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博士(農学)小嶋道之 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)小嶋道之 学位論文題名

植物脂質の分子種多様性とその 代謝に関する研究 学位論文内容の要旨

  本研究の主な目的は、(1)植物、特にマメ科植物の各器官(葉、茎、根、種子、お よび培養細胞など)に含まれるグリセロ脂質、ステロール脂質およびスフィンゴ脂質 の分 子種 の構造 の多 様性を明らかにすること、および各分子種の代謝を考察する。

(2)成育時の環境要因の変化(低温処理や外因性脂肪酸取り込み)による膜脂質組成 の変化と生理的変動との関連性を検討する。(3)植物スフィンゴ脂質の代謝経路につ いて明らかにすることなどである。

  第1章では、.これまでに明らかにされている植物脂質の構造および代謝に関する報 告を概括レ、未解決の問題点を示した。

  第2章の 第1節 では 、数 種の マメ 科植 物種 子を 、第2節ではアズキの各器官(葉、

茎、根、莢および完熟種子)を、第3節では登熟段階の異なるアズキ未熟種子を材料 に し て 、 マ メ 科 植 物 に 含 ま れ る 脂 質 の 分 子 種 多 様 性 に つ い て 検 討 し た 。 1.数種のマメ科植物種子およびアズキの各器官に含まれるグリセロ脂質:卜リアシ ルグリセロ―ル(TG)、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルエタノールア ミン(PE)のジアシルグリセロール(DG)残基の分子種組成は、植物種や各器官により特 徴の ある ことを 明ら かにした。グリセ口脂質の分子種組成は、それを合成する酵素 (G3Pアシル卜ランスフェラーゼや不飽和化酵素など)の活性により制御されているこ とを考察した。

2.数 種の マメ 科植 物種 子中 には 、従 来型の ジガ ラクトシルジアシルグリセ口ール (DGDG);Gal(al→6)GalーDGとは糖鎖部分が異なる新規なGal(ロ1→6)GalーDGが 広く混在することを明らかにした。両者の割合は品種間では類似していたが、植物種 およびアズキの各器官により異なることを明らかにした。またアズキの登熟過程の未 熟種子の両型のDGDGの割合および分子種組成が開花後40〜50日目に急激に変動するこ とを明らかにした。

3.アズキ種子中に新規なオリゴ糖鎖含有のステ口ール配糖体の存在を明らかにし、

そ の 構造 をGlc( ロ1→6)Glc(Bl→6)Glc(81→3) シス テ口 ール また はス チグ マ ス テ 口 ― ル 、Glc(Bl‑6)Glc(Bl→6)Glc(Bl‑6)Glc(81‑*3) シ ス テ 口ー ルま たはス チグ マステ口ールと決定した。また、それらの前駆体のGlc(ロ1→

(2)

6)Glc(G1‑*3)ステ口―ルの存在も示した。

4.数種の マメ科植 物種子のセ レブ口シ ド(CMH)の構造 を比較し て、エンドウとソラ マメの主 要な構造が他の種子のそれとは異なることを明らかにした。また、アズキの 各器官および登熟段階の異なるアズキ未熟種子の主要なセラミド(CI/I,aIHの前駆体)

とCMHの主要な構造が異なることを明らかにした。

  第3章では 、低温感 受性植物で あるアズキの培養細胞を用いて、環境要因による膜 脂質の変 動を検討 した。第1節 では、ア ズキの各器官から誘導した培養細胞の脂質の 特徴を親 細胞のそれと比較した。第2節では、アズキ培養細胞を低温環境下(3℃)で 培養した 時の膜脂 質の変動を 検討した 。第3節では、アズキ培養細胞に外因的に飽和 の遊離脂 肪酸を取り込ませた時の膜脂質の分子種組成の変動とその細胞の低温感受性 能の変動を検討した。

1.アズキ の各器官 から誘導し た培養細 胞の主要な脂質クラスは、グリセ口リン脂質 (PEやPCなど) であり、 親細胞(ア ズキの葉以外)と脱分化細胞の脂質クラスは類似 性を示し たが、培養細胞のグリセロリン脂質およびグリセロ糖脂質の分子種組成は親 細胞の特 徴を示すのではなくアズキ培養細胞特有の分子種パターンを示すことを明ら かにした。

2.アズキ の各器官から誘導した培養細胞のClrIH組成は、トリヒド口キシスフィンゴ イドの割 合が親細胞のそれに比べて若干高かったが、構成ヒド口キシ酸組成には著し い違いは 認められなかった。またCMの主要な構成分は親細胞のそれと同じ傾向を示し た。

3.低温条 件(3℃)で培養した細胞の経日的な増殖はほとんどみられなかった。細胞 のrrc還 元能 は 、3℃ で2日間 培 養し た 細 胞で はcontrolのそれ とほば同様 であった が、3℃ で9日 間培 養 し た細 胞 では 約20% 低 下 した 。 また3℃ で2日 間、4日 間およ び6日間培 養レた細 胞を24℃に移 して培養を続けたところ、いずれの条件の場合にも 細胞の再増殖が認められた。

4.低温で 培養した 細胞のPE、PCお よびCMHの分 子種組成 は、25℃で培養した場合の それと著 しい違い は認められ なかった が、MGDGとDGDGの全不飽和度が3以上の分子種 の 割 合 が 若 干 高 く な り 、 逆 に 飽 和 含 有 分 子 種 の 割 合 が 若 干 低 く な っ た 。 5.培地に1/40容のメタノールと2.5m.Mの遊離脂肪酸(16:0,18:0混合物)もレくは 1/200容 のメ タノ ールとO.5mMの遊離脂 肪酸を加 えたアズ キ培養細胞 の増殖率 は、

controlに対し約 堀および 約班で、細 胞のエステラーゼ活性や呼吸効率(rrc還元能)

は両者と もにcontrolの約20〜30%を示した。加えた遊離脂肪酸の濃度が高くなるほ ど、PCやPIの16:0や18:0含有分子種(16:0一16:0や16:0ー18:0分子種など)の割合が高 くなった が、PEのそれらの分子種の顕著な変動は認められなかった。また、低温で培 養したと きのこの 細胞のrrc還元 能はcontrolのそ れに比べ て低下し、細胞の膜脂質 の飽和脂 肪酸含有分子種が多くなると、細胞が以前より低温に弱くなることを推察し た。

(3)

  第4章の第1節では、アズキ根由来、子葉由来およびタバコ由来BY−2培養細胞を用 いて 、亜VIVOでの ラベ ルセリンの脂質への取り込みとその代謝を検討し、第2節で はアズキ根由来の培養細胞を用いてスフィンゴ脂質の代謝、特にラベルセリンおよび ラ ベ ル パ ル ミ チ ン 酸 を 用い て 構 成 スフ ィン ゴイ ドの 不飽 和化 機構 を検 討した 。 1.外因的に培地に加えたセリンは、脂質の各構成分;極性基(エタノールアミン、

コリンおよびセリンなど)、脂肪酸およびスフィンゴイドに取り込まれた。ラベルの 取り込み初期(60分以内)では、PEに最も高しヽ取り込みが認められたが60分以降徐々 に減少した。逆にPCへのラベル量は経時的に徐々に増大した。

2.アズキ培養細胞に外因的にセリンを取り込ませた場合には、PSや遊離セリンの脱 炭酸によりPEやエタノールアミンが生成し、また遊離のエタノールアミンはPEとな り、続いてPEのメチル化反応によりPCが合成される経路が働いていることを考察し た。

3. ラベ ルの 経時 的変動 から判断して、ラベルセリンは遊離のスフィンガニン(d18

:0)を経て直ちにアシル化されCMとなり、d18:0含有CMはd18:2含有CMに不飽和化さ れ、d18:2含有分子種が優先してグリコシル化されることを考察した。また卜リヒド 口キシ型スフィンゴイドの飽和型から8−モ.ノエン型への不飽和化も主にCMで起こり、

トリヒド口キシ型CMHの生成はジヒドロキシ型CMHよりも遅いことを明らかにした。

4.[1ー14C] 16:0はCMとCMHの構成スフィンゴと脂肪酸の両者に取り込まれた。CMで は直鎖型とヒド口キシ型脂肪酸の両者にラベルが認められたが、CMHのそれは取り込 み初期でもヒド口キシ酸のみにラベルが認められ、糖転移酵素の基質選択性が高いこ とを推察した。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

植物脂質の分子種多様性 とその代謝に関する研究

  本 論 文 は 、 和 文200頁 、 図34、 表55、5章 か ら な り 、 ほ か に 参 考 論 文27篇 が 付 さ れ て い る 。

  近 年 、 生 体 内 で の 脂 質の 機 能 、役 割 など を 解 明す る た めに は 各脂 質 グ ルー プ を 構 成 し て い る 分 子 種 と その 代 謝 の解 析 が重 要 で ある こ とが 認 識 され る よ うに な っ て い る 。

  本 研 究 は 、 マ メ 科 植 物、 特 に アズ キ を中 心 に 各器 官 に 含ま れ る脂 質 群 :グ リ セ 口 脂 質 、 ス テ 口 ー ル 脂 質お よ び スフ ィ ンゴ 脂 質 の分 子 種の 構 造 解析 、 環 境要 因 の 変 化 に と も な う 膜 脂 質の 分 子 種変 化 と生 理 的 変動 の 関連 性 な らび に ス フィ ン ゴ 脂 質 の 代 謝 経 路 を 検 討し た も ので あ り、 研 究 の結 果 は以 下 の よう に 要 約さ

. れ る 。

  1. マ メ 科 植 物 の 各 器 官に 含 ま れる グ リセ 口 脂 質: 卜 リア シ ル グリ セ 口ー ル (TG)、 ホ スフ ァ チ ジル コ リ ン(PC)お よ びホ ス フ ァチ ジ ルエ タ ノ ール アミン(PE) な ど の ジア シ ルグ リ セ ロー ル (DG)残 基の 分子種組 成は、植 物の種類と 器官によ り 特 徴 が あ り 、 そ れ ら の 合 成 酵 素 に よ り 制 御 さ れ て い る こ と を 認 め た 。   2. マ メ 科 植 物 種 子 中 には 、 従 来知 ら れて い る ジガ ラ リ卜 シ ル ジア シ ルグ リ セ ロ ー ル (DGDG):Gal(a1→6)GalーDGと は 糖 鎖 の結 合 様式 が 異 なる 新 規 な Gal( Bl→ 6) Galー DGが 広 く 混 在 し て い る こ と を 明 ら か tこ し た 。   3. ア ズ キ 種 子 中 に4種 の 新 規 な オ リ ゴ 糖 鎖 含 有 ス テ口 ー ル 配糖 体 の 存在 を 明 ら か に し 、 そ の 構 造 をGlc(81→6)Glc(Bl→6)Glc( ロ1→3) シ 卜 ス テ 口 一 ル ま た は ス チ グ マ ス テ 口 一 ル 、Glc(B1→6)Glc(B1→6)Glc(81

→6)Glc(B1→3)シ 卜 ス テ ロ ー ル ま た は ス チ グ マ ス テ 口 ー ル と 決 定 レ た 。 ま た そ れ ら の 前 駆 体 で あ るGlc(B1→6)Glc( 卩1→3) ス テ 口 ー ル の 存 在 を 明 ら か にし た 。

  4. エ ン ド ウ お よ び ソ ラマ メ 種 子の 主 要な セ レ ブ口 シ ド(CMH)分 子 種は 、 他 の マ メ 科 植 物 種 子 のCMHとは 異 な るが 、 両者 の 主 要な セ ラミ ド(CM,CMHの 前駆

哉哉 守 誠良 葉木 間 千 仁 本 授授 授 教敦 教 査

』 査査 主

、 副副

(5)

体)の分子種には他のマメ科植物種子CMと違いがみられないことを明らかにし た。

  5. 低温感受性植物であるアズキの培養細胞のグリセ口脂質とスフィンゴ脂 質の分子種組成は、親細胞の特徴を示さず培養細胞特有の分子種パターンを示 すことを明らかにした。

  6.、アズキ培養細胞を低温条件下に移し培養を続けた場合(3℃、9日間)、

細胞内 のPE、PCおよびCMHの分子種組成には25℃で培養を続けた場合と著しい 差はみられないが、モノあるいはジガラク卜シルジアシルグリセ口ールの全不 飽和度 が3以上の分子種の割合が高くなり、相対的に飽和脂肪酸含有分子種の 割合が低下することを認めた。

  7.培地にZ. 5mMパルミチン酸およびステアリン酸(16:0,18:0;0.05%メタ ノール 中)を加えたアズキ培養細胞の増殖率はコン卜口一ルの約50%、細胞内 エステ ラーゼ活性や呼吸率(TTC還元能)は20〜30%に低下した。培地に添加し た飽和脂肪酸の濃度が高くなるほど膜脂質としてのホスファチジルコリンやホ スアチジルイノシ卜ールの16:0や18:0含有分子種(16:0ー16:0や16:0―18:0)の割 合が高くなり、その細胞は低温で培養したとき呼吸率が低いことを観察した。

これらの結果から、細胞の膜脂質の飽和脂肪酸含有分子種が多くなると、細胞 の低温耐性が減少すると推定している。

  8.[3ー1 C]セリンのアズキ培養細胞への取り込み実験から、セリンは遊離 スフィ ンガニン(d18:0)を経てアシル化されCMとなルスフィンガジェニン(d18

:2)含有分子種に不飽和化され、続いてd18:2含有分子種が優先的にグリコシ ル化されることを明らかにした。

  以上のように本研究は、マメ科植物の脂質群の分子種の解析、新規ステ口ー ル配糖体の構造決定、環境要因の変化に対応した膜脂質分子種の変化、多様な 分子種からなるスフィンゴ脂質の代謝経路を検討したものであり、学術的にも 貴重な知見を提供して・おり高く評価される。

  よって審査員ー同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文の 提出者小嶋道之は博士(農学〕の学位を受けるに十分な資格あるものと認定し た。

参照

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