博士(獣医学)村上真津香
学 位 論 文 題 名
炎症性腸疾患における腸管神経の機能変化に対する グ1 フア細胞の関与
学位論文内容の要旨
炎 症性 腸 疾 患(IBD)の 病態の 一因とし て、炎症 刺激によ る腸管神経 系の機能 変 化が挙 げられる 。IBDでは、 組織中で のbradykinin (BK)の産生 増加に加え 、血清中 のlipopolysaccharide(LPS)及ぴ炎症性サイトカインが増加することが報告されている。
本研究 では、新 生ラット小腸の筋眉間神経叢より得た初代培養を用いて、BKの腸管神 経系へ の作用に ついて検 討した。 更に、IBD患 者血清中の 増加が報 告されるLPS及び 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン が 腸 管 神 経 系 に 与 え る 影 響 に つ い て 調 べ た 。 BKは神経細胞、グリア細胞共に濃度依存性に細胞内Ca2゛濃度([Ca2゛]i)増加を引 き起こ した。こ れらのBK反 応はB2受容 体拮抗薬 により消失 したが、B1受容体拮抗薬 により 変化しな かった。 神経細胞 のBK反応は 非選択的COX抑制薬であるindomethacin 或いはEPi受容体拮 抗薬によ り抑制さ れ、外因 性PGE2により増強された。BKは濃度依 存性に 筋眉間神 経叢の初 代培養か らPGE2を放出 させた。BKは 神経細胞 に持続的な脱 分 極 を 引 き 起 こ し 、 こ の 作 用 もindomethacinに よ り 抑 制 さ れ た 。LPS或 い は interleukin‑lp(IL‑lp)処置により、神経細胞とグリア細胞におけるBKによる[Ca2゛]i 増加反 応が増大 し、この 作用はIL‑1受 容体拮抗 薬により抑制された。LPSはグリア細 胞からIL‑ipを放出させた。IL‑lp処置により、両細胞のBKによる[Ca2゛]i増加反応はBl 受容体 拮抗薬に よって有 意に抑制 された。IL‑ip処置はグリア細胞におけるBl受容体 発現を 増加させ た。IL‑ipは初 代培養か らのBK及びB1受容体作動薬によるPGE2放出量 を増加 させ、こ れらの作 用は非選 択的PLA2抑制 薬、indomethacin或いは選択的COX‑2 抑制薬 により減 弱した。 これらの 抑制薬は 、IL‑ipにより増強された神経細胞のBK反 応 も 抑 制 し た 。 IL‑lpは グ リ ア 細 胞 に お け る COX‑2発 現 を 増 強 し た 。 以上の 結果より 、ラット 筋層間神 経叢にお いてBKはB2受容 体の活性 化を介して 神経細胞を脱分極させ、[Ca2゛]i増加を引き起こすこと、同時に、BKは腸管グリアのB2 受容体 を活性化 してPGE2を放 出させ、 このPGE2が神 経細胞にお けるBK反応 を増強す ること が明らか となった。更に、LPSは腸管グリア細胞からのIL‑ip放出を介して腸管 グリア におけるBl受容体及 びCOX‑2の発現 を増大さ せた結果、腸管グリアからのPGE2 産生を 増大させ ることにより神経細胞を活性化することが示された。これらのことか ら、IBD病態には腸管神経系における神経 ̄腸管グリア相互作用の変化が関与している 可能性が示された。
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 伊 藤 茂 男 副 査 教 授 昆 泰 寛 副 査 教 授 木 村 和 弘 副 査 准 教 授 太 田 利 男
学 位 論 文 題 名
炎症性腸疾患における腸管神経の機能変化に対する グ1 フア細胞の関与
炎 症 性腸 疾 患 では 、 組 織中 のbradykinin (BK)や 血 清 中のlipopolysaccharide
(LPS)及 び 炎 症 性サ イ ト カイ ン が 増加 す る 。本 研 究 では 、 新 生 ラッ ト 小 腸の 筋 眉 間 神 経 叢 よ り得 た 腸 管神 経 と グリ ア 細 胞の 初 代 培養 を 用 いて 、 ま ず 初め にBKの 腸 管 神 経叢 細 胞 に対 す る 作用 、 次 いでLPS及 び 炎 症 性サ イ ト カイ ン処 置による 腸管神 経叢細胞のBK反応に対する影響を調べ、以下の成績を得た。
BKは 筋 眉 間神 経 叢 の培 養 細 胞で あ る 神経 細 胞 とグ リ ア 細 胞に お い て濃 度 依 存 性に 細胞内Ca゛ 濃度( [Ca2゛ ]i)を増加 させた。 両細胞 のBK反応はプラジキニンBl 受 容 体 拮 抗 薬で は 影 響受 け な かっ た が 、B2受 容体 請 抗 薬に よ り 消 失し た 。 神経 細 胞 のBKに よ る【Ca2゛1i増加 反 応 は非 選択的 シクロオ キシゲ ナーゼ(COX) 阻害薬で あ るindo颶ethacin或い は プ ロス タ グラ ンジンEPl受容 体拮抗薬 により抑 制きれ た。
BKは濃度依存性に筋層間神経叢の培養細胞からprostagrandinE2(PGE2)を放出さ・せた。
グリ ア細胞の 密度が 低い培養 細胞で はBKによるP(弛2放出と神経細胞の℃a2゛]i増加 反 応 は 大 き く抑 制 き れた 。BKは 神 経 細胞 に 持 続的 橙 脱 分極 を 引 き 起こ し 、 この 作 用もind。methacinにより抑制された。
筋眉 間神経 叢の培養 細胞をLPS或い はintcrleukin‐lp(IL―lp)で処置すると、
神経 細胞とグ リア細胞のBKによる【Ca2゛]i増加反応は、無処置培養細胞よ,りも増大 し 、IL.1受 容 体 拮抗 薬 とBl受 容 体拮 抗 薬 はこ の 増 加し た 反 応 を抑 制 し た。LPSは グ リ ア細 胞 か らIL_lpを 放 出さ せ 、ILーlpはグリ ア細胞 のBl受容体 発現とCOX−2発 現 を 増 加 さ せた 。 こ れら の 発 現蛋 白 質 は機 能 的 であ り 、ILーlpを処 置 し た培 養 細 胞 で はBl受 容 体 作 動 薬 はPGE2放 出 を 起 こ し 、 無 処 置 の 培 養 細 胞 と 比 較す る とBK に よ るPGEユ 放出反応 が増加 した。非 選択的 永スホリ パーゼA2阻害薬、iadometbacin 及 び 選 択 的COX一2阻 害 薬 は 、IL_lp処 置 に よ り 増 加 し た グ リ ア 細 胞のBKによ る PGE2放 出 反 応 を 消失 さ せ た。 ま た 、こ れ ら の阻 害 薬 はIL‐lp処 置 に より 増 加 した 神経細胞のBKによる【Ca2十]i増加反応も抑制した。
以 上 の よ う に 申 請 者 は 、 ラ ッ ト 筋 眉 間 神 経 叢 に お い てBKはB2受容 体 の 活性 化を 介して神 経細胞 を脱分極 させ、 【Ca2゛ ]i増 加を引 き起こす こと、同時に、BKは 腸 管 グ リ ア のB2受 容 体 を 活 性 化 し てPGE2を放 出 き せ、 こ のPGE2が 神経 細 胞 のEPl 受 容 体 に 作 用 し 、 神 経 細 胞 のBK反 応 を増 強 す るこ と を 明ら か に し た。 更 に 、LPS は 腸 管 グ リ ア 細 胞 か らIL−lp放 出 を 弓1き 起 こ し 、 グ リ ア 細 胞 のBl受 容 体 及 ぴ COX一2の 発現 を 増 加さ せ 、 腸管 グ リア からのP(彊2産生 をきら に増加せ ること によ
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り神経細胞を活性化することを示した。
これらの発見は、炎症性腸疾患の病態には腸管神経叢における神経細胞と腸 管グリアの相互作用が関与していることを示したものであり、炎症性腸疾患の病 態研究の発展に大きく貢献した。よって、審査員一同は、上記博士論文提出者村 上真津香氏の博士論文は、北海道大学大学院獣医学研究科規程第6条の規程によ る本研究科の行う博士論文の審査などに合格と認めた。
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