博士(獣医学)大塚弥生 学位論文題名
Babesz'a gibs07zi 感染症における 赤 血 球 酸 化 障 害 機 序 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
8. gibsoni感染症は溶血性貧血を主徴とする疾患であり、重篤な場合は感染動物を 死に 至ら しめ るほ どの 重度 の貧 血が 起こ る。 しか し貧血の重篤度は、多くの場合、
感染 動物 血中 の原 虫寄 生赤 血球 数と は相 関せ ず、 その発生機序についてはほとんど 解明されていない。本研究では、B. gibsoni感染症にみられる赤血球酸化障害の現象 に着 目し 、そ の発 生機 序を 検討 する こと によ り、 本症の貧血発症機序の解明を試み た。
第1章では、赤血球を酸化する可能性をもつ活性酸素種(Reactive oxygen species、 ROS)と し て 、 様 々 な ラ ジ カ ル反 応の 中心 的役 割を 担っ てい るス ーパ ーオ キサ イド (02‑)に着目し、ロ.gibsoni感染犬赤血球の酸化障害に02‐が関与しているか否か検討 した。まずはじめに、B. gibsoni感染症における赤血球の酸化障害を確認するために、
原虫低寄生率を示すB. gibsoni慢性感染犬の赤血球メトヘモグロビン(MetHb)濃度お よび チオ バル ピッ ール 酸反応性物質(TBARS)濃度を測定した。その結果、B.gibsoni 慢性 感染 犬の 赤血 球で は、MetHb濃度およびTB」へRs濃度が正常犬赤血球に比ペ有意 に増 加し てお り、 感染 犬赤 血球 には 酸化 障害 が起 きていることが証明された。さら に赤血球のの‐生成量は、B.雪fみ舶m慢性感染犬の赤血球において、正常犬赤血球よ りも 有意 に増 加し てお り、 また 、赤 血球 に存 在す るスーパーオキサイドジスムター ゼ(SOD)や カタ ラー ゼくCADな どの 赤血 球酸 化防 御系酵素の活性が、感染犬赤血球 において正常犬赤血球より高かった。
っ ぎに 、赤 血球 の02・生 成がB.gf細mの寄 生に 起因するものかを明らかにするた め、8.g み舶川原虫寄生赤血球とともに正常赤血球を培養し、同様に実験を行った。
その結果、原虫培養赤血球においても、対照培養赤血球と比較して、く)2‐生成量が有 意に 増加 して おり 、Me岨b濃度お よびTBARS濃 度も 増加していた。以上の成績から、
バベ シア 原虫 の増 殖に より の‐ の生 成が 増加 し、 赤血球に酸化的障害が起きること が示唆された。しかしB.gめ5D門f慢性感染犬体内では、原虫寄生赤血球数が1ワ。以下 であ った こと から 、原 虫寄 生赤 血球 から 生成 され るの‐のみで、大量の赤血球が酸 化障 害を 受け ると は考 えに くく 、慢 性感 染犬 の赤 血球酸化障害の原因には、原虫以
外の因子の関与が強く疑われた。
単球およびマクロファージなどの貪食細胞は、異物(抗原)の刺激を受けると活性 化し 、 生 体防 御 のた め にROSを 産生するが 、その一 方で、産 生されたROSにより、
生体組織 が傷害さ れること も知られて いる。そ こで第2章 では、の ‐生成を 指標に 末梢血単球の活性化を検討し、B. gibsoni感染犬における単球・マクロファージによ る赤血球 酸化障害 の可能性 、ならびに 貧血発生 との関連性について検討した。その 結果、ロ.gibsoni慢性感染犬の単球は、Phorbol12_m沺stale13‐acetぬ(PMA)およぴオ プソニン 化ザイモ サン(叩somZedzymos孤、0ろによ る非特異的刺激によって、正常 犬単球よ りも有意 に高いの ‐産生を示 した。こ のことから、B.gf細m慢性感染犬の 単球 は 、 刺激 に 対し て 活 性化 し やす い 状 態に あ るこ と が 推測さ れた。ま た、B. g此噛D門f感染犬の単球は、感染犬血清でオプソニン化した感染犬赤血球膜で刺激する と高い俛‐産生を示したが、正常犬血清で処理した感染犬赤血球膜による刺激では、
の・産生 の増加は みられな かった。こ れらの成 績は、感染犬の赤血球が、単球の活 性化を促したことを示唆している。
っぎに、 活性化し た感染犬 単球が、正 常赤血球 を傷害するか否か検討した。前述 の感染犬 血清でオ プソニン 化した感染 犬赤血球 膜を刺激物質として感染犬単球を活 性化させ 、正常犬 赤血球と 培養したと ころ、そ の赤血球の膜脂質過酸化の程度は、
同処理を した正常 犬単球と 培養した赤 血球より も大きかった。この成績から、原虫 低寄生率を示すロ.gめsD f慢性感染犬にみられた赤血球の酸化障害が、活性化した 単球 ・ マ クロ フ ァー ジ か ら放 出 され るROSによ っ ても 誘 発 された可 能性が強 く示 唆された 。また、B.gめぷDm慢性感染犬の末梢血中では、IgGの付着した赤血球の割 合が正常 犬よりも 有意に増 加しており 、さらに 感染犬血 清中に存 在するIgGは 、無 傷な赤血 球よりも 人工的に 酸化障害を 起こした 赤血球に多く付着した。これらの成 績は、感 染動物体 内では、 酸化障害赤 血球に対 する抗体が増加していることを示し ており、 さらにIgG付 着赤血球 は、マクロ ファージ による貪 食の対象 となるこ とか ら、酸化 障害赤血 球の増加がロ,gf6舶所感染症における貧血発症の主因である可能 性が考えられた。
本研究の 成績から 、8.gfぬDnf感 染症におい ては、原虫の増殖により赤血球に酸 化障害が 起きるこ と、また 活性化した 単球・マ クロファージによって原虫非寄生赤 血球まで もが酸化 障害を起 こすことに より、こ れらの障害赤血球に対する抗体が産 生され、 その結果 、抗体付 着赤血球が 循環血中 から早期に除去されるため、原虫低 寄 生 率 で あ る に も 関 わ ら ず 、 重 度 の 貧 血 が 発 生 す る も の と 考 え ら れ た 。
学位論文審査の要旨
学位論文題名
Babesia gibs07zi 感染症における 赤血球酸化障害機 序に関する研究
B. gibsoni感染症は溶血性貧血を主徴とする疾患であるが、本症では、原虫の赤血球寄生 率が 低い にも 関わ らず 重度 の貧 血が発生する。しかしその発生機序についてはほとんど解 明されていない。本研究では、B. gibsoni感染症にみられる赤血球酸化障害の現象に着目し、
そ の 発 生 機 序 を 検 討 す る こ と に よ り 、 本 症 の 貧 血 発 症 機 序 の 解 明 を 試 み た 。 ま ずは じめ に、 原虫 低寄 生率 を示 すB. gibsoni慢性 感染 犬の赤血球メトヘモグロピン (MetHb)濃度 およ びチ オバ ルビ ツー ル酸 反応 性物質(TBARS)濃度 を測 定し た。そ の結 果、
慢 性感 染犬 の赤 血球で は、MetHbお よびTBARSが有 意に 増加 して いた 。さ らに赤 血球 のス ーバーオキサイド(く)2―)生成量も有意に増加していた。さらにB. gibsoni原虫培養赤血球に おいても、それらは増加していた。以上の成績から、バペシア原虫の増殖により02‐の生成 が増加し、赤血球に酸化的障害が起きることが示唆された。
っぎに、B. gibsoni感染犬における単球による赤血球酸化障害の可能性について検討した。
その結果、B. gibsoni感染犬の単球は、感染犬血清でオプソニン化した感染犬赤血球膜で刺 激すると高い02‐産生を示し、さらにオプソニン化赤血球膜で刺激された感染犬単球は、正 常犬 赤血 球の 膜脂 質を 酸化 した 。ま た、 感染 犬血清 中に 存在 するIgGは、無傷な赤血球よ りも人工的に酸化障害を起こした赤血球に多<付着した。
以上の成績から、B. gibsoni感染症においては、原虫の増殖により赤血球に酸化障害が起 きる こと 、ま た活 性化 した 単球 によって原虫非寄生赤血球までもが酸化障害を起こすこと によ り、 これ らの 障害 赤血 球にIgGが 付着 する 結果 、障 害赤 血球が循環血中から早期に除 去さ れる ため 、原 虫低 寄生 率て あるにも関わらず、重度の貧血が発生するものと考えられ た。
光 操
典 修
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出 沼
原 和
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授
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教
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査
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査
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主
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副
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以上のように申請者は、B. gibsoni感染症における貧血発生には、活性化単球による原虫 非寄生赤血球の酸化障害が関与していることを明らかにした。よって審査員ー同は、大塚 弥 生 氏 が 博 士 ( 獣 医 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。