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(1)

西ドイツでは︑ くしは︑実体に即し理解しやすくするため︑ はじめに はじめに

目 次

の意義について ラストシ

この制度は︑満期の到来した

金銭債権を偵権者の側から口座販替の方法によって取立てるものであって、わが国でい、~賑込の逆の形態だからである。

ラストシュリフト方式を別に逆振替

( r i i c k l a u f i g e Ub er we is un g)

︑引落方式 または取立方式

( E i n z i e h u n g s v e r f ah re n) と呼ばれている︒現金なき支払取引

ラストシュリフト制度︵取立販替制度︶の紅義につヽいて

( b a r g e l d l o s e n   Za hl un gs ve rk eh r)  

これを﹁取立振替制度﹂とよぶことにする︒

L a s t s c h r i f t v e r f a h r e n )   ラストシュリフト方式︵

よ ︑

リフト制度

これを直訳すれば︑

ラストシュリフト制度発展の経緯 ラストシュリフト制度の意義および内容

﹁借方記帳方式﹂ということであるが︑わた

︵ 取 立 振 替 制 度 ︶

ー し

に (A bb uc hu ng sv er fa hr en ) 

(2)

(2  

(l

 

ラストシュリフト制度発展の経緯

これらはいずれも︑債務者側か支払手続のイニシアチブを取らなければならないものである︒わが国では︑自動捩替と いって︑預金者の依粕に桔づいて︑通常の振替手続によらず普通預金口座等から他の預金口座あるいは貸付金返済等に 自動的に飯替える制度があり︑電気・ガス等の公共料金の支払ですでに知られているが︑その利用範囲はまだ狭い︒わ たくしか本稿でとりあげるラストシュリフト制度は︑

統一的に行なわれているものであって︑今日の西ドイツでは従来の小切手制度︑振替制度をしのぐはどの発展ぶりを示

して

る︒

わが国でこの制度をどの利度導入でぎるかは分らないが︑支払取引における︱つの技術的制度であり︑実際上 も便利なものと思われるので︑将来的観点よりこれをとりあげることにした︒

に︑その内容および問題点について別稿で概観しておいたが︑

ていた︒本稿はそのシリーズの第一号とし︑以後の問題点を論ずる前提となるべく︑本制度の沿革︑意義︑内容につき詳

しくとりあげる︒

拙稿︑﹁ラストシュリフト制度とその問題点﹂

f

形研究:

1 ( ) 1

1 号二六頁以下

本稿は昭和

h i

年度文部省科学技術研究補助金︵.般i

D)

による研究である︒

ラストシュリフト制度か今日のように整備され飛躍的発展をとげたのは最近のことであるか︑

り古く︑すでに第一次大戦前に類以の制度が現れていた︒当時からも︑ おける古典的制度として︑

この類似の制度は︑

かなり利用されていたよう この制度の源流はかな

いずれ個々の問題につき詳しく論じねばならないと考え

この制度については

すでに一年はど前

わか国では小切手制度かありまた最近ごくノーマルになった振込︵振替︶制度があるが︑

その利用面においては大規模かつ広汎に︑その運用面においては︑

(3)

ラストシュリフト制度︵取立振替制度︶の意義について

満期の調在および債務者に対する受取証

これを行っている

て ︑

は︑最も後に登場した制度であっ 座所有者も利用するようになっていた︒ で︑たとえば︑国のある機関が資金を必要とする場合に︑特別の取立用紙に当該金額を記入してドイツ帝国中央銀行の中央会計口座から引落すとか︑税務署が税金を納税者の口座から引落して徴収するとか︑また民間企業でも︑始め多くの都市で電気・ガス・保険会社がその料金およぴ保険料の取立にも同様の方法がとられていたといわれる︒第二次大戦後ドイツは東ドイツと西ドイツに分れたわけであるが︑東ドイツでは︑経済政策上の見地から︑今日のラストシュリフト制度に類するいわゆる勘定取立方式

( R e c h n u n g s e i n z i e h u n g s v e r f a h r e n )

が導入され︑西ドイツでは︑戦後

の経済の発展とともに︑多数の支払義務ある顧客を有する多くの大企業が一九五

0

年代に自己の金銭債権の取立のため

に︑銀行受取り書方式

( B a n k q u i t t u n g s v e r f a h r e n ) を利用するようになった︒後述するように︑ラストシュリフト方式

には︑手続上二種類の方式があるが︑そのうちの︱つである引落委託方式

( A b b u c h u n g s a u f t r a g s v e r f a h r e n

略して

AAV) は︑すでに振替為替局

(P os ts ch ec ka mt

)によって︑第二次大戦前より行なわれており︑

が国家機関または公共企業体のみに限られていたのが︑第二次大戦後は︑その使用範囲が拡大され︑ ただこの時は︑その使用範囲

これ以外の為替口

このように︑振替による債権者からの取立方式自体は別段目新しいものでもなく︑またこの方式による債権者︑債務 者およぴ銀行の便益の割からすればもっと普及するはずであることもすでに一九三

0

年代にくり返し説かれていたので

(2

) 

あるが︑他の支払手段である小切手とくらべるとはるかに利用度は少なかった︒ラストシュリフト方式の中のもう一っ

の種類である取立権限授与方式

( E i n z u g s e r m a c n t i g u n g s v e r f a h r e n

略して

EEV)

この方式は︑多数の顧客から定期的に保険料を取立る必要のある保険会社の要望により︑まず貯蓄利行

( S p a r k a s s e )

が始めたとされる︒その他の金融機関は︑始めはこの方式の導入にはためらいがあったが︑それまでの勘定取立方式は

( Q u i t t u n g )

の支払呈示にいちじるしい労力を要するので︑ ベルリン

(4)

実に目ざましいものがあり︑ を翌年の一九六四年一月より適用した︒ 第一巻第一号

一九六四年から

銀行としても何とか改革する必要にせまられており︑結局︑銀行の大量かつ迅速な処理に適しているラストシュリフト

(3 ) 

方式の採用にふみ切ったわけである︒

このようにして︑西ドイツの金融機関は︑現在行なわれている形でのラストシュリフト方式をほぼ採用するにいたっ

この段階ではまだ制度的に統一されたものでなく︑各金融機関が個別に行なっていたにすぎなかった︒

しかし︑ラストシュリフト方式が現金なき支払取引の一形態である以上︑小切手同様︑それを手続的にも内容的にも統

一することはラストシュリフトの当事者の法的安定性および金融機関の合理的処理の点からはどうしても必要であり︑制︑

ょ ︑

度の発展の前提でもあった︒そこで︑ドイツ金融業連合会

(S pi tz en ve rb an de d   es  d eu ts ch en   K re di tg ew er be s)   一九六三年十二月にラストシュリフト協定

(A bk om me n・ ub er de n  L a s t s c h r i f t v e r k e h r )

を締結し︵資料

I

参照

︶︑

これ

たのであるが︑

香川法学

この協定は︑法律ではないが︑ラストシュリフト当事者の法律関係の基本とな るものであって︑実質的には︑小切手に対する小切手法と同様の意義を有している︒現在のラストシュリフト制度が一 九六四年より開始されたといっても過言でないのもこのためである︒ラストシュリフト協定締結後のこの制度の発展は︑

一九七三年には︑取扱金額総額では︑ラストシュリフトが小切手を抜き去り︑一九七六年に

ラストシュリフト︑小切手および振替の比率は︑三八対一三対五九となっており︑

フト方式の比重が高まっているといわれる︒その理由は︑

その後もますますラストシュリ

ドイツでも銀行業務の自動化の波が押し寄せ︑

九四

コンピュータ

ーによる処理が増大しているが︑ラストシュリフト方式は︑技術的にこれに適しており︑銀行の大量処理が可能になる からである︒ラストシュリフト方式は︑便利なものである反面︑危険性も内在しているのであるが︑

0

年以上も裁判上の争いらしいものが見当たらないという点は︑その発展のスピードとくらべると驚くべきことであっ た︒それは︑銀行がラストシュリフト取引をする顧客の選択を慎重に行なったためと思われるが︑西ドイツでも銀行間

(5)

( 3 )  

( 2 )  

(l

  n h

o l z . B   an kl ex ik on   S p.

1194) 1193 1 ︒

この方式は使われているようであるが︑しだいにラストシュリフトに取って代られている

九五

De r  B an kb et ri eb

  8

. 

A u f l .   S .

  268269; 

En ge l 

̀  R

ec ht sp ro bl em

e  um 

da s  La st sc hr if tv er fa hr en   1966 

̀ s

5

Mu ll er   , L of fe   ,  Sc

ho el e 

̀ 

Z

ah lu ng sv er ke hr n  u d  B an kb et ri eb , 

19 33 . 

S .  

285 

2 8 7

 (

En ge l 

̀ 

a .  

a .   o , ,   S .  

4) 

Ke ss le r, I s   t   d i e   B

an kq ui tt un g  e i n   i d e a l e s   E in zu gs pa pi er

̀ 

 

Be tr ie b 

19 61

S  

.  

13991400; 

ラストシュリフト制度︵取立振替制度︶の意義について

B i t t r o f  

̀ 

D

er   Ei nz ug   vo n  Q u i t t

u   , 

( H a g e n m i . i 1 1 e r   /D ie pe n 

(E mp fa ng sb es ta ti gu ng )  にすぎず︑また一覧払であるラストシュリフトと異なり一定の満期が記載されている︒今日でも︑

銀行に委託する︒その際には 多数の支払義務のある旦つ継続的取引関係のある取引先を有する企業の多くはこの方式を利用しているわけであ

この方式の場合も︑

一九

0

年代から急速に進んだ給料の銀行振込により︑

振替口座

(G ir ok on to )数が飛躍的に増大したことによる︒ドイツ連邦銀行は︑当初からはこの方式に参加しなかった︒

またその経済全体に対する影響およびどのような法律問題が生ずるかを注

いずれの点でもさはど問題もなく満足のいくものであったため︑

取引約款の中にラストシュリフト協定の中の重要な条項を追加し︑

ラストシュリフト方式と同様︑支払義務者の口座から一定の金額を引落し取立てることを債権者が自已の取引

Qu it tu ng

(受取証︶という特定の用紙が使用されるが︑ 

落すことをこの書面上に署名して認めるのではなく︑債務者は

てることを認めているにすぎないため︑個々の

Qu it tu ng

銀行の個人向の

一般的に債権者に一定の金額︑目的の範囲で自己の口座から取立

については︑債務者に呈示しなければならない︒これは︑もともとは

手形の印紙税を逸れるために生まれたようであり︑末引受の為替手形に類似するか有価証券ではなく債権者の単なる受領確認

これによって債務者が自己の口座から引 これに参加した︒ 意深く見守るためであったが︑一九六六年にその普通

れは

この方式かどの程度発展するものか︑

るが

そのことを可能にしたのは

︱つ

には

て ︐

の競争は激しく

最近ではそれが困難になったためであろうが︑

(7 ) 

裁判上争われる事件も増加している︒ともあれ︑

そ 今日

(6)

取立振替依頼書と訳しておく︒ラストシュリフト協定

(A bk om mu n i ib er  d en

 Lastschriftverrekr~

' L S A

と略

す︶

① 

ラストシュリスト——いずれの方式においても、ラストシュリフトと呼ばれる証書が用いられるが︑ 念を明確にする必要がある︒以下その内容の重要なものについてのみ簡単に解説する︒ 種類があるが︑ ラストシュリスト方式には︑

引落委託方式

︵以

下 A

方式という︶A

(一) (7

 

(6

) 

(5

) 

(4

) 

ラストシュリスト制度における用語の概念

ラストシュリフト制度の意義および内容

ラストシュリフトをめぐる最近の判例については であるという︒ よれば これには︑商業銀行協会を始め n

ge n u nd  

st sc hr if te n, B  an k  , B et ri eb   1 96 2  S .  

18   協同組合銀行などいくつかのそれらの協会が加盟している︒

Re yh er   /S pe rl ,  De r 

Lastschrift•

Ei nz ug sv er ke hr  1 97 7, S   .  

5‑6 

Ul ri ch  H ol sc hb ac h, R   is ik en  d er   Fo rd er un gs ei nz ie hu ng i n     L as ts ch ri ft ve rf ah re n, D  B.   He ft   4 1   v .   14 .1 0. 19 77 ,  S.   1 93 3  ラストンュリフト方式における濫用的ケースはほとんど聞かないとされ︑

BGH 

(D B  1 97 7. 19 37 )  Wa

lt he r  Ha dd in g, D  as a   L st sc hr if tv er fa hr en  i n  de r  Re ch ts pr ec hu ng ,  We rt pa pi er

M it te il un ge n 

N r .

 

5

0  v

om 6  1 D  ez em be r  19 78  S .1 36 6 13 80  

大学で銀行取引法を研究されている︒

Kl em en s Pl ey er

教授の援助による所が大きい︒

両方式の相異および制度内容を把握するため︑

と取立権限授与方式 まずラストシュリスト取引に関して用いられる用語の概

これを一応

︵以

E

方式という︶

E

参照︒なお︑本稿で引用する文献については︑ケルン

BGH

の最初の判決

九六

(7)

ラストシュリフト制度︵取立振替制度︶の意義について 金額を引落すことにつき同意している者をいう︒

◎ 

今日の銀行取引では︑

コンピュータの利用がすみずみに行きわたり︑

され

る︒

要であって︑機械的に引落すことができ︑ を通じて︑同一のまたは他の金融機関︵支払銀行︶にある支払義務者

九七 これを当該銀行に提出 これなくしては銀行業務はやっていけないよう 第一章一条によれば︑﹁ラストシュリフトとは︑支払受領者

(N ah lu ng se mp fa ng er

)が自己の取引先金融機関︵取立銀行︶

の預金からラストシュリ

フト上に記載された金額を取立てる取立証券

( E i n z u g s p a p i e r )

であり︑かつつぎの要件を備えているものをいう︒ぃ支

払受領者のために︑支払義務者が支払銀行に対して委託︵引落委託︶していること

( A

A

方式の場合︶︑伽支払義務者が

支払受領者に対して権限︵取立権限︶を与えていること

( E

E

方式の場合︶﹂と定義されているが︑この定義からも明ら

かなように︑ラストシュリフトは小切手のような有価証券ではない︒ラストシュリフトは︑小切手同様︑統一用紙を用

いて作成されるが︑そこには支払義務者の署名がないので︑支払銀行が当該金額を引落すに当り︑署名照合の手続は不

するものである ここにラストシュリフト方式がコンピュータによる大量処理に向いていると

になっているが︑ラストシュリフトは︑まさにこの方向にそうものといえよう︒ラストシュリフトにおけるコンピュー

タの利用方法については︑注

( 1 4 )

参照

支払受領者

(Z ah lu ng se mp fa ng er ) ーーー支払受領者とは︑満期の到来した金銭債権の債権者であって︑自己の債

@ 

権を取引先銀行︵取立銀行︶を通じて振替によって取立るために︑ラストシュリフトを作成し︑

︵コンピュータを利用する場合には︑そのデーターを銀行に転送する︶︒

支払義務者

(N a h l u n g s p f l i c h t i g e r )  

-—_支払義務者とは、右に述べた債権の債務者であって、債権者たる支払受

領者の作成したラストシュリフトが自己の口座の開設されている支払銀行に支払呈示された場合には︑支払銀行が当該

(N  a h l u n g p   s f l i h t i g e r )  

(8)

gu ng e   d s   Z a h l u n g s p f l i h   t i g e n   l i e g  

このように取立権限が与えられていることは︑取立銀行︑支払銀行ともに分らないので︑

め ︑

E E

方式の場合には︑あらかじめこの権限が支払受領者に与えられている旨を示す一定の文句

( E i n z u g s e r m a c h t i de m  Z a h l u n g s e m p f a n g e r o   v r ・ )

が印刷されているラストシュリスト用紙が使用さ ︵取引権限授与書ひな型参照︒資料

I I I )

︵継続的︶引落委託

( D a u e r

‑ A b b u c h u n g s a u f t r a g )

このことを明らかにするた

@ 

額を有効に引落すことができるためには︑支払義務者からその旨の指図がなくてはならない︒

A

A

方式においては支

払義務者は︑債権者たる支払受領者とラストシュリフト取引をするに当っては︑まずこの者とラストシュリフトによる

債権取立の合意をするはかに︑自已の取引銀行に対して特定の支払受領者かラストシュリストを呈示した場合に は︑自己の口座に資金があることを条件に︵継続的に︶引落すこと委託する︒この委託は︑書面でなされ︑それ

には︑﹁本書により︑私は貴行に対して

00

会社から提出された私あてのラストシュリフトを私の口座から引落して支払

下さることを取消権を留保してお願いいたします﹂旨の文言が記載される︒

︵資

﹃引落委託契約書ひな型﹄参照︒なお︑この委託に際して︑

1 1

することも委託できる

1 1

制限的引落委託︶

R 取 立 権 限 ( E i n z u g s e r m a c h t i g u n g

) ーーー支払銀行は支払義務者の指図なく勝手にこの者の口座から引落すこと

は許されないが︑この指図は支払義務者自から行わねばならないわけでなく︑第三者にこれを行使する権限を与えるこ

とも

でき

る︒

E E

方式の場合には︑支払義務者は︑債権者たる支払受領者に対して書面によってこの権限を与えるが︑

これを表示するために︑その書面には︑﹁私は︑貴殿に取消権を留保して︑

0 0

(

原因契約︶より生じた債務の支払のために︑

満期に

00

銀行の私の

00

口座からラストシュリフトで引落して取立てる権限を与える﹂という文句が記載されている︒

香川法学

一定の金額を限度としてラストシュリフトの支払を ーーー支払銀行が支払義務者の口座からラストシュリフト金 九八

(9)

ラストシュリフト制度︵取立振替制度︶の意義について

の支払が拒絶されて再ぴ取立銀行に返還されたラストシュリフトをいう︒その返還事由は︑典型的には︑支払義務者の

口座に必要な資金︵貸越契約がある場合にはそれを含めて︶がない場合であるが︵一部支払は許されない︶︑その他にラ

ストシュリフトに記載されている口座が存在しない場合︑ラストシュリの記載が不明確な場合︑さらに

A

A

式で

は︑

① 

ラストシュリフトによる債権取立約定書

( V e r e i n b a r u n g z w i s c h e n   d e r  e r s t e n   l n k a s s o s t e l l e   un d  d em   l u n g s e m p f a n g e r b   u er   de n  E i n z u g   v on o   F r d e r u n g e n   m i t t e l s   L a s t

s c h r i f t )

ー │

ー 即

{ 立

i打は自己の取引先の内でヽ

ストシュリフト取引を希望する者がある場合には︑この者との間で生ずる法律関係を明確にしておかなければならない︒

ことに︑後で述べるように︑取立銀行は︑支払銀行と異なり︑ラストシュリフトに関する事故が生じた場合には︑ラス トシュリフト協定によってかなり重い責任を負担させられているので︑事故防止の点からもこれを明らかにすることは 重要である︒そこで︑ラストシュリフト協定の作成過程において︑前述のドイツ金融業連合会は︑同時に右の約定のひ

これを加盟各金融機関に通知した︒各取立銀行は︑支払受領者との交渉の過程で︑そのひ

な型も作成し︵資料

w

参照

︶︑

な型の内容が不適切また不必要であると判断した場合にはこれを変更することはできるか︑次の点は︑本質的要素であるので︑こ

れを省略することかできない︒すなわち︑①支払受領者と支払義務者の間にラストシュリフによる債権取立の合意のあること︒R

支払受領者は︑支払義務者が支払銀行に対して引落委託をしているかまたは支払義務者か自己に対して書面による取立権限か与

えられている場合にのみラストシュリフトを取立銀行に提出することができること︒R支払受領者は︑自己の提出したラスト

シュリフトが支払われないで返還された場合には︵手形・小切手の不渡返還に相当する︶︑取引銀行がその金額を戻し記

(l ) 

(R

c

k b e l a s t u n g ) することを承諾することである︒

れる

九九

返還ラストシュリスト

(R

k l a s t s c h r i f t ) ‑︱フストシュリストが取立のために支払銀行に支払呈示されたがそ

Za h  , 

(10)

引落委託がない場合︑

E

E

方式では︑つぎに述べる支払義務者による異義申立の場合などがある︒資金不足︑取引関係

なしおよぴ引落委託なしの場合のように︑支払銀行が形式的に判断できる場合には︑ラストシュリフトに﹁

00

日支払

呈示︑不払﹂なる記載をした上遅滞なくこれを取立銀行に返還する︒その場合︑ラストシュリフト協定によれば︑返還 事由を記載する必要はないのであるが︑資金不足についてはともかく︑口座の消滅︑口座番号違い︑引落委託の不存在

などについては︑同じミスをくり返さないためにも支払受領者に通知すべきであるので︑

(2

) 

以外の返還事由も記載するようになっている︒支払銀行は︑すべての返還ラストシュリフト一枚につき三ドイツマルク

を限度として取立銀行に手数料を請求することができる︒

また︑ラストシュリフトの返還に際しては︑その金額が一

000

ドイツマルク以上と末満によって︑返還手続が異な る︒すなわち︑前者の場合には︑支払銀行は︑ラストシュリフトの呈示後二取引日以内にこれを返送すると同時に︑取 立銀行に電報・電話またはテレタイプによってこの旨を通知しなければならないが︑後者の場合には︑支払呈示後二取

(W id er sp ru ch

)  ││これは︑

E

E

式 の み 支 払 義 務 者 に 認 め ら れ る

︒ ラ ス ト シ ュ リ フ ト が

E

E

A

A

方式なのかを形式上区別するものは︑ラストシュリフトに一定の取立権限授文言が記載されてい

この文言のないかぎり支払銀行は

A

A

方式にてラストシュリフトが振出されたものとみなし

て処理すれば足りる︒真実取立権限が与えられたかどうかは︑あくまで支払義務者と支払受領者の間の契約によって決 定されるのであるが︑支払銀行としてはこれを調査して確認した後に当該ラストシュリフトの支払をすることは事実上

不可能である︒右の取立権限授与は︑書面にて行なわなければならないので︑取立銀行は︑

E

E

方式によるラストシュ

リフトを受入れるにあたり︑いつでもこの書面の呈示を要求することができるのであるが︑それは手続の迅速性および るかどうかであり︑ 異議申立

式なのか︑

引日以内に取立銀行に返送すれば足りる︒

香川法学

一九六六年以降は︑資金不足

10

(11)

ラストシュリフト制度︵取立振替制度︶の意義について

⑪ 取 立 に 適 し た 債 権

あるわけである︒そのため︑ラストシュリフト規定第三章は︑

いては︑すべて取立銀行が責任を負い︑支払銀行は一切の責任を負わない うるわけであり︑このようないわゆる無権限の フトが支払呈示された場合には︑それが資金不足︑

10

 

︵ラストシュリフト協定

I4

) ︒ 一定の期間内に︑支払義務者が自己の口座の引落に対し 顧客との取引関係上︑現実には十分に行なわれているわけではない︒支払銀行としては︑

E

E

方式によるラストシュリ

口座の不存在等客観的に明らかな返還事由のないかぎり︑ともかく

当該金額を支払義務者の口座から引落として︑そのラストシュリフトを支払義務者に送付する︒しかし︑

ストシュリフトの中には︑全く取立権限が与えられてない場合︑一定の取立権限が与えられてはいたが︑それを越えた

金額のラストシュリストが呈示される場合︑あるいはそもそも両当事者の間に債権関係自体が成立していない場合もあり このようなラ

( u n b e r e c h t i g t e )

ラストシュリフトから︑支払義務者を保護する必要が

て︑支払銀行に異議申立をすることによって︑再び口座金額を元に戻すことができるようにしている︒この支払義務者

の異議申立制度は︑

E E

方式の存立のためにはなくてはならないものであり︑これをめぐって実際上も理論上も困難な

(3

) 

問題が生ずるのであるが︑それはともかくとして︑支払義務者が異議申立をした場合には︑支払銀行はその申立理由に

つき調査することなく︑当該ラストシュリフトに﹁

00

日引

落︒

00

日異議申立による返還﹂と記載して前述の返還ラ

ストシュリフトと同様の手続で取立銀行に返還される︒ラストシュリフトの返還によって支払銀行に生ずべき損害につ

/ュリフト方式によって取立られることので

(e mz ug sg ee 1g ne te

F  

or de ru ng en ) 

|—ーーラスト、`

きる債権は︑その権利の行使のために証券の呈示を要しない

すでに到来している債権でなければならないということは︑ラストシュリフトが一覧払︑すなわち︑支払銀行にそれが呈

すでに満期の到来した債権ではければならない︒満期が 示された日に支払うべきものでなければならない︒ラストシュリフト協定には︑ラストシュリフト上に満期を記載して

も 記 載 し て い な い も の と み な す 旨 の 定 め が あ る が

︑ こ れ は 右 の こ と を 確 認 し た も の で あ る

︒ そ の 金 額 に つ い

(12)

取 引 に 参 加 す る 銀 行 に 対 し

︑ 議 論 を し た か

︑ 結 局 は

︑ 制 限 し な い こ と に し た

し カ

右の点も考慮して︑

同連合会は

ラ ス ト シ ュ リ フ

らすれば︑

ドイツ金融業連合会は

ては

香川法学

ラ ス ト シ ュ リ フ ト 協 定 上 何 ら の 制 限 は な い か

︑ 銀行にとっても︑

取立られるものについては︑

支払受領者にとっても︑

ス ト シ ュ リ フ ト 協 定 締 結 に 当 っ て

あ ま り 小 額 の 金 額 の 場 合 に は 経済的メリットは少ない︒

その手数

ラ ス ト シ ュ リ フ ト の 最 少 金 額 を 決 め て お く べ き か ど う か に つ い て か な り

10

ド イ ツ マ ル ク 以 下 の 小 額 の 金 額 で か つ 定 期 的 に ラ ス ト シ ュ リ フ ト に よ り できるだけ三ヶ月ごともしくは半年ごとにまとめて取立てることができるよう支払受領者 と合意することを勧告した︒もっとも︑支払受領者がこの点につき承諾するには︑支払義務者の意向を無視することは できないわけであるが︑経験上︑多くの支払義務者がこれに理解を示しており︑典型的はラジオ・テレビの受信料の

(4

) 

支払がこの方法によっている︒

つぎに︑取立られる債権は︑その行使のために証券の呈示を要しないものでなければならないということは︑手形︑

小切手のような指図証券に表象されている金銭債権はラストシュリフト取引から排除されることはもちろん︑

さらに

一般的に有価証券に表象された金銭債権がラストシュリフト取引から排除されることを意味する︒それは︑このような場

合には︑支払義務者は︑証券と引換にのみ支払をすれば足り︵手三九条ー︑小三四条

I)

︑また有価証券の本質上︑その 権利行使のために証券の所持を要するものであり︑単なる取立証券であるラストシュリフトとは本質的に異なるからで ある︒ともかく︑有価証券に表象された債権は︑それぞれ有価証券法的に定まった権利行使が予定されており︑個有の 使命を有しているのであるから︑その上にラストシュリフトによる取立を認めることは不必要であるばかりか︑法的に

混乱をきたし有害でもあるからである︒

取立銀行

(e rs te I n k a s s o s t e l l e )

  │̲1

フストシュリフト取引における債権者の取引金融機関のことで︑必ずし

10

 

費 用 の 点 か

(13)

ラストシュリフト制度︵取立振替制度︶の意義について

とも

いう

座番号の表示につき確認しなければならない︒取立銀行が右のことを確認の上︑

この場合の入金記帳は︑現金によるものでないため︑取立が完

(5 ) 

了するまでは暫定的なものであるが︑そのための特別口座を作るのはまれである︒

(N  a h l s t e l l e )

ーー│︱フストシュリフト取引における支払義務者の取引金融機関であって︑

てラストシュリフトが支払呈示された場合には︑この金額を当該口座から引落す︒

いが︑取立銀行に対置する意味で支払銀行と訳しておく︒債権者銀行に対潰する意味で︑債務者銀行

( S c h u l d n e r b a n k ) 支払銀行がラストシュリフトを受取った場合には︑まず︑支払義務者の口座に十分な資金︵貸越契約があればそれを

含めて︶があるかどうかを調在する︒一部支払をすることは許されないからである︒つぎに︑当該ラストシュリフトが

A

方式の場合には︵ラストシュリフトの上部に一定の取立権限授与文言のないもの︶︑支払銀行は︑自己に対する引落

A

@ 支 払 銀 行

通常︑直ちに債権者の口座に入金記帳する︒もちろん︑ いるかどうか︑それが明確かどうか︑

ラストシュリフト取引においては︑取立銀行は一定の危険を負捐しているので︑自己の顧客たるすべての取引先から

ラストシュリフトの受入れを認めるわけではないことは後に述べる通りであるが︑その受入の際には︑当該債権者とラス

トシュリフト取立約定書がとり交わされていることを確認した上︑ラストシュリフトの記入欄に必要事項が記入されて 介機関

(Z w i s c h e n b a n k )

があ

るの

で︑

ことに︑支払義務者の表示・金額の表示・支払銀行の表示および支払義務者のロ

10

これも銀行の各称がつくとは限らな

この者に対し ラストシュリフトを受入れた場合には︑ も銀行と名のつくとは限らないが︑︵たとえば貯蓄銀行では振替場所

1 1 G i r o s t e l l e   おく︒ドイツの文献では︑債権者銀行

( G l a u b i g e r b a n k と呼ぶ場合が多い︒ラストシュリフト取引の当事者は︑最も単) 純な形では︑債権者︑債務者︑取立銀行およぴつぎに述べる支払銀行であるが︑実際には取立銀行と支払銀行の間に仲

(e   r s t e )

という言葉がつけられているが説明の便宜上省略している︒ Iという︶便宜上取立銀行と訳して

(14)

委託があるかどうかを調査しなければならない︒引落委託の中には︑最高金額が表示されているものとされていないも

のがあるが︑前者の場合には︑

金額をオーバーしている場合には支払銀行は︑これを支払はないで恒ちに取立銀行に返還してもよいのであるが︑支払

義務者の便宜も考えて︑支払義務者に問合わせてその支払委託がえられなかったときにのみこれを返還している︒全く

支払委託のない場合にも︑支払義務者か不注意でこれをしていないときがあることを考慮したためで︑

支払銀行が引落によりラストシュリフトの支払をした場合には︑当該ラストシュリフトを遅滞なく支払義務者に送付し なければならない︒ラストシュリフトには︑取立原因を書く欄があり︑支払義務者がこれによって何のための支払かを 知る必要があるからである︒しかし︑それが規則的にくり返されるものであって︑その金額に変動もない場合には︑支

(6

) 

払義務者の承諾を得てその手続を省略することはできる︒

ラストシュリフト制度の経済的意義 一般論としては︑ラストシュリフト制度の発展によって︑ますます現金なき支払取引が拡大され︑流通通貨量の減少

にともなう大きな国民経済上の利益があることは︑他の現金なき支払取引制度と同様である︒

ラストシュリフト協定には︑

として扱わなければならないので︑

支払銀行は 行側の顧客サービスでもある︒なお︑ラストシュリフトは︑

香川法学

これは︑支払銀

さらにラストシュリフト金額がその範囲であるかどうかを調べなければならない︒その

一覧払であり満期および起算日の表示は記載してないもの

これを無視してラストシュリフトの支払呈示の日に引落とす︒

小切手法第三条のような小切手資金に関する規定はないが︑

ラストシュリフトが支払銀 行に支払呈示されたときに︑債務者の口座に十分な資金がないと︑債務者は︑支払銀行およぴ債権者に対して︑経済的 信用を矢うことになり︑ラストシュリフト取引から排除されることになるので︑小切手同様の配慮をするであろう︒後

10

(15)

① 

つか︒以下各当事者ごとに検討する︒ 述するように︑債務者にとって︑ラストシュリフト制度は︑債権者および関係銀行ほどのメリットはないが︑それでもいくつかのメリットがあり︑ラストシュリフト取引を拒否されることはそれを失うことにもなる︒このような点から︑ラストシュリフト制度は︑債務者の支払モラルを高める効果がある︒また︑

10

たとえば︑商品の代金支払のために︑ラス トシュリフトを利用する場合も考えると︑売主は︑商品の引渡後直ちにラストシュリフトにより取立てるが︑債務者と しては︑それに応じて迅速に引渡を受けた商品とラストシュリフト金額が一致するかどうかを確かめなければならない ため︑それだけ取引の決済が早くなり︑商品回転率も高くなる︒このことは︑ラストシュリフト取引のコンピュータ化

によって一層促進されることになる︵注

1 4 参照︶︒ラストシュリフト制度の利用によって最も大きい利益を受ける者は︑

債権者とされているが︑そのため︑債権者︑ことに大企業は︑自己の取引上の力を背景に債務者にラストシュリフト取引

つなかるという疑念も指摘されている所であり︑ を押しつける可能性もある︒このようなことは︑不健全な方法で大企業が市場支配を強め︑独占形成を促進する結果に

(8

) 

カルテル法上の問題かある︒それ故に︑連邦銀行もすぐにはラストシ ュリフト制度に参加しなかったのであるか︑現在では企業の事務手続の合理化の一環としてとらえられており︑

テル法上争われた事例はない︒

それでは︑具体的に見て︑ラストシュリフト取引に参加している当事者には︑

債権者の経済的利益

ラストシュリフト制度︵取立賑替制度︶の意義について

カル

どのような経済的意味があるのであろ ラストシュリフトが最も活躍できるのは︑債権者が広い取引分野において︑多数の債務者

に対する継続的に発生する債権を取立てる必要のある場合である︒このような場合︑債権者は︑それによる直接的利益

を得るのみならず︑内部の事務手続上︑組織上も大きな利益を受けるのである︒

すなわち︑満期の到来した金銭債権は︑伝統的な小切手または通常の振替︵振込︶によっても満足を得ることができる

(16)

確定することはできない︒ことに︑債権者と債務者の営業所または住所が遠隔地にあるような場合には︑通常は振込に よると思うが︑その場合には支払がしだいにあるいはしばしば遅れることが経験上明らかになっている︒これは︑債

務者の支払不能に原因がある場合もあろうが︑それはむしろ例外であって︑通常は︑債務者の失念とか︑

(9 ) 

手続をしに銀行に出向くのかめんどうであることに起因している︒われわれも︑各種会費の支払とか書籍の支払などの

これに対し︑ラストシュリフトによる場合には︑債権者側が取立手続をするのであるから︑

ができ︑債権者の資金計画を確実にすることができる︒また︑ラストシュリフト方式による場合には債権者が取立銀 行にラストシュリフトを提出すると同時に入金記帳され︵もちろん︑後にラストシュリフトが支払われないで支払銀行

より返還されな場合には︑戻し記帳する条件の下であるが︶︑その時点より︑債権者は当該金額を自由に使用することが

でぎる︵もっとも︑債権者の伯用状態が悪化していないことが前提である︶︒その結果︑ラストシュリフトによる取立は︑

小切手および通常の振替による平均して二日ないし五日早く資金を入手できるといわれている︒債権者か資金計画 を確実に立てることかでぎるということは︑小切手の不渡りに相当するラストシュリフトの返還か非常に少ないこ とを意味する︒現行ラストシュリフト制度開始当初の統計では︑全体の

0

・八

i ‑

・ニ%が支払われないで返還されて

いた︵現在では︑判例の状況からみてこれより少々多くなっていると思われるが︶︒その返還理由は︑ほとんどがラストシ

ュリフトに表示された支払義務者の口座番号の間違いとか︑

表示された口座がすでに解消されている場合であって︑

資金不足によるものは極端に少ないという︒このことは︑通常の振替による場合の債務の支払が遅滞する原因と裏腹の

関係にあるが︑通常は債務者は︑経済的信用を矢わないために︑口座に十分な資金を手当していることを意味する︒ 場合によく経験するところである︒ が

この両者においては︑債務者が当該の手続をしなければならないものであるから︑それがいつなされるのか正確に

いちいち振込

入金期日を予定すること

10

(17)

手 続 を 取 っ て い た の で あ る

と い う の は

それだけ事務の合理化ができる︒

10

こ よ

,1 

支 払 か な さ れ る ご と に そ の 残 高 を 減 少 さ せ る

従来売掛債権は

手 くい止めることかでき︑

しかし︑事務の合理化の点で最も大きな実益は︑

ー フ

そ の た め の 仕 事 量 は 最 少 限 に

ところで︑以上はもっぱら債権者の資金入手の確実性︑迅速性の利益の観点からみたものであるが︑つぎに︑債権者の

内 部 業 務 上

︑ 組 織 上 の 利 益 に つ い て み る

︒ 従 来 の 支 払 方 法 に よ る 場 合 に お い て

︑ 債 務 者 が 支 払 を 遅 滞 し た と こ れ は

︑ 債 権 者 に と っ て は 時 間 と 費 用 の か か る 作 業 で あ る ラ ス ト シ ュ リ フ ト に よ れ ば

︑ 支 払 の 遅 滞 と い う こ と は 起 り え ず

︑ る ラ ス ト シ ュ リ フ ト に つ き そ の 返 還 事 由 に 応 し て 督 促 す る 必 要 か 生 ず る 程 度 で

︑ ス

ト シ ュ リ フ ト 方 式 に よ れ ば

︑ 記 帳 技 術 上 い ち じ る し い 合 理 化 か で き る と い う 点 で あ る

︒ 作 業 に よ っ て 各 債 務 者 ご と に 個 別 に 売 掛 債 権 口 座 を 作 っ て お き

︑ 通 常 の 振 替 の 場 合 に は 支 払 は

︑ 債 務 者 ま か せ で い つ 支 払 わ れ る

のか予定できないからである︒ラストシュリフト方式によれば︑

このような売掛債権口座を作る必要がなくなる︒債権 者は︑売掛債権額をラストシュリフトに記載してその都度取引銀行に提出しておけば︑その金額が記載され︑それが︑

支払銀行によって支払われる通常の場合には︑それで一件落着し︑例外的にラストシュリフトが支払われないで返還さ れてきた場合にのみ︑個別の売掛債権口座を作れば足りるからである︒これによって大企業では︑何十万という個別口

座の記帳の手間が省けるという︒しかも︑大企業では︑

コンピュータによってラストシュリフト取引を行うようになっ

ており︑その場合には︑ラストシュリフトに記入する手続きさえも自ら行う必要なく︑磁気テープ

( M a g n e t b a n d e r ) って必要なデーターを銀行に送っておけば︑銀行側で︵通常は支払銀行が︶自動記入装置によってラストシュリフトを 作成して支払義務者に送付するようになっているようで︑そうなれば︑債権取立に伴う事務手続がいちじるしく機械化 されてそれに伴い大巾な労カ・人件費の節約ができ︑かつ取立取引の大量処理も可能となる︒これがラストシュリフト

ラストシュリフト制度︵取立振替制度︶の意義について

た だ 例 外 的 に 支 払 わ れ ず に 返 還 さ れ て く

︶ よ

, 9 9 ,

 

き ︱

し ば し ば 支 払 督 促 状 を 出 す 必 要 が あ っ た

(18)

債務者にとっては︑債権者が受けるような直接の大きな経済的利益はない︒それは︑主として支払手

続事務の軽減にある︒従来の小切手および通常の振替の場合には︑自ら小切手を作成しこれを交付する手続および銀行

に出向いて振替用紙に必要事項を記入する手続を要するわけであるか︑ラストシュリフトはこれが不要となるばかりか︑

自己の債務の支払期日に注意する必要がなくなるのである︒支払が一回限りで終るのであれば︑右の利益はさほどでも ないが︑継続的に定期または不定期に支払をしなければならない場合であって︑その支払期日を徒過することによって 一定の不利益︵たとえば︑遅延利息︑保険契約上の利益の喪失︑割引特典の喪失など︶を債務者が負うときには︑債務

者は︑手数の面で助かるだけでなく︑精神的にも気楽なわけである︒

ところで︑ラストシュリフト方式は︑債務者にとって全く経済的利益がないということでもない︒というのは︑債務 者は︑通常の振替におけるような料金︵振替料︶を支払銀行から請求されることはもちろん︑債権者からも手数料の形

で請求されることはないからである︒

f し

i

われわれ庶民の経験するように︑わずかの振入額の割には相対的に高

い振込料を支払うのはばかばかしいと感じることもあるので︑その点の利益も少なくない︒しかし︑一方︑債務者ことに

事業を営む債務者にとっては︑次のような経済的不利益があることを見落してはならない︒つまり︑ラストシュリフト 方式によれば︑債務者は︑自己の債務の支払期日には直ちにラストシュリフトが回ってくることを覚悟しなければなら ないので︑実際にそうなるかどうかに関係なく︑口座の資金を一時他に流用することはできなくなる︒自己の債務の弁 済期がくれば︑債務者は︑それに相当する口座の金額はないものと考えるべきという立場からはこのことはむしろ当然 かもしれないが︑小切手とか通常の振替による場合において︑急に他の所で一時資金を要するときには︑それが可能な

( 1 6 )

 

のであるから︑比較すれば資金の固定化の観は残ると思われる︒

@ 

債務者の利益

取引が近時著しく発展した原因の︱つである︒

10

(19)

ラストシュリフト制度︵取立娠替制度︶の意義について

◎ 

請求の事例は︑件数としては少ないと思われる︒

10

さらに︑債務者にとっては︑支払う必要のない金額でも事実上自己の口座から引落される危険もある︒つまり︑支払 銀行は︑ラストシュリフトが取立銀行から回ってきた場合に︑それが真実取立権限のある債権者の提出したものかどう かを調査することは事実上不可能であるので︑形式的要件の満たされているかぎり︑自動的に債務者の口座から引落し

て債務者に当該ラストシュリフトを送付する︒したがって︑多くのラストシュリフトの中には︑債権者が取立権限を濫用

したいわゆる無権限ラストンュリフト

( u n b e r e c h t i g t e L a s t s c h r i f t )

が混入するおそれが十分あるわけである︒このよ

うな場合に︑それが

E E

方式によるものであれば︑債務者は︑ラストシュリフトを受領後支払銀行に対して異議申立を すれば︑引落された口座を元に戻すことができ︑別段の損害を蒙らないわけであるが︑それが

A

A

方式によるものであ

るときには︑このような異議申立権が債務者に認められていないので︑直接債権者にその金額の返還を請求するほかな い︒しかし︑ラストシュリフト方式を利用する場合は︑債権者と債務者とが場所的に離れていることが多く︑またその ような債権者には不誠実な者もいることを考えれば︑その返還請求が常にスムーズにいくとは限らないので︑このよう

な場合には︑債務者は︑事実上大きな不利益を蒙ることになろう︒もっとも︑

A

A

方式による場合には︑債務者は︑支

払銀行に対する引落委託の際に︑債権者を特定し︑金額も必要とあれば制限することができるので︑債権者による不正

金融機関の利益まず︑債権者の取引銀行である取立銀行の受ける利益からみてゆく︒

第一に︑取立銀行は︑記帳技術上の利益を有する︒というのは︑取立銀行は︑通常の振替の場合には︑債権者の口座 に入金されるたびに個別に記帳していかなければならないが︑ラストシュリフトの場合には一度に提出されたラスト シュリフトの数がいくらあっても︑その合計額を債権者の口座に入金記帳するだけであり︑記帳事務手数がはるかに合

理化されるからである︒

(20)

第二に︑銀行は︑ラストシュリフト制度における取立銀行になることによって︑優良顧客を固定することができると

つまり︑銀行は︑ラストシュリフト制度の取立銀行になれば︑後に述べ

るように︑ラストシュリフト協定上一定の危険を背負い込むことになるほか︑ラストシュリフトが提出されると同時に︑

債権者の口座に入金記帳し︑債権者の要求があれば︑別段担保を取らずに︑その金額の処分を認めるのが通常であるが︑

このようなことの許せる顧客は必然的に優良顧客に限られてくるわけで︑両者の間には︑

の関係が生ずることになり︑その取引関係がますます濃厚となる︒その結果︑ラストシュリフト取引のない債権者の

他の銀行との関係が薄くなるわけである︒また︑ラストシュリフトによって取立てた金額を入金する債権者の口座は︑振

替口座

( G i r o k o n t o

) と呼ばれるものであって︑この口座残高に対しては︑利息がつかないかついても非常に低利である

ので︑銀行の資金運営上もその口座残高が増加することはまことに都合がよいからである︒そして︑取立銀行は︑ラス トシュリフト一枚につき一定の手数料をとることができるが︑これも︑大量処理によってかなりの収益をあげることも できるのである︒このようなメリットのため︑銀行としては︑いかにしてラストシュリフト制度における取立銀行とな る顧客を獲得するかが︑銀行経営上の大きな柱となっており︑取立銀行になることをめぐって各銀行が激しく競争して

( 1 8 )  

いるのが現状である︒

つぎに︑支払銀行についてであるが︑支払銀行は︑ラストシュリフト取引によっては特に利益を受けることはない︒

というのは︑支払銀行は︑ラストシュリフト取引に用いられる債務者の口座は︑債権者と同様︑振替口座であるので︑

債務者がラストシュリフトの支払に備えて︑

その口座残高を増やすことは期待でき︑支払銀行にとっては︑その分だけ 利息をつけないかつけてもわずかですむ預金が増加する利益はあるが︑他方で︑各ラストシュリフトごとに別々に引落

記帳し︑これを債務者に送付する手続負担を負うからである︒その代り︑支払銀行は︑ラストシュリフトの不正利用よ ともに︑銀行の資金獲得上のメリットがある︒

いわばギブ・アンド・テイク

10

 

参照

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