相談支援の基本的視点
令和2年9月25日 相談支援事業所 あるふぁ 精神保健福祉士 生田 克実
前日までの振り返り
相談支援の目的について 相談支援の目的
・権利擁護
・人権
・支援者に望む事
障害を持つ方、それぞれがその人らしく暮らすことが出来る
相談支援の基本的視点について
相談支援の基本的視点とは 視点とは
・視線の注がれるところ
・物事を見たり考えたりする立場。観点。
「視点を変えて考える」「相手の視点に立つ」
相談支援の立場としてどのように考え、支援を行っていくか
goo辞典より
6
視点の違いとは
本日の講義について
相談支援の目的 (何故支援を行うのか)
相談支援の基本的視点 (どのような考えを基に
支援を行うのか)
相談支援の技術 (具体的にどのように支援を行うのか )
行ったり来たりします
行ったり来たりします
相談支援専門員 と
ソーシャルワーカー
相談支援専門員はソーシャルワーカーである
「相談支援の質の向上に向けた検討会」における議論で、
改めて相談支援専門員がソーシャルワークの担い手として 期待されていると示された。
相談支援専門員は社会福祉援助技術を用いて、利用者の 社会生活を豊かなものとする責務を負っている。
平成30年度 相談支援従事者指導者養成研修会 資料公開 2018年度 相談支援専門員指導者養成研修
【講義1】障害者の地域支援と相談支援従事者(サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者)の役割に関する講義
②相談支援(障害児者支援)の基本的視点 P3 より抜粋
相談支援専門員はソーシャルワーカーである
特に、相談支援専門員の役割については、
「障害児者の自立の促進と障害者総合支援法の理念である
共生社会の実現に向けた支援を実施することが望まれている。
そのためには、ソーシャルワークの担い手としてそのスキル・
知識を高め、インフォーマルサービスを含めた社会資源の改善 及び開発、地域のつながりや支援者・住民等との関係構築、
生きがいや希望を見出す等の支援を行うこと」が求められる
平成30年度 相談支援従事者指導者養成研修会 資料公開 2018年度 相談支援専門員指導者養成研修
【講義1】障害者の地域支援と相談支援従事者(サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者)の役割に関する講義
②相談支援(障害児者支援)の基本的視点 P3 より抜粋
相談支援専門員はソーシャルワーカーである
「将来的には、相談支援専門員は障害者福祉に関する 専門的知見や援助技術の習得のみならず、社会経済 や雇用情勢など幅広い見識や判断能力を有する地域を 基盤としたソーシャルワーカーとして活躍すること」が
期待されるとされた。
厚生労働省「相談支援の質の向上に向けた検討会」(第6回~第9回)
における議論の取りまとめ 平成31 年4月 10 日 より抜粋
ソーシャルワークのグローバル定義
ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および 人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職 であり学問である。
社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、
ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、社会科 学、人文学および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャル ワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、
人々やさまざまな構造に働きかける。この定義は、各国および世 界の各地域で展開してもよい。
IFSW;2000.7
グローバル定義から考えるソーシャルワーカー
・実践に基づいた専門職であり学問
→常に実践を振り返り学ぶ必要がある。
・社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャル ワークの中核をなす
→人々それぞれが個人の権利を持ち、社会的に公平であり、様々な考えが 尊重され、それらが集団においても保障される社会の構築を目指す
・生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に 働きかける
→すべての人が主体的な自己実現を達成できる環境の構築のために、あら ゆる人々や構造に働きかける
相談支援専門員 及び
サービス管理責任者として必要な事
理論及び実践から、常に振り返り学んでいく姿勢
学び気付いた事柄(考え・視点)から
支援を行っていく
私が相談支援専門員として大切にしている事
【本人】の【本人】による【本人】のための相談支援 児童期では
【本人及び家族】の【本人及び家族】による
【本人及び家族】の為の相談支援
本人(本人及び家族)中心の相談支援
相談支援の基本的視点 Aさんの事例から
基本的視点を考える
A さんについて
・20代 男性 統合失調症
・時々友達と体育館で遊びながら、両親と自宅で生活行われていた
・C病院の精神科デイケア通所開始したが、3か月で通所中断
・3か月後、本人より今後いずれは一人暮らしをしたい事、
その為生活の練習を行いたい事母に話される。
・母がC病院の精神保健福祉士(PSW)に相談。
・C病院PSWより、GHの利用ができないか、相談を受け支援開始
皆様ならどんな考え(意図)を持ち、
面接をしますか?
初回面接
本人を知り、本人の思いを確認したい
本人(利用者)を理解しようとする視点
その為に考えなくてはいけない事、必要になる事は・・
皆様ならどんな考え(意図)を持ち、
面接をしますか?
・信頼関係(ラポール)の形成
面接技術 → 信頼関係の形成にはかかせない
◎バイステックの 7 原則
個別化の原則 意図的な感情表現の原則 統制された情緒関与の原則 受容の原則 非審判的態度の原則 自己決定の原則 秘密保持の原則
正直しんどい・・・でも両親がいなく なったら生活できなくなるし、生活の
練習したい・・・
すごいなぁ~
でも・・・
大丈夫かな・・?
本人が「これならできるかな?」
と感じた事から行っていく事に
本人主体の視点(本人中心)
社会通念や既存の制度から障害を捉えるのではなく、常に本人に 寄り添って「想い」を捉え、主体性を引き出す。
規範的 制度的 ニーズ
想い wish
本人の想いから
社会通念から
なぜ、本人主体の視点なのか
「利用者の人生」であり、支援者はあくまで「支援をする人」
「課題の解決」ではなく、本人ができること、したいこと、好きな ことに焦点を当てた支援 ⇒ 本人が主体的に課題を克服
・小さな成功の積み重ね ・失敗を経験することでの学び
自己効力感の向上
まずは少しずつ GH で過ごす事から始めていきました
30 分過ごすことから開始 週 2 回過ごす体験を行う
2週間~1か月に一度、本人・母・支援者が集まり、本人の状況を 確認しながら次にどんな事をするか確認して実施していきました
次は 1 時間過ごす事、その次は昼食を部屋で食べ、 3 時間過
ごす事等
3 か月ほど経つ頃には、半日過ごすことが出来るようにな りました
宿泊体験を提案。本人すぐには決断できず、 1 月ほど半 日以上過ごす体験を繰り返しました。そして宿泊を選ば れ、やや睡眠浅かったものの寝て朝帰る事ができました。
宿泊が出来るようになった後、別の GH にも空きが出たの
で、違う GH にも宿泊し、どちらが住み心地が良いか、本人
に確認していただき、選んでもらいました
自己決定の積み重ね
「本人ができるとかんじること」を複数の選択肢から決定
⇒ 本人が主体的に決定を行う事を支援する
・よかったこと、しんどかったこと、振り返りながら目標の確認
意思決定支援
支援で何を積み重ねたのか
自己決定の積み重ね
・定期的な話し合い ⇒ 信頼関係の形成
今の家庭の状況や今までの暮らしの事、趣味等、様々な 状況にについて話し合う。
⇒ 本人理解の深まり ⇒ 生活者の視点
グループホームの体験 日常的な自己決定の
積み重ねの場
生活者の視点
・「生活の主体者」として捉える視点
その人だけでなく、暮らしている「環境」にも着目して考える 環境にも介入していく視点
⇒ どこに本人の生活のしづらさがあるのだろうか・・・
・家族支援の視点も必要
生活者の視点( QOL の重視 )
・医学モデルは生活モデルの一部である
・人生の質を高めるための支援に積極的であること
本人
要求水準向上
QOL 向上
本人理解・自己決定とかかわりについて
・本人理解が深まっていくには・・
かかわりが必要!
本人、家族、支援者が言っている事・感じている事 事実と想定されている事を分けて考える視点
ライフステージから考える視点
・本人(利用者)に「寄り添い」ながら一緒に考えていく
⇒ 自己決定、自己実現へ
相談支援専門員(ソーシャルワーカー)として 大切にしている事
私自身が大切にしていること かかわること ともに考える事
ソーシャルワークの基盤に
「かかわり」が存在している
支援のきっかけは支援者の主観的な思い(疑問)から!
B型事業所に行きたいんです!
「B型に行きたいんですね!
じゃあ計画を作りましょう!
相談支援専門員は 私でいいですね」
「B型事業所に行きたいんで すね。少しお話を聞かせても らえますか?」
なぜこの人はB型に行きたいんだろう❓ 何か困った顔をしている気がするけどど うしたんだろう
少しいろいろ聞いてみたいなぁ~
あなたが
相談支援支援専門員 だったら、どうする?
悩みや疑問(もやっと する気持ち)を大切に!
自立・自己決定の視点(意思決定支援 )
・どんな重い障害や困難であっても、意思決定を行う能力 があると捉え、環境を整え、自己決定に導く。
本人 相談支援
専門員
意思疎通
↓
意思形成
↓
意思表明
↓
意思実現 重症心身障害者で反応がない
自傷他害を繰り返す
精神医療から抜け出せない アディクションから収まらない 犯罪を繰り返す
何度も約束を反故にする
自己決定
権利侵害
半年以上たち、 1 泊の宿泊体験積み重ねた結果、 2 泊 3 日の体 験が出来るようになりました。日中時間を本人が持てあますこと が多くなったため、日中の活動をどうしていくか一緒に話し合い 行いました
日中の活動として、以前通所されていた精神科デイケア
と生活介護を選択され、日中の活動を組み合わせた形
で体験を重ねました。
エンパワメントの視点
・本人自らが主体的に人生を考え歩んでいくプロセスに 支援者として寄り添っていく
・実際に日常的に失敗を経験する、小さな成功を積み重ねる 環境
・自己効力感の向上
本来持っていた力(パワー)が解放される
= エンパワメント
・パワーの相互作用が生じ、相談支援者も自己効力感を高めている
エンパワメントの視点
(当事者による社会変革)相談支援専 門員
本人
対人
対社会
本人が周囲の人々や社会に働きかけ、社会を変えることで 課題を解決していくために、環境に働きかける。
症状の心配もある事話されることも多く、訪問看護の導 入を提案していきました
実際入居しようかどうか、本人は最後長らく悩まれていました・・・
事例を振り返ってみて・・
・本人自身が持つ力の再確認
主体的な自己決定の積み重ね
⇒ エンパワメント に至るプロセス
・本人(利用者)の力の解放
⇒ 支援者の成長にもつながる
相談支援を行うためにはソーシャルワーカー(相談支援)
の目的と視点がかかせない!
「意思決定支援ガイドライン」における意思決定支援
意思決定支援とは、自 ら意思を 決定 すること に困難を抱える障害者が、日常生活や 社会生活に関して自 らの 意思が反映された生活を送ることができるように、 可能な限 り本人が自ら意思決定できるよう支援し、 本人の意思の確認 や意思及び選好を推定 し 、支援を尽くしても本人の意思及び選好の推定が困難な場合には、 最後の手段とし て本人の最善の利益を検討する ために事業者の職員 が行う支援の行為 及び仕組み をいう。
要約すると・・・
①可能な限り、本人が自ら意思決定できるよう支援する
②本人の意思の確認や選好を推定する
③最後の手段として、本人の最善の利益を検討するために事業所 の職員が行う 「障害福祉サービスなどの提供に係る意思決定支援ガイドライン」より
意思決定支援における支援者の役割
① 局所的な視点
・生活や日中活動における個々の意思決定場面に対応
・担い手は、サービス管理責任者や支援員などが想定される
② 過程的な視点
・その人の生涯もしくは、ライフステージを通した視点で意思決定支援を考え、
対応していく
・担い手は、相談支援専門員が想定される。
○局所的な積み重ねが過程になる
・1つ1つの場面における意思決定支援の集積が、本人の未来の意思決定を創る
・本人と支援者の協働作業
・本人と支援者の孤立を防止する視点。
自立の反対語は?
依存?なの
・私たちの暮らしに「依存」はないのか?
・依存症者を取り巻く環境は?
・児童の発達段階を考えてみよう
自立とは依存先の分散
常にソーシャルワーク(相談支援)の目的や視点を意識し 技術を学んで向上させていくためには
・日々の実践を振り返ること ⇒ 実践に基づいた専門職
・
相談、視点の確認が出来る他のソーシャルワーカーの存在(上司、先輩、後輩、他の相談支援事業所の方々 等)
・研修への参加
・スーパービジョン
スーパービジョン( SV) とは
・スーパービジョン:スーパーバイジーが利用者(クライエント)に どのようなかかわりをしているのか。そこで、スーパーバイジー が何を考え、何を感じ、何をしているのかをスーパーバイザーが くみ取り、スーパーバイジーの学びをより深めていく作業。事例 はそのための素材として使用される。時間を掛けながら人材
育成をするのに適してる。特にグループスーパービジョンはこの 方向性をかなり意識している。
・事例検討:対象事例の支援方法を検討する。より良い支援方法 についてグループ討議を行うことも多い。支援方法などの実践 知を養うのに適している。
「チームアプローチ と連携について」
連携(チームアプローチ)の重要性の5つの認識
連携はニーズの充足を第一義としながらも、支援者や事業所の質の向上や地域のネットワーク力を含めた 地域支援力の底上げにつながる。
ニーズの多元的な全体像の認識、単一のレベルから生活レベル、常に変化するニーズ、ライフサイクル、総 合的なニーズなど多様なニーズに応える。
利用者の(相談)支援や援助を実践していくプロセスの中で、単独の機関や組織、職種などで支えきれない 限界を認識。
協働型サービス提供や他の方法、専門機関との連携等による目標達成可能性の認識。
目標を達成するためには、相互の協力要請や相互の補完により支援や援助をすること。
多元性
限界性
可能性
補完性
付加性
平成30年度 相談支援従事者指導者養成研修会 資料公開 ① 相談支援におけるケアマネジメント技法とそのプロセス P45より抜粋
本人
相談支援 専門員 訪問看護
生活介護 精神科
デイケア
家族
病院
GH(共同 生活援助)
例えば A さんの支援チームは・・・
友人
チームアプローチの留意点
☆「連携」をすることが目的ではなく、連携をすることによりチームで支援していくことが重要
☆「専門性とチーム力」を高める
・連携することによりグループを作るのではなく本人を支援するチーム作ることが必要
・チームとはある特定の目的のために多様な人材が集まり協働を通じて相乗効果を 生み出す少人数の集合体
☆チーム(アプローチ)に必要な三つの条件
①共通の目的や目標があること
②ルールや決まり事があること
③目的や目標を成し遂げられる人材が揃っていること
☆相談支援専門員は、上下関係のないチームアプローチの舵取り役
平成30年度 相談支援従事者指導者養成研修会 資料公開 ① 相談支援におけるケアマネジメント技法とそのプロセス P52より抜粋
何のために支援チームを構築し、チーム でかかわり、連携を行っていくのか
当事者本人の為
本人の思い描く生活の実現における
本人中心の支援を行っていくため
私がチームアプローチで大切にしていること
・支援対象者がどんな方か、その支援の目標やポイント
(支援内容)の共有。
・当事者本人だけでなく、かかわる支援者の状況や職種、
仕事内容を理解しようとする姿勢
・チームで意見を出し合い話しやすい雰囲気作り
支援者同士責めない 言い方を気を付ける(工夫する)
当事者本人を含めた、支援者みんなで一緒に考えよう!
参考文献
・令和元年度 相談支援従事者指導者養成研修会 資料
厚生労働省 国立障害者リハビリテーションセンター
・「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」