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「ADRを担う人材育成に関する研究会」によるプログラムの概要

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「ADR を担う人材育成に関する研究会」による

試行プログラム 教材集

平成 15 年

独立行政法人経済産業研究所

ADR ポリシープラットフォーム

(2)

ADR を担う人材育成に関する研究会」による試行プログラムの概要

日程 No 大項目 時間 (分) 内容の概要 1 当プログラムの 全体像と射程 75 ・ 一つのビデオを見て、皆で違いや共通点 を共有しましょう。 ・ 「聴く」を中心とした対話促進の可能性 について 2 海外の実情報告 と用語の説明 30 ・ 海外(主として北米)におけるトレーニ ングの実情報告 ・ 調停・相談等のトレーニングに必要な用 語の説明 3 対話による自律 的解決 45 ・ 対話を通じた自律的解決と合理性の探 求 ・ Mediation の価値・法的判断・情報提供 と説明 第1日目 1 1 月 1 5 日 (土曜) 午 後 1 時 か ら 6時 経 済 産 業 研 究 所1121 会議室 ( 経 済 産 業 省 別館11 階) 4 聴くことの意味 とその技法 150 ・ Communication と聴く ・ 紛争状態での当事者の心理と聴く ・ 「聴く」を中心として、参加型トレーニ ングを行います。 第2日目 1 1 月 2 9 日 (土曜) 午 後 1 時 か ら 6時 経 済 産 業 研 究 所分室 ( 大 同 生 命 ビ ル20 階) 5 調 停 (理論・技法と Exercises) 300 ・ Mediation の力動関係 ・ 難しい会話の構造とMediation ・ Mediation の(狭義の)技法 ・ Introduction ・ 対話維持円滑化の技法 ・ 事例とビデオを用いた参加型トレーニ ングを行います。 6 相 談 (調停の理論・ 技法を応用し た理論・技法 とExercises) 240 ・ 「聴く」を中心にしながら、一対一の対 話(相談)の中での援助方法を考える ・ 援助過程の構造化 ・ 「聴く」を中心として、具体的に実践し てみましょう。 ・ 事例とビデオを使った参加型トレーニ ングを行います。 第3日目 1 2 月 2 0 日 (土曜) 午 後 1 時 か ら 午後6時(若干 延 長 す る こ と があります) 経 済 産 業 研 究 所1121 会議室 ( 経 済 産 業 省 別館11 階) 7 座 談 会 60 ・ 受講者からの本トレーニングについて の感想 ・ 本トレーニングの可能性と改善

(3)

ADR

を担う人材育成に関する

研究会」試行プログラム 第1日

経済産業研究所

(4)

プログラム1

13:00-14:15

プログラムの全体像と射程

稲葉一人

資料1:「ビデオを見て、違いや共通点を認識

する」

(5)

プログラム1

ビデオを見て、違いや共通点を共有する

(概要) これから、実際の事件を関係者のプライバシーを侵害しないようにアレンジし、担当者 がスクリプト(シナリオ)を書き、劇団の方に協力をしていただいて演じたビデオを見ま す。 事案は、俊子さんの妹の吉田久美さんが、その夫(吉田秀夫さん)のキャッシュカード 等を使って、二人の実母の看護等の費用に使ったことから、秀夫さんやそのお母さん(吉 田しの)から、お姉さんである俊子さんに返済が求められているというものです。 シーンは、①ある調停センターに電話がかかる場面、②再度電話がかかる場面、③第1 回の調停の場面、④第2回の調停の場面と分かれます。 (共有の課題) そこで、これらの場面を通しで見た後、次の各点について、グループごとに、お話し合 いをして下さい。 1 全体を見た感想 2 電話応対について 3 調停でのやり取りについて 4 その他 (手順) ① グループ分けします ② チューターが各グループに入り、お手伝いをします ③ グループの話し合いを簡単な記録にとって、後に発表をする方を決めます。 では、ビデオ(約20 分)を見ましょう。 以下に、ビデオのスクリプトを掲載しておきますが、これは、実際の演技の中では、多 少変更されていることがあります。また、撮影場所・アングルの関係で、位置関係等が実 際の事件とは異なっている場面があります。

母の生活費負担事件

(説明) 正田俊子さんから電話が、調停センターにかかるところからはじまります。電話でのやり とり、相手方との連絡を通じ、実際の調停が展開されます。 事案は、俊子さんの妹の吉田久美さんが、その夫(吉田秀夫さん)のキャッシュカード等 を使って、二人の実母の看護等の費用に使ったことから、秀夫さんやそのお母さん(吉田 しの)から、お姉さんである俊子さんに返済が求められているというものです。 5月26 日午後 正田俊子(まさだとしこ)さんから、調停センター事務局に電話がかかります。 1

(6)

プログラム1 俊子:(電話の呼び出し音・2回)もしもし、新聞で読んだのですが、調停センターですか 事務局早田保子(はやたやすこ):そうです。調停センターです。事務局を担当しています 早田と申します。お電話いただきありがとうございます。恐縮ですが、まずお名前と、お 電話番号をお教えいただけませんか(保子は、電話聴き取り用紙に書き込んで行く) 俊子:名前は正田俊子といいます。電話は、03-8765-4321 です。 早田:大変、お待たせしました。では、お困りの点をお教えいただけますか。 俊子:はい、私の妹が、その夫に無断でカードを使って、私達の実の母の介護等の費用の ために使ったのです。夫や姑から、その返済を姉である私にまで求められています。母に 使ったのですから、道義的に責任があるのは十分分かりますが、法的に支払い義務がある かが分かりません。法的に責任がないとしても、親族間の問題でわだかまりができても困 るので、悩んでおります。どなたかアドバイスしていただけるのでしょうか。 早田:私達は、法的な相談に回答をすることは原則として、しておりません。もし必要な ら、法律の専門家のお手伝いを受けていただくこともできます。これは、判断を示すこと で、私達が、お困りの問題を有していらっしゃるお二人の間で、中立的な役割を果たせな くなるからです。お分かりいただけるでしょうか。俊子さんは、その相手の方とご一緒に こちらにお越しいただき、お話をするということはできませんか。トレーニングを受けた 調停人が、お話の橋渡しをいたしますが。 俊子:私が先方に頼むのですか。 早田:まずは、正田さんご自身がお願いされて、だめな場合は、また次の手段を考えまし ょう。突然、私達が連絡すると先方もびっくりされるのではありませんか。 俊子:はい分かりました。なんとか、やってみます。 早田:ありがとうございます。そこで、こちらから、俊子さん宛てに、先方に当方の組織 の目的等を説明していただくためのリーフレットと、所在場所等をお送りします。ご利用 下さい。それでは、連絡をお待ちします。 数日後、俊子さんから電話 俊子:調停センターですか。正田俊子といいます。先日お電話を差し上げた者です。 早田:はい覚えております。正田俊子さんですね。(記録を確認しながら)はい、先方と連 絡を取り合っていただく予定の方ですね。 俊子:先方に連絡したところ、6月3日の午後1時に相手も来てくれると言っていますが。 いかがでしょうか。 早田:(スケジュール表を確認しながら)丁度その日は調停人の援助を受けることができま す。どうぞ揃ってお越し下さい。先方も住所等はお分かりですか。 俊子:はい。先日送ってもらったリーフレットもお見せしましたので。 早田:先方はどなたがお越しになる予定でしょうか。 俊子:妹の夫である吉田秀夫と、もしかすると姑も来るかもしれません。

(7)

プログラム1 早田:俊子さんの妹さんはお越しになる予定ですか。 俊子:必要なら連れてきますが。 早田:それは俊子さんのご判断ですが、もしご都合がつけば、ご一緒されてもいいと思い ます。全員、同じ席で調停を進めようと思いますが、なにか不都合がありますが。 俊子:特にありませんが、秀夫さんや、姑の前で冷静に話せるか自信はありませんが。 早田:お越しになった皆さんのご意見を聞いてから進行方法は決めることになりますが、 お話し合いは、訓練を受けた調停人がお手伝いをしますので、気持ちを楽にしてお越しく ださい。ではその時間に調停人を待機させておきます。もし、その後不都合があれば、早 い目にご連絡ください。再度確認いたします。6月3日午後1時、当調停センターという ことで。先方の方にも日時場所等をお伝えください。お待ちしています。 6月3日午後1時前 先方の吉田秀夫さんと吉田しのさんがお越しになり、引き続き、正田俊子さんと吉田久 美さんがお越しになり、それぞれ受付表にお越しになったことの確認を済まし、それぞれ、 書面に、相談の内容や要望を記載している。 調停人沢田孝:(吉田秀夫さんと吉田しのさんに会い)当調停センターで調停人をしており ます、沢田孝と申します。正田俊子さんとの件でお越しいただいた、吉田秀夫さんと、吉 田しにさんですね。お書きになった書面をご持参の上、どうぞ調停室にお入りください。 沢田:(正田俊子さんと吉田久美に会い)当調停センターで調停人をしております、沢田孝 と申します。正田俊子さん、そして吉田久美さんですね。お書きになった書面をご持参の 上、どうぞ調停室にお入りください。 (全員が調停室に入ったことを確認し、互いから書面を受け取る) 沢田:改めて自己紹介をさせていただきますが、調停人の沢田といいます。当調停センタ ーの調停人をしております。今日はようこそお忙しい中お越しいただきました。皆さんの ご紹介等をしていただきますので、どうぞお座りください(以下のように座る) 窓 入口 窓 久美 俊子 沢田 秀夫 しの 沢田:お座りいただきましたが、それでよろしいでしょうか。これからこの場でご一緒に お話していただきますが、もし不都合があれば、遠慮なくお申出下さい。(書面を見ながら) 3

(8)

プログラム1 まず、皆さんのお名前を確認させてください。 俊子:正田俊子です。 秀夫:吉田秀夫です。 しの:秀夫の母の吉田しのです。 久美:秀夫さんの妻の吉田久美です。私の姉が、正田俊子です。 沢田:まず、今日のお話し合いの進め方と私の役割などについて説明をさせていただけま すか。これから、相互にお話をしていただきますが、私はお話をお聞かせいただきますが、 私は判断を下したりせず、皆さんのお話し合いを円滑に進める役をします、主役は皆さん です。お話し合いの時間は午後一杯をとっております。ご質問があれば、なんでも質問く ださい。 俊子:途中で法的な問題について検討する必要があれば、どうすればいいのですが。 沢田:いい質問ですね。このお困りの解決のために法的アドバイスが必要な場合は、自由 に法律家に相談していただいて結構です。そのために中断することもあります。しかし、 私が法的なアドバイスをすることは、避けたいと思います。必要があれば、その際に考え ましょう。 秀夫:質問があります。俊子さんから、調停センターには相談がなされているので、既に 調停人は、事件の内容を一方的に吹き込まれているのではありませんか。 沢田:これも疑問に思われるのは当然ですね。事務局には俊子さんからお電話をいただき ましたが、私は、その詳細については聞いておりません。これから、皆さんのお話をお聞 きしようと思います。ただ、ご注意いただきたいのは、私は、判断を下すものではありま せんので、どうぞ、お互いが、お互いのお話を聞き、お互いの納得のいく話し合いの過程 と結果を得るように努力しましょう。 秀夫:わかりました。 沢田:ありがとうございました。席の位置はこれでいいでしょうか。今のようなご要望を 踏まえ、お話はどちらの方からしていただきましょうか。(秀夫の方を向いて) 秀夫:俊子さんからお話いただくことで結構です。 沢田:ありがとうございます。それでは、俊子さんお話ください。 俊子:(調停人の方に向かって)はい。妹と私には母がおります。妹は、母の介護の費用と して、秀夫さんのキャッシュカードを使って無断に現金を下ろして使ったのです。秀夫さ んらからは、お母さんに使った費用なんだから、私にももってもらわないといけないとい われているのです。 しの:(はき捨てるように)本当にお母さんの費用に使ったかどうやら・・・ 俊子:法的な解決より、話し合いでなんとか解決できないかと思い、ここに参りました。 久美:私が全部悪いのです。すいません(泣く) 沢田:俊子さんのお話はそれでいいですか。 俊子:私は、家庭を持っていますし、この問題は私の母の問題ですので、夫には迷惑を掛

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プログラム1 けたくないので、夫には申していません。また、私も母の介護費用に出費しています。 しの:それは、あなたのお母さんだから、あなたがどう負担するかは勝手ですよ。しかし、 息子のキャッシュカードを用いてまで、あなたのおかあさんの費用に使わないで欲しいわ。 沢田:では、秀夫さんのお話もお聞かせいただけますか。 秀夫:ここに銀行の通帳がありますが、このうちどれとどれが、久美のおかあさんの費用 に使われたか説明して欲しいと思います。 久美:現金をキャッシュカードで下ろしているほとんどが、それなの。 秀夫:それは本当か。こんな短期間に100 万円近く引き出されているぞ。 久美:ここに、使ったものの領収書などがあるのですが、それは全部ではないのです。調 停人さん見てください。(調停人に示そうとする) 沢田:どうぞ、皆さんでご確認ください。 しの:このタクシー代3500 円というのはなに。お金がないのに、タクシー代とはなんなの。 久美:母の体調が悪いものだから、自宅から病院まで使ったのです。すいません。本当に すいません。お母さん。 しの:大体、お金が工面できないのに、あなたのお母さんだけに無駄使いさせて。身分相 応のお金の使い方をしてください。 俊子:すいません。今は、母には公的な扶助の申請をしていますので。 しの:(憤懣やるかたなく)もう、あなた方のおかあさんのことは、あなた方で面倒見てく ださい。 俊子、久美:はい、これからはそうします。おかあさんにご迷惑をかけてすいませんでし た。 沢田:秀夫さん確認できましたか。 秀夫:一つ一つは、久美に確認する必要があります。少し時間が必要です。 俊子:私も、母に出費をしていますので、これも見ていただけますか。(領収書等を調停人 に示そうとする) 沢田:これも秀夫さんに確認していただきましょう。私には、皆さんの間の意見にそれほ ど隔たりがあるとは見えませんが。今まで言っていただいたことを総合すると、俊子、久 美さんは、今後、実母の面倒は自分たちで見ること、実母の生活水準に見合った看護をす ることを、しのさんに約束することまでは、いいですね。 俊子、久美:はいそうです。 しの:(これを受けて)うなずく 沢田:そこで、俊子さんにお聞きしたいのですが、秀夫さんのお金がいくら使われたかは、 秀夫さんと久美さんに確認していただくとして、使われたこと、これはどうしますか。 俊子:私の母に使われたことは事実ですので、私が工面できる範囲で、工面したいと思い ます。ただ、私も母に費用を用いていることや、このお金は、夫には内緒で、自分のへそ くりであることは理解していただきたいと思います。 5

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プログラム1 沢田:秀夫さんやしのさんはいかがですか。 秀夫:私は、久美の母に使われたことについて、目くじらをたてているのではありません。 それを私へ説明もなしに使われたことや、その使い方に文句をいいたいのです。全額返せ とも、そんなに大金をお姉さんに求めるつもりはありません。 沢田:しのさんはいかがですが。 しの:息子がそういうのであれば、私がしゃしゃりでる筋合いではありません。 久美:おかあさんごめんなさい。 沢田:では、秀夫さんと久美さんで、もう一度通帳や領収書をつき合わせてみて、必要に 応じて、俊子さんの領収書も見ていただき、相互に説明を受けてみることではどうでしょ うか。これは、この場でしますか。 秀夫、久美:二人でします。 沢田:では、次回までにその作業をして、適宜俊子さんにもご連絡ください。俊子さんは、 それを受けて、ご自身の工面をする方法や額をご検討ください。できれば、その結果につ いても、秀夫さんらに事前にご相談ください。これらの共同作業にどの程度の時間が必要 ですか。 俊子、秀夫、久美:(顔を見渡して、口々に)1週間程度でできると思います。 沢田:では、念のために、約10 日程度を置いて、再度お越しいただけますか。6月 13 日 午後1時はいかがですか。 全員:それで結構です。 沢田:では、その時間に、ここでお待ちしています。 6月13 日午後1時 (秀夫、俊子、久美は来るが、しのは来ない) 沢田:前回に引き続き始めたいと思います。今日は、しのさんはいかがしましたか。 秀夫:お前のお金のことだから、お前が話をして来いといわれました。 沢田:俊子さん、久美さん。それでよろしいですか。 久美:(少し戸惑いながら)はい、結構です。 俊子:はい、結構です。ただ、この問題が終われば、残りの額について、再度請求をして こないことを、秀夫さんが責任を持って約束して欲しいと思います。 秀夫:それはもちろん。そのために、ここに来ているのだから。 沢田:では、前回から今回までの間の共同作業の進展はどうですか。 秀夫:全部の領収書がなく、厳密に、どれが久美の母に用いられたのか、また、なにに使 われたものかは分かりませんでした。しかし、概ね、どのようなものに使われたかは、久 美から説明を受けましたので、結構です。 沢田:では、俊子さんはどうですか。 俊子:はい、なんとか30 万円を工面したいと思います。今すぐにはできませんが、3月内

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プログラム1 にはお払いできると思います。ただ、これは夫には内緒ですし、これ以上は、母や私は負 担はできません。 沢田:それで、無理はないですか。だれかに相談しましたか。 俊子:はい。知り合いの法律家に相談しました。法的な責任は別として、親族内のトラブ ルなので、あなたが思うように解決すればと、示唆を受けました。 秀夫:私は、それで結構です。 沢田:では、俊子さんが、3か月内に30 万円を秀夫さんに払う、これをもって、秀夫さん は俊子さんやお母さんにそれ以上の請求はしないということを、これから文章化してみま す。再度内容を確認していただいいて、必要があれば訂正しましょう。皆さん、当然私も 含みますが、署名をして、そのコピーを一部づつ持ち帰るということにします。では、少 しこのままお待ちください。どうもご苦労様でした。 7

(12)

プログラム2

14:15∼14:45

海外の実情報告と用語の説明 入江秀晃

資料2:「海外(主として北米)におけるADRト

レーニングの状況」

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海外(主として北米)における

ADRトレーニングの状況

2003/11/15

(株)三菱総合研究所

情報通信政策研究部

入江秀晃

目次

1.米国におけるMediationの潮流

2.ADRの制度化

· 法律家以外の活躍をサポートする仕組み

3.ADRの効果

4.北米以外でのADRの潮流

5.ADRの活用される領域

6.Mediation手法の潮流

7.各機関が定義するMediation

∼組織の性質を反映∼

8.北米でのADR教育

(14)

2

米国におけるMediationの潮流

· 米国においても、新しいコンセプトに基づくMediationが活発になったのは最近のこと であり、せいぜい20∼30年程度の歴史に過ぎない。 ·ロジャー・フィッシャー=ウィリアム・ユーリー ゲッティング・トゥ・イエス(Getting to Yes,邦題 「ハーバード流交渉術」)(82年)が出版され、原 則立脚型交渉/利益に基づく交渉/促進的 (ファシリエーティブな)交渉が理論化される。 ·紛争解決法(The Dispute Resolution Program Act、86年、カリフォルニア州) 80年代 ·アトランタ、カンザスシティー、ロサンゼルスにお けるジャスティス・センターの設置が効果的(77 年)。 ·カリフォルニア州オレンジカウンティのショッピン グセンターで元判事が、紛争解決相談開始。こ れが全米最大のADRサービス企業であるJAMS の前身。(78年) 70年代 ·公民権法(64年)により、コミュニティ関係サー ビス(CRS)が作られ、人種問題が原因の市民ト ラブルを話し合いで解決する地域における調停 機関となる。 60年代 できごと 年代 ·2001年、ユニフォーム・メディエーション・アクト (Uniform Mediation Act)により、メディエーショ ン(調停)の位置づけを全米レベルで明確化。 2000年∼

·行政紛争解決法(Administrative Dispute Resolution Act、90年、96年)により、政府機 関にADR部門の設置が制度化。

· 民事司法改革法(Civil Justice Reform Act、9 0年)により、民事に関する司法費用と遅延へ の対策としてADRの活用が盛り込まれる。 ·ADR法(Alternative Dispute Resolution Act、9 8年)により、連邦司法裁判所としてADRの利 用が位置づけられた。 90年代 できごと 年代

ADRの制度化

· 米国、カナダにおいてはADRが様々な形で制度化されている。米国では、州による制度 の違いが大きいが、単なる草の根の動きでもなければ、法曹界だけの動きでもない大き な動きが様々に観察される。 裁判所付属型の(非拘束型)メディエーションについて、93年からパイロット事業として実施してきた が、2001年4月に州レベルでルール化された。 イリノイ州 メディエーターになるための州としての公認のプログラムを持っている。フロリダ州でも同様に、州公 認プログラムがある。 ヴァージニア州 トロントなどオンタリオ州の3都市では、99年1月から原則として調停を民事訴訟の先に義務付ける 仕組みの試行を始めている。 カナダ・オンタリオ州の3 都市 86年の紛争解決法(DRPA)ができて、地域の紛争解決機関への財政的な支援が行われている。提 訴時に支払う約200ドルのうち8ドル分が、地域の紛争解決機関への財源に使われる仕組みとなっ ている。例えば、アジアパシフィック紛争解決センターはこのDRPAの元に設立された機関であり、ロ スに住むアジア系の人々(日系を含む)への紛争解決サービスを提供している。この機関では、約 50人のスタッフがおり、そのうち15人が弁護士である。相談、紛争解決、教育などを実施している。 カリフォルニア州 内容 事例

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法律家以外の活躍をサポートする仕組み

① 両当事者およびメディエーターによって 署名された「同意書」を用意する。 ② 弁護士不要、他のサービスより安いとい う広告をしない。 ③ メディエーターが合意文書のドラフトを 作らず、当事者自身の言葉からなる「理 解のメモ(Memorandum of Understanding)」を作成する。 ④ 裁判所に提出する文書をつくらない。 http://www.mediate.ca/avoidingunauth.htm 非法律家メディエーターが、法律違反を 犯さないためのガイドライン (カナダ・オンタリオ) • ロサンゼルスのダウンタウンにある Loyola大学では、貧困層が多いスペイン 語話者への調停サービスを行っているが 、教育プログラムで用いられる教材にも 、2ヶ国語の用意がされている。 Loyola大学(LA)のコミュニティ向け教材 はスペイン語との2ヶ国語で用意されて いる • コミュニティ向けと並んで、若者向けの メディエーショントレーニングは、広く 実施されている。学校内(中学、高校、 大学など)で、生徒達同士が問題解決を することで、学内問題解決と教育効果が あると言われている。 学校内でのピア・メディエーションも盛 んである

ADRの効果

· ADRの実施により、司法コスト削減、迅速化などの効果が観察されている。

出典:Evaluation of the Ontario Mandatory Mediation Program (Rule 24.1): Executive Summary and Recommendations March 12, 2001, pp.5-11.

カナダのトロントとオンタリオでは、裁判の早期段階に調停を強制的に入れるよう、「強制調停プログラム」(Mandatory Mediation Program)を実施している。

1999年1月4日に、民事訴訟法第24.1条により試験的に、非家事の民事事件(non-family civil case-managed cases)に強制調停プログラムを導入。積極的な評価 の結果、同条項は2001年7月3日から永続条項となった。ウィンザーでは2002年3月からこのプログラムを導入している。

http://www.attorneygeneral.jus.gov.on.ca/english/courts/manmed/factsheet.asp

その間23ヶ月間の評価が、強制調停試行プ ログラムの評価委員会である民事規則委員 会(Civil Rules Committee)の監督の下で独 立の評価機関によって行なわれた。 ・明らかに、早期強制調停はコストを削減 する効果が見られる。(右の円グラフはメ ディエーションがコスト削減に与える影響 について、訴訟当事者を対象に行なったア ンケートの結果を示したグラフである。) ・調停された訴訟における速度(時間)に ついては、24.1条の下では、導入前よりも 迅速に処分決定に進むということがわかっ た。(右の棒グラフは、トロントにおいて 、第一抗弁から6ヶ月以内に解決した事例 の割合を24.1条の導入前と導入後を比較し たもの。) ・24.1条の強制調停によって、多くの事例 が早期に解決している。(およそ10件に4 件が7日間の調停で完全に解決されている 。) (訴訟提起者対象)訴訟提起者にかかるコストへの影響 幾分かネガ ティブな影響 があった 2% かなり削減さ れた 57% 削減された 28% 削減されてな い、わからな い 11% ネガティブな 影響があった 2% 第一抗弁後、6ヵ月以内で解決した事例の割合 12% 23% 4% 9% 10% 15% 28% 8% 26% 15% 26% 33% 9% 21% 29% 26% 41% 6% 28% 25% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 商業契 約 債権 医療 過誤 自動 車 過失 その 他 物的 財産 権 信託 受託 義務 不当 解雇 ケース の全 類型 24.1条導入前 24.1条導入後

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北米以外でのADRの潮流

· EUなどでも制度化の動きがある。経済のグローバル化に伴い、各国でADRの重要性が増し ていると考えられる。 オーストラリアでは、知識、技術、倫理の3つの分野について、ADR実践者が獲得すべき能力を定義している。 オーストラリアにおける NADRACのフレーム ・ADRの活用状況について、概況は不明。 ・民間の機関(AMELYやCMAP(パリ仲裁・調停センター))、大学の心理学研究所(リヨン第2大学、パリ第5大 学)などで、カウンセリング手法を調停に取り入れた、教育プログラムがある。 フランス ・CEDRなど年間数百件規模で調停を実施する機関がある。

・大法官府(Lord Chancellor’s Department。日本の法務省に相当。新しく出来たDepartment for Constitutional Affairsに合併される)により、1994年民事訴訟制度の改正のためにウルフ委員会が設立され、ウルフ卿のもと でADR導入を含む民事司法制度改革がなされた。1999年4月以降の民事訴訟法にADRを組み入れたにも関 わらず、現在それほど発展していない理由について、ウルフ卿は「ADRを強制しなかったため」とコメント。 ・調停人を養成するプログラムを持っているADR機関としては、CEDR、Chartered Institute of Arbitrators、 Academy of Experts、ADR Group等がある。

イギリス EU市場の登場によって、モノと人の移動がEU域内で活発になったことに伴い、加盟国間の紛争も増加してい る。この結果、ADRが、EUレベルでもフェアで効率的な紛争解決メカニズムとして注目され、2002年4月にEU 委員会は民事及び商事におけるADRに関するグリーンペーパーを発行し、議論が開始された。グリーンペー パーは契約における条項、期限、秘密保持、同意の有効性、プロセスによって発生した合意の効果、第三者 (メディエーター)のトレーニングと認定と責任範囲等に言及している。ADRの質のためには、職業的訓練が重 要であることを説き、判事がトレーニングを受ける必要性や、ADR機関が会員にトレーニングを提供し、認定制 度を確保することを勧めている。 EUにおけるグリーンペー パー (EU委員会が発行するグリーン ペーパーとは、特定の分野につい てEUレベルで議論を促し、会議・ 審議会を設定するための文書のこ とで、これはいずれ議論でまとまっ たものを実行に移すためのホワイ トペーパーとなる。) 内容 事例

ADRの活用される領域

· 多様な機関が、多様な動機でADRを実施している。特に、Mediationは非常に大規模な 企業間紛争から、非常にローカルな近隣間紛争など広い分野で利用されている。 調停、相談。 コミュニティ調停 (近隣紛争等)、 家族、商取引。 不明 1920 年 教員6名 ロサンゼルスダウンタウンにあるロース クール。スペイン語しか話せないかなり 貧しい人向けのバイリンガルなコミュニ ティベースの調停プログラムを実践して いる。ロースクールの学生だけでなく、 コミュニティ向けのトレーニングも行っ ている。 Loyola Law School Center for Conflict Resolution * 調停が多い。 企業間紛争が多い 模様。 8000件の調 停。 1979 年 管理スタッフ 165人、 Neutrals200人 民間会社として最大のADR機関。国際的な 案件、大規模案件を扱えるため日系を含 む大企業の顧客が多い。専門家は元判事 が中心。調停で$50ミリオン(約60億円)、 仲裁で$20ミリオン(約24億円) JAMS 仲裁が多い。専 門家(Neutrals) は弁護士がほと んど。各州向け にカリキュラム を変えている。 保険関係が最も多 い。 23万件 (2002年、 うち調停は 1万件程 度) 1926 年 管理スタッフ 約700人、登録 されている専 門家メンバー (Neutrals)約 1万人) 仲裁を中心に行う、世界最大のADRを実施 する非営利団体。全米に39のオフィスが ある。 AAA 機関の特徴 (調停型か仲裁 型か、裁判所と の関係) ADR実施の有無 (実施している場 合の扱う分野: 例-商取引など) 受付件数、 調停件数 設 立 年 次 職員数 機関の概要 機関名 •Loyolaと同様にLAカウンティで、紛争解決及び教育プログラムの提供を行う機関は14ある。そのうちのひとつである、The Asian Pacific American Dispute Resolution Centerが年間に受け付けた数(相談を含む)は、828件。

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ADRの活用される領域

(続)

調停を含め、 ADR全般 商業分野、公的分 野の契約および約 款に関する争いを 扱っている。 年間500 ∼600件 1990年 11月14 日 36人。会員は、 法律事務所、 企業等多数。 英国で最も大きい非営利のADR機関。商業 的調停トレーニングでもリーダー的存在 で、継続教育のスキームも持っている。 CEDR(英) 調停。 近隣、家庭、不動 産賃貸、商取引 など。 年間約 200件 1964年 (紛争 解決は、 1985年 から) 4人 (ボランティ アメディエー ター60人この うち弁護士は 少数) 非営利のボランティア機関として、近隣 の紛争解決を行っている。85年と、カナ ダでは比較的早くから紛争解決サービス を始めたため、NPOでありながら老舗的な 存在となっている。 St. Stephens (トロントの NPO) http://www.stst ephenshouse.co m/index.shtml 調停及び交渉。 商業、契約違反、 環境、保険、過失、 株主、自営業、財 産、人的被害、不 動産、職場、ハラ スメント、不当解 雇、取り締まり、 専門的違法行為・ 過失 不明 1994年 8人。(すべて 弁護士) ロジャー・フィッシャーに師事したAllan J. Stittらのハーバード出身の弁護士グ ループが設立した民間会社。StittはADR Canadaのディレクターを務めたこともあ る。ADR実施とADR教育が収益源。 ADR Workshop Canada 機関の特徴 (調停型か仲裁 型か、裁判所と の関係) ADR実施の有無 (実施している場 合の扱う分野: 例-商取引など) 受付件 数、調 停件数 設立 年次 職員数 機関の概要 機関名

Mediation手法の潮流①

· メディエーションの手法は3つあると言われており、それぞれ特徴がある。

Robert A. Baruch Bush , Joseph P. Folger,“The Promise of Mediation”によって理 論化された。プロセスを含めて当事者がコントロールする手法で、第三者は双方 の当事者をエンパワーする。習得し使いこなすことは容易でないとも言われる。 ロジャー・フィッシャー=ウィリアム・ユーリー ゲッティング・トゥ・イエス(Getting to Yes,邦題「ハーバード流交渉術」)(82年)で理論化された交渉及び調停の手 法。「過去における正しさ」ではなく、「未来における利益」に基づいて交渉するメ リットと方法を説いた。米国、カナダで普及したメディエーションの多くは、この手 法を中心的に扱っている。中立の第三者は、法的知識を持つよりは、会話の促 進者としての能力を持つことが求められる。 コミュニティレベルでのメディエーションに用いられる場合が多かったと言われる が、弁護士グループも採用している。 パワーバランスが大きく崩れている場合には有効でないといわれる。 中立の第三者(Neutral(s))が、両当事者の上に立ち、裁断的に問題を解決する 手法。法律を含む専門知識により、問題を「評価」するところに特徴がある。元判 事集団からなるJAMSは、非常に複雑な紛争に対しても、裁判所での結論を予 想できるという強みを生かして、年間約8000件のメディエーションを扱う。 概要 当事者 中立の第 三者 中立の第 三者 プロセスを 持つのは 誰か 当事者 変容力のある手 法 (Transformative) 当事者 促進的な※手法 (Facilitative) 中立の第 三者 評価的な手法 (Evaluative) 結論を持 つのは誰 か ※「助成的」と訳される場合もある。

(18)

10

Mediation手法の潮流②

· 評価的な手法は、従来の司法システムと同様、第三者が当事者達の上

に立ち、評価を下す。一方、促進的な手法は、当事者が問題解決を行

うために議論の場をコントロールするのが第三者の役割となる。

当事者

当事者

第三者(neutrals)

第三者(neutrals)

当事者

当事者

評価

評価

促進

促進

評価的(Evaluative)な手法

促進的※(Facilitative)な手法

Right-based(どっちが正しい?)

Interest-based(どうするのが得?)

立場

立場

利益

※「助成的」と訳される場合もある。

北米でのADR教育

○育成する人材の種類 · 生徒は、弁護士、企業の人事担当者などが多いが、必ずしもプロのMediatorにならない人も多く、交渉に関し て学ぶという動機で、会社社長その他多様な受講者がいる。近隣紛争等のためのMediationを実施している コミュニティベースの機関では、やはりコミュニティの住民向けや、若者向けの教育を行っている。 ○コース · Mediatorトレーニングの標準は、25∼40時間程度。ワークショップ形式で、生徒が模擬事例を実演することに 多くの時間が使われている。 · 大学及び大学院レベルでは、紛争解決(Dispute Resolution)の分野として、主にロースクールにコースが設置 されている。ロサンゼルスのPepperdine大学は、この分野で有名で、紛争解決だけの修士課程を持つ全米で 唯一の大学である。通常1∼2年のカリキュラムとなっている。 ○教育内容

· Mediationトレーニングの理論的基礎として、 Getting To Yes が用いられるケースがほとんど。利益に基づく (Interest-based)交渉の理論が学ばれている。その他、異文化コミュニケーションなどの交渉についても学ばれ る。

· 模擬実習に加えて、実践活動を通じた教育も重視されている。例えば、Loyola Law Schoolでは、コミュニティ ベースの紛争解決センターを学内に持ち、電話相談やCo-Mediatorの形で学生が現実の問題に当たる。 ○教育機関

(19)

12

各機関が定義するMediation

∼組織の性質を反映∼

メディエーションとは、当事者が拘束力を持たない合意に至るために中立の第三者が支援するプロ セスをいう。 AAA メディエーションとは、当事者が、中立の第三者を指名し、自由意思に基づく解決を達成することを試 みるプロセスのことである。中立の第三者は判断を下さず、当事者はそのプロセス(進行)をいつでも 停止することができる。コンフィデンシャルで偏見ないものである。当事者は独立した法的助言を探 すことが奨励されており、自由意思に基づく解決が達成され、当事者が合意文書を締結したときのみ 拘束力を持つようになる。

ADR Institute of Canada

紛争にある人々が、中立の第三者とともに、同席し、フェースツーフェースで話をすることをいう。 Loyola Law School

The Center for Conflict Resolution 評価的メディエーションとは、裁判で導き出されるであろう結果を「試験」することをいう。 促進的メディエーションとは、コミュニケーションを広げ、解決の選択肢の創造を助けることをいう。 JAMS メディエーションとは、中立の第三者であるメディエーターが、当事者間の交渉を促進して、当事者の 紛争を手助けする、柔軟で非拘束的な紛争解決プロセスである。

Federal Judicial Center (連邦司法センター) “Guide to Judicial Management of Cases in ADR” メディエーションとは、当事者間の紛争で当事者自身が自発的に合意に達することができるように、メ ディエーター(調停人)が当事者間のコミュニケーションや交渉を促進するプロセスを指す。

Uniform Mediation Act

定義 機関

まとめ

· 米国、カナダでもMediationを中心とするADRが定着したのは、ここ20年程度のことである。 · Mediationは、当事者の自己決定を促進することで、早く、納得性の高い解決を実現するプロセ スであり、効果が見出されており、様々な制度化の動きも進んできている。 · 北米では、非法曹関係者もメディエーターになることができる。専門分野としては成立している が、職業としてはまだ充分な広がりがあるわけではない。 · 北米では、JAMSに代表される、Mediationサービスをビジネスとして提供する民間企業が登場 し、存在感を増している。JAMSでは、200人に上る元判事を中心とする専門家集団が複雑な案 件も処理できることを売りにしている。 · 北米では、コミュニティベースの相談、Mediation及びメディエータートレーニングの実践を行う機 関がある。 · 北米でのトレーニングは、受講者が参加するワークショップ形式をメインにとるものが多い。模 擬ケースを用いたワークショップで理論とおおよそのスキルを身につけ、紛争の電話受付やCo-Mediatorとして実際の問題に当たりながら、実践を通じてスキルを身につけている。

(20)

14

ありがとうございました

本資料に関する問い合わせは、下記までお願いいたします。 株式会社三菱総合研究所 情報通信政策研究部 入江、土屋 TEL 03-3277-5583 FAX 03-3277-3473 irie@mri.co.jp, tsuchi-k@mri.co.jp

Memo

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2003/11/15 【ADR 用語集】 本用語集の位置づけについて 本用語集は、米国を中心として、ADR 関連用語がどのように定義されているかをとり まとめました。別資料で説明したとおり、米国等においても、ADR の考え方や制度は比 較的新しい考え方で、取り組みの主体も市民団体から、弁護士事務所、あるいは元判事 をずらりと揃えた民間会社まで非常に多様です。当然、取り組む主体によって、米国等 でも用語の定義の仕方も微妙に異なってきます。本用語集は正しい一つの説明を記述す るのではなく、複数の定義を併記する体裁としました。本資料をひとつのタタキ台とし て、日本におけるADR に関する議論と ADR に関する取り組みに少しでもお役に立てた ら幸いです。 用語の訳間違い等、ご指摘、ご教授いただけますと助かります。よろしくおねがいい たします。 株式会社三菱総合研究所 情報通信政策研究部 入江、土屋 TEL 03-3277-5583 FAX 03-3277-3473 irie@mri.co.jp tsuchi-k@mri.co.jp 1

(22)

(アイウエオ順)

ADR (Alternative Dispute Resolution)

・ ADR プロセスは、裁判長(presiding judge)による判決以外の手順で、例えば、ENE (Early Neutral Evaluation)やメディエーション、ミニ・トライアル、仲裁のような手続を通じて、 中立の第三者が論争になっている問題の解決を助けるために介入すること。(ADR Act) ・ ADR は、通常、紛争を解決しようと紛争当事者が自ら開始する伝統的な訴訟プロセス外 の一連の手続きをいう。(ADR Canada) ・ 訴訟や仲裁(arbitration)の非柔軟性を回避する紛争解決手法の総称。当事者が直接およ び間接費用を最小限におさえ、より良い又は似たような結果を達成することに焦点をあ てる。(CEDR) 以下、アイウエオ順 アービトレーション(arbitration)・仲裁 ・ 紛争を解決する方法の1 つで、紛争当事者が公平な第三者に事件を委ね、その第三者が 紛争を解決すべく判断を行なうことである。この判断は通常拘束的である。第三者が単 に紛争当事者らで解決策をみつけるのを助けるメディエーションとは異なる。(C) ・ 最終および拘束ある判断のために、公平な一個人または複数の人に紛争を付託すること。 契約上の規定に基づいて、当事者は、解決される問題の範囲、判断される救済の範囲、 プロセスの多くの手続上の局面をコントロールすることができる。(AAA) ・ 当事者が、中立の第三者である仲裁人の判断に拘束されることに同意する、伝統的な非 公開の紛争プロセス。仲裁人が下した裁定は通常法廷の判断と同様に法的に執行可能で ある。(CEDR) ・ おそらく非公開の紛争解決法として最もよく知られている仲裁は、正式な拘束力あるプ ロセスで、紛争が、指名された第三者、即ち一人または二人以上の仲裁人の判断によっ て解決される。(CIArb) ・ [仲裁] 紛争を、当事者が選定し、その判断に服することを合意した第三者の裁定に委 ねること、または、それによる紛争処理手続。コモン・ロー上の仲裁は強制履行ができ ないが、制定法上の仲裁は強制履行が可能。制定法としてイギリスでは1950 年法、1979 年法、アメリカでは連邦法(1925 年)と州については Uniform Arbitration Act(統一 仲裁法)を採用した法律その他がある。なお、アメリカ諸州では、裁判所の負担軽減の ため、前審的に仲裁を司法機構に取り入れた強制仲裁(judicial arbitration)制度が普及 しつつある。(英米法辞典)

(23)

・ ケースプランを改善するため、紛争の早い段階で当事者に、アドバイス的な評価を与え る非拘束的なプロセス。メディエーションと同様、民事の多くのタイプの紛争に広く適 用できる。特に、非常に複雑なケースでの適用が有効であると言われている。(FJC) ・ 第三者(通常、判事か法的資格を有している者)が解決のディスカッションとして裁判 で出されるであろう結果に関して意見を述べる、非公開且つ非拘束的な手法。(イギリス CIArb) アクティブ・リスニング(active listening) ・ 完全に相手が言っていることに耳を傾け、そのメッセージの内容とその背後にある感情 両方を適切に理解しているかどうかを確認することである。(C) アドボカシー(advocacy) ・ 紛争において特定の側につく(又は特定の側のために働く)プロセス。紛争当事者は彼 ら自身、ネゴーシエーション(交渉)・メディエーション・政治的ディベートにおいて 自己の立場を主張するためにアドボカシーに従事することができる。相手側を自分の要 求に同意するよう説得する試みはアドボカシーである。(C) ・ ①弁論、②訴答を行なうこと→pleading、③擁護;唱道 一定の立場を強く訴える説得 活動(英米法辞典) イシュー(issue) ・ 問題が「何」か;討論または話し合いの議題。(AAA テキスト) インタレスト(interests) ・ 人々があるポジション(p.8 参照)をとるきっかけとなる潜在的な欲求や懸念。ポジショ ンが「この家をここに建てたい!」というような彼らが欲しいというものである一方で、 インタレストはそのようなポジションをとる理由(よい景色がみえる静かな場所が欲し いから、という理由等)である。当事者同士のポジションが正反対でも、しばしば、当 事者同士のインタレストは矛盾しないので、話し合う余地はある。(C) ・ ポジションの原因となる「なぜ」;当事者の懸念、ニーズまたは欲望。(AAA テキスト)

インタレスト・ベースド・プロブレム・ソルビング(interest-based problem solving)

・ ポジションではなく、インタレストの意味で問題を定義し、お互いに満足する解決策を 得るために互いのインタレストを調和させるべく取り組むことである。(C)

ウイン−ウイン・アプローチ(win-win (cooperative or problem solving) approach)

・ 全ての紛争当事者を満足させる解決法を見つけたいと思っている人々によって取られ

(24)

る紛争へのアプローチである。このウィン−ウィンの取引では、紛争渦中の当事者は双 方が 勝つ ような方法で共通の問題を解決するために協力することを試みる。対峙す る者を敵とみなし、紛争に勝つためには相手が負けなければならないとするウィン−ル ーズアプローチと比較対照される。(C) エンパワメント(empowerment) ・エンパワメントとは、個人またはグループ(集団)に、よりパワー(p.6 参照)を与える ことである。これは、教育、連合形成やコミュニティの組織化、リソースの発展または アドボカシーを支援することを通じて当事者自身によっても行なわれる。または、より パワーが少ない(力関係が弱い)個人やグループを効果的に演出することを助けるメデ ィエーターによっても行なわれる。このアプローチは倫理的ジレンマを生じさせるが(と いうのも当事者の一方をより支援することはメディエーターの中立性を損なうからであ る)、このアプローチが二人の当事者のパワーが比較的均衡している時に最もよく機能す ることから、問題解決またはメディエーションの 合意志向(settlement-oriented)方法 においてよく行なわれている。しかしながら、ブッシュ(Baruch Bush)とフォルガー (Joe Folger)は、変容的なメディエーションを通じて両当事者を同時にエンパワメント することを主張している。これは、紛争当事者の 自己の価値と強みに関する自覚およ び人生の問題を扱う自己能力 を回復させる。このアプローチは一方側のみのエンパワ メントの倫理的ジレンマを回避するが、解決(settlement)達成という本来の目的を犠牲 にする。(C) オープン・エンド・クエスチョン(open-ended question) ・ 答えが一つに決まらない広がりのある質問。 ・ (多肢選択法によらない)自由回答式の質問。(リーダーズ英和辞典) ・ 例) −この紛争がどのようにして始まったか教えてくれますか。 −この問題をあなたはどう捉えていますか。 −可能な解決策は何ですか。 −他の代替的手段(alternatives)として何が考えられますか。 (AAA テキスト) コーカス(caucus) ・ メディエーターが、個々の当事者と問題点を話し合うために行なうミーティングのこと。 (AAA) ・ メディエーターと各当事者との非公開の秘密の話し合い。コーカスの面会はしばしば各 当事者の重要な問題とニーズを考察し、強みと弱みに関してオープンにするよう促し、

(25)

解決のための選択肢を話し合うために行なわれる。(CEDR, ADR Group) コー・メディエーション(co-mediations)共同調停 ・ 同一のメディエーションで2 人以上の調停人を使うプロセスのこと。(CEDR) ・ 同一のメディエーションで2 人以上の調停人を使うプロセスのこと。すぐには解決しそ うもない困難な問題や当事者が数多く関わっている場合によく使われる。(ADR Group) コモン・グランド(common ground)/コモナリティーズ(commonalities) ・ 2 人またはグループが共有している、又は共通にもっているもの。例えば、同じ場所に 住んでいる、似ている価値観、関心、ニーズをもっている、或いは、似た恐怖体験があ るなど。紛争当事者同士はしばしば相手とは共通点が全くないと思っているが、大抵、 共通のものを持っているものである。少なくとも、他者を恐がることなく平和で安全な 場所に住みたいということはほとんど万人が共通にもつニーズである。(C) コンシリエーション(conciliation) ・ メディエーションに似ているが、コンシリエーター(conciliator)は合意に達する前に当 事者に解決策を提案できる。(CIArb) ・ 中立の第三者が、当該事例における解決策や意見を言うなどして積極的な役割を果たす プロセス。しかしながら、メディエーションとコンシリエーションのどちらのプロセス が積極的かということについては国際的な意見の一致はなく、商事紛争においては第三 者ファシリテーションの一般的な条件として、メディエーションの適用が増加している。 (CEDR, ADR Group)

・ 争訟的方法によらずに紛争を解決する手続。両当事者が合意によって解決に到達する手 続。両当事者が合意によって解決に到達することを目的とするから、たとえ、conciliator (調停者)が解決案を示す場合にも、それは当事者を拘束するものではない。裁判外の 手続としては、イギリスのEmployment Protection Act 1978(雇用保護法)、アメリカ のNational Labor Relations Act(連邦労働関係法)のように、労使紛争の円満な解決 のために行なわれることが多い。これに対して裁判手続に付置されるものとしては、少 額裁判手続があり、アメリカの一部の州では,調停手続の付置された裁判所をcourt of conciliation とよぶことがある。(英米法辞典) ニーズ(needs) ・ 心理学者のアブラハム・マズロー(Abraham Maslow)は、全ての人々は一定の生物学的 および心理学的要求の獲得に駆り立てられることを示し、それを基本的な人間の欲求 ニーズ と呼んだ。ジョン・バートン(John Burton)やハーバート・ケルマン(Herbert 5

(26)

Kelman)のような紛争理論学者は、このアイディアを紛争理論に適用し、安全(security)、 アイデンティティと認識への欲求は、根強く長引く紛争の背後にあることを示唆した。 彼らが主張するには、例えば、最も民族的(ethnic)で人種的な(racial)紛争は、インタレ スト・ベースド(interest- based)の紛争ではない(それゆえに交渉はできない)が、 従属するグループのこれらの基本的要求へのニーズによって駆り立てられている。欲求 の紛争が解決されるためには、全てのグループの基本的欲求をみたすように社会を再編 成するしかない。(C) ネゴーシエーション (negotiation) ・ 交渉(bargaining)−2 人またはそれ以上の、共通の問題に対して解決策を探している紛 争当事者間におけるディスカッションまたはギブ・エンド・テイクのこと。交渉は人々 −親子間、夫婦間、雇用者と被雇用者との間−や国家間で常に起こる。お互いにとって 便益のある解決策をもとめることで比較的協力的にもなり得るし、逆に、相手よりも勝 ろうと思えば、対立する交渉(取引)にもなり得る。(C) ・ 当事者がお互いに差異についてカンファレンスやディスカッションを通じて伝え合い、 解決のために妥協を図ろうとするプロセスである。(AAA)

バトナ(BATNA, best alternatives to negotiated agreement)

・ BATNA はロジャー・フィッシャー(Roger Fisher)とウィリアム・ユーリー(William Ury)が開発した定義で、”best alternative to a negotiated agreement”の頭文字である。 ネゴーシエーターは交渉で決まった合意(neogotiated agreement)に同意する前に BATNA を考えなければならない。その合意が一方の BATNA と同等かそれよりも良い 場合、当該合意は受け入れられるべきである。しかし、他に考えた代替的手段が良い場 合は、話し合い(交渉)で決まった合意の代わりに遂行されなければならない。一方の BATNA が良い場合(若しくは単によく見える場合)、その代替的手段を遂行し、当事 者は交渉には入りたがらないことが多い。(C) ・ ハーバード・ネゴーシエーション・プロジェクトのロジャー・フィッシャー(Roger Fisher)とウィリアム・ユーリー(William Ury)によって開発された手法で、交渉を する当事者に彼らの選択肢を評価させるものである。BATNA は、交渉をやめた(中止 した)ときに、当事者が期待できる最もよい結果である。(CEDR) ・ 交渉する当事者に彼らの選択肢を評価させる手法。BATNA は交渉をやめたときに当事 者が期待できる最も良い結果である。(ADR Group) パラフレイジング(paraphrasing) ・ わかりやすく言い換えること。(リーダーズ英和辞典)

(27)

・ 目的:話している人が何を話しているか、あなた(メディエーター)と話者自身で確認 (はっきりさせる)すること。話し手は自分が話したことの言い換えを聞き、それが自 分が話したかったことなのかどうかを確認する。聞き手は、自分の理解の正確度を確認 する。 手法:1.話し手が話したことの要旨を話す。 2.あなたが聞いたことが正しいかどうか確かめる。 3.正しければ、当事者が話し続けることができるように促進する;「もっと教え て下さい」 4.もし、理解ができなければ、もう一回説明してもらう。(話し手は修正してま た話し続けるだろう) 5.話している最中に何を話したか、何を話してないかを聞くのに有益。あなたが 次に何を言おうかとか、話し手(当事者)が何を次に話すだろうか、と考えて はならない。 例)話し手:これまた彼が時間厳守でない例なんですよ。私の評判を下げてます!彼は とにかく、我々の契約に違反したのです。彼の言い訳にはもう飽き飽きし てますし、もう聞いてあげようなんて思いません。 聞き手:あなたは彼が遅れたことに対して苛立っているのですね。遅れたことは前 にもあり、それであなたの評判を下げていると。あなたは彼が契約違反を したと思っており、もう遅れたことに対する理由は受け付けないというこ とですね。 話し手:そうです。契約を解除して損害賠償をいただきたい! 聞き手:あなたは、金銭的な損害賠償を受ける権利があり、契約が断たれるべきだ とお考えですね。 (AAA テキスト) パワー(power) ・ 紛争理論家のケネス・ボールディング(Kenneth Boulding)の定義に従えば、パワー とは、自分が欲するものを得る能力または「未来を変える」能力のことである。これは、 力(時々”power-over”と称される)や協力(”power-with”または exchange power と称 される)またはintegrative system−人々を集団でいさせるアイデンティティや関係− によって起こる。(C) ファシリテーション(facilitation) ・ コンセンサスづくりのミーティングを運営することを助ける第三者によって行なわれ る。ファシリテーターは典型的に当事者が基礎的ルールと議事を設定・執行し、当事者 が相互にゴールに迎えるよう助ける。メディエーターに類似しているが、ファシリテー 7

(28)

ターは審議についてはメディエーターよりも少ない関与の仕方で、メディエーターのよ うに「解決」することがその目的ではない。(C) フレーミング(framing) ・ 問題が何なのか定義するプロセス。写真のフレームがある部分のみを囲んでいて他の部 分は切り落としてあるように、人々は問題のある部分を重要だと定義することができる 一方で彼らに関心がない問題は無視する(又は気がつかない)。(C) ブレーン・ストーミング(brainstorming) ・ 創造的集団思考法。(リーダーズ英和辞典) ・ 例) 1.プロセスをやめ、大きな画用紙かフリップチャート*を用意する。 *講演などで使う 1 枚ずつめくれる大型の解説用図表 2.部屋にいる人全員に、他の代替手段はないかどうか聞く。 a. 時間制限をつける(2∼3 分) b. 量が重要なのであって、質ではない。 c. 良し悪しの判断をしてはならない。 3.あなた(メディエーター)もクリエーティブな解決策を話すために参加する(これは、 採用されるべき解決策ではなく、あくまでも、あなたのアイディアで、もしかした ら当事者によって採用されるかもしれないし、断られるかもしれないし、拒否され るかもしれない)。 4.ブレーンストーミングをやめる。 5.当事者に何が良いと思うか尋ねる。 6.最も見込みのある(期待できる)解決策(promising solution(s))を進展させる。 (AAA テキスト) ポジション、立場(position) ・ 人々が欲しいと言うもの―相手に対して行なう表面的な欲求。インタレストとポジショ ンを最初に区別したフィッシャー(Fisher)とユーリー(Ury)によれば、ポジションとは、 人々が判断をするのに依拠するもので(decided upon)、インタレストとはそう判断する ようになった原因である。しばしば、一方当事者のポジションは他方当事者のポジショ ンの反対であるが、彼らのインタレストは事実上矛盾しない(共存できるcompatible)。 (C) ・ 議題に対する一方当事者が提案した解決策(ソリューション)。(AAA テキスト) ミーダブ(med-arb; mediation-arbitration)

(29)

・ 紛争においてメディエーター兼仲裁人として働く中立の第三者を活用する。必要に応じ て、メディエーションにおける説得の自由意思のテクニックと、仲裁人の最終且つ拘束 力ある判断を下す権限を組み合わせる。(AAA) ・ メディエート(調停)された交渉が解決に至らなかった場合、当事者が、メディエータ ーに仲裁人に「変わって」(仲裁人になって)法的拘束力ある判断(裁定)を下す権限 を付与する契約をするプロセス。(CEDR) メディエーション(mediation) ・ メディエーションとは、当事者間の紛争で当事者自身が自発的に合意に達することがで きるように、メディエーターが当事者間のコミュニケーションや交渉を促進するプロセ スを指す。(UMA) ・ メディエーションとは、当事者が拘束力を持たない合意に至るために中立の第三者が支 援するプロセスをいう。(AAA) ・ メディエーションとは、中立の第三者であるメディエーターが、当事者間の交渉を促進 して、当事者の紛争を手助けする、柔軟で非拘束的な紛争解決プロセスである。(FJC) ・ メディエーションとは、仲介者(intermediary)が当事者と一緒になって行なう紛争解 決手法である。仲介者が当事者間のコミュニケーションと紛争状態の分析を向上させる のを手助けすることで、当事者はその紛争に関わる者全ての利益又はニーズに応えるべ く当該紛争を解決すべく選択肢を認識し、選択することができる。仲裁では仲介者は両 方の側の主張を聞き、当事者のために判断を下すのに対して、メディエーターは紛争当 事者自身が解決策を設計するのを手助けする。(C) ・ ①調停;介入 中立な第三者が紛争当事者の間に入って説得によって紛争の解決を図る 行為。②国際調停 中立の第三国が紛争当事国の主張を調和させて解決を図る手続。 (英米法辞典) 評価的メディエーション (Evaluative Mediation) ・ このプロセスを使って、当事者は当該事例がどのような結果になるかについて「試行」 することができる。メディエーターは当事者に事実関係および法律的な主張をさせる。 その後で、メディエーターは裁判に関する自己の評価(予想)または結果の予想につい て言及する。当事者間のギャップが大きい場合や問題がいくぶんか複雑で利害関係が大 きいなど、より困難な事例についてよく利用される。(JAMS) ・ メディエーションのアプローチで、中立の第三者が、提案を示したり当該事例のメリッ トや当事者間の特定の問題に見解を示したりするなどして比較的アクティブな又は介 入的な役割を果たすこと。(CEDR, ADR Group)

促進的なメディエーション (Facilitative Mediation) ※助成的と訳される場合もある。

(30)

・ このプロセスでは、結果のコントロールは殆ど完全に当事者およびその弁護士(counsel) に委ねられている。メディエーターはコミュニケーションを促進させ、全ての関連する 情報が当事者間で交わされ、聞かれていることを保証しながら解決のための選択肢を生 み出すのを助ける。メディエーターは、当事者の利益から問題を区別することも助ける。 (JAMS) ・ メディエーションのアプローチで、中立の第三者が、当事者が解決しようとする自己努 力を手助けすること。メディエーターはプロセスに責任があるが、当事者は中身 (content)に責任をもつ。このアプローチは時々、”interest-based” mediation と呼ばれ る。(CEDR, ADR Group)

変容的なメディエーション (Transformative Mediation)

・促進的なメディエーションと似ている手法だが、使うプロセスを決定するのはメディ エーターと当事者である。(CEDR, ADR Group)

リフレイミング(reframing)

・ メディエーターによって使われる手段で、当該状況がより肯定的(ポジティブ)にみら れるように、言い換えや言葉の構成、状況構成・順序の並び替えをすること。(CEDR)

(31)

(凡例)

凡例 国 出典

C 米 University of Colorado, USA

http://www.colorado.edu/conflict/peace/glossary.htm 2003 UMA 米 Uniform Mediation Act of 2001 (US)

ADR Act 米 Alternative Dispute Resolution Act of 1998 (US) FJC 米 Federal Judicial Center

“Guide to Judicial Management of Cases in ADR” 2001

JAMS 米 http://www.jamsadr.com/images/PDF/PressKit/jams_glossary.pdf 2003

AAA

米 American Arbitration Association

http://www.adr.org/index2.1.jsp?JSPssid=16235&JSPsrc =upload/livesite/focusArea/consumer/glossary.htm 2003 AAA テキスト 米 トレーニングテキスト

“Mediation – 40-Hour Mediator Skills Traing for Court-Based Settlement Programs”

CIArb 英 http://www.arbitrators.org/DRS/adr_def.htm 2003

CEDR 英 http://www.cedr.co.uk/index.php?location=/library/glossary.htm 2003

ADR Group 英 http://www.adrgroup.co.uk/glossary_of_adr_terms.html 2003 ADR Canada カ

ナ ダ

ADR Institute of Canada

http://www.adrcanada.ca/news/faq.html 2003 リ ー ダ ー ズ 英 和辞典 日 松田徳一郎監修『リーダーズ英和辞典』研究社 英米法辞典 日 田中英夫編『英米法辞典』(東京大学出版会、1991) ※ 全て、英語文献はすべて、抄訳かつ仮訳です。 ※ レビン小林久子『調停者ハンドブック−調停の理念と技法』信山社出版株式会社 (1998 年)は、単語選定に当たって参考にしました。 11

(32)

プログラム3

14:55∼15:40

対話による自律的解決

大澤恒夫

資料4:「わたしたちはなぜ、対話を求めるの

でしょうか」

(33)

ADR 人材育成試行プログラム 大澤恒夫 2003/11/15

ADR では、相談から調停(Mediation)等まで、「対話」が中心となります。

では・・・・

● 人が人と対話をする意味は、どこにあるのでしょうか? どうして、対話

をしなければならないのでしょうか?

この問題に関する以下の説明について、みなさんはどのようにお考えになりますか? □ 「

法律で決まっていないことについては、話し合いで決める以外にないか

ら。

」 □

裁判をするより、話し合いのほうが費用を掛けずに早く解決できるかもし

れないから。

□ あなたのお考えは?

● 対話とは、どのようなことなのでしょうか?

この問題に関する以下の説明について、みなさんはどのようにお考えになりますか? □

人は話せば分るはずだから、理を説いて分らせるように説得すること。

お互いに話を聞いて、お互いの話で良い点・悪い点をはっきりさせ合って、

譲歩をし合うこと。

□ あなたのお考えは?

● 対話に関わるわたくしたちの位置付けと役割は、なんでしょうか?

この問題に関する以下の説明について、みなさんはどのようにお考えになりますか? □

相談の場合、事実関係を聞いて、当事者が法律的にどういう権利を持って

いるのか知らせてあげるのが役割。

調停の場合、双方の話を聞いて、双方に譲歩すべきところは譲歩するよう

に説得して、和解させるのが役割。

□ あなたのお考えは?

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