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博 士 ( 医 学 ) 内 田 浮

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 内 田    浮

学 位 論 文 題 名

塩基性線維芽細胞増殖因子―キトサン複合体(bFGF ーChitosan) から の bFGF の 徐放 と活 性維 持 に関 する 研究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  成長因子は細胞増殖と細胞分化を誘導し組織再生に大きく関与しており、シグナル伝達の中で も最も重要な生体分子であると広く認められている。しかし、成長因子は変性しやすく、そのた め 、 室温 や 生 体内(37°C)では、 短い期 間でしか 活性を 保つこと ができな い。こ の問題点 に 対する解決策のーっは、「細胞」や「Scaffold」に大量かつ頻回に成長因子を直接投与することで ある。しかし残念なことに、この方法では感染や再生組織の腫瘍形成を惹起する可能性がある。

それ以外の解決策としては、生体活性物質を徐放させるドラッグデリバリーシステムの応用があ る。この技術により適当な量を適切なタイミングで長い期間、目的とする物質を徐放させること が可能になる。この技術を応用すれば、成長因子を長期間徐放させることが可能になり、良好な 組織再生が得られると考えられる。

  塩基 性線維 芽細胞増 殖因子(basic Fibroblast Growth Factor以下bFGF)は細胞増殖因子の1 っであり、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞、軟骨細胞などの様々な細胞に対し細胞増殖を 促進 させる 成長因子 として 報告されている。実際に、bFGFの臨床応用は創傷治癒の分野で既に 実行 されて おり、優 れた結 果が報告されている。bFGFは細胞外マトリックスに含まれるへパラ ン硫酸またはへパリンなどの多糖類と複合体を形成し内部に貯蔵されること、細胞外マトリック スと の複合 体が生体 内にお ける変性や酵素分解からbFGFを保護している可能性などが報告され てい る。したがって、多糖類のうちの1っであるキトサンは、生体内と同じ温度下でも同様に生 体活性物質を貯蔵できる可能性があると著者らは考えた。

  キトサンに生理活性物質を導入する手法には、共有結合、ポリイオンコンプレックスを用いる 手法、埋入・混入による手法が考えられる。共有結合は反応に専門知識が不可欠であるが、安定 性が高く、また徐放化等の制御が可能であることより、大いに発展性が期待されるため、この共 有結 合を用 い、新規 のbFGF‐キ トサン化 合物( 以下bFGF‑Chitosan)を 開発し た。共有結合で 合 成 したbFGF‑Chitosanは 、 生体 内 と 同じ37゜Cと いう増殖 因子にと っては 過酷な環 境下に おい て、ポ リイオン 結合や 分子間結合よりも安定性があると考えられる。本研究では、bFGFは SH‑Chitosanと共 有 結 合で 結 合 して い る ため よ り 長期 の 徐 放が 得 ら れ ると仮 説を立て た。

  本研 究 で は、 第 一にSH‑ChitosanとbFGFを 結合さ せる方法 を確立す ること 、次に成 長因子 が 変 性し や す い環 境下 で14日後にbFGF‑Chitosan複 合体か ら徐放さ れたbFGFの 量を測定 し、

bFGFが活性を保っていることを証明することを目的とした。

  SH‑Chitosanの作り 方の詳 細は、過 去の論 文を参考 にした。要約すると、4gのキトサン粉末 に1%の酢酸200 mlを加えて、2%(w/v)のキトサン溶液(pH 2.68)を作製する。キトサン溶液(3.5

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g)に50 mMのsodium phosphate buffer solution (44 ml,pH 8.0)と2mMのEDTAおよび 150 mMのNaClに溶解し、最後に112 mgの2‑Iminothiolaneを加え、100%窒素下で室温で3 時間攪拌させて合成する。キトサンと反応しなかった2‑Iminothiolaneは膜透析にて取り除き、

チオール基が修飾されたキトサン(SH‑Chitosan)を作成した。次にSH‑ChitosanにbFGFを導 入し、bFGF‑Chitosanを作成した。実際の化学反応は以下のようなものである。まず、3.0 ml の0.1MNH4HC03 buffer (pH 8.0)に1.0 mgのSH‑Chitosanを溶かした溶液を作製し、bFGF (1.0 mg)を添加した。bFGFは熱で容易に変性してしまうため、この混合溶液を7日間4°Cの 低温でゆっくりと反応させた。っぎに、SH‑Chitosanとジスルフィド結合しなかったbFGFを取 り除くため、7日間4゜Cで透析膜(分子量100,000)を用いて透析した。SH‑Chitosanに対す るbFGFが結合した割合を決定するため、アミノ酸分析を行った。凍結乾燥したbFGF‑Chitosan を高真空脱気下、6N HC1で加水分解(110℃、24h)し、遊離アミノ酸とグルコサミンをアミ ノ酸分析器を用いて測定した。

  凍結乾燥したbFGF‑Chitosan (1.0 mgを1m1のキチナーゼ(2ルg′ml)とキトサナーゼ(4 pg/ml)の混合溶液に加え、37゜Cにて溶解した。1、4、7、10、14日目に放出されたbFGF を含有する上清を新しい溶液と交換した。採取したbFGFを含有した上清はサンプルとして採取 し、.80°Cで冷凍保存したbFGF.Chitosanから放出したbFGFの量はELISAを用いて評価し た。また、14日目に放出されたbFGFの活性を調べるため、細胞増殖能を評価した。細胞増殖 アッセイはヒト線維芽細胞を播種し、サンプル溶液を含んだ培養液で2日間培養した。細胞数は WST・8法にて吸光度を測定することにより計測した。コントロールはbFGFが入ってない群と 14日間37°Cで暴露させたbFGFを入れた群を用いた。

  アミノ酸分析の結果ではbFGF自体から分解されたアミノ酸とキトサンから分解されたD.グル コサミンがbFGF.Chit08anに含まれることが判明した。SH一chitosan分子に対するbFGF分子 の割合は1対160であった。bF(押は経時的に量は減少するものの、14日間放出されることを 確認した。bFGFは24時間で39.7pgのbF(押が放出し、14日後は1.6pgのbFGFが放出され た。また、14日目に徐放されたbFGF群は、2種類のコントロール群と比較し有意に細胞増殖 能を有していた。この結果より、bFGF・Chit08anから徐放されたbFGFが37゜Cの恒温室で温 められても、14日間にわたり細胞増殖能を維持したことが証明できた。また、2種類のコント ロール群の間での有意差はなかった。このことにより、bFGF単独を14日問37゜Cで曝露する とその活性はほとんど失われてしまうこととが示された。

  本研究の限界はbFGFの徐放と細胞増殖能の評価がinvitroでしか行われていないことである。

今後の研究において、inviv0の評価が必要である。

  共有結合にてbFGF‐Chitosanが作製されたことが確認できた。この合成物からbFGFが14 日問活性を保ったまま徐放されたことをinvitroで証明した。この合成物で作製した8caffoldが 欠 損 し た 組 織 の 再 生 を 促 し 、再 生 医学 の 分 野で 応 用 でき る 可能 性 が 大い に ある 。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

学 位 論 文 題 名

塩基性線維芽細胞増殖因子―キトサン複合体(bFGF ―Chitosan) か らの bFGF の 徐 放と 活性 維持 に関 す る研 究

  塩基性線維芽細胞増殖因子(basic Fibroblast Growth Factor以下bFGF)は細胞増殖 因子の1っであり、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞、軟骨細胞などの様々な細胞に 対し細胞増殖を促進させる成長因子として報告されている。実際に、bFGFの臨床応用は 創傷治癒の分野で既に実行されており、優れた結果が報告されている。bFGFは細胞外マ トリックスに含まれるへパラン硫酸またはへパリンなどの多糖類と複合体を形成し内部に 貯蔵されること、細胞外マトリックスとの複合体が生体内における変性や酵素分解から bFGFを保護している可能性などが報告されている。したがって、多糖類のうちの1っで あるキトサンは、生体内と同じ温度下でも同様に生体活性物質を貯蔵できる可能性がある と考えた。キトサンに生理活性物質を導入する手法には、共有結合、ポリイオンコンプレ ックスを用いる手法、埋入・混入による手法が考えられる。共有結合は反応に専門知識が 不可欠であるが、安定性が高く、また徐放化等の制御が可能であることより、大いに発展 性 が期待さ れるため 、この共 有結合を 用い、新規のbFGF―キトサン化合物(以下 bFGF‑Chitosan)を開発した。共有結合で合成したbFGF‑Chitosanは、生体内と同じ 37゜Cという増殖因子にとっては過酷な環境下において、ポリイオン結合や分子間結合 よりも安定性があると考えられる。本研究では、bFGFはSH‑Chitosanと共有結合で結 合 している ためより 長期の徐 放が得ら れると仮説を立てた。本研究では、第一に SH‑ChitosanとbFGFを結合させる方法を確立すること、次に成長因子が変性しやすい 環 境下で14日 後にbFGF‑Chitosan複合体から徐放されたbFGFの量を測定し、bFGFが 活性を保っていることを証明することを目的とした。採取したbFGFを含有した上清はサ ン プルとし て採取し、‑80゜Cで冷凍保存したbFGF‑Chitosanから放出したbFGFの量 はELISAを用いて評価した。また、14日目に放出されたbFGFの活性を調べるため、

細胞増殖能を評価した。細胞増殖アッセイはヒト線維芽細胞を播種し、サンプル溶液を含 んだ培養液で2日間培養した。細胞数はWST‑8法にて吸光度を測定することにより計測 し た。コン トロール はbFGFが入っ てない群 と14日間37゜Cで 暴露させ たbFGFを入 れた群を用いた。bFGFは経時的に量は減少するものの、14日間放出されることを確認 した。また、14日目に徐放されたbFGF群は、コントロールと比較し有意に細胞増殖能 を有していた。本研究の限界はbFGFの徐放と細胞増殖能の評価がin vitroでしか行われ ていないことである。今後の研究において、in vivoの評価が必要である。共有結合にて

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男 則

明 和

浪 田

三 安

授 授

教 教

査 査

主 副

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bFGF‑Chitosanを作製し、この合成物からbFGFが14日間活性を保ったまま徐放された ことをin vitroで証明した。

  審査に当たり、藤堂教授から、bFGFに注目した理由およびChitosanを利用した理由 について質問があった。bFGFが既に臨床応用されていてその有効性・安全性が確立して いる点をChitosanにはアミノ基がっいており化学修飾しやすい点を挙げ適切に回答した。

安田教授からは、in vivoにおけるbFGF‑Chitosanの分解とbFGFの徐放される機序と熱 によってbFGFが失活しなかった機序について、さらにはbFGF‑Chitosanの分解される 最適なcurve patternについての質問があった。Chitosanが生体内ではlysozymeにより 分解されうる点とChitosanとbFGFが高分子化合物となり失活を防いだ可能性を過去の 文献を引用し回答した。また、常に同程度に緩やかに分解させるcurve patternが最適で あると回答した。三浪教授から他の増殖因子やサイトカインなどをbFGFのかわりに導入 できる可能性についての質問があった。同様な手技を用いて、チオール基を含むたんぱく 質をChitosanに導入できる可能性を述べた。

  今回発表した方法は他のgrowth factorに対しても応用できる可能性があり、論文記載 し たscaffold materialは再 生 医 学へ の 応用 が 期 待で きるも のと考え られた。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

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参照

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