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博士(農学)藤田正平 ’ 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)藤田正平    学位論文題名

アズキ落葉病およびアズキ茎疫病の 抵抗性系統作出に関わる育種学的研究

学位論文内容の要旨

  アズキ落葉病,アズキ茎疫病およびアズキ萎凋病は,北海道のアズキ栽培における深刻 な土壌伝染性病害である。北海道立十勝農業試験場においては,これらの病害に対する抵 抗性育種が行われており,現在,育成品種の落葉病およぴ萎凋病抵抗性の「きたのおと め」,上記3病害すべてに抵抗性を持つ「しゆまりJが普及し,農家圃場で高い防除効果 を示している。しかし,両品種に病原性を持つ落葉病菌船よび茎疫病菌のレースの存在を 示す事例が認められたため,本研究では,落葉病菌のレース分化およぴ茎疫病菌の新レー スの存在にっいて確認を行うとともに,北海道における各レースの地理的分布を調査した。

また,育種的対応として,新レースに抵抗性を持つ新たな遺伝資源を探索し,選出した抵 抗性遺伝資源を交配に利用して抵抗性系統を育成した。研究の概略は以下のとおりである。

1.アズキ落葉病抵抗性系統作出に関わる研究

  1)アズキの連作や短期輪作を行っている圃場で,落葉病抵抗性品種「きたのおとめ」

が本病に激しく罹病した。これらの圃場を含む道内各地域圃場の土壌や罹病株から落葉病 菌を分離し,本品種に接種して病原性を調査した結果,菌株と品種の反応に明らかな特異 性が認められ「きたのおとめ」が抵掘陸を示す菌系をレース1,罹病性を示す菌系をレー ス2として,アズキ落葉病菌のレース分化を初めて確認した。

  2)1997〜1999年に道内各地の圃場士等から落葉病菌を分離してレース判定を行った。

39圃 場(19市 町村う から 分離 した全483菌株は,86.1%がレース1,13.9%がレース2で あった。ただし圃場単位で見ると,39圃場のうち61.5%の圃場からレース2が検出された ことから,レース2は菌密度が低いものの北海道のアズキ栽培地帯全体に広く分布してい ることが判明した。

  3)これまで落葉病抵抗性の交配母本として選出してきた遺伝資源について,その抵抗 性をレース毎に再評価するとともに,新レースに対して強い抵抗性を持つ遺伝資源を探索 した。これまで選出してきた抵抗性遺伝資源は,レース1に対して抵抗性であるが,レー ス2に対して罹病性のものがほとんどであった。236点の国内外のアズキ遺伝資源および 36点のアズキ近縁野生種から,圃場検定,温室での接種険定により;レース1およぴレー

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ス2抵抗陸の遺伝資源としてアズキrAcc259」,ヤブツルアズキ「Acc2515」を選出した。

  4) 「Acc259」および 「Acc2515」につ いて,罹 病性品種 「斑小粒 系‑1」と交 配した Fl,F2世代の 個体にレー ス2菌を接 種し,抵 抗性の分 離比を調査した。同様に「きたの おとめ」,「しゅまり」,「十育123号」のレース1抵抗陸についても遺伝解析を行った。

各組合せ ともFl世代は すべての 個体が発病せず,F2世代での抵抗性と罹病性の個体比が 3:1に適合し たことから ,各レー スに対する抵抗性は1遺伝子座の優性遺伝子の支配が大 きいと推察された。

  5)「しゅまり」を反復親とし,「Acc259」,「Acc2515Jを―一回親として戻し交雑を行 い,落葉 病菌レース2抵抗性を 持つ優良系統の早期育成を行った。「しゅまり」を3回戻 し交配し,その後,くBIF2) B2F2世代で個体選抜を行い,(BIF2) B2F3世代から系統選抜 で世代を進めた。くBIF2) B2F丶4世代で供試した7系統のうち,「9930‑3」,「9930‑5」

(抵抗性母本は「Acc259」)およぴ「9931―55」(交配母本はFAcc2515」)は,幼苗接種 検定によ ルレース1お よぴ2に抵 抗性であ ることが 確認され ,実際のレース2優占圃場で も強い抵抗性を示し,その他の特性も単交配で育成した系統より「しゅまり」に近かった。

2.アズキ茎疫病抵抗性系統作出に関わる研究

  1)1999年に試 験圃の一部 で茎疫病 菌レース1韜よぴ3に 抵抗性の品種「しゅまり」が 本病に激 しく罹病し た。罹病 株から茎疫病菌を分離し,「エリモショウズ」,「能登小 豆」,「寿小豆J,「浦佐(島根)」,「しゅまり」の幼苗に接種してその病原陸を調査 した結果,すべての品種系統に病原性を示しこれまで確認されているレースの反応と異な っ た 。 こ れ ら の 菌 系 を ア ズ キ 茎 疫 病 菌 の 新 レ ー ス , す な わ ち レ ー ス4と し た 。   2)道内各 地の63地点の 圃場土から分離したアズキ茎疫病菌106菌株について,レース 判定の結 果,全体で はレース1が24.5%,レ ース3は49.1% ,レース4が26.4%であり,

レース2は確認されなかった。レース構成に地域間差が認められ,道北および道央部では レース3が約半数を占め,次いでレース4が多く,レース1が最も少なかった。十勝地方で は レ ー ス 1が 最 も 多 く , 次 い で レ ー ス 3, レ ー ス4は1菌 株 の み で あ っ た 。   3)これまで茎疫病抵抗性として選出していた18系統のアズキ遺伝資源について,レー ス1,3およ ぴ4に対する 抵抗性を 検定した 。すべて の系統が レース1およぴ3に抵抗性で あ り , レ ー ス4に は17系 統が 抵 紡 牲を 示 した 。 レ ース4抵 抗 性で あ っ たFAcc787」 , rAcc830̲iは,レー ス3抵抗性を 目的に過去に交配に利用されていたが,これらを抵抗性 起源 に持つ4組 合せのF6世 代以降42系 統につい てレース4抵抗性を 検定し,抵 抗性であ った25系統を選抜した。

3. ア ズ キ 落 葉 病 お よ ぴ ア ズ キ 茎 疫 病 に 対 す る 複 合 抵 抗 性 系 統 作 出 に 関 わる 研 究   本研究で育成,選抜した落葉病菌および茎疫病菌の新レースに抵抗性を持つ系統同士を 交配し,これら2つの新レースに対して複合的に抵抗陸を持つ系統の選抜を試みた。十系′

793号79931―55およぴ十 系793号79930‑3の組 合せの雑 種後代に ついて,F2世代では 茎 疫病菌レ ース4抵抗陸 の選抜を 行い,F3世 代を鹿児 島県で春 季に養成したのち,F4世代 では落葉病菌レース2抵抗性について個体選抜を行った。F5世代では前年選抜個体の種子

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を折半し,茎疫病菌レース4優占圃および落葉病菌レース2優占圃に同時に供試し,両病 害に対する抵抗性検定を行った。この結果,(十系793号/9930‑3) F5系統の45.6%,

(十系793号/9931ー55) F5系統の32.4%は,いずれの圃場でも発病が全く認められず,

落葉病菌レース2抵抗陸と茎疫病菌レース4抵抗性の複合化に成功したと考えられた。

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学位論文審査の要旨 主査   助教授   近藤則夫 副査    教授    内藤 繁男 副査    教授    岩間 和人 副査   助教授   阿部   純

学 位 論 文 題 名

アズキ落葉病およびアズキ茎疫病の 抵抗性系統作出に関わる育種学的研究

  本 論 文 は 図10, 表25を 含 み ,5章 か ら な る 総 頁 数134の 論 文 で あ り , 別 に 参 考論文5編が添えられている,

  ア ズキ落葉 病,茎疫 病および萎 凋病は, 北海道の アズキ栽 培における深刻な土壌伝 染性病害である.これらの病害に対して落葉病および萎凋病抵抗性の「きたのおとめ」,

3病 害すべて に抵抗性 の「しゅま り」が育成され高い防除効果を示している,しかし,

両 品 種 に病 原 性を 持 っ 落葉 病 菌お よ ぴ 茎疫病 菌のレー スの存在を 示唆する 事例が認 め られた. 本研究で は,これら の新たな レースに 対して複 合抵抗性を有する品種系統 の作出のため以下のことが検討された.

  1) ア ズキ の連作お よび短期 輪作圃で 「きたの おとめ」 が落葉病に 激しく罹 病する 事 例が認め られたこ とから,複 数の圃場 土壌,罹 病株から 本菌を分離して病原性を検 討 し た .そ の結果 ,本品種 が抵抗性 を示す菌 系をレー ス1,罹病性 を示す菌 系をレー ス2と決定し,アズキ落葉病菌のレース分化を確認した・

  2) 道内各地39のアズキ 栽培圃場か ら分離し た落葉病 菌483菌株にっいてレース判定 を 行 っ た. 総菌株 の86%がレ ース1であ ったが, 圃場単位 では39圃場の うち62%か ら レ ー ス2が検 出 さ れた . こ のこ と から , レース2は菌密度 は低いもの の北海道 のアズ キ栽培地帯全体に広く分布していることが判明した.

  3) こ れま で 落葉 病 抵 抗性 母 本と し て 選出して きた遺伝 資源は,レ ース1に抵 抗性 で あ る がレ ー ス2には 罹 病 性の も のが ほ とんど であった ,236点の国内 外のアズ キ遺 伝 資 源 およ び36点 の アズ キ 近縁 野 生 種か ら,レ ース1およ び2に抵抗性 の母本と して アズキ「Acc259̲1,ヤブツルアズキ「Acc2515」を見出した.

    P

  4) こ れら に つい て , 罹病 性 品種 「 斑 小粒 系‑1」 と 交配 し たFl,F2世代 の個体に レース2菌を接種し,抵抗性と罹病性の分離比を調査した. 同様に「きたのおとめ」,

「 し ゆ まり 」 ,「 十 育123号 」 のレ ー ス1抵抗性に ついても 遺伝解析を 行った. 各組 合 せ と もF1世代 は す べて の 個体 が 発 病せ ず,F2世 代での抵 抗性と罹病 性の個体 比が

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3:1に 適合 した. 各レ ース に対 する 抵抗 性は1遺伝子座の優性遺伝子の支配によると 推定した.

  5) 「し ゆまりJを反復親;「Acc259」および「Acc2515」をー回親として戻し交雑

』 を行 い, 落葉 病菌レース2抵抗性を持つ優良系統の早期育成を図った.戻し交雑後 自 殖 を 重 ね て [ (BIF2) B2F4]得 ら れ た7系 統 の うち3系 統が ,レ ース1およ び2に 抵 抗 性 で あ る こ と が 確 認 さ れ , レ ー ス2優 占 圃 場 で も 強 い 抵 抗 性 を 示 し た ・   6) 一部 の試験 圃において茎疫病抵抗性品種「しゅまり」に見られた発病株から分 離 し た 茎 疫 病 菌 は , レー ス1,2,3に 抵抗 性の 「浦佐 (島 根) 」ほ か4判別 品種系 統すべてに病原性を示し,これまで確認されているレースの反応と異なった.これら の菌系をアズキ茎疫病菌の新レース,すなわちレース4とした.

  7)道内各地63地点の圃場土から茎疫病菌106菌株を分離し,レース検定を行った.

そ の結 果, レー ス1が24.5% ,レ ース3は49.1%,レース4が26.4%であり,レース 2は検 出さ れなか った .レ ース 構成 には 地域 間差があり,道北,道央部ではレース3 が 約半 数を 占め ,次 いで レー ス4が 多く ,レ ース1が最も少なかった.十勝地方では レ ー ス1が 最 も 多 く , 次 い で レ ー ス3, レ ー ス4は1菌 株 の み で あ っ た .   8) 茎疫 病抵抗 性母本としてこれまで選出してきた遺伝資源18系統について,レー ス1,3お よ び4に 対 する 抵 抗 性 を 検 討 し た . す べ て の系 統が レー ス1,3に 抵抗性 で あり ,17系統 がレース4にも抵抗性であった.この中から「Acc787」,「Acc830」 を抵抗性起源に持つF6世代以降42系統から,レース4抵抗性である25系統を選抜した.

  9)上記のアズキ落葉病およぴ茎疫病それぞれの新レース抵抗性系統同士を交配し,

両 病害 の新 レー スに対して複合抵抗性を合わせ持つ系統の選抜を試みた.十系793号 /9931‑55お よび 十系793号/9930←3の組合せの雑種後代について,F2世代で茎疫病レ ー ス4抵 抗 性 の 選 抜 ,F4世代 で落 葉病 レー ス2抵 抗性 につ いて 選抜 した .F5世代で 前 年選 抜個 体の 種子 を折 半し ,茎 疫病 レース4優占圃および落葉病レース2優占圃に 同時に供試した結果,(十系793号/9930−3) F5系統の45.6%,(十系793号/9931ー55) F5系統の32.4%は,いずれの圃場でも発病が全く認められず,落葉病レース2抵抗性 と茎疫病レース4抵抗性の複合化に成功した.

  以上の成果は,新たに出現した病原性が異なる病原菌系統に対して対応可能なアズ キ複合病害抵抗性品種の育成態勢を構築したものであり,学術的・応用的に高く評価 できる.よって審査員一同は,藤田正平が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格 を有するものと認めた.

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参照

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