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博士(工学)五十嵐敏文 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)五十嵐敏文 学位論文題名

微 量無機 イオン種 の地中 移行に関する基礎的研究

(Study on the underground migration of trace inorganic constituents)

学 位論文内容の要旨

  本研究では,電気事業に伴い発生する大量発生廃棄物である原子力発電所からの低レベ ル放射性廃棄物(LLW)と石炭火力発電所からの石炭灰を合理的に埋設処分あるいは埋 立処分するために,それら固体廃棄物中に含まれているSr,Co,Csの陽イオン形態の放射性 核種やB,Cr,Asの陰イオン形態の重金属類の土壌・地下水系での吸着・移行挙動を実験的 に明らかにし,土壌の有する移行抑止能をそれら無機イオン種の地中での吸着・移行モデ ルを構築することによって評価した。さらに,吸着に関する主要バラメータである分配係 数 の 簡 易 測 定 法 に つ い て も 検 討 し た 。 本研 究 を ま と め る と 以 下 の よ う に な る 。   第1章では,研究の背景と目的について記述した。

  第2章では,LLW起源の陽イオン核種であるSr,Co,Csの吸着特性を室内バッチおよび カラム試験とフイールドトレーサ試験によって検討し,試験方法に依存しなぃ吸着モデル を構築するとともに,適切な吸着パラメータを取得することを試みた。砂層カラム試験に よれば,Sr吸着は砂表面の交換性CaやMgとのイオン交換反応に起因し,Co吸着は砂表面の 交換性CaやMgとの可逆的なイオン交換反応と弱アルカリ性溶液中では不可逆的な反応が作 用することを明らかにした。この結果に基づき,Srに対しては3種イオン間のイオン交換 平衡モデルを構築し,Coに対しては3種イオン間のイオン交換平衡式による可逆吸着モデ ルと一次反応式による不可逆吸着モデルとの並列モデルを構築し,これらのモデルがカラ ム試験結果をよくシミュレートできることを確認した。また,カラム試験結果はバッチ試 験結果とも対応した。このような砂によるSr,Co吸着特性は,粘土(ベントナイト,カオ リン)や口ームに対しても適合した。特に,ロームに対しては,フイールドトレーサ試験 を実施し,Sr,Coの他にCsも含めて吸着特性を検討した結果,種々のイオン種が共存する 系においても,Sr,Co,Csは主にイオン交換反応に起因する吸着により,非吸着性トレーサ である重水や臭素イオンと比較して降下浸透が遅延することを明らかにした。また,Sr, Coについては,交換等温線上でフイールド試験結果と室内バッチ試験結果とが一致した。

これらの結果から,Sr,Co,Csのような陽イオン穏の土壌中の移行挙動を評価する場合,そ の主要吸着機榊であるイオン交換反応の平衡定数,すなわち選択係数が主要バラメータと なり,そjLをバッチ試験等により測定することが必要となる。陽イオン交換反応.の対イオ ンとしては,Caのような地下水中の主要イオンが用いられる。また,従来から使用されて いる吸雨バラメータである分配係数は,選択係数が既知であれぱ陽イオン交換反応の対イ オンてあるCaの固液相濃度を測定することによって簡単に算出でき,さらに地下水の水質 が変動Lと場合でも,選択係数は変化しないことから,Caの固液相濃度を用いて換算でき る。した`し,弱アルカリ性溶液中で生起するCoの不可逆吸着機構の主要バラメータである 反応i豐慶之故は,バッチ試験では測定することができず,カラム試験で得られる破過曲線

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(2)

からフ´ッテイングする必要がある。

  第3爺では,石炭灰起源の陰イオン種であるB,Cr,Asの吸着特性を室内バッチおよびカ ラム試験と大型ライシメー夕試験によって検討し,試験方法に依存しない吸着モデルを構 築するとともに,適切な吸着バラメータを取得することを試みた。砂やロームを用いたバ ッチおよびカラム試験によれば,B,Cr,Asの吸着・移行挙動は,石炭灰からのこれら元素 の溶出濃度(5〜10mg/l程度)以下の濃度範囲では,バッチ法やカヲム法といった試験方 法に係わらず,概ね可逆的なへンリー型の平衡吸着式で表現できた。しかし,ロームによ るCr吸着やCa共存下でのAs吸着には,不可逆的な吸着も作用した。石炭灰埋立地を模擬し た大型ライシメー夕試験では,降雨浸透,各種元素の溶出,溶出元素の吸着・移行のー連 の特性を検討し,移動度の大きいフライアツ.シュの主要成分であるCa,SO。と微量成分であ るBのロームへの吸着は可逆的なへンリー式で表現できることがわかった。さらに,ライ シメー夕試験において,降雨の降下浸透はvan−Genuchten式で表現でき,フライアッシュ 層からのCa,SO。,B,Crの溶出はへンリ一式あるいは2成分溶出モデルで表現できることを 明らかにした。また,これらの結果から,B,Cr,Asのような陰イオン種の土壌中の移行挙 動を評価する場合,石炭灰からの溶出水に含まれる程度の濃度範囲では従来から使用され ているへンリー式を適用することができ,その比例定数である分配係数はバッチ試験等に より容易に測定することができる。さらに,CrやAsに対して認められた一次反応式で表現 される不可逆吸着は,パッチ試験では測定することができず,カラム試験で得られる破過 曲線からフイッテイングする必要がある。

  第4章では,放射性核種等の微量物質の地中移行挙動を評価する際の最も簡単顔吸着バ ラメータである分配係数を簡便に測定できる方法として,バックグラウンドとして存在す る自然環境中の安定同位元素の固液相濃度を測定し,その濃度比を放射性核種の分配係数 として適用する方法の妥当性を検討した。その結果,放射性核種,非放射性核種に係わら ず,液相中の安定同位元素濃度が等しけれぱ,それらの分配係数は一致することが明らか になった。特に,バックグラウンドの安定同位元素濃度が比較的高いSrについては,固相 濃度を酢酸アンモニウム抽出可能成分とした固液相濃度分配比は,バッチ試験で得られた 分配係数と一致し,分配係数測定法として本手法が適用できることがわかった。Co,Csに ついては,固相濃度の測定方法等を改善する余地があることがわかった。本手法は,放射 性核種を用いる室内バッチあるいはカラム試験をわざわざ実施する必要カsないことから,

各地層中の分配係数の分布状況を詳細に把握できる有効な方法になりうると考えられる。

  第5章で は,LLWの 模擬 埋設 地と 石炭 灰の 模擬 海面 埋立 地を対 象と して ,そこから溶 出する主要放射性核種のーつである゜。Srと石炭灰に含まれる微量元素のーつであるCrの地 中移行挙動を予測した。その際,埋設あるいは埋立処分地周辺の地下水流況を解析した上 で,溶質の吸着モデルおよびそのバラメー夕値を設定し,溶質の地中移行解析を行った。

実際の処分地に対しても,このようなフローに従ってあらかじめ溶質の地中移行挙動を予 測することができる。さらに,土壌の吸着性能を十分活用することによって,埋設処分地 や埋立処分地の設計を一層合理化できると考えられる。

  しかし,穏々の核種・元素の化学形態,特にイオン態,コロイド態,不溶態の変化を十 分に考慮した吸着モデルは今後とも検討する必要があると考えられる。特に,環境中で酸 化数が変化する核穏・元素,例えばCr(III)/Cr(VI),As(III)/As(V)については,

地中での酸化還元雰囲気の評価とともに,酸化数変化を考慮した吸着モデルを確立してい く必要がある。

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   田 中 信 壽 副 査   教 授   渡 辺 義 公 副 査   教 授   高 桑 哲 男 副 査   教 授   大 橋 弘 士

学 位 論 文 題 名

微量無機イオン種の地中移行に関する基礎的研究

  原 子 力 発 電 所 か ら 発 生 す る 低 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 (LLW) と 石 炭 火 力 発 電 所 か ら 発 生 す る 石 炭 灰 は , 適 正 か つ 合 理 的 に 埋 立 処 分 さ れ る 必 要 が あ る 。

  本 研 究 で は , そ れ ら の 固 体 廃 棄 物 中 に 含 ま れ るSr,Co,Csの 陽 イ オ ン 形 態 の 放 射性 核種 お よ びB,Cr,Asの 陰 イ オ ン 形 態 の 微 量 無 機 イ オ ン 種 の 土壌 ・地 下水 系で の 吸着 ・移 行挙 動を , バ ッ チ 試 験 , カ ラ ム 試 験 , お よ ぴ フ イ ー ル ド 試 験 や 大 型 ラ イ シ メ ー 夕 試 験 を 行 う こ と に よ っ て 実 験 的 に 明 ら か に し , 微 量 無 機 イ オ ン 種 に 対 す る 土 壌 の 移 行 抑 止 能 を 評 価 し て い る 。   本 研 究 の 主 要 な 成 果 を ま と め れ ぱ , 次 の 通 り で あ る 。

@ 陽 イ オ ン 核 種 で あ るSr,Co,Csの 吸 着 特 性 を 室 内 バ ッ チ 試 験 お よ び カ ラ ム 試 験 とフ イー ル   ド ト レ ー サ 試 験 に よ っ て 検 討 し , 試 験 方 法 に 依 存 し な ぃ 吸 着 モ デ ル を 構 築 し , 適 切 な 吸   着 パ ラ メ ー タ を 得 て い る 。 す な わ ち ,Srに 対 し て は3種 イオ ン(Sr,Ca,Mg)と の間 のイ オ   ン 交 換 平 衡 モ デ ル を 構 築 し ,Coに 対 し て は3種 イ オ ン と の 間 の イ オ ン 交 換 平 衡 式 に よ る   可 逆 吸 着 モ デ ル と 一 次 反 応 式 に よ る 不 可 逆 吸 着 モ デ ル と の 並 列 モ デ ル を 構 築 し , こ れ ら   の モ デ ル が カ ラ ム 試 験 結 果 や バ ッ チ 試 験 結 果 , 及 び ロ ー ム を 用 い た フ イ ー ル ド ト レ ー サ   試 験 結 果 に よ く 適 合 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。

@ 陰 イ オ ン 種 で あ るB,Cr,Asの 吸 着 特 性 を 室 内 バ ッ チ試 験お よび カラ ム 試験 と大 型ラ イシ メ   ー 夕 試 験 に よ っ て 検 討 し , 試 験 方 法 に 依 存 し な い 吸 着 モ デ ル を 構 築 し , 適 切 な 吸 着 バ ラ   メ ータ を得 た。 すな わ. ち, 砂や ロー ムの バ ッチ 試験 とカ ラム 試験 から ,B,Cr,Asの 吸着 ・   移 行 挙 動 は , こ れ ら 元 素 の 溶 出 濃 度 以 下 の 濃 度 範 囲 で は , こ れ ら の 試 験 方 法 に 係わ らず ,   概 ね 可 逆 的 な へ ン リ ー 型 の 平 衡 吸 着 式 で 表 現 で き る が , ロ ー ム に よ るCr吸 着 やCa共 存 下   で のAs吸 紵 に は , 不 可 逆 的 な 吸 蔚 も 作 用 し た 。 石 炭 灰 恕 ! 立 地 を 模 擬 し た 大 型 ライ シメ ー   夕 試 験 で は , 移 動 度 の 犬 き い フ ラ イ ア ッ シ ュ の 主 要 成 分 で あ るCa,SO・ と 微 量 成分 であ る   Bの ロ ー ム へ の 吸 着 は 可 逆 的 な へ ン リ ー 式 で 表 現 で き る こ と を 明 ら か に し て い る 。

◎ 放 射 性 核 髄 等 の 微 鼠 物 質 の 地q・J移 行 挙 動 を 評 価 す る 際 の 最 も 簡 単 な 吸 耨 バ ラ メー タで あ   る 分 配 係 数 を 簡f亜 に 測 定 で き る 方 法 と し て , バ ッ ク グ ラ ウ ン ド と し て 存 在 ず る 自 然 環 境   巾 の 安 定 同 位 元 素Sr,Co,Csの 固 液 相 濃 度 を 測 定 す る 方 法 の 妥 当 性 を 検 討 し , 各地 層中 の   分 配 係 数 の 分 布 状 況 を 詳 細 に 把 握 で き る 有 効 な 方 法 に な り う る こ と を 示 し て い る 。

@LLWの 模 擬 埋 設 地 と 石 炭 灰 の 模 擬 海 面 埋 立 地 を 対 象 と し て , そ こ か ら 溶 出 す る 主 要 放   射 性 核 種 の ー つ で あ る ° 。Srと 石 炭 灰 に 含 ま れ る 微 量 元 素 の ー つ で あ るCrの 土 壌吸 着効 果   を 本 lilf究 で 開 発 し た 吸 着 ・ 移 行 モ デ ル を 使 っ て 数 値 的 に 検 討 し て い る 。

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  これを要するに,著者は,微量無機イオン種の地中移行に関して多くの有用な新知見を 得 たものであ り,環境工 学及び廃棄物処分工学に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位論文を授与される資格あるものと認める。

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参照

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