博士(医学)孫 立僉 学位論文題名
頚部星状神経節近傍照射の効果に関する研究 学位論文内容の要旨
低出カレーザー照射は患部直接照射による創傷治癒の促進,疼痛の減少,腰背筋肉痛,捻挫などの慢性 炎症疾患の鎮痛,機能改善を示し臨床応用されてきた,星状神経節近傍への直線偏光近赤外線照射により 交感神経飾薬剤性ブロック療法と同様の臨床効果が報告され,しかし,これまで星状神経飾近傍光線照射に よる全身的な生理反応内分泌・免疫機能に対する効果については十分報告されておらず,その作用機序に は不明の点が多い,今回健常人の頚部右星状神経節近傍に直線偏光近赤外線照射を行い,皮膚表面温度,
手掌発汗量,血圧,脈拍測定の生理学的検討と血液検査による内分泌学的免疫学的検討を加え,局所効果 と全身性効果について検討した.
1)対象と方法
実験はすべて北海道大学医学部リハビリテーション医学講座の実験用恒温室(縦360cm,横270cm,高さ 220cm,温度25℃,湿度50%)で行われた.対象は健常男性(北大医療短大学生,年齢21〜 22歳)であり,毎 回、測定開始前に恒温室にて10分間恒温馴化した。実験中仰臥位とし,一人あたり2回づっ,別の日に同じ 時刻帯に照射と偽照射各一回ずつ施行した.
実験1:
対象は19名,皮膚温度 と発汗量測定は被験者が恒 温室に入ってから実験終了まで行った,照射直前後各 一 回 生 理 負 荷 試 験 を 行 い , 血 圧 , 脈 拍 測 定 . 右 頚 部 星 状 神 経 節 近 傍20分 照 射 を 与 え る , I.皮膚温度と発汗 量測定:皮膚表面温度測定用 のサーミスターを両手第3指 尖掌側と両足第2趾尖屈 側に固定し,皮膚温度 を毎分測定した.2っの発汗量測定器を両手母指球に接着固定し,連続的に皮膚発 汗量を測定した,
n.生理負荷試験:実験員から口頭で指示し、被験者に順番でやらせる.内容は計算1分問,安静1分間,
逆唱1分問,安静1分問 ,深呼吸1分問,安静1分間である,計5分間.計算,逆唱,深呼吸負荷開始時と終 了時にマークして,そ れぞれの1分間の局所発汗量を算定した.生理負荷時の精神的発汗量は,各検査終 了時の基礎発汗量を減 じ,生理的負荷による増加分を使用し,それぞれの1分間の精神的発汗量を算出し た. `
III.右 頚 部星 状神 経節 近傍照射: 照射群は東京医研製HA―550型直線偏光近赤外線照射器 を利用し て,最大出力70%(最大出力:1800mw),発振波長帯:0.6〜1.6皿m(ピーク1.0pm),1秒間照射,2秒問中止 のサイクルで右側胸鎖 乳突筋内側第6頚椎(C6)レベルの皮膚に接触,固定して星状神経節を20分問照射し た.偽照 射群は照射機器のプローブ 部内にアルミ箔で光線の経路 を遮断する方法で同一手技 で行い.
IV.血 圧 脈拍 測定 :松 下電 工 製一 体型 手首 血圧 計EW284を 用い ,照 射直 前後 二 回に 測定 され た . ―519―
実 験2:
対 象は11名 , 照射 直前 後 に二 回に 採 血を 施行 し た. 照射 器 ,照 射方 法 と時 間は 実験1と同じである ,血液 検 査の項目は,自血球数,血中ホルモン(アドレナリン,ノルアドレナリン,コーチゾル,ドパミン)値,リンパ球 分 画を検討した,
統 計 学 的 検 定 に は , 同 群 の 照 射 前 後 の 比 較 ,照 射後 の 左右 差の 比 較, 照射 前 値を 基準 に した 照射 後 の 変 動値の照射と偽照 射を比較は対応のあ るt検定 を用いて有意差の検 討した.
2) 結果
実 験1: 照 射 後 で は , 照 射 群 の 左 右 手 指 の 相 対 平 均 温 度 は上 昇し た ,特 に右 手 の照 射10分 後, 左手 の 照 射7分 後 の 相 対温 度は , 偽照 射群 よ り有 意の 上 昇が 示さ れ た. 照射 群 の左 右足 趾 とも 照射 後 相対 皮膚 温 度 カ 渦照 射群 よ り有 意の 上 昇が 示された,右足の 照射4〜 11分後,13〜 20分後,左足の照射5〜8分後,13
〜 20分 後 での 平均 相 対温 度は , 偽照 射群 よ り有 意の 上 昇が 示さ れ た.
照 射後 の発 汗 量に は, 照 射群 が生 理 負荷 のす べ てで照 射前より有意の低下 を認められた,照 射側(右手)
の 計 算負 荷の 発 汗量0.03土0.04 mg/分 (平 均値 土 標準偏 差)は,非照射側( 左手)0.15土0.34 mg/分より有 意 の 低下 を示 し ,偽 照射 群 .0.11土0.18 mg/分 よ り有 意の 減 少を 示し た .
血 圧測 定で は 照射 前後 で 有意 の変 動 は認 めら れ なか った .
実 験2: 血液 検査 で はア ドレ ナリン, ノルアドレナリン は照射群で低下傾向 を示したが,照射 前後有意の差 異 は みら れな か った .照 射 群の 白血 球 数は 照射 後 有意 の減 少 が示 され , 前後 差分 の 比較 検討 で は,照射群
‑490.9土308.1/〃1が 偽 照 射‑127.3土316.5/u1よ り 有 意 の 低下 を示 し た.NK細 胞 活性 が照 射 群の 照射 前 後 で 有 意 の 減 少 を 示 し ,CD3細 胞 は 有 意 の 増 加 を 示 し た . 照射 群が 偽 照射 群よ りNK細 胞数 の 有意 の減 少 が 示 され た.
被 験 者 の 不 快 感 , 照 射 部 の 灼 熱 感 , 疼 痛 感 な ど の 異 常 な 自 覚 所 見 は 発 現 さ れ な か っ た ,
3)考察
今 回 用い た直 線 偏光 近赤 外 線は 低出 カ レー ザー 照 射療 法に 分 類さ れる 治 療で ある が ,レ ーザ ー の代 わり に ,光 源 とし て赤 外 線灯 スーパー アイオダインラン プを用い,光学フ アルターを介し短波 長成分である近赤 外 線( 波長帯:0.6〜1.6pm)のみ選択的に照 射する方式である .この波長域はヘリウムネオンレーザー(波長:0.6 弘m), 半導 体 レー ザー ( 波長 :1.6H m)の 波長 を含 包 し, また 従 来の レーザー照射の出 カが60mW程度と低 い のに 対して,最大出力1800mWの高エネルギ ーを生体の深部ま で供給できる,
頚 部 星状 神経 節 は, 機能 的 支配 領域 は 同側 の頭 部 ,顔 面, 頚 部, 上肢 お よび 胸部 と なる ,今 回 の実 験の 発汗 量では,照射後照射 群(照射側)が偽 照射群より有意の 減少を示した,これ は照射が交感神経系を抑制し,
上 記 支 配領 域の 精 神的 発汗 量 の有 意の 減 少を もた ら し交 感神 経 飾の 局在 性 を示 すも の と思 われ る .手 足の 末 梢 皮 膚温 度は , 照射 側だ け では なく , 非照 射側 の 皮膚 温度 の 上昇 が今 回 実験 で認 め られ た. 星 状神 経節 照 射 に よる 左右 上 肢下 肢す な わち 全身 性 の交 感神 経 緊張 の抑 制 効果 を表 し てい る. こ の機 序は 片 側星 状神 経 節 照 射 が 脊 髄 中 枢 性 作 用 を 有 す る か 星 状 神 経 節 に 左 右の 連 絡経 路が あ る可 能性 が 考え られ た .白 血球 数 ,NK細 胞 数 の 減 少 ,NK細 胞 活 性 が 有 意 に 低 下 し て お り, 交 感神 経抑 制 と関 係す る 精神 的緊 張 度の 低下 など 非特異的なストレス 抑制効果を示唆す る.
今回 の 光線 照射 に よる 星状 神 経飾 光線 療 法は 注射 よ り安 全で , 痛み を伴わず,繰り返 し処置が可能であ る
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など ,広く 臨床 応用が 可能で ある. 照射 前後の 血圧, 脈拍数 は有意 の変 化はな かった ,副作 用を認めず,光 線療 法の臨 床応 用をよ り支持 するも のと 考える .
光線 照 射 の 機 序 につ い て はな お不 明の点 も多く ,照射 時間 ,出カ など治 療手順 ,手法 につ いても まだ統 一さ れてい ない .照射 時間, 出カと 照射 効果と の関係について,さらに検討を加えることにより臨床的に有用 な物 理療法 とな ると考 えられ る.
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