博 士 ( 医 学 ) 松 田 彰
学 位 論 文 題 名
Expression of macrophage mlgrationinhibitory faCtorinCOrnealWOundhealinginratS・
( ラ ッ ト 角 膜 創 傷 治 癒 に お け る マ ク ロ フ ァ ー ジ 遊 走 阻 止 因 子 の 発 現 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
は じめ に
我々 はこ れま で にMacophage Migration Inhibitory Factoc (MIF)が角膜上皮基底細胞 ,角膜内皮細 胞 お よ び 虹 彩 毛 様 体 上 皮 細 胞 に 発 現 し て い る こ と を 報 告 し た . 角 膜 は 血 管 を 欠 き , 形態 学的 にも 上 皮 , 実 質 , 内 皮 か ら な る 明 ら か な3層 構 造 を と る 組 織 で あ り , 細 胞 増 殖 因 子 ま たtよサ イト カイ ン の 発 現 をIn Vivoで 検 討 す る た め に 適 し た 組 織 と 考 え ら れ る . そ こ で 我 々 は ラ ッ ト 角 膜 の 穿 孔 性 外傷 モデ ルを 作 成しMIFの倉u傷角 膜及 び前 房水 中の 発現 を検 討し た・
方法
ラ ッ ト の 右 眼 角 膜 中 央 に 2mmの 線 状 の 穿 孔 魯Uを 作 成 し , 3,6,24,48,72時 間 後 の 損 傷 角 膜 に お け るMIF発 現 の 経 時 的 変 化 を (1) 抗MIF抗 体 を 用 い た 免 疫 染 色 , (2)Reverse rranscriptase‑polymerase chamreaction (RT‑PCR)およびSouthern bloc法を用いて解析した。また受 傷眼および僚眼の前房水中のMIF濃度をenzyロユe‑linked血lユニlu。s。fbe皿懿say(ELISA)法を用いて定 量した.
結 果
免 疫 染 色 の 結 果 , 正 常 ラ ッ ト 角 膜 で は 角 膜 上 皮 基 底 細 胞 , 内 皮 細 胞 にMIF発 現 が 見 ら れ た . 受 傷 後3時 間 で は 受 傷 角 膜 の 中 央 部 の 上 皮 でMIF染 色 性 が 消 失 し た が , 僚 眼 の 角 膜 に お け るMIF 染 色 性 に | よ 変 化 は な か っ た .6時 間 後 にtま 毒U傷 部 位 周 囲 の 角 膜 上 皮 のMIF染 色 性 は 回 復し た.
24時 間 後 以 降 で はltl#gF部 位 を お お う 角 膜 上 皮 及 び 内 皮 さ ら に 定 常 状 態 で は ほ と ん どM[F染 色 性 を 認 め な ぃ 角 膜 実 貿 細 胞 に もMIF発 現 を 認 め た . ま た 受 傷 角 膜 か らRNAを 抽 出 し ,MIFmRNA の発現量をReverse transcriptase‑polymerase chain reaction (RT‑PCR)およ びSouthern blot法を用い て 半 定 量 的 に 解 析 し た と こ ろ , 受 傷 後6時 間 よ り48時 間 ま で の 問MIFmRNAの 発 現 が 亢 進 し て い た . 一 方 , 前 房 水 中 に は 受 傷 眼 の み な ら ず そ の 僚 眼 に もMIF蛋 白 濃 度 の 上 昇 を 認 め , ど ち ら の 眼 に お い て も 受 傷6時 間 後 に そ の 濃 度 が 最 高 に 達 し た . そ の 聞 の 血 清 中 のMIF濃 度tよ48 時 間後 まで 綴や かに 上昇 した .
結論
以 上 の 結果 よ り , (1) 角 膜 の 外 傷 にお い て 受 傷後3時 間以内 に角 膜上 皮か らMIFが 分泌さ れ ている可能性が示唆された.これIよ好中球およびマク口ファーシとぃった倉U傷治癒に必須の炎症 性 細 胞 の創 傷 部 位 へ の 浸 潤 時 期 に 一 致 す る 。 (2) 角 膜 外 傷 よ り6時 間 後 以 降 にはmRNAお よ び 蛋 白 レベ ル で 創 傷局 所に おけるMIF発現 が亢 進し てお り,細 胞増 殖を 伴う 創傷 治癒 にMIFが 関与 して いる 可能性 が考 えら れた 。(3) 受傷後24時 間後 以降 では 創傷 部位 の角膜実質細胞に MIF発 現を みた 。こ のこ とは ,外 傷等 の外 界から の刺 激に 伴っ て角 膜実 質細 胞が活性化される 時 期 に 一致 し て い る。 (4) 片眼 性の 角膜 外傷 によ って 僚眼の 前房 水中 にもMIF発現 の亢進 を み と め た。 ま た , 血 清 中 のMIF濃 度 の上 昇 に 比 ベ 僚 眼 前 房 水 中 のMIF濃 度 の 上 昇は 量的に も 速度 的に も大 きく, この こと は, 血清 以外 の情 報伝 達因 子がMIF発 現を 制御 している可能性を 示唆するものである。
学位論文審査の要旨
学位 論文 題名
Expression of macrophage migration inhibitory factorln corneal wound healing in rats・
(ラ ット 角膜 創傷 治癒 におけるマクロファージ遊走阻止因子の発現)
Macrophage Migration Inhibitory Factor (MIF)は遅延型過敏反応が成立したモルモットの感作 マ ク 口 フ ァ ー ジ の 毛 細 管 か ら の 遊 走 を 阻 止 す る 因 子 と し て1966年 に 報 告 さ れ た 。198 9年 に ヒ トTリ ン バ 球 か らMIFのcDNAが ク ロ 一二 ング され 分子 レベ ルで の研 究が 始ま った 。 私 はこ れま でMIFが角 膜上 皮基 底細 胞、 角膜 内皮 細胞 およぴ 虹彩 毛様 体上 皮細胞に発現して い るこ とを 報告 した 。角 膜は血 管を 欠き 、形 態学的にも上皮、実質、内皮からなる明らかな 3層 構 造 を と る組織 であ り、 細胞 増殖 因子 また はサ イト カイ ンの 発現 をIn Vivoで検 討す る た め に 適 し た 組 織 と 考 え ら れ る 。 そ こ で ラッ ト角 膜の 穿孔 性外 傷モ デルを 作成 しMIFの 創 傷 角膜 及ぴ 前房 水中の発現を検討した。ラットの右眼角膜中央に線状の穿孔創を作成し、3、 6、24、48、72時 間 後 の 損 傷 角 膜 に お け るMIF発 現 の 経 時 的 変 化 を (1) 抗MIF抗 体 を用いた免疫染色、 (2)Reverse transcriptase‑polymerase chain reaction (RT‑PCR)および Southern blot法 を用 いて 解析 した 。ま た受 傷眼 およ び僚眼 の前 房水 中のMIF濃度をenzyme‑
linkedimmunosorbentassay(ELISA)法を用いて定量した。免疫染色の結果、正常ラット角膜で は 角 膜 上 皮 基 底細 胞、 内皮 細胞 にMIF発現 が見 られ た。 受傷 後3時 間で は受 傷角 膜の 中央 部 の 上 皮 でMIF染色 性 が 消 失 し た が 、 僚 眼 の 角 膜 に お け るMIF染 色 性 に は 変 化は 見ら れな か っ た 。6時 間 後に は 創 傷 部 位 周 囲 の 角 膜 上 皮 のMIF染 色 性 は 回 復 し た 。24時間 後以 降で は 創 傷部 位を おお う角 膜上 皮及び 内皮 、さ らに 定常 状態 では ほと んどMIF染 色性を認めない角 膜 実 質 細 胞 に もMIF発 現 を 認 め た 。 ま た 受 傷 角 膜 か らRNAを 抽 出 し 、MIFmRNAの 発 現 量
雄 郎 彦 輝 芳 英 橋上 田 石井 松 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
をRT‑PCRお よ ぴSouthern blot法 を 用 い て 解 析 し た と こ ろ 、 受 傷後6時 間 よ り48時間 ま での 間MIFmRNAの発 現 が亢 進 し てい た 。一 方 、 前房 水 中 には受 傷眼のみ ならずそ の僚眼に もMIF蛋 白 濃度 の 上昇 を 認 め、 どちらの 眼におい ても受傷6時 間後にそ の濃度が 最高に達 し た。 そ の 間の 血 清中 のMIF濃度 は48時間後 まで緩や かに上昇し た。以上 の結果よ り、(1) 角膜 の 外 傷に お いて 受 傷 後3時間 以 内に 角 膜 上皮 か らMIFが 分 泌さ れ て いる 可 能性 が 示 唆 され た 。 (2)角 膜 外傷 よ り6時 間後 以 降に はmRNAお よび 蛋 白レ ベ ル で創 傷 局所 に お ける MIF発 現 が 亢進 し てお り 、 細胞 増 殖 を伴 う 創傷 治 癒 にMIFが 関与 し て いる 可 能性 が 考 えら れた 。 (3) 片眼 性 の角 膜 外 傷によっ て僚眼の 前房水中に もMIF発現の 亢進をみ とめた。 ま た、 血 清 中のMIF濃度 の 上 昇に 比 ベ 僚眼 前 房水 中 のMIF濃 度 の上 昇 は 量的 に も速 度 的 にも 大きく、 このこと は、血清 以外の情 報伝達因 子がMIF発現を 制御して いる可能 性を示唆 する ものである。
公 開 発表 に 際 し、 副 査の 井 上教授よ りMIF発現細 胞の局在、 および僚 眼でのMIF発 現の機 序につい て、副査 の松田教 授より一 過性のMIF発 現の低下が 細胞死に よるもの である可 能性 について 、また僚 眼でのMIF発 現機序を 調べるた めの方法論 について 質問があ った。主 査の 石橋 教 授 から は 受傷 眼 と 僚眼 のMIF発現 に 時間 差 が みら れ ない理由 などにつ いての質 問が あった。 申請者はMIF発現細胞 は基底膜 と接して いるという 局在の共 通性を持 つこと、 僚眼 でのMIF発現 はsubstance‑P等の神 経伝達物 質が誘導 している 可能性が考えられ、その検証の ためにcapsaicin投与によるneuroparalytic ratを使った実験を施行中であり、また僚眼との時間 差が み ら れな い こと もMIF発現 が 神 経支 配 を受 け て いる 可 能性を示 唆するー つの傍証 であ ることを述べた。
本論文は 、マクロ フアージ 遊走阻止 因子が角 膜創傷治癒 と交感性皮応の重要な因子てある ことを明 らかにし たもので あり、眼 科臨床応 用へと発展 させることのできる研究と期待され る。
審査員一 同は、こ れらの成 果を高く 評価し、 大学院課程 における研鑽や取得単位なども併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。