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博 士 ( 獣 医 学 ) 浅 野 和 之 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 獣 医 学 ) 浅 野 和 之 学 位 論 文 題 名

イ ヌ の ´ ふ 疾 患 に お け る ´ 鰰 ナ ト1Jウ ム 利 尿 ベ プ チ ド お よ び 脳 性 ナ ト1Jウ ム 利 尿 ベ プ チ ド に 関 する 臨 床 病 理 学 的 研 究

学位論文内容の要旨

  小動物医学領域において,イヌの心疾患を診断・治療する機会は増加している。

イヌの心疾患の病態をより正確に把握することは,適切な治療にとって不可欠であ る。そして,このことは罹患犬の生活の質を向上させ,心疾患に起因する死亡率を 減少させることにっながる。

  ヒト循環器医学領域では,心臓由来のべプチドホルモンである心房性ナトリウム 利尿ベプチド(ANP)およぴ脳性ナトリウム利尿ベプチド(BNP)が心疾患の病態を反映 する指標として注目されている。 ANPは心房に対する負荷,BNPは心室に対する負 荷に応じて心筋細胞から循環血液中に放出され,血圧や体液循環量を調節する役割 を担 って いる。心不全患者において,血漿ANPおよびBNP濃度は,臨床症状の増 悪,心内圧の上昇あるいは左心機能の低下に伴って上昇するため,重症度や治療効 果 の 評 価 あ る い は 予 後 の 半IJ定 因 子 に な り 得 る こ と が 示 唆 さ れ て い る。

  ANPおよびBNPは獣医臨床においても有用であると考えられるが,イヌのANPに 関する若干の報告しかない。したがって,本研究ではイヌの心疾患におけるANPお よびBNPの病態生理学的意義を検討するとともに,それらの血漿濃度測定が臨床病理 学的に有用であるか否かを評価した。

  第1章では,健常犬におけるANPおよびBNPの組織分布を検討するため,ANPおよ びBNPのcDNAクローニングを行い,RT‑PCR法と得られたcDNA断片をプローブとし た ノ ー ザ ン ブ ロ ッ ト 解 析 に よ っ て 各 臓 器 ・ 組 織 で のmRNA発 現 を 調 べ た。

  イヌのBNP前駆体のcDNAの長さは420bp,アミノ酸残基数は140残基であり,既 知の哺乳動物のBNP前駆体の中で最も長い構造を有していた。また,ANPと比較し て , イ ヌ と 他 の 動 物 種 と の 間 に お け るBNPの 相 同 性 は 低 か っ た 。   健常犬において,ANPのmRNAは心房で最も発現しており,心室,中枢神経系およ び腎臓においても発現していた。一方,BNPのmRNAの発現は心房でのみ確認され,

心室および中枢神経系では認められなかった。以上のように,健常犬においては ANPおよびBNPとも主に心房で合成されており,動物種間でBNPの組織分布は異なっ ていた。以上のことから,イヌとヒトにおけるBNPの病態生理学的意義は異なる可能 性が示唆された。

  次に第2章では,実験的に作出した急性心筋梗塞モデル犬および僧帽弁逆流モデル

(2)

犬において,心筋組織におけるANPとBNPのmRNA発現および血漿濃度を測定し,イ ヌにおけるそれらの病態生理学的意義を検討した。

  急性心筋梗塞モデル犬において,梗塞作出前後でANPおよびBNPの血漿濃度の変 動はほとんど認められなかった。 ANPのmRNA発現は非梗塞部では認められず,梗塞 部においても僅かに認められたのみであったが,BNPのmRNA発現は非梗塞部および 梗塞部において認められ,特に梗塞部におけるmRNA発現量は有意に増加していた。

  僧帽弁逆流モデル犬において,ANPおよびBNPの血漿濃度は非代償性心不全群に おいて高値を示した。また,左心房圧の指標である肺動脈楔入圧の上昇に伴って ANPおよびBNPの血漿濃度の上昇が認められた。心筋組織におけるANPのmRNAは心 房でのみ強い発現を認めたのに対し,BNPのmRNAは心室においても発現が認められ た。

  以上のことから,ANPは主として心房で合成されており,心筋傷害や容量過負荷 などの病的状態においては心房での合成量が増加するのに対し,BNPは主に心房で合 成されているものの,心筋傷害や容量過負荷などの病的状態においては心房のみな らず心室においても合成量が増加することが示唆された。

  最後に第3章では,本学獣医学部附属動物病院に来院した動脈管開存症犬4頭およ び慢性僧帽弁逆流犬19頭を用い,これらの心疾患の病態とANPおよびBNPの血漿濃 度との関連を検討した。

  動脈管開存症犬において,術前にANP濃度が高値を示していた症例では,術後 ANP濃度は急激に低下したのに対し,術前に高値を示していなかった症例では,術 後ANP濃度は僅かな変動しか認められなかった。また,心エコー図検査による左心 房の拡張の程度と血漿ANP濃度との間に関連性が認められ,動脈管開存症犬におい てはANPは主に拡張した左心房で合成されていると考えられた。一方,BNP濃度は 術後3日目に一旦低下するが,術後10日目には軽度上昇し,術後30日目には再び軽 度低下する傾向があり,ANPとは異なる合成・分泌調節を受けている可能性が示唆 された。

  慢性僧帽弁逆流犬において,ANPおよびBNP濃度は心不全の重症度に伴って上昇 する傾向が認められた。また,非代償性心不全群のANPおよびBNP濃度は代償性心 不全群よりも有意に高いことが示され,心不全の代償状態の程度が評価できる可能 性 が 示 唆 さ れ た 。 し か し ,BNP濃 度 の 上 昇 程 度 はANPと 比較 し て低 かっ た。

  以上のことから,動脈管開存症犬における治療効果の判定にANPが血液生化学的 指標となり,慢性僧帽弁逆流犬における心不全の重症度評価およぴ代償状態の推定 にはANPおよびBNPが指標になり得ると示唆された。

  以上の結果をまとめると,イヌのANPおよびBNPは正常心では主に心房で合成・

分泌されているが,心筋梗塞や僧帽弁逆流による容量過負荷などの病的心ではANP は主に心房で合成・分泌が亢進するのに対し,BNPは心房のみならず心室においても 合成・分泌が亢進することが示唆された。また,ANPおよびBNPはイヌの心疾患臨 床例において心不全の重症度の評価や治療に対する効果の判定など,臨床病理学的 に有用であると考えられ,さらに臨床例を重ねて検討する価値があると考えられ た。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

イヌの´い戻患における´い馳ナトリウム利尿ベプチドおよび 脳性ナト1J ウム利尿ベプチドに関する臨床病理学的研究

  心 臓 由 来 の ぺ プ チ ド ホ ル モ ン で あ る 心 房 性 ナ ト リ ウ ム 利 尿 ペ プ チ ド(ANP)お よ ぴ 脳 性 ナ 卜 リ ウ ム 利 尿 ベ プ チ ド(BNP)は 体 液 循 環 量 や 血 圧 を 調 節 す る 役 割 を 担 っ て お り 、 そ れ ら の 血 漿 濃 度 は ヒ ト 循 環 器 病 に お い て 、 心 不 全 の 重 症 度 や 治療 効果 の判 定あ る いは 予後 の 推 定 に 有 用 で あ る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 一 方 、 獣 医 学 領 域 に お い て はANPお よ び BNPの 診 断 学 的 有 用 性 に 関 し て 十 分 な 検 討 が な さ れ て い な い た め 、 申 請 者 は イ ヌ の 心 疾 患 に お け るANPお よ ぴBNPの 病 態 生 理 学 的 意 義 お よ ぴ 臨 床 病 理 学 的 有 用 性 に つ い て 検 討 し 、 以 下 の 結 果 を 得 た 。

  ま ず 、 イ ヌ のANPお よ ぴBNPcDNAク ロ ー ニ ン グ を 実 施 し 、 イ ヌ のBNPcDNA 塩 基 配 列 と ア ミ ノ 酸 配 列 を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、 得 ら れ たcDNAを プ 口 ー ブ と し た ノ ー ザ ン ブ 口 ッ ト 解 析 を 用 い 、 健 常 犬 に お い てANPお よ ぴBNPは 主 に 心 房 で 合 成 さ れ て い る こ と を 明 ら か に し た 。

  次 に 、 実 験 的 に 作 出 し た 急 性 心 筋 梗 塞 お よ び 僧 帽 弁 逆 流(MR)モ デ ル 犬 を 用 い 、ANP BNPの 血 漿 濃 度 お よ ぴmRNA発 現 を 検 討 し た 結 果 、 心 筋 障 害 お よ ぴ 容 量 過 負 荷 に よ っ て 、ANPの 産 生 は 心 房 で 増 加 す る の に 対 し 、BNPの 産 生 は 心 房 の み な ら ず 心 室 に お い て も 増 加 す る こ と を 確 認 し た 。

  最 後 に , 動 脈 管 開 存 症(PDA)4頭 お よ び 慢 性MR19頭 の 臨 床 例 に お け る 血 漿 濃 度 を 測 定 し た 結 果 、PDA犬 に お け る 治 療 効 果 の 判 定 にANPが 、 慢 性MR犬 に お け る 心 不 全 の 重 症 度 や 代 償 状 態 の 推 定 にANPお よ びBNPが 、 臨 床 病 理 学 的 指 標 と し て 各 々 有 用 で あ る 可 能 性 を 示 し た 。

  以 上 の よ う に 申 請 者 は , イ ヌ の 心 疾 患 に お け るANPお よ ぴBNPの 病 態 生 理 学 的 意 義

昭 之

   

   

芳 昌

原 藤

藤 葉

斉 橋

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

の解明に貢献し、獣医療におけるそれらのぺプチドの臨床応用の実現に貢献するものと 判断された。よって審査員一同は、浅野和之氏が博士(獣医学)の学位を授与される資 格を有するものと認めた。

参照

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