は の岬 が高 く ,ENTは 低い こと が示 唆 され た. 一方hoAT1,3発現00cyteを用いた検討において, ヌクレオシドはhoAT1,3共 に阻 害はするが 輸送されないことが示唆され た.

2) の 岬 とENTが 局 在 化 し た 細 胞 お よ び 局 在 化 し て い な い 細 胞 に お け る り バ ビ リ ン 輸送   C型 慢性肝炎の治療薬であるり バビリンについて,その細胞 膜輸送にどのNTがどの程度 寄与 し てい るか は不 明 であ る.小腸 や腎臓の上皮細胞では刷子縁 膜側にCNT,基底膜側にENTが局 在 して いる のに 対 し, その他の 臓器ではCNTとENTは局在化せ ず細胞膜表面に共存してい る,

そ こ でCNTとENTが 局 在 化 し た 細 胞 の モ デ ル と し て マ ウ ス 腸 管 を , ま たCNTとENTが 局在 化していな い細胞のモデルとしてヒト胎 盤由来BeWb細胞を用いてり バビリン輸送を評価した.

2‐1)マウ ス腸管からのりバビリン吸収 におけるの岬の寄与

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  腸 管 から の り バ ビリ ン の 吸 収に 関 与 する 可能性 のあるCNT2とCNT3の それぞれ の寄与 を明 らか・にする目的でマウス腸管を用いた灌流実験を行った.CNT2はピリミジンヌクレオシドを認 識 し な い がCNT3は それ を 認 識 する た め ,CNT3の阻 害 剤 と してCNT3に 比 較 的 親和 性 の 高 い チ ミジン を用い ,阻害 剤非存 在下で の吸収量 から阻 害剤存 在下で の吸収 量を差 し引くことで CNT3を介す るりバビ リンの 輸送を 見積もった.その結果,チミジン存在下においてりバビリン 消失の減少が認められ,消失速度定数はチミジン非存在下では0.174 mim.l.cm‥,チミジン存在 下 ではO.148m血,l.cm.1と なり, 小腸に おける りバビリ ン取り込みにはの岬2の方がCN3よ りも優位である可能性が示唆された.

2・2)B6Wb細胞へのりバビリン取り込みにおけるNTの寄与

  次 にB抓b細 胞 を 用い て 取 り 込み 実 験 を 行っ た . ま ずCNTとENTの 関与 を 明 ら かに す る 目 的 で , リ バビ リ ン 取 り込 み に 及 ぼすNが お よ びENT特異 的 阻 害 剤で あるNBMPRの影響 につい て 検 討 し た. そ の 結 果,NBMPR存在 下 に お いてCNT依 存 的取 り 込 みが ,Nが非 存荏下 におい てENT依 存 的取 り 込 み が認 め ら れ た. し か しNが 存 在下 で はNBMPRを添 加する ことで 取り込 み量の上昇が認められた,一方,リバビリンと同じプリンヌクレオシドであるアデノシンを用い て 同 様 な 実験 を 行 っ た結 果 , リ バビ リ ン と同様 にCNT依存 的取り 込みとENT依存的 取り込 み が 認 め ら れた が ,Nが お よびNBMPR存在 下 におけ る取り 込み量 の上昇 は認め られな かった . 3)hの岬3‐hENTl共発現00cyteによるりバビリン取り込み

  BeWb細 胞 を用 い た り バビ リ ン 取 り込 み 実験に おいてNがおよ びNBMPR存 在下で の取り 込み 量 がNa+存 在 下 ,NBMPR非 存 在下 に 比 べ て上昇 した機構 を解明 するた めに,hCI岬3.hENT1 共発現oocyteを用いて種々検討した.

3|1)h(NT3・hENTl共発 現00cyteの りバ ビ リ ン 取り 込 み に おけ るNa十およ びNMPRの影 響   hCNT3.hENn共 発 現00吼eの り バ ビ リン 取 り 込 みに お け るNa゛ およ びト毋MPRの影響 を検 討 し た 結 果,BdWb細胞と 同様にNa十およ ぴNBMPR存 在下に おいて 高い取 り込み量 を示し た.

さ ら にNが お よ びNBMPR存 在 下 とNaclをNMDGClに 置 換 し た 条 件 下 に お け る り バ ビ リ ン 取 り込み の濃度 依存性 を検討 した結 果,速度 論的パ ラメー ターはhCNT3,hENT1そ れぞれを単 独で発現させた場合とほば同じ値を示した.さらに電気生理学的手法を用いて,リパビリン取り 込 み に 伴 って 生 じる 電流を 測定し たとこ ろ,hの 岬3の基 質輸送に 伴う電 流はNBMPRによる 影 響を受けなかった.

3・ 2)hのqT3‐uNT1共 発 現00cyteの り バ ビ リ ン 取 り 込 み に お け るhENT1の 影 響   3・1) の 結 果 より,Nが存在下 におけ る取り 込み量 とNがお よびNBMPR存在下に おける 取り 込 み量の 差は, 双方向 性のト ランス ポーター であるhENT1を介した排出が起きているためでは な い か と いう 仮 説を 立て,hENT1の発現 量を変 化させ て取り 込み実 験を行 った. その結果 , hENTlの 発現 量 が 上 昇す る に っ れてNが 存 在下に おける 取り込 み量が 減少し た.し たがっ て CNTとENTが 共発 現 し た 細胞 で は 取 り込 ま れ た りバ ビ リ ン がENTに よっ て排出 される 可能性 が示唆された.

4)hCNr3‐hENT1共 発 現00づteの り バ ビリ ン 取 り 込み に お け る動 力 学 シ ミュ レ ー シ ョン   上 述の検 討にお いて,00cyteの容 積から 換算する と,細 胞内に りバビ リンが 飽和する前に hENT1を介し た排出 が起きて いるも のと考 えられ た.そ こでこの現象を説明するために,数理 モデルを作成し検証した.その結果,細胞内に取り込まれたりバビリンは細胞膜内側の表面にお い て局所 的に高 濃度に なるこ とが示 唆された.また10分間の取り込みにおける細胞内リバビリ ン 量のシ ミュレ ーショ ン値は 実測値 を反映した.よってhCNT3.hENT1共発現oocyteにおいて,

細 胞内に 取り込 まれた りバビ リンは ,hCNT3によ り細胞 膜内側に局所的に濃縮され,さらに生

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じた細胞内外の濃度勾配により,双方向性のトランスポーターであるhENTlを介して排出され る可能性が示唆された.臓器によってNTの発現量や分布が異なるため,この結果はヌクレオシ ド 系 薬 物 の 各 臓 器 へ の 分 布 を 予 測 す る 上 で 有 用 で あ る と 考 え ら れ る .

‑ 702

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学位論文審査の要旨 主査    准教授   菅原   満 副査    教 授    井関    健 副査    教 授    加茂 直樹 副査    准教授   宮内正二

学 位 論 文 題 名

ヌクレオシド系化合物の細胞膜輸送機構の解明 およびその体内動態への関与に関する研究

  

生 体内 に おい て ヌ クレ オ シ ドは

DNA

やRNA 合 成 の原 料 とし て 必 要不 可 欠であ る が , 水溶 性が高 く,細胞 膜の透過 にはトラ ンスポー ターを介 した輸送が 必要 で ある.ヌ クレオシ ドトラン スポーター (以下,

NT)

は,大き く分けてNa ゛依存 性 の

CNT

とNa ゛非依存性 の

ENT

のニっ のファミ リーに分 類される .NT は生体 内ヌ ク レ オ シド だけで なく,抗 ウイルス 薬や抗腫 瘍薬とい ったヌク レオシド誘 導体 も 輸 送 する ことが 知られて いる.ー 方,一部 のヌクレ オシド系 化合物が有 機ア ニ オ ン トラ ン スポ ー タ ー(OAT) に輸 送 され るとい う報告も あり,こ れらトラン ス ポ ー ター がヌク レオシド 系薬物の 体内動態 に重要な 役割を有 していると 考え ら れ て いる .本研 究はヌク レオシド 系化合物 の細胞膜 輸送機構 およびその 体内 動 態への関 与を明ら かにする ことを目的 とした.

  

第 一章 で は,ヌク レオシド 系化合物 の細胞膜 透過に各 トランス ポーターが ど の 程 度 関与 してい るかを調 べる目的 で種カト ランスポ ーターを 強制発現さ せた ア フ リ カツ メガエ ル卵母細 胞を用い て取り込 み実験を 行った. その結果, ヌク レ オ シ ド系 化合物 は

CNT

,ENT に比 較的高い 特異性を もって認 識され, その親和 性 は

CNT

が高 く,ENT は低 いことが 示唆され た.一方 ,有機ア ニオン発 現卵母細 胞 を 用 いた 検討に おいて, ヌクレオ シドは阻 害剤とし ては働く が輸送され ない こ と が 示唆 された .本結果 は,ヌク レオシド 系化合物 の体内動 態を検討す る上 で , 考 慮す べき卜 ランスポ ーターは

NT

の各分子 種に絞り 込むこと ができるこ と を 示唆する 有用な知 見である と評価でき る.

  

第 二章 お よび第三 章では, 体内動態 へのNT の寄 与が十分 に明らか になってい な い

C

型 慢 性肝 炎 の治 療 薬 であ る りバ ビ リン をモデル として, その細胞膜 輸送 に ど の トラ ンスポ ーターが どの程度 寄与して いるかを 明らかに することを 目的

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に検討を加えた.また,小腸や腎臓の上皮細胞では刷子縁膜側にCNT ,基底膜側 にENT が局在しているのに対し,その他の臓器ではCNT と ENT は局在化せず細 胞膜表面に共存していることから,CNT とENT が局在化した細胞のモデルとして マウス腸管を,またCNT とENT が局在化していない細胞のモデルとしてヒト胎 盤由来BeWo 細胞を用いてりバビリン輸送を評価した.その結果,極性を有する

(トランスポーターが局在している)上皮細胞においては,頂側膜からの濃縮 的な基質取り込みと,測定膜からの細胞外への流出により,一方向性の輸送を 作り出していることを明らかにした.一方で,CNT とENT が共存する細胞におい ては,両者の輸送活性の和より小さな取り込み量しか示さず,細胞内濃度の制 御機構をさらに詳細に検討する必要性を示した.本結果は,薬物の各種トラン スポーターに対する親和性やそのトランスポーターの細胞膜局在性,発現量の 違いにより,標的とする臓器への到達度や蓄積性が制御されることを示唆して おり,トランスポーターを標的とした薬物送達を検討する上で有用な知見と考 えられる.

   第四章では,上述のアフリカツメガエル卵母細胞を用いた発現系による検討 において認められた「CNT と ENT が共存する細胞においては,両者の輸送活性の 和より小さな取り込み量しか示さない」現象の機構を解明した.この現象は卵 母細胞の容積から換算すると,細胞内リバビリン濃度が飽和する前に逆に排出 が起きていると仮定すると説明づけられることから,数理モデルを作成しその 可能性を検証した.本数理モデルは,細胞内における基質の拡散過程を考慮し た新規な解析法である.その結果,細胞内に取り込まれたりバビリンは細胞膜 内側の表面において局所的に高濃度になることが示唆された.また,シミュレ ーション値は実測値を反映した.したがって,CNT3 ―ENT 共発現細胞において,

細胞内に取り込まれたりバビリンは,CNT3 により細胞膜内側に局所的に濃縮さ れ,さらに生じた細胞内外の濃度勾配により,双方向性のトランスポーターで あるENT を介して排出される可能性が示唆された.臓器によってNT の発現量や 分布が異なるため,この結果はヌクレオシド系薬物の各臓器への分布を予測す る上で有用な知見と評価できる.

   発表会および口頭試問においては,多数の出席者を得て討論し,質疑には的

確に回答した.また,4 人の審査担当者による審査の結果,本論文「ヌクレオ

シド系化合物の細胞膜輸送機構の解明およぴその体内動態への関与に関する研

究」は学位論文の水準に達しており,山本崇は博士(薬学)として十分な知

見と能カを有しているものと認めた.

参照

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