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博 士 ( 医 学 ) 松 江 弘 一

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 松 江 弘 一

学 位 論 文 題 名

初代培養ブ夕肝細胞の肝不全患者血漿中における代謝機能

―ハイブリッド型人工肝臓のバイオリアク夕―としての有用性―

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    I.緒言

  多岐 にわたる 肝臓機能を肝細胞によって代行させ、肝不全状態から救命するために、近年、

分離肝 細胞を 応用した ハイブ リッド型 人工肝 臓の研究 開発が盛 んに行われている。1989年以 降当教 室では 、初代培養肝細胞を用いた積層型人工肝臓の開発を行ってきたが、本研究では、

入手困 難なヒ ト肝細胞 に代わ りの培養 ブタ肝 細胞が、 肝不全患 者血漿中で肝細胞機能を発現 するか どうか 、また、 培養ブ タ肝細胞 をバイ オリアク タ―とし て用いることが可能か否かに ついて 検討し た。

    u.方法

1.初代 ブタ肝細 胞培養法:ヨ―クシャ種ブタ(体重約20kg)の肝葉を用い0.05%ラゲナーゼ溶 液 で 潅流 後、 細切、再 度コラゲ ナ―ゼ 溶液で振 盪する 二段階法 により 行った。 低速遠心 操作

(50xg,1分問x5)を 行い、 生存率90% 以上の 肝実質細胞を用いた。コラーゲンをコ―ティング し た35mm培養 器 に10% ウ シ 胎児 血 清と 各種ホル モンを 添加したWi|Iiams E培 地に2x10゜c eI|s/O.2ml/cm の細胞密度で播種し培養を開始し、2時間後LivobitzLー15 medium(以下Lー1 5培 地 ) に 各 種 ホ ル モ ン を 加 え 、 無 血 清 下 に 培 養 継 続 し て3日 後 に 実 験 に 使 用 し た 。 2. ヒト 正 常 血漿 , 肝 不 全患 者 血 漿: ヒト正常 血漿は 健康成人 より採 血した。 肝不全患 者血 漿 は 、肝 胆 道 疾患 で 手 術 後肝 不 全 と診 断 さ れ、coma gradeH〜mの患者に 行われた 血漿交 換 療法の際の廃棄血漿を用い、―80℃凍結保存後、解凍して使用した。

3.実 験 群 培 養 開 始3日 後 に 、 肝 細 胞 を3群 に 分 け 、 さ ら に 培 養 を 継 続 し 検 討 し た 。   I群 :L―15培 地 (n=7) 、H群: ヒ ト 正常 血 漿 (n=3)、m群 : 肝不 全 患 者血 漿 (n〓5) 4.検討 項 目1) 培 養 ブ タ肝 細 胞 の形 態学 的変化: 各群の 培養肝細 胞を位 相差顕微 鏡を用 いて 連日5日問比較観察を行った。2)肝細胞機能評価:  3群に置換直前、置換後1、2、3、5日に尿素 合 成 能 、 糖 新 生 能 、 細 胞 内DNA量 を 測 定し た 。 尿素 合 成 能は 、5mM塩 化 ア ンモ ニ ウ ムを 添 加 し 上清 中 の 尿素 窒 素 量 をジ ア セ チルモ ノオキシ ム法に より、糖 新生能 は、2mMアラニ ン、

2mM乳 酸 を 添加 し 上 清 中の グ ル コー ス量 をグルコ ースオ キシダー ゼ/パ ーオキシ ダーゼ 法で 測 定 し、 ま た 細胞 内DNA量 は 、diamidinophenyl indoleに よ る 螢光 法 で 測定 し た 。血 漿 ア ミノ 酸組成 分析はH、m群につ いてアミ ノ酸18種 を、培養前と培養24時間後に測定、比較した。

さら に分枝 鎖アミノ 酸(BCAA) ロイシン 、イソ ロイシン、バリンの濃度の和と、芳香族アミノ 酸(AAA)チロシン、フェニ―ルアラニンの濃度の和との比(Fischer比)を検討した。得られた 数 値 は平 均 値 土標 準 偏 差 で示 し 、 比較 検 定 にはPairedttest. Wilcoxon Signed Rank tes tを用い、危険率5%以下(pく0.05)を有意差有りと判定した。

(2)

    111.結果

1. 培養ブタ 肝細胞の 形態学 的変化: 5日間に わたり飽 和密度 で維持さ れ、3群問に形態学的 差異 を 認 め なかっ た。m群では 、細胞表 面にフィ ブリン 様物質の 析出を 観察した が、細 胞へ の形態的影響はなかった。

2.肝細胞 機能評価1) 尿素合成 能:各群 培養開 始時の尿 素合成 能は,1.84土0.38ng/〃gDN A/minで、各群とも1日後に上昇し2.90土0.69,2.55土1.80,2.8441.64 ngノハgDNA/minと なっ た が 、5日 後 に 低下 し ほ ぼ同 値 を 示した 。群問 の比較で は、3日後にm群はn群に 比して 有意に高、値であり、経過を通じm群は比較的高値を推移した。

2) 糖新生能 :各群培 養開始 時の糖新 生能は 、23.57土11.Olng/y gDNA/minで、各群とも2日 後には 低下し、IIr群 は2日後に3.09土1.52ng/p gDNA/minとなり以後5日後まで低値を推移し た。 し か し 、I、H群も5日 後に は 低 下し 、3群ほぼ 同値であ った。 群間では 、m群 はI群に比 し て 3日 後 有 意 に 低 下 し た が 、 1、 2、5日 後 に は3群 問 に 差 を 認 め な か っ た 。 3)細 胞 内DNA量 :培 養 開 始時1.85土O.39yg/cm が、 各 群 培養 経 過と共に 低下傾 向を示 し、5日後にはO.64土O.24、0.97土0.27、1.38土0.43ハg/cm であった。m群では3日以後同 じレ ベ ル を 維持 し て いた 。 群 問で は 、5日後 にI、m群 問でni群が 有意に 高値であ った。4) 血漿 ア ミ ノ 酸組成 の変化: 培養前 血漿の総 アミノ 酸量は、m群が1I群に比 して増加 傾向を 示 し、 フ ェ ニ ―ルア ラニン、 チロシ ン、リジ ンが有 意に高値 であった 。Fischer比はH群4.17 土O.57、m群1.79土0. 74で、H群が有意に低値であった。ブタ肝細胞と接触後のアミノ酸組 成でII群 では 、メチ オニン、 グルタ ミン、ア ルギニ ンが有意 に低下 したが、AAAは滅 少しBC AAは増加 傾向を認 たため ,Fischer比 は培養 後3.58土O.85に低下した。また皿群では、培養 後パリ ン、ロイ シン、 イソロイシン、グルタミン、アルギニン、シトルリンが有意に減少し、

その結果AAA、BCAA共に有意に減少したため、Fischer比は培養前の1.79土0.74から2.OI土1. 16へと上昇したが、有意差を認めなかった。

    N.考案

  積屑 型人工肝 臓に培 養ブタ肝 細胞が応 用可能 かについ て検討 するため に、ブタ肝細胞を肝 不全 患者血漿 中で培養 し、肝 細胞機能 の測定 と形態学 的観察 を行った 。形態学的にブタ肝細 胞は 、肝不全 患者血漿 中でも 脱落や空 胞変性 をみとめず5日問維持され、糖新生能、尿素合成 能は 正常血漿 やL−15培地と 比較して も十分 にその機能を発現した。またアミノ酸分析の結果 では 、種々の アミノ酸 と同時 にAAAが 減少し 、また、BCAAも低下 したためFischer比の有意の 改善 には至ら なかった が、培 養肝細胞 は患者 血漿中で アミノ 酸を代謝 機能を発現していた。

以上 より培養 ブタ肝細 胞は肝 不全患者 血漿中 でも代謝 機能を 発現し維 持できることを示した が、 今回検討 では多岐 にわた る肝細胞 機能の 代表的な ―部で あり、ま だ十分に解明されてい ない 機能もあ るため、 培養ブ タ肝細胞 の評価 は今後の 実験や 臨床的考 察を通じ、さらに評価 され るものと と考える 。また 、免疫学 的問題 の解決の ―っと して抗ブ タ肝細胞抗体の除去に 血漿 分離膜の 利用も可 能と考 えるが、 さらに 検討を必 要とす る。以上 より、培養ブタ肝細胞 が、 肝不全血 漿中で肝 細胞機 能を発現 するこ とから、 臨床応 用に向け た人工肝臓としてのシ ステ ムを検討 すること により 、ブタ肝 細胞を バイオリ アクタ ―とする 積層型人工肝の開発の 可能 性が示唆 された。

    V.結語

1.培養ブタ肝細胞は、肝不全患者血漿中でその形態を良好に維持し、尿素合成能、糖新生能、

細 胞 内DNA量 は 、 培 養 開 始 後 低 下 し た が 、5日 問 に わ た り そ の 機 能 を 維 持 し て い た 。 2.培 養 ブ タ肝 細 胞 は、 肝 不 全患 者 血漿 中で増 加するり ジン、ロ イシン 、イソロ イシン を有 意に低 下し、フ ェニー ルアラニ ン、チロ シンを 低下させたが、Fischer比の有意の上昇を認め なかった.

(3)

以上より、培養ブタ肝細胞は肝不全患者血漿中で肝細胞機能を発現することが明らかとなり、

積層型人工肝のバイオリクタ―としての有用性が示唆された,

269――

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

初代培養ブ夕肝細胞の肝不全患者血漿中における代謝機能

― ハ イブ リ ッ ド型 人 工肝 臓 の バイ オ リ アク タ ーと し て の有 用 性一

  多岐にわ たる肝臓 機能を代 行させ、 肝不全状 態から救 命するため に、近年 、分離肝 細胞 を応用し たハイブ リッド型 人工肝臓 の研究開 発が行わ れている。1989年以降当 教室では 、 初代培養 肝細胞を 用いた積 層型人工 肝臓の開 発を行っ てきたが、 本研究で は、入手 困難な ヒト肝細 胞の代わ りに培養 ブタ肝細 胞が、肝 不全患者 血漿中で肝 細胞機能 を発現し 、ハイ ブリッド 型人工肝 臓のバイ オリアクターとして用いることが可能か否かについて検討した。

  培養ブタ 肝細胞に は、ヨー クシャ種 ブタの肝 葉を用いO. 05%ラゲナーゼ溶液で潅流後、

分散し、 低速遠心 操作を加 え、生存 率90%以上 の肝実質 細胞を、コ ラーゲン をコーテ ィン グし た35mm培 養器 に 、10% ウシ 胎 児 血清 と 各種 ホ ル モン を 添加 し たWilliams E培地 に て培養を 開始した 。2時間後LivobitzL―15 me(mm(以 下L―15培地 )に各種 ホルモンを 加 え、無血 清下に培 養を継続 した。培 養開始3日 後に培養 肝細胞をI群:L―15培地(n=7)、

U群:ヒト 正常血漿 (n=3)、m群:肝不 全患者血 漿(n=5) の3群に分け 、培養を5日問継 続し、培 養ブタ肝 細胞の形 態学的変 化を位相 差顕微鏡 を用いて観 察した。 また肝細 胞機能 評価とし て尿素合 成能は、 ジアセチ ルモノオ キシム法 により、糖 新生能は グルコー スオキ シ ダ ー ゼ / パ ー オ キ シ ダ ー ゼ 法 、 細 胞 内DNA量 はmamid血ophenyhndoleに よ る 蛍 光 法 で測定し、3群に置換直前、置換後1・2・3・5日に測定し比較検討した。さらに血漿アミノ酸 組成 分 析 はn.m群に つ いて 、 そ れぞ れ 培養 前 と 培養24時間 後に測定し 、また分 枝鎖アミ ノ酸 $CAA)と 、 芳 香族 ア ミノ 酸 ( ´払A) の モル 濃 度 の比 ぼischer比)を求 め比較検 討 した。培 養に用い たヒ卜正 常血漿は 健康成人 より採血 し、肝不全 患者血漿 は肝胆道 疾患で 手術 後 肝 不全 と 診 断さ れ 、ComagradeH〜 ロIの 患 者 に行 わ れ た血 漿 交換 療 法 の際 の 廃棄 血漿 を 用 い、 ―80℃ 凍 結保 存 後 解凍 し て使 用 し た。 得 ら れた数値は 平均値土 標準偏差 で 示 し 、 比 較 検 定 に はPairedttest、W沚oxonSignedRanktestを 用 い、 危 険率5% 以 下 (p く0.05)を 有意差有 りと判定 した。

  各群の培 養ブタ肝 細胞の形 態学的変 化は、5日 間にわた り飽和密度 で維持さ れ、3群間 に 形態 学 的 差異 を 認 めな か った 。m群で は、細胞 表面にフ アブリン様 物質の析 出を観察 した が、細胞 への形態 的影響は なかった 。培養ブ タ肝細胞 の機能は、 尿素合成 能では各 群とも 培養開始 より1日後 には上昇 したが、5日後には低下しほば同値を示した。群間の比較では、

一 彦

純 邦

野 林

内 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

3 日後にm 群はn 群に比して有意に高値であり、経過を通じm 群は比較的高値を推移した。

糖新生能は、m 群では2 日以後 5 日目まで低値を推移した。しかし、I 、I 群とも5 日後には 低下し、3 群ほぼ同値であった。群間では、ni 群はI 群に比して3 日後有意に低下したが、

1 、2 、5 日後には3 群問に差を認めなかった。肝細胞内DNA 量は、各群とも培養経過と共に 低下傾向を示したが、m 群では3 日以後同じレベルを維持していた。群間では、5 日後にI 、 m 群間でni 群が有意に高値であった。血漿アミノ酸組成の変化は、培養前血漿の総アミノ 酸量は、m 群がn 群に比して増加傾向を示し、フェニルアラニン、チロシン、リジンが有 意 に高値であった。Fischer 比はn 群4.17 土 O . 57 、 m 群1 .79+0. 74 で、m 群が有意に低 値であった。ブタ肝細胞中で培養後のアミノ酸組成でn 群では、メチオニン、グルタミン、

アルギニンが有意に低下した。またm 群では、培養後フェニルアラニン、メチオニン、バ リン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アルギニン、が有意に減少し、その結果A AA 、BCAA 共に有意に減少した。しかし Fischer 比は、培養前の1 . 79 土O .74 から2 .01 土 1 . 16 へと上昇したが有意差を認めなかった。

   積層型人工肝臓の培養ブタ肝細胞は、プラズマセパレーターによって分離された血漿と 直接接触するため、肝不全患者血漿中で肝細胞機能を維持できなければならない。このた め培養ブタ肝細胞を肝不全患者血漿中で5 日間培養し、形態観察と肝細胞機能の測定を行 い以下の結果を得た。1 .培養ブタ肝細胞は、肝不全患者血漿中でその形態を良好に維持さ れた。2 .尿素合成能は高値を推移した。3 .糖新生能は培養開始後低下したもが、その値 は低いが維持された。4 .細胞内DNA 量は良好に維持された。5 .培養ブタ肝細胞は、肝 不全患者血漿中で増加するフェニルアラニン、メチオニン、バリン、ロイシン、イソロイ シン、アルギニン、グルタミンを有意に低下させ、低下していたFischer 比の改善傾向を 示しアミノ酸代謝能を有していた。

   審査にあたって、小林教授より肝細胞機能測定上の問題点、肝細胞培養時のへパリン添 加の意義、異種肝細胞を用いた人工肝臓の臨床応用時の異種蛋白の影響について、劔物教 授よルバイオリアクターとしてブタ肝細胞を選択した根拠、フィブリン様物質の肝細胞に 与える影響、種々の病態の肝不全に対して適応可能か普遍性のある結果か否かにっいて、

また加藤紘之教授より肝不全血漿と正常血漿での機能の差の原因、人工肝臓臨床応用時の 肝 細 胞 機 能 維 持 に 関 し て の質 疑 が あ っ た が 、 申請 者は 概ね妥 当な 解答 を行 った。

   以上より、培養ブタ肝細胞は肝不全患者血漿中で肝細胞機能を発現することが明らかと な り、 ハイ ブリッ ド型 人工 肝臓 のバイ オリ アク ター として の有 用性が示唆された。

   審査員一同は、これらの研究成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、

申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学位 を 受 け る に 充 分 な資 格を 有する もの と判 定し ・た。

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