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博士(農学)田中創一 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)田中創一 学位論文題名

     ア グ ロ ノ ヾ ク テ リ ウ ム 法 に よ る アズキ落葉病菌形質転換系の確立、および      その病原性解析への利用

学位論文内容の要旨

  アズキ落葉病はPhialophora gregataf.sp. adzu脇Dなにより引き起こされる土 壌伝 染性 病害 で、 北海 道の アズ キ生 産に おける大きな障害のひとっとなってい る。 罹病 アズ キは 維管 東褐 変と 萎凋 を呈 し、種子の品質・収量共に低下する。

本菌 は病 徴発 現に 関与 する とさ れる 植物 毒素グレガチンを産出するが、病原性 との 関連 は明 らか では ない 。ま た、 その 他の病原性関連因子についても不明で ある 。そ こで 本研 究は 、グ レガ チン の発 病への関与も含めアズキ落葉病菌の病 原 性 機 構 を 分 子 生 物 学 的 に 解 析 す る こ と を 目 的 と し て 行 っ た 。 1. ア ズ キ 落 葉 病 菌 の ア グ ロ バ ク テ リ ウ ム 法 に よ る 形 質 転 換 系 の 確 立   多 数の 挿入 変異 株を 得る ため には 効率 の良い遺伝子導入系が必要である。本 研究 では 、直 接分 生胞 子に 遺伝 子導 入が 可能なアグロバクテリウム法によるハ イグ ロマ イシ ン耐 性遺 伝子 の導 入を 試み た。まず、形質転換効率向上のため、

形質転換時培養条件の検討を行った。趣ア。みロc艝′ぬmmmりをcセ珊の前培養におけ るア セト シリ ンゴ ン(T‐DNAの 宿主 ゲノ ムへの挿入に必要な遺伝子群を活性化 する 物質 、以 下AS)は形質転換効率に影響せず、P.g陀駟細とんf 朋加dP恥の 共 培 養 時 のASの 存 在 が 大き く影 響す るこ とが 示さ れた。 培養 時間 、温 度、AS 濃 度 を そ れ ぞ れ48時 間 、20°C、200斗Mと する と、 分生 子106個あ たり 約80の 形質 転換 株が 得ら れた 。ま た、 分子 生物 学的解析のために望ましいT.DNAがゲ ノム に1ケ所 挿入 された シン グル コピ ー株 の収 率を 上げ るた めに は、 共培養時 のAS濃度を高めることが必要であった。

2.病原性およびグレガチン生産能変異株の選抜

  形 質 転 換 株900株 か ら1株 の 病 原 性 喪 失 株 (AT187) 、2株 の 病 原 性 低 下 株

(AT234,AT302) を 選 抜し た 。AT187とAT302は シ ン グ ルコ ピー 株、AT234は T‐DNAが2箇 所 に 挿 入 さ れて おり 、こ れら3株 はグ レガチ ン生 産能 を有 して い た 。 一 方 、 野 生 株 と 比 べ病 原性 に変 化が なか った108株 から は3株 のグ レガ チ ン非 生産 変異 株を 選抜 した (AT8,AT31,AT43)。AT8とAT43はシングルコピー

(2)

株 、AT31はT‑DNAが2箇 所 に 挿 入 さ れ てい た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 グ レ ガ チ ン の 病原 性へ の関 与は 低い と考 えら れた 。上 記6変 異株 の胞 子発 芽率 、胞 子形 成 量 、コ ロニ ー直 径を 調べ たと ころ 、胞 子発 芽率 、形 成量 は6変 異株 とも 野生 株 と 差が みら れな かっ たが 、コ ロニ ー直 径はAT302のみ 野生 株と 比べ 有意 に小 さかった。

  AT43、AT187、AT302株 のT‑DNA隣 接 ゲ ノ ム 配 列 を 解 読 し た と こ ろ、AT302 の レフ トボ ーダ ー隣 接配 列は 各種 糸状菌 の発 現遺 伝子配列断片と高い相同性を 示 し た 。 他 の 配 列 に は 既 知 配 列 と 有 意 を 相 同 性 は 見 出 さ れ な か っ た 。 3. 病 原 性 低 下 株AT302か ら のtranslationally controlled tumor protein (TCTP)をコードする遺伝子ロののクローニング

  AT302の レ フ ト ボー ダ ー 隣 接 配 列 を プ ロ ー ブ と し たcDNAラ イ ブラ リー のス ク リ ー ニ ン グ か ら 、507bpのORFを含 むク ロー ンを 得た 。推 定ア ミノ 酸配 列は 各 種 生 物 のTCTPと 高 い 相 同 性 を 示 し 、 本 遺 伝 子 をTPG1と 名 づ け た。AT302 レ フ ト ボ ー ダ ー 隣 接 配 列 とcDNAク ロ ーン の 配 列 を 比 較 す る と 、T‑DNAは5番 目 と6番 目の アミ ノ酸 残基 の間 に存在 する イン トロ ンに 挿入 され たと 推定 され た 。 しか し、 ライ トボ ーダ ー隣 接配 列に は残 りの5アミ ノ酸 残基 をコ ード する 領 域は 見出 され なか った 。そ こでTPG1の 全体 像を 明らかにするため、レフトボ ー ダ ー隣 接配 列に プラ イマ ーを 設計 し、TAIL‑PCRによ ルTPG1の5 側 を増 幅し た (約1000bp, 以下LJ配 列) 。そ の結果 、残 りの コード領域が見出され、TPG1 は5個のエクソン(15,112,138,160,82bp)が4個のイントロン(181,87,50,57bp) で 分 割さ れた 遺伝 子で ある こと が明 らか とな った 。な お、LJ配列 の5塩基 目か ら150塩 基目 まで の逆 相補 配列 が、ラ イト ボー ダー 隣接 配列 の1塩 基目 から146 塩 基目 と一 致し 、さ らに 、そ れ以 降の配 列は 全く 別の配列であったことから、

染色体DNAの再配列が起きたことが示唆された。

  サ ザ ン 解 析 に よ りTPG1は シ ン グル コピ ーの 遺伝 子で ある こと が明 らか にな っ た 。RTPCRを 行 っ た と こ ろ 、AT302にお い て7PGJの 転 写 は 認 め ら れ な か っ た 。そ こで 、ロ GJと病原性の関連を調べるため、仰G´の破壊株の作出をアグ ロ バ ク テ リ ウ ム 法 に よ り 試 み た 。し かし 、480株 をPCRによ ルス クリ ーニ ング したが破壊株は得られぬかった。

  シ ョ ウ ジ ョ ウ バ ェ に お い てTCTPの ノッ クダ ウン によ り細 胞数 の減 少や 細胞 の 小 型 化 が 起 こ る こ と 、 ま た 、 出芽 酵母 のTCTP変 異体 はベ ノミ ル感 受性 が高 ま る こと が報 告さ れて いる 。AT302は 野生 株と 比べ て生 育が 有意 に遅 く、 ベノ ミ ル 感 受 性 も 高 か っ た 。 本 研 究 にお いてAT302の 表現 型がT‐DNAの卿G´ への 挿 入 に よ る も の な の か 確 証 が 得 ら れ な か っ た もの の 、TCTP変 異 体とAT302の 特徴はよく一致した。

  シ ョ ウ ジ ョ ウ バ ェ に お い てTCTPは 、 細 胞 の 成長 に 関 与 す る 低 分子 量Gタン パ ク質 のRheb(R謎homologuee11二richedinb而n)に対しグアニンヌクレオチド 交換因子活性をもち、これを正に制御する。イ叩e曙f〃wル腕あ舛f弸のRheb変異体

(3)

は病原カが低下することから、

P

. gregata においてもTCTP のG タンパク質調節

機構が保存されているとすれば、AT302 においてRheb の活性が低く抑えられる

こ と に よ り 病 原 性 の 低 下 が 起 き て い る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

アグロバクテリウム法による

アズキ落葉病菌形質転換系の確立、および      その病原性解析への利用

  本 論 文 は 図27, 表5を 含 み ,8章 か らな る 総 頁 数132の論 文 で あり , 別 に参 考 論 文 1編が添えられている.

  アズキ落葉病はPhialophora gregロtof.sp. adzukicolaにより引き起こされる土壌伝染性 病 害で,北 海道の アズキ生 産にお ける大き な障害のひとっとなっている.アズキ落葉病 菌 の病原性 関連因 子のひと っとし て,本菌 が生産する毒素グレガチンの重要性がこれま で 示唆され てきた .本研究 は,グ レガチン の関与も含め病原性関連因子の機能を明らか に するため に,病 原性低下 株およ び喪失株 を作出するアズキ落葉病菌の形質転換法につ い て検討し ,得ら れた病原 性低下 株および 喪失株の分子生物学的および生理学的解析を 行ったものである,

1. ア ズ キ 落 葉 病 菌 の ア グ ロ バ ク テ リ ウ ム 法 に よ る 形 質 転 換 系 の 確 立   効 率の良 い遺伝子 導入系を 確立す るため,分生胞子に直接遺伝子導入が可能なアグロ バクテリウム法によるマーカー遺伝子(ハイグロマイシン耐性遺伝子)の導入を試みた.

ま ず , 形質 転 換 時の 培 養 条件 の 検 討 を行い ,T‑DNAの 宿主ゲ ノムへの 挿入に 必要な遺 伝 子群を活 性化す るアセトシリンゴンの添加は,Agrobacterium tumefaciensの前培養に お いては形 質転換 効率に影 響せず ,アズキ 落葉病菌とアグロバクテリウム菌の共培養時 に おけるア セトシ リンゴン の存在 が大きく 影響することが示された.培養時間,温度,

ア セトシリ ンゴン 濃度をそ れぞれ48時間,20゜C,200 Lt,Mとすると,分生子106個あた り 約80の 形 質 転 換 株 が 得 ら れ た . ま た ,解 析 の た めに 望 ま しいT‑DNAが ゲノ ム に1 ケ 所挿入さ れたシ ングルコ ピー株 の収率を 上げるためには,共培養時のアセトシリンゴ ン 濃度をさ らに高 めること が必要 であった .以上のような条件を設定することで,アズ キ落葉病菌の効率の良い形質転換系が確立された.

    ‑ 900 ‑

夫 則

延 之

近 幸

藤 秋

(5)

2.病原性およぴグレガチン生産能変異株の選抜

  形質転換株900株から1株の病原性喪失株(AT187),2株の病原性低下株(AT234, AT302)を選 抜 した .AT187とAT302は シング ルコピー 株,AT234はT‑DNAが2箇所 に挿入されており,また,これら3株のグレガチン生産能カは失われていなかった.一 方,野生株と比ベ病原性に変化が認められなかった形質転換株108株からは3株のグレ ガチ ン非生産 変異株が 選抜された(AT8,AT31,AT43). なお,AT8とAT43はシン グル コピー株 ,AT31はT‑DNAが2箇所に挿入されていた.これらの結果から,グレ ガチンの直接的な病原性発現への関与は低いと考えられた.また,上記6変異株の胞子 発芽率,胞子形成量は全変異株とも野生株との問に差は認められず,寒天培地上でのコ ロニー直径はAT302のみ野生株と比べ僅かに小さかったものの,生育に及ばす影響は 大きくはなかった.

  病原性が変異したAT43,AT187,AT302株の挿入されたT‑DNA隣接ゲノム配列解読 の結果,AT302のレフトボーダー隣接配列が各種糸状菌の発現遺伝子配列断片と高い相 同性を示した,一方,AT43およびAT187の配列に相同な既知配列は見出されなかった,

3.病 原性低下 株AT302からのtranslationally controlled tumor protein(TCTP) をコードする遺伝子TP.G1のクローニング

  レフトボーダー隣接配列に各種糸状菌の発現遺伝子配列断片と高い相同性を示した AT302のcDNAライブラリーのスクリーニングから,507bpのオープンリーディングフ レームを含むクローンを得た.推定アミノ酸配列は各種生物のTCTPと高い相同性を示 し, 本遺伝子 をTPGIと名づ けた.TPG1は5個のエクソンが4個のイントロンで分割 されたシングルコピーの遺伝子である.また,AT302においてTPGIの転写は認められ ず,この遺伝子は機能していないことが明らかとなった.

  TPG1と病原性の関連を証明するため,アグロバクテリウム法によりTPG1の破壊株 の作出を試みたが破壊株は得られなかった.ただ,AT302が野生株と比べて生育が有意 に遅く,ベノミル感受性も高いという特徴は,ショウジョウバェにおいてTCTPのノッ クダウンにより細胞数の減少や細胞の小型化が起こること,出芽酵母のTCTP変異体で はベ ノミル感 受性が高 まることなど,既報のTCTP変異体の特徴とよく一致した.

  以上の成果は,アズキ落葉病菌の形質転換体作出法を確立することによって本病原菌 の病原性関連遺伝子群の機能解析を可能にしたものであり,植物病原糸状菌の病原性発 現関連因子の解明に示唆を与えるもので学術上高く評価できる.よって審査員ー同は,

田 中 創一 が博士( 農学)の 学位を受 けるに十 分な資格 を有する ものと認め た.

‑ 901

参照

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