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博士(農学)福田正樹 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)福田正樹 学位論文題名

シイタケ のミトコ ンドリア DNA の遺伝に関する研究 学位論文内容の要旨

    シ イタ ケは 我が 国で 栽培 され てい る重 要な 食用き のこ のーつであり、現在ま で に栽 培特 性や 子実 体の 形態 など が異 なる 数多 くの栽 培品 種が育成されている。

こ のた め、 本菌 の遺 伝・ 育種 学的 な基 礎研 究は 比較的 数多 く行われている。しか し 、こ れま での 研究 のほ とん どは 核の 遺伝 子を 対象に した ものであり、ミトコン ド リ アDNA (mtDNA)な ど 細胞 質 遺 伝 子 を 対 象 と し た 遺 伝 ・ 育 種 学 的 研 究は ほと ん ど 見 当 た らな い。 本研 究は 、シ イタ ケのmtDNAの遺 伝に 関す る知 見を 得る こと を 目 的 と し て、 シイ タケ を含 めた 高等 担子 菌類 から のmtDNAの 効率 的な 単離 法の 確 立 、 お よ びこ れま で未 知で あっ たシ イタ ケの 生活 環に おけ るmtDNAの 遺伝 様式 の 解明 を試 みた 。次 に、 ゛核 の遺伝子構成が同じでmtDNAが異なる細胞質置換株の 作 製 法 を 考 案し 、作 製し た細 胞質 置換 株の 諸形 質を 比較 する こと によりmtDNAが シ イ ク ケ の 形 質 表 現 に お よ ぼ す 影 響 に つ い て 考 察 し た。 さ ら に 、mtDNAのRFLP (Restriction Fragment Length.Polymorphism)情報に基づいてシイタケ自然集団内の 系統的類縁関係についての解析を行った。

  mtDNAのRFLPを マ ー カ ーに し て シ イ タ ケmtDNAの遺 伝様 式を 解明 する ため に、

ま ず シ イ タ ケに おけ るRFLP分 析の ため のmtDNAの 単離 につ いて 検討 した 。シ イタ ケ の凍 結乾 燥菌 糸体 から 抽出 した 全DNAをビ スベ ンズ イミ ド/CsCI平衡密度勾配遠 心 した とこ ろ、2本 の螢光 バン ドが 検出 され た。 シト ク口 ムcオキシダーゼサブュ ニ ッ 卜 | 遺 伝子 との ハイ ブリ ダイ ゼー ショ ンの 結果 、上 部の バン ドがmtDNAであ る こ と が 確 認 で き た 。 日 本 産(TMI‑1158)、 パ プ ァ . ニ ュ ー ギ ニ ア 産(TMI‑

1485)、 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 産(TMI‑1569)の シ イ タ ケ 野 生 株3菌 株 か ら 、 凍 結 乾     ―280―

(2)

燥菌糸体lg当たり約30彫gのmtDNAをそれぞれ単離することができた。単離した mtDNAは紫外線吸収特性から判断して高純度のものであり、制限酵素によって容 易に分解された。mtDNAの制限酵素分解物の泳動パターンは3菌株間で差が認め られ、シイタケ種内におけるmtDNAのRFLPの存在が明らかになった。また、制限 酵素断片の総和から推定レたシイタケ3菌株のmtDNAのサイズはそれぞれ87.Okb (TMI‑1158)、76.1kb (TMI‑1485)および73.1kb (TMI‑1569)であり、シイタケ のmtDNAはそのサイズにも変異が認められた。

  本 研究 で行 ったmtDNAの単離法を応用してシイタケ以外の高等担子菌類5種

(ヤナギマツタケ、ウシグソヒトヨタケ、マイタケ、夕モギタケおよびヒラタ ケ)からもRFLP分析に充分量(乾燥菌糸体1gから20〜50〃g)のmtDNAを単離す ることができた。2菌株を供試したヤナギマツタケ、マイタケおよびヒラタケに ついては、シイタケの場合と同様にそれぞれの菌株間の制限酵素分解物の泳動パ ターンに差が認められ、これらの種についてもmtDNAの多型性が明らかになっ た。また、制限酵素断片の総和から推定レたそれぞれの高等担子菌類のmtDNAの サイズは、79.6kb(ヤナギマツタケ)、42.7kb(ウシグソヒトヨタケ)、126.5kb

(マ イタ ケ) 、64.2kb(夕モギタケ)および76.4kb(ヒラタケ)であった。

  シ イタ ケ一 核菌糸 体間の交配にともなうmtDNAの遺伝様式をmtDNAのRFLPパ ターンをマーカーにして調査したところ、交配接触部以外から分離した二核菌糸 体は全て核受容側の一核菌糸体のmtDNAを保有していた。また、交配接触部から 分離レた二核菌糸体のmtDNAを分析した結果、シイタケの交配接触部においては mtDNAの組換えはほとんど起こらないことが示された。このことから、シイタケ の交配にともなうmtDNAの遺伝様式は交配接触部を境界にして核受容側の一核菌 糸体が保有するmtDNAのみを一方的に受け継ぐ片親遺伝であることが明らかにな った。また、シイタケの交配接触部から発生する子実体が細胞質キメラであるよ うな興味深い現象も認められたが、シイタケのmtDNAは二核菌糸体から子実体、

さらにその担子胞子由来の一核菌糸体へと変異することなく受け継がれることが 明らかになった。一方、シイタケのプ口トプラスト融合においては、融合親系統

(3)

とは異なるRFLPパターンを示すmtDNAを保有する融合株が認められたことから、

プ口トプラス卜融合によって融合親系統のmtDNA間で組換えが起こることが示さ れた。また、非親型のmtDNAを保有するプ口トプラスト融合株を継代培養した後 もmtDNAのRFLPiくターンに変化がなかったことから、プ口トプラスト融合によっ て生 じ た非 親 型のmtDNA分子 は 安定 し て伝 達 され て いる こ とが 示 された。

  正逆交配とプ口トプラスト培養法による脱二核化処理を組み合わせることによ り、特定のシイタケ二核菌糸体の核構成を変えることなく別の菌株が保有する細 胞質と置換することが可能なことを見出した。作製レたシイタケの細胞質置換株 は目的とするmtDNAのみを保有するものであることがそのRFLP分析によって確認 され、本研究で考案した細胞質置換株の作製法はある菌株の細胞質を別の菌株の ものに置換できる有効なものであることが示された。また、正逆交配株間や核構 成が同じ細胞質置換株間の諸形質を比較したところ、菌糸生長量、菌叢形態、エ ステラーゼのアイソザイムバンドの活性および子実体発生量に差が生じる場合が 認められ、mtDNAがシイタケの形質表現に少なからず影響をおよぼしていること が明らかになった。

  国内外から採集された野生シイタケ51菌株(日本産38菌株、パプァ.ニューギ ニア産7菌株、ニュ ージーラン ド産4菌 株、ボルネオ産1菌株およびタイ産1菌 株)からそ れぞれmtDNAを単離し、それらをBamHIおよびEcoRIで分解した。そ の結果,め皿HI分解では12種類、勵RI分解では24種類のRFLPパターンにそれぞ れ分けることができた。さらに、両制限酵素のRFLPパターンを組み合わせること により供試 したシイタケ野生株51菌株の保有するmtDNAを28種類のRFLP表現型

(日本産1ルタイプ、パプア.ニューギニア産5夕イプ、ニュージーランド産2夕 イプ、ボル ネオ産1夕イプおよ びタイ産1夕イプ)として類別することができ た。RFLP情報を基に系統樹を作成したところ、概ね地域ごとにまとまった5つの グループに大別され、シイタケ野生株のmtDNAの変異は地理的分布と密接に関係 していることが明らかになった。

  以上、本研究では高等担子菌類のmtDNAの効率的な単離法を確立し、シイタケ     ―282−

(4)

生 活環に おけるmtDNAの遺伝様式 を解明した 。また細胞 質置換株を 作製し、

mtDNAがシイタケの諸形質に及ぼす影響についての知見を得た。さらに、mtDNA のRFLP情報に基づいてシイタケ自然集団内の系統的類縁関係を明らかにした。本 研究で得たシイタケのmtDNAに関する新たな知見は、今後mtDNAの影響を考慮し た本菌の育種を行う上で有益である。

(5)

学位論文審査の要旨

学位論文題名

シ イ タ ケ の ミ ト コ ン ド リ ア DNA の 遺 伝 に 関 す る 研 究

  本 論 文 は6章 か らな り 、 図36、 表17、文 献135を含む 頁数137の和 文論 文 であり、別に参考論文15篇が付されている。

  シイタケは我が国で栽培されている重要な食用きのこのーつであり、現在まで に栽培特性や子実体の形態などが異なる数多くの栽培品種が育成されている。こ のため、本菌の遺伝・育種学的な基礎研究は比較的数多く行われている。しか し、これまでの研究のほとんどは核の遺伝子を対象にしたものであり、ミトコン ドリアDNA (mtDNA)など細胞質遺伝子を対象とした遺伝・育種学的研究はほと んど見当たらない。本研究では、これまで未知であったシイタケの生活環におけ るmtDNAの遺伝様式の解明を行うとともに、mtDNAがシイタケの形質表現にどの よ う な 影 響 を お よぼ す か に つ い て の 検 討を 行っ た。さ らに 、mtDNAのRFLP (Restriction Fragment Length Polymorphism)情報に基づぃてシイタケ自然集団内 の系統的類縁関係についての解析を行った。

  mtDNAのRFLPをマーカーにしてmtDNAの遺伝様式を解明するために、まずシイ タケにおけるRFLP分析のためのmtDNAの単離について検討した。シイタケの凍結 乾燥菌糸体から抽出した全DNAをピスベンズイミド/CsCl平衡密度勾配遠心したと ころ、2本の螢光バ ンドが検出された。シトクロムcオキシダーゼサブユニットI 遺伝子とのハイブリダイゼーションの結果、上部のバンドがmtDNAであることが 確認できた。日本産、パプア・ニューギニア産、ニュージーランド産のシイタケ 野生株3菌株から単離したmtDNAの制限酵素分解物の泳動パターンにはそれぞれ 差が認められ、シイタケ種内におけるmtDNAのRFLPの存在を明らかにすることが できた。また、本研究で行ったmtDNAの単離法を応用してシイタケ以外の高等担 子菌類5種(ヤナギマツタケ、ウシグソヒトヨタケ、マイタケ、夕モギタケおよ び ヒ ラ タ ケ ) か らもRFLP分 析 に 充 分 量 (乾 燥菌 糸体lgから20〜50メg) の mtDNAを単離することができ、種々の制限酵素によって容易に切断することがで きた。

    ―284―

實夫 清       哲 澤上 浦 寺三 三 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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  mtDNAのRFLP/ヾ夕ーンをマーカーにして、シイタケの交配にともなうmtDNA の遺伝様式を解析した。その結果、交配にともなうmtDNAの遺伝様式は交配接触 部を境界にして核受容側の一核菌糸体の保有するmtDNAのみを一方的に受け継ぐ 片親遺伝であることが明らかになった。また、シイタケのmtDNAは二核菌糸体か ら子実体、さらにその担子胞子由来の一核菌糸体へと変異することなく受け継が れることが明らかになった。一方、シイタケのプロトプラスト融合においては、

融合親系統とは異なるRFLPパターンを示すmtDNAを保有する融合株が認められた ことから、 プロトプラスト融合によってmtDNAの組換えが起こることが示され た。

  正逆交配とプロトプラスト培養法による脱二核化処理を組み合わせることによ り、特定の二核菌糸体の核構成を変えることなく別の菌株が保有する細胞質と置 換することが可能なことを見出した。本研究で作製したシイタケの細胞質置換株 は目的とす るmtDNAのみを保有するものであることがRFLP分析によって確認さ れ、ある菌株の細胞質を別の菌株のものに置換できる有効な方法であることが示 された。また、細胞質置換株間の子実体発生量に差が生じる場合が認められ、

mtDNAがシイタケの形質表現に少なからず影響をおよぼしていることが明らかに なった。

  国内外から採集された野生シイタケ51菌株からそれぞれmtDNAを単離し、それ らを制限酵 素BamHIおよ びEcoRIで分 解したとこ ろ、BamHI分 解では12種類、

EcoRI分解では24種類のRFLPパターンに分けることができた。さらに、両者の RFLPパターンを組み合わせると供試したシイタケ野生株51菌株のmtDNAを28種 類のRFLP表現型として類別することができた。RFLP情報を基に系統樹を作成し たところ、概ね地域ごとにまとまった5つのグループに大別され、シイタケ野生 株のmtDNAの変異は地理的分布と密接に関係していることが明らかになった。

  以上、本研究で明らかにしたシイタケのmtDNAの遺伝に関する新たな知見は、

今後mtDNAの影響を考慮した本菌の育種を行う上で有益なものになると考える。

  よつて審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と会わせて、本論文の 提出者福田正樹は博士(農学)の学位を受けるに十分な資格があるものと認定し た。

参照

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