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博 士 ( 農 学 ) 松 山 彰 収

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 松 山 彰 収

学 位 論 文 題 名

微 生 物 の 不 斉 認 識 酸 化 還 元 能 を 利 用 し た 光 学 活 性 化 合 物 の 生 産 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  光 学活 性 体 の構 造 を 持 っ医 薬 や 農薬 は 溶 解度 や 融 点な どの 物理化 学的性質 が同じ で あ る に か か わ ら ず 、R体 とS体 で 生 理活 性 が 著し く 異 なる 場 合 が多 い 。 現在 で も 合 成 医 薬の ほ ぼ 半数 が 光 学 活性 体 の 構造 を 持 っが 、 そ の多 <がラ セミ体で 製造され て い る 。医 薬 は それ ぞ れ の 光学 活 性 体の 生 理 活性 に 違 いが なけれ ばラセミ 体でもよ い が 、 一方 の 光 学活 性 体 に マイ ナ ス の要 因 が ある 場 合 、も う一方 の光学活 性体のみ で 製 造 され な け れば な ら ず 、光 学 活 性体 の 工 業的 な 製 造が 必要と される。 しかしな が ら 、一般 .的な化 学合成で はR体とS体が等量 で混合 されたラ セミ体 が生成さ れる。

ま た 、 特殊 な 化 学合 成 で 光 学活 性 化 合物 を 合 成す る 場 合は 高価な 触媒、苛 酷な反応 条 件 等 が必 要 で あり 、 経 済 的、 工 業 規模 的 な 観点 か ら 問題 点が多 <、これ まで工業 的 生 産 の例 も 少 数で あ る 。 一方 、 徽 生物 や 酵 素の よ う な生 体触媒 を利用し て光学活 性 化 合 物を 生 産 する 方 法 は 、穏 和 な 条件 で 反 応が 行 わ れ、 高い光 学純度も 得られ、

簡 便 な ので 、 目 的の 生 産 能 を有 す る 生体 触 媒 が見 出 せ れば 非常に 有望であ ると考え ら れ る 。

  本研 究では 、この様 な背景 の中で、 医薬の原 料や. 中間体と なる光 学活性化 合物の 新 規 な 生物 学 的 生産 方 法 を 確立 す る を目 的 と して 、 不 斉認 識酸化 還元能を 持ってい る 微 生 物を 広 < 微生 物 界 に 探索 し た 。

1.4―ヒド ロキシ ー2−ブタノンから光学活性1,3−ブタンジオールを生産する微生物を タイ ブ カ ルチ ャー に検索し 、Candida utilis、Candida arborea、Hansenula fabi― anii、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces lactis、Pichia heedi、Issatchen― kia scutalata等が(R)一1,3―ブタンジオールを生産し、Candida paraps!!Q≦!≦ヽ Geotrichumcand!!H璽等が(S)―1,3ーブタンジオールを生産することを見いだした。

2.ラセ ミ 体 から 光 学 活性1,3−ブ タ ン ジオ ー ル を生 産 する微生 物をタ イプカル チャ ーに 探索し 、多くの 酵母、糸 状菌、 細菌、放 線菌が 光学活性1,3ーブ タンジオ ールを 生産 することを見いだした。(S)―1,3一ブタンジオール生産菌株としてKluyveromy― ces lactis IF0 1267を、(R)―1,3−ブタンジオール生産菌株としてCandida paraps‑

ilosis IF0 1396を選択し た。そ れぞれが ラセミ体 から高 い光学純 度の光 学活性1,3

―ブタンジオールを生成することを確認した。

382

(2)

3.  Candida parapsilosisについて安価な工業製品であるラセミ体から(R〕ー1,3−ブ タ ン ジ オ ー ル の生 産最 適株 の 選択 を行 い、Candidaロarapsi‑losis IF0 1396を 選択 し た 。 様 々 な 条件 の検 討を 基 に大 量調 製を 行い 、ペ ネム 、カ ルバ ペネ ム抗 生物 質の 重要中間体であるアゼチジノンの原料となる(高 い光学純度の(R)―1,3―ブタンジオ ールの大量生産法を確立した。

4.  Candida parapsilosis IF0 1396から1,3ーブタンジオールのS体を4ーヒ ド口キシ ー2―ブタノンに酸化する(S)−1,3―ブタンジオール脱水素酵素の精製を行い、基質特異 性の検討を行った。分 子量は40,000であり、2→プロパノール、(S)ー2−ブタノール、

(S)‑2ーオクタノール、2,4→ペンタンジオール、(S)ー1−フウニルェタノール等の2級 アルコールのS体に高い活性を持っていた。

5.ラセミ体から抗鬱剤の原料である光学活性(S)ー1−フェニルー1,3―プロパンジオー ル を 生 産 す る 新 規な 微生 物の 探索 を 土壌 から 行い 、土 壌か らSerratia属 に属 する 細 菌を分離した。

6.  Serrat土壘sp.NO.2664を用いて(S〕―1ーフェニル―1,3―プ口パンジオール生産に関 す る 検 討 を 行 っ た 。 培 地条 件の 検討 にお いて 、酵 母工 キス 、ポ リ ペプ 卜ン の濃 度を 高 め 、 炭 素 源 を グ リ セ リン に変 えた 培地 で培 養し た菌 体が 高い 生 産性 活を 示し た。

ラセミ体 から高い光学純度の(S)―1ーフェニル―1,3−プロパンジオールを調製した。

7.2ーオキソ―4−フェニル酪酸から光学活性2‑ドロ キシー4―フェニル酪酸を生 産する 菌株 の検 索を タイ プカ ルチ ャー を対 象に 行い 、 多くの細菌、酵母が光学活性2ーヒド ロキ シ―4ー フェ ニ ル酪 酸を生産することを見いだした。Leuconostoc mesenteroides subsp. dextranicum IF0 3349を用 いて 生産 の 検討を行った。グルコース8%、酵母工 キ ス1% 、硫 酸マ ンガ ン6水 塩10ppmの培 地で 培 養し た定 常期 の菌 体を 反応 に用いて、

高 い 光 学 純 度 の ( R) ― 2− ヒ ド ロ キ シ ー 4― フ ェ ニ ル 酪 酸 を 調 製 し た 。

8.  Leuconostoc dextranicum subsp.  vinarium ATCC 27310を用いて、血 圧降下剤 の重要中間体である(R)−2―ヒドロキシ―4ーフェニル酪酸生産に関与する不斉還元酵素 の精 製と 性質 の 検討 を行 った 。分 子量 は46,000で、 基質 特異 性は アル デヒ ドに 対す る 活 性 が 高 か っ た 。 ア ルデ ヒド のア ル キル 基が 長鎖 にな るほ ど、 活性 は低 下し た。

一方 、2― オキ ソカ ルポ ン酸 にも 作用 する が 、ア ルデ ヒド の場 合と は逆 にカ ルポ ン酸 のア ルキ ル基 が2− オキ ソヘ キサ ン酸 、2― オキ ソオ クタン酸という長鎖にな るほど活 性 は 向 上 し た 。pH5.5か ら6.5付 近に 至 適pHがあ り、pH5.5か ら7.5範囲 で安 定で あっ た 。40℃ か ら50℃ 付 近 に至 適温 度が あ り、 熱安 定性 は40℃以 下で 安定 であ った 。阻 害 剤 と し て 塩 化 水 銀 、 パラ クロ ロ水 銀 によ り強 く阻 害さ れ、SH酵 素と 推定 され た。

‑ 383

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

微生 物の不斉認識酸化還元能を利用した 光学 活性化合 物の生産に関する研究

  

本 論 文 は 、 和 文

96

頁 、 図

17

、 表

21

、 引 用 文 献

66

3

章 お よび 総 括 から な り、他に参考論文7編が付されている。

  

合成医薬のほぼ半数が光学活性体の構造を持っが、一方の光学活性体にマイナス の要因がある場合、もう一方の光学活性体のみで製造されなければならず、光学活 性体の工業的な製造が必要とされている。しかしながら、一般的な化学合成ではR 体とS体が等量で混合されたラセミ体が生成され、特殊な化学合成で光学活性化合 物を合成する場合は高価な触媒、苛酷な反応条件等が必要であり、経済的、工業規 模的な観点から問題点が多<、工業的生産の例も少数である。一方、微生物や酵素 のような生体触媒を利用して光学活性化合物を生産する方法は、反応自体は穏和な 条件で、高い光学純度も得られ、簡便なので、非常・に有望であると考えられ、生体 触 媒 を 用 い て 光 学 活 性 化 合 物 を 生 産 す る 新 規 な 方 法 が 望 ま れ て き た 。

  

本研究では、微生物の不斉認識酸化還元能を利用した光学活性化合物の新規な生 産に関して、様々な医薬の原料になる

3

種類の光学活性化合物を生産する微生物を 見出し、それらの微生物を用いて光学活性化合物を調製し、更に生産に関与する酵 素を精製して特性を明らかにしたものである。

  

第一章では様々な医薬等の原料となる光学活性1,3ーブタンジオールを生産する微 生物の検索、(R)一1,3―ブタンジオールの大量生産とそれに関与する酵素の精製につ いて述べられ、下記の内容が含まれている。

1.4

―ヒドロキシ―2ーブタノンから光学活性1,3―ブタンジオールを生産する微生物を タイプカルチャーに検索し、光学活性1,3−ブタンジオールを生産する微生物を多数 見いだした。

2.

ラセミ体から光学活性1,

3

―ブタンジオールを生産する微生物をタイプカルチャ ーに検索し、多くの酵母、糸状菌、細菌、放綜菌が光学活性1,3ーブタンジオールを

384

男 哉

房 誠

田 葉

冨 千

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

生産す ること を見いだ した。Kluyveromyces lactis IF0 1267が高い光 学純度 の(S) ー1,3一ブタン ジオール を生成 し、Candida parapsilosis IF0 1396が高い光学純度の

(R)―1,3−ブタン ジオー ルを生成 するこ とを確認 した。

3. Candida parapsilosis IF0 1396を 用 い て安 価 な工業 製品であ るラセ ミ体から 高 い 光 学 純 度 の ( R) − 1, 3― ブ タ ン ジ オ ー ル を 大 量 に 調 製 し た 。

1396か ら1,3ーブタンジオールのS体を4―ヒドロキシ

―2ーブタノンに酸化する(S)ー1,3ーブタンジオール脱水素酵素の精製を行い、基質特異 性を明らかにした。

  第二章では抗鬱剤の原料となる(S)−1―フェニルー1,3―プロパンジオールをラセミ体 から生 産する微 生物の自 然界か らの分離、同定とその微生物を用いての(S)―1ーフェ ニル−1,3−プロ パンジ オールの 生産について述べられ、下記の内容が含まれている。

1.ラ セミ体 から光学 活性1―フェ ニル−1,3―プロパンジオールを生産する新規な微生 物 の 探 索 を 土 壌 か ら 行 い 、 土 壌 か らSerratia属 に 属 す る 細 菌 を 分 離 し た 。 2. Serratia sp. I¥To.2664を用いてラセミ体から高い光学純度の(S)―1ーフェニル―

1,3−プロパンジオールを調製した。

  第三 章では 様々な医 薬に利 用できる光学活性2−ヒドロキシー4―フェニル酪酸を2一オ キソ―4―フウニル酪酸から生産する微生物の検索、その微生物を用いての(R)−2―ヒド ロキ シ‑4−フ ウニル酪 酸の生 産とそれ に関与 する酵素 の精製と特性について述べられ、

下記の内容が含まれている。

1.2ーオキ ソ−4−フウニ ル酪酸 から光学 活性2―ヒド ロキシー4―フェニル酪酸を生産す る 菌 株の 検 索 をタ イ プ カ ルチ ャ ー を対 象 に 行い 、 多くの 細菌、 酵母が光 学活性2−ヒ ドロ キシ−4−フ ウニル酪 酸を生 産するこ とを見 いだした 。Leuconostoc mesenteroi― des subsp. dextranicum IF0 3349を用いて(R)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の調 製を行った。

vlnarlumATCC27310をから(R)−2−ヒドロキ シ―4− フェニル 酪酸生産 に関与 する不斉 還元酵 素の精製 と性質の検討を行い、基質特 異性 等の特 性を明ら かにし た。

  以 上 の様 に 様 々 な医 薬 の 原料 に な る3種 類 の光 学 活 性化 合物を 生産する 微生物 を 見出 し 、 それ ら の 微 生物 を 用い て光学活 性化合 物を調製 し、生 産に関与 する酵素 を 精製 し て 特性 を 明 ら かに し たこ とにより 、微生 物の不斉 認識酸 化還元能 を利用し た 光 学活 性 化 合物 の 新 規 な生 産 に 関し て 、 基礎 的 及 び産 業 的 な貢 献 を 果た し た 。 .

  よ っ て 審査 員 一 同 は、 別 に行 った学力 確認試 験の結果 を合わ せて、本 論文の提 出 者 松 山 彰 収 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た。

‑ 385

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