博 士 ( 獣 医 学 ) 石 森 久 雄
学 位 論 文 題 名
エ チ レ ン グ リ コ ー ル と ジ メ チ ル ス ル フ ォ キ シ ド を 用 い た マ ウ ス お よ び ウ シ 胚 の ガ ラ ス 化 低 温 保 存
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
胚の凍結保存は,ウシ胚移植において重要な技術のーっである。近年,新しい胚の低温保存法 としてガラス化法が開発された。ガラス化による低温保存は冷却に必要な時間が短く,高価な凍 結器を必要としないという利点を有し,胚の低温保存技術の省力化を大きく促す。本論文では,
ガラス化法を改良し,胚の低温保存をさらに簡便で,実用的な技術にすることを目的として以下 の様に実験を進めた。
2章では,マウス の桑実胚と胚盤胞の両発育ステージの胚に有効なガラス化溶液を検索したと ころ ,工 チレ ング リコ ―ル(EG)とジ メ チル スル フォ キシ ド(DMSO)の混 合溶 液が 有効であつ た。
3章 で6ま ,25.0%EGと25.0%DMSOの 混 合 溶 液(VSED)を 用 い マ ウ ス 胚 盤胞 をガ ラ ス化 する 場合 ,融 解後 の胚 の生 存性 に影 響 する 要因 にっ いて 検討 した 。そ の結 果,50%VSEDと VSEDへ の 浸 漬 時 間 が , 融 解 後 の 胚 の 生 存 性 に 大 き く 影 響 し た が ,50%VSEDとVSEDに 浸 漬するときの温度,冷却速度および希釈溶液中 のsu crose濃度と希釈時間の影響は少ないこと が明らかとなった。ガラス化胚盤胞の移植後の受胎率は,新鮮胚のそれと比較して有意な差は認 められず,正常な産子が得れた。
4章 で は ,VSEDを用 いウ シ 胚を ガラ ス化 する 場合 の50%VSEDへ の平 衝化 時間 の影 響 およ び移 植後 の生 存性 にっ いて 検討 した 。 冷却 前の50%VSEDへの 最適 な平 衡化 時間 はl〜2分で あっ た。 移植 後の 受胎 率は ,桑実胚と初期胚盤 胞で52.9(9/17),胚盤胞で40.0%(4/10) と従 来の 緩慢 凍結 法に 匹敵 するものであり,正 常な産子が得られ,VSEDはウシ胚のガラス化 にも有効であヮた。
5章では,ガラス 化胚を保存用ストローから取り出すことなく直接移植するために,融解後,
直ちにガラス化溶液と希釈溶液をストロー内で混和する方法を考案した。マウス胚盤胞を用いた 2っ の 予 備 実 験 で ,‑ 20〜‑ 25℃ でのVSEDへの 最適 浸漬 時間 は2〜5分 であ るこ とお よ び融
解後の0.5M sucrose PBS中での希釈時間は30分以内が望ましいこ とが明らかとなった。この 方法 によ ルガ ラス 化 したウシ胚を融 解後レシピェントに直接移植した。希釈溶液に0.5Msu− croseを 含 むPBSを 用 い た 場 合 の 受 胎 率 は8.3%(1/12)お よ びsucroseを 含ま ないPBSを 用いた場合は30.8%(4 /13)であり,ガラス化ウシ胚の直接移植 による受胎が認められた。
本論文に示された胚のガラス化法およびガラス胚の直接移植法は,胚の低温保存技術の省力化 を促進し,畜産および発生工学の発展 に寄与すると考えられる。
学 位 論 文 審 査の 要旨
胚の凍結保存は,ウシ胚移植において重要な技術のーっである。近年,新しい胚の低温保存法 としてガラス化法が開発された;ガラス化による低温保存は冷却に必要な時間が短く,高価な凍 結器を必要としないという利点を有し,胚の低温保存技術の省力化を大きく促す。本論文では,
ガラス化法を改良し,胚の低温保存をさらに簡便で,実用的な技術にすることを目的として以下 の様に実験を進めた。
2章では,マウスの桑実 胚と胚盤胞の両発育ステージの胚に有効なガラス化溶液を検索したと こ ろ , エ チ レ ン グ リ コ ー ル(EG)と ジ メ チ ル スル フォ キシ ド(DMSO)の混 合溶 液が 有効 であ ることを示した。
3章 で は ,25%EGと25%DMSOの 混 合 溶 液(VSED)を 用 い マ ウ ス 胚 盤 胞 を ガ ラ ス 化 す る 場合 ,融 解後 の胚 の生 存性 に影 響す る要 因に っい て 検討 した 。そ の結 果,50%VSEDとVSED へ の 浸 漬 時 間 が , 融 解 後 の 胚 の 生 存 性 に 大 きく 影響 した が,50%VSEDとVSEDに 浸漬 する ときの温度,冷却速度および希釈溶液中のsucrose濃度と希釈時間の影響は少ない ことが明ら かとなった。ガラス化胚盤胞の移植後の受胎率は,新鮮胚のそれと比較して有意な差は認められ ず,正常な産子が得られた。
4章 で は ,VSEDを 用い てウ シ胚 をガ ラ ス化 する 場合 の50%VSEDへ の平 衡化 時間 の影 響お よび 移植 後の 生存 率性 にっ いて 検討 した 。冷 却前 の50%VSEDへの 最適 な平 衝化 時間はl〜2 ―267―
司
誠 之
幸
弘
昌 芳
川 村
藤 橋
金 杉
斉 高
授 授
授 授
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教 教
教 助
査 査
査 査
主 副
副 副
分であっ た。移植後の受胎率は,桑実胚と初期胚盤胞で53%(9/17),胚盤胞で40%(4/10) と従来の 緩慢凍結法に匹敵するものであり,正常ナょ産子が得ら れ,VSEDはウシ胚のガラス化 にも有効 であった。
5章では,ガラス化胚を保存用スト ローから取り出すことなく直接移植するために,融解後,
直ちにガ ラス化溶液と希釈溶液をストロー内で混和する方法を考案した。マウス胚盤胞を用いた 2っ の 予 備 実 験 で , −20〜−25℃ でのVSEDへの 最適 浸漬 時間 は2〜5分で ある こと およ び融 解後の0.5M sucrose PBS中での希釈 時間は30分以内が望ましいことが明らかとナょった。この 方法によ ルガラス化したウシ胚を融解後レシピエントに直接移植 した。希釈溶液に0.5M su‑
croseを 含 むPBSを 用 い た 場 合 の 受 胎 率 は8%(1/12)お よ びsucroseを 含 ま な いPBSを 用 いた た場 合は31%(4/13)であり ,ガラス化ウシ胚の直接移植による受胎が認められた。
本論文 に示された胚のガラス化法およびガラス化胚の直接移植法は,胚の低温保存技術の省力 化を促進 し,畜産および発生工学の発展に寄与すると考えられる。よって審査員一同は,石森久 雄 氏 が 博 士 ( 獣 医 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。