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博士(医学)五十嵐 毅 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)五十嵐   毅 学位論文題名

Effect of amlnophylline on plasma  (K+) and    hypoxic ventilatory response during mild       exerclseln men

(運動時におけるアミノフィリンのカリウムおよび      低 酸 素 換 気 応 答 に 与 え る 効 果 に つ い て )

学位論文 内容の要旨

研究目的

    運動中に100%酸素を吸 入すると一時的に換気量が 減少するが、その程度は安静時に比ぺて大き い。これは運動時に末梢化学受容体の感受性が亢進するためと説明されている。実際、運動時に低酸素換 気応答を測定すると安静時に比ぺて明らかに増大している。しかし、この運動に伴ってみられる末梢化学 受容体の低酸素化学感受性亢進の機序は未だ明らかではない。本研究は末梢化学受容体活動を亢進させる とされる血清カリウムとアデノシンの役割に着目し、この両者あるいはいずれか一方が運動時の低酸素化 学感受性亢進に関与している可能性について検言寸したものである。

対象と方法

    対 象は 健常 男 性9名 、年 令19−20歳 。一 人 にっ き検 査は少な くとも2日以上の間隔をあけ て3 日問にわたり行なった。はじめに安静仰臥位にて低酸素換気応答検査を行ない、次に20分以上の間隔を あけて運動時の低酸素換気応答を測定した。低酸素換気応答は吸入気酸素濃度と炭酸ガス濃度を自動制御 することによって、呼気終末炭酸ガス濃度を低酸素負荷開始前のレベルに保ったまま、呼気終末酸素ガス 濃度を約120Torrから約40Torrまで約6分聞 で連続的に低下させ、その ときの分時換気量(VE)増加の 程度をSa02低 下に対する回帰直線の傾きで評価した(△VEtA Sa02)。運動は自転車エルゴメーターに よるー定運動 負荷(12.5W)とし、運動開始後6分以上経過して呼吸が安定した状態で換気応答検査を開 始した。なお、検査開始前にアデノシン受容体拮抗作用゜をもつaminop¥yllineく5mg/kg、内因性アデノシ ンの効果を強めるとされるdipyridamoleくo.6mg瓜g)、あるいはプラセポとして生理的食塩水の3者のいず れかを順不同の二重盲検法によっ・て約5分間かけて静注した。また、血清カリウムとカテコールアミンの 測 定 の た め に 、 安 静 時 お よ び 運 動 時 低酸 素 換気 応答 測定 前 後で 上腕 静脈 より 採 血を 行っ た。

結 果

安静時低酸素換気応答はプラセポ、ammophylline、dipyridamole前投与でそれぞれO.24士O.05

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(SE)、0.21土0.04、0.27士0.04 l/min%fall of Sa02と実験3日間に有意差は認めなかった。このときの呼 気終末炭酸ガス分圧はそれぞれ、37.9土0.6、35.6士0.7、35.8土0.9 Torrとプラセポに比ペ両薬剤投与時 に有意に低下していた。一方、運動時の低酸素換気応答はプラセポで0.64土0.13、aminopl¥yllineで0.42 士0.07、dipyridamoleで0.64士0.08 l/min%fall ofSa02といずれの実験日も運動時の応答値は安静時に比 ぺて有意に増大したが(すぺてpく0.01)、運動時の値を実験3日聞で比ぺるとaminophylline投与日はプ ラセポやdipyridamole投与日より有意に小さかった(それぞれpく0.06)。運動時の平均呼気終末炭酸ガ ス分圧はプラセポで37.9土1.0、aminopIXyllineで36.3士0.6、dipyridamoleで37.6土1.0 Torrと各実験日 聞で差がなかった。血清カリウム濃度は、プラセポ実験日には安静時4.41士0.10 mF,q/l、運動6分後に4.73 士0.14 mEq/l、運動時低酸素換気応答測定後には4.92土0.18 mEq/lと運動と低酸素負荷によって有意に 増加した(それぞれpく0.05)。血清カリウムはdipyridamole実験日も同様に増加したが、aminopl¥ylline 投与日には安静時4.43土0.11 mEq/l、運動6分後に4.54士0.16 mEq/lと有意の増加がなく、運動時低酸素 換気応答測定後も4.71土0.19 mEq/lと安静時に比ペ有意に増加はしたが、その増加の程度はプラセポ、

dipyridamole実験日に比ぺて有意に小さかった(それぞれpく0.05)。血清norepinephrine濃度は実験3日 とも有意の上昇はなかったが、血清epinephrine濃度はaminophylline投与日の運動時低酸素換気応答測 定後にのみ有意に上昇した。なお、血清テオフィリン濃度は2回の測定でそれぞれ平均8.7士O.6、8.0土 0.2mg/lといずれも有効血中濃度に達していた。

考案

    運動時に末梢化学受容器の低酸素化学感受性が亢進する現鍛は、これまで代謝の亢進、体温上昇、

血中カテコールアミンの増加などが関与していると推測されていたが未だ定税はない。近年、内因性アデ ノシンやカリウムが末梢化学受容体の刺激物質として注目されてきたため、今回我々はこの両者あるいは いずれかが関与している可能性を検射した。運動により血中カリウムが上昇することは古くから知られて おり、一方アデノシンについても運動筋の血流増加に対する関与が指摘されており血中に流入することは 充分考えられる。もしアデノシンがこの現象に関与しているとすれぱ、内因性アデノシンの効果を強める と期待されるdipyridamoleの前投与によって運動時低酸素換気応答の亢進はより増強され、一方アデノシ ン受容体拮抗作用をもつaminophyllineの投与によりその亢進は減弱するはずである。今回の結果は運動 時の低酸素換気応答亢進はaminophylline前投与により減弱したが、dipyridamole前投与時には変化がな く 、運 動時 の低 酸素 化 学感 受性 亢進 にアデノ シンが関与しているとは結諭 できなかった。一方、

aminophyllineのみが運動時の低酸素換気応答に影響を与えた理由として血清カリウムの動きが注目され た。すなわち、aminophylline前投与をした場合にのみ運動と低酸素負荷に伴う血清カリウムの上昇が60% 以下に抑えられた。この結果は、aminophylline類似物質であるca ffeineが運動に伴う血清カリウム上昇 を抑制するとした最近の報告と一致するものである。従って今回の結果は、aminop¥yllineが運動中に増 加する血清カリウムの上昇を抑えることによって運動時低酸素換気応答の亢進を減弱させたと考えるのが 最も妥当である。従来thophylline製剤の血清カリウム低下作用は中毒症状の1っとして一部で知られてい たにすぎない。今回の結果は、代表的theoplxylline製剤であるaminophyllineが常用量で運動に伴う血清 カリウム上昇を有意に抑制することを初めて示したものである。従来、theopt¥ylline製剤は気管支拡張効 果とは別に慢性呼吸器疾患患者の運動耐容能を改善するとも言われてきたが、今回示した結果は同製剤に 関する新しい薬理効果を示唆した点からも重要である。

(3)

結語

    運 動 時 に 認 め ら れ る 低 酸 素 換 気 応 答 の 増 大 は 内 因 性 ア デ ノ シ ン の 生 理 作 用 を 増 強す る dipyridamole前投与により影響されず、アデノシン受容体拮抗作用をもつaminopl¥ylline前投与によって 有意に減弱した。このとき、運動および低酸素負荷に伴う血清カリウム上昇がaminophylline前投与の場 合にのみ有意に抑制された。以上の結果は、運動中の低酸素化学感受性亢進に血清カリウム上昇が関与し ているとする仮説を支持するものである。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Effect of amlnophylline on plasma 〔 K+) and   hypoxic ventilatory response during mild       exerclseln men

( 運動 時に おけ るア ミノフ ィリ ンの カリ ウム および      低 酸 素 換 気 応 答 に 与 え る 効 果 に つ い て )

     運 動 中 に100 %酸 素を 吸入 する と一 時的 に換 気量 が減 少す るが、 その 程度 は安 静時 に比べて大きい。これは運動時に末梢化学受容体の感受性が亢進するた めと 説明 されている。本研究は末梢化学受容体活動を亢進させるとされる血清カ リウ ムと アデノシンの役割に着目し、これらが運動時の低酸素化学感受性亢進に 関与している可能性について検討した。

     方法 は健 常成 人男 性9 名 に対 し、 はじめに安静仰臥位にて低酸素換気応答検 査を 行な い、次に20 分以上の間隔をあけて運動時の低酸素換気応答を測定した。

低酸 素換 気応答は吸入気酸素濃度と炭酸ガス濃度を自動制御することによって、

呼気 終末 炭酸 ガス 濃度 を一定 に保 った まま、呼気終末酸素ガス濃度を約120Torr から 約40Torr まで 連続 的に低 下さ せ、 その とき の分 時換 気量 増加 の程度を Sa02 低下 に対 する回帰直線の傾きで評価した。運動時の低酸素換気応答は自転車エル ゴメ 一夕 ーに よる 一定 1N2.5W の運 動負 荷を加え、運動開始後6 分以上経過して呼 吸が 安定 した状態で測定した。なお、検査開始前にアデノシン受容体拮抗作用を もっ アミ ノフィリン(5mg/kg) 、内因性アデノシンの効果を強めるとされるジピリ ダモール(0.6m g/k:g) 、あるいはブラセボとして生理的食塩水の3 者のいずれかを 二重 盲検 法によって静注した。また、血清カリウムとカテコールアミンの測定を 安静時および運動時低酸素換気応答測定前後で採血した。

     安静 時低 酸素 換気 応答は ブラ セボ 、ア ミノ フア リン 、ジ ピリ ダモ―ル前投 与でそれぞれ0.94 士0.05  (SE) 、0.91 土0.04 、0.97 士0.04  l/min %fall of Sa02 と

   

   

富 義

山 上

小 川

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

有 意差は 認め なか った が、 運動 時の低酸素換気応答はブラセボで0.64 土0.13 、ア ミ ノフアリンで0.42 ‑ 0.07 、ジビリダモールで0.64 土0.08 l/min %fall of Sa02 と いずれ の実 験日 も安 静時 に比 べて有意に増大した(すべてp く0.01) 。運動時の 値 を各群 間で 比べ ると アミ ノフ アリン投与日はブラセボやジピリダモール投与日 よ り有意 に小 さか った (そ れぞ れp く0.05) 。血清カリウム濃麌は、ブラセボ、ジ ピ リダモ ール 前投 与で は運 動時 に有意に増加したが、アミノフィリン前投与時に は 運動時 の有 意な 増加 は見 られ ず、運動時低酸素換気応答後もプラセボ、ジピリ ダ モール 前投 与で は安 静時 に比 べ平均0.51mEqfl ,0.58mEq/l 増加したが、アミノ フ ィ リ ン 前 投 与 で は 0.23mEq/l と 増 加 の 程 度 は有 意 に 小 さ か っ た ( そ れ ぞ れ p く0.05 )。

     運動 時に 末梢 化学 受容 体の 低酸素化学感受性が亢進する現象は、これまで代 謝 の亢進 、体 温上 昇、 血中 カテ コールアミンの増加などが関与していると推測さ れ ていたが未だ定説f まない。今回の結果は運動時の低酸素換気応答亢進はアミノ フ ィリン 前投 与に より 減弱 した が、ジピリダモール前投与時には変化がなく、運 動時の低酸素化学感受性亢進にアデノシンが関与しているとは結論できなかった,

一 方、ア ミノ フィ リン のみ が運 動時の低酸素換気応答に影響を与えた理由として 血 清カリ ウム の動 きが 注目 され た。すなわち、アミノフアリン前投与をした場合 に のみ運 動と 低酸 素負 荷に 伴う 血清カリウムの上昇が50 %以下に抑えられた。従 っ て今回 の結 果は 、ア ミノ フア リンが運動中に増加する血清カリウムの上昇を抑 え ること によ って 運動 時低 酸素 換気応答の亢進を減弱させたと考えるのが妥当で あ る。従 来テ オフ ィリ ン製 剤の 血清 カリ ウム 低下 作用 は中 毒症状の1 っとして一 部 で知ら れて いた にす ぎな いが 、本研究は常用量でアミノフアリンが運動時のカ リウムの上昇を抑帯t 亅することを始めて示したものである。このことは、テオフイ リ ン製剤 が気 管支 拡張 効果 とは 別に慢性呼吸器疾患患者の運動耐容能を改善する と も言わ れて きた がゝ 同薬 物に 関する新しい薬理効果を示唆した点からも重要で ある。

     公 開 討 議 は約 20 名 の中 で行 われ 、発 表の 後討議 が行 われ た。 副査 の劔 物教

授 よルア ミノ フア リン が運 動中 のカリウムの上昇を抑制した機序について、アデ

ノシンの量、役割についての質問があった・。副査の川上教授からは血液濃縮の関

与について、菅野教授からは実験結果に対する中枢神経系の関与、末キ肖化掌受容

体 におけ るカ リウ ムの 役割 につ いての質問、主査の小山教授からは運動時に上昇

するカリウムが抑制されることの臨床的意義について、末手肖化学受容体のカリウ

ム の作用 につ いて 今後 の研 究方 法についての質問と助言があった。申請者はこれ

ら に対し 現在 考え られ てい る可 能性について説明し、本実験結果の解釈について

(6)

適切な回答を行った。本研究は人において初めて運動時の低酸素換気応答の亢進

と血清カリウムの関係を示し、アミノフアリン投与で運動時のカリウムの上昇が

抑制されることを初めて示したものであり、博士(医学)の授与に値するものと

判定した。

参照

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