9
なぜ相談の構造化を考えるのでしょうか?
・相談に臨むにあたって見通しを立てる
・「聴く」⇔「問う」→「伝える」のうち前二者と後 者の役割混乱を招かない
・相談者が自ら考える過程に即応(問題を次第 に深めてもらう)
・協働判断の形成のために必要(問題を共に 考える)
何故「聴く」という段階だけのスキルを考え るのでは足りないのでしょうか?
・「プロセスとしての相談」という考え方
・相談は「聴く」だけでは終わらない
・「伝える」「意思決定」がどのように行わ
れるかが相談の質を決定する
11
相談トレーニングの難しさは?
1 Mediation のように対立当事者間の緊張関係がな
いので、相談プロセスが見えにくく、関係が崩れや すい
2 相談の多様性から、参加者が共通の認識を持ちに くい
3 参加者がそれぞれの相談スタイルを既に形成して おり、これとのギャップを感じて反発を招きやすい 4 「プロセスとしての相談」であるため、全体構造を通
して理解してもらう必要がある
あっせんの特色
1 同席を前提とせず、電話によるケースが多 いこと
2 直接交渉がうまくいかない場合の代理的あ るいは介入的役割が期待がされることがある こと
3 消費者問題の特徴として、当事者間に力の
アンバランスがあることが多いこと
13
電話によるあっせんについて(三者比較)
業界団体・消費 者団体・行政が 関与しているこ とが多い
多様性がある
中立性が求め られる
中立性が求め られる
相談者の立場 に立って
聴く 聴く+伝える
聴く+伝える
同席 同席が難しい
面接 電話が多い
電話・面接
三者関係 三者関係
二者関係
Mediation あっせん
相談
「あっせん」による解決の論点整理
ー ADR と相談過程の連鎖のあり方をめぐって 積極面⇒・相談過程と ADR の連携強化
・スムーズな移行過程が必要
・両者のスキルを学ぶことで紛争の展 開過程に対応可能
⇒ ADR の拡充・活性化へ
15
消極面⇒・相談員とあっせん者の役割混乱への危惧
(「聴く」→「伝える」の自己統制がより難しい)
・電話の特徴による問題拡大への懸念
・別席調停と同様の問題点の存在
(情報のコントロールその他)
この場合のあっせん者のあり方はどう考えたらよいか
1
相 談 の 技 法(1)
ー基本的なかかわり技法ー
2003年12月20日 中 村 芳 彦
マイクロカウンセリングの階層表
技法の統合
(指示・再構成・自己開示・助言) 積極技法
( 対 決 )
( 焦点のあて方 )
基本的傾聴の連鎖
(質問・励まし・言い換え・感情の反映・要約)
基本的かかわり行動
(視線・身体言語・声の調子・言語的追跡)
3
基本的傾聴の連鎖と積極技法の関係
クライエントの視点で見る 多角的な視点で見る
↓ ↓
基本的傾聴の連鎖 積極技法
⇓
はっきり使い分けることが重要
面接の段階と技法の相関関係
段階1 信頼関係の形成 基本的かかわり行動
↓
段階2 情報の収集
↓ 基本的傾聴の連鎖
段階3 目標の設定
↓
段階4 可能な選択肢の探求
↓ 積極技法
段階5 協同判断の形成・実践
5
マイクロ技法学習の留意点
1.面接全体を通して行うより、面接の各段階ご とに練習する
2.セッションを構造化しない限り、初期の段階 では、受講者は、段階から段階にでたらめに 動いてしまう
3.面接の基本的技法を身に付けるまで、積極 技法に入るべきではない
基本的かかわり行動
視線の合わせ方
身体言語によるかかわり 声の調子
言語的追跡 ・・・話題を変えないこと
7
導入の技法1 −面接の場
場所設定=場所・時間・服装・姿勢・位置・
視線・身振り・言葉使い・声 ノンバーバルな部分の重要性
導入の技法2
−アイスブレイキング
会話のスタートは笑顔、自己紹
介、ポジティブな承認(=その
人の存在を認める)で相手の
心の緊張を解く
9
導入の技法3 −ページング
相手の雰囲気、話すスピード、声の トーンや大きさ、語尾など、できるだけ 同じように合わせてみる。
安心感と親密度がアップする
→但し、怒鳴りこんできた時は別
場についてのセンスを育てる
1.イメージ・リハーサル
2.相談者の椅子に坐ってみること
3.空中に浮かぶ自分の眼球というイメージ
(神田橋條治)
11
傾聴するために必要な前提=ゼロボジョン
①相手のこと、会話の内容について、できるだ け事前に先入観を持たない。心は真っ白な キャンパスをイメージする。肩の力を抜くこと
②相手が喋っている間もできるだけ自分の思考 を抑えるようにする(→と言っても無理なので、
自分の心の動きに耳を澄ますこと。これが大 切)。評価しない。自己解釈しない。
→クライエントの話の背後にある心の動きに耳 を澄ます
基本的傾聴の連鎖
開かれた質問 明確化
要約
感情の反映
最小限の励まし
いいかえ
13
Active-Listening の意味
1.相談者に受け入られていること(受容)を実 感させることができる→信頼関係の形成
2.相談者が言いたいことを明らかにしてあげる
(=明確化)→自己治癒力を発揮させること に対する強力な援助になる
それぞれの質問技法の長所・短所は?
開かれた質問→・応答の自由度が高い
・何を話せば良いかわからないことが ある
・欲しい情報を入手できないことがある 閉じられた質問→・受身的で、尋ねられたことしか答え
られない
・パターナリスティックな関係に陥りや すい
・イエス・ノーで答えられないアンビバ レントな領域がある
・欲しい情報が確実に得られる
15
あなたなら どうしますか?
−質問技法
クライエント:次の閉じられた質問を開かれた質問に 言い換えてみて下さい。
1.奥さんと離婚する気持はありますか
2.あなた自身の行動を変える必要があるのではあ りませんか
3.相続放棄をするつもりはありませんか
4.相手方とは、対立状況が続いているのですか 5.請求する損害賠償金は200万円ということでいい
ですか
閉じられた質問
閉じられた質問は、面接において有用
なものであるが、次から次へと用いて
はいけない。クライエントがもっと話を
深めていけるような雰囲気の中で、閉
じられた質問を用いることが大切であ
る。
17
答えにくい質問
原因は何ですか?
理由は何ですか?
どうしてですか?
→こうした質問は、しばしば防衛的感 情を引き起こす
最小限のはげまし
「それで」「うんうん」「ええ、ええ」「もっと話しをしてみて 下さい」などの言葉を使う。
あるいは、1語や2語のキーワードや最後に言った中 から、いくつかの言葉を取り出して、簡単に繰り返す 最小限のはげましの意味
1 クライエントに話を続けることを促す
2 面接者が焦点をおき、ついていこうとすることを示す 3 最小限のはげましとしての沈黙
4 キーワードを繰り返すことの重要性
※ Mediation における「繰り返し」はこれに入る
19
いいかえ
相手の話した内容を、違う言葉で、または相 手が表現したがっていると思われる内容を、
より明確にした形で表現して返す技法
※パラフレイジング (Paraphrasing) 、リフレイ ミング (Reframing) との関係
→ここで言う、いいかえは、 Mediation におけ るパラフレイジングの意味。リフレイミング ( = 枠組を揺さぶること ) は、基本的傾聴の連鎖 においては使わない。
感情の反映
「あなたは・・・と感じているようですね」「あな たは・・・と感じているように聞こえますが。」と いうようにクライエントの話すことの情緒的な 側面に焦点をおく。
↓
・クライエントが彼の感情に気づくのを助ける
・クライエントが経験している内的世界を面接
者が理解しているということを示す。
21
スクリプトにおける感情の反映の例
電子レンジ事故スクリプト2
11:火は出ていないけれども、消火器で台所が真白 になって大変な思いをされたということですね。
23:それで、大変な思いをされたということはよく分か ります。
英会話教室スクリプト2
21:あの、ご自身が疑われたということに、憤られてい るわけですね。
29:はあ、二重取りを疑われているようで納得できな いというわけですね。
感情の反映の仕方は?
1.現在形を使って、現在の感情を反映する 2.混合した感情を丁寧に反映する
3.クライエントの言葉をそのまま繰り返さない
4.感情の反映の前に、クライエントの感情を正しく 確認する
・感情の反映はどういうときに行うのが効果的か?
→面接の進行を妨げるかもしれない感情をクライエ
ントが持っているときに行う場合
23
みなさんならどう答えますか?
相談者 (3ヶ月前に離婚している女性)はじめて夫が 別れると言ったとき、とても腹がたちました。
でも今では、夫の助けなしに一人で生活して います。
援助者 a. はじめ、とても腹が立ったのですね。
b. もっと先になれば、これでよかったと思われ るでしょう。
c. ご自分一人でやっていかれることに誇りを 感じていらっしゃるのですね。
感情の反映の練習
次の文章の各々について感情の反映をしてみて下さい。
1.メーカーの対応には、とても腹がたっています。許 せません。
2.私の父にはうんざりします。いつも私に命令します。
3.娘が事故であんな後遺症が残ってしまって・・・。
ショックで何も手につきません。
4.私は、お店であんな長い列に並ぶことはとてもでき
ません
ドキュメント内
「ADRを担う人材育成に関する研究会」によるプログラムの概要
(ページ 161-179)