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博 士 ( 医 学 ) 笠 松 純

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 笠 松    純

学 位 論 文 題 名

Variable lymphocyte receptor の 遺 伝 学 的 解 析

【 背 景 と 目的 】

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

抗原レセプターであるB cell receptor  (BCR)とTcell receptor  (TCR)は遺伝子の再構 成によって多様な抗原結合領域を形成し,進入してきた抗原を直接,あるいは主要組織適合 遺 伝 子 複 合 体(MHC)を 介 し て 抗 原 特 異 的 に 認 識 す る 。 し か し ,TCR/BCR/MHCは 有 顎 脊椎動物でのみ同定され,無顎脊椎動物(メクラウナギ類・ヤツメウナギ類)や無脊椎動物 では 同定 され て いな い。近年,TCR/ BCRと同様に,遺伝子の再構成によっ て多様性を創 出する新規抗原レセプターvariable lymphocyte receptor(VLR)がヤツメウナギ類で発見 された。VLRはleucine‑rich repeat (LRR)から構成されるglycosyl phosphatidylinositol (GPDア ン カ ー 型 夕ン バク 質で あり ,細 胞ご とにLRRの 配列 と数 に多 様性 が生 じる 。さ ら に ,LRRのN末 端 とC末 端 側 に 存 在 す るN末 端LRRド メ イ ン(LRRNT)お よ びC末 端LRRド ヌ イ ン(LRRCT)も 多 様 性 に 寄 与 す る 。 こ れ ま で にVLRAお よ びVLRBが 同 定 され てい る。 血 清中 に抗 原特 異的VLRBが分 泌さ れる こと から ,VLRBは 抗 体として機能 している。本研究では,VLRの遺伝学的基盤を明らかにする目的で,@既知のVI」Rとは異 な る 新 規VLR遺 伝子 の同 定, ◎ メク ラウ ナギ 類VLR遺 伝子 の 染色 体マ ッピ ング ,◎VLR と類 似し たド メ イン 構造を有するナメクジウオ類LRR含有遺伝子(LRR‑containing gene:

五ビのの同定をおこなった。

【 材 料 と 方 法 】

@ウミ ヤツメ由来expressed sequence tagのデータベースを構 築し,既知のVLRを用いて 相 同 性 検 索 を お こ な っ た 。 得 ら れ たVLR様 遺 伝 子 (VLRJike)の 完 全 長cDNA配 列を 決 定し, 各種配列解析をおこなった。また,組織分布と発現量,および免疫刺激に対する応 答 性を 調べ る ため ,RT‑お よびReal‑time PCRをおこなった。また,GPIアンカー型夕ン バク質 か否かを調べるため,VLR‑likeを強制発現させた培養細 胞を用いてGPIのアンカー 部位を 切断するphosphatidylinositol‑specific phospholipaseC(PI‑PLC)処理し,フ口ーサ イ トメ トリ ー にて 解析 した 。◎ メク ラウ ナギ 類VLRAおよびVLRBをコードするbacterial artificial chromosome (BAC) DNAを用いたfluorescenceinsitu hybridization (FISH)解 析をお こない,染色体上の位置を同定した。◎既知のル.ロを用いて相同性検索をおこなっ た。

【結果】

@同定されたVLR‑likeのドメイン構造および再構 成前のgermline VLR構造(ぎぬ・めを含 むゲノム構造を既知のVLRと比較したところ,ル.ロ.likeのそれら構造は既知のVLRと基 本 的 に 一 致 し てし ゝた 。し かし ,ぎ VLRAとぎVLRBではLRRNTとLRRCTの一 部ま たは 完 全 な 欠 失 が 見 られ るの に対 し, ぎルR・Zえbで は完 全なLRRNTおよ びLRRCTが存 在し て いた。単一遺伝子座からLRRの配列と数を異にする多様な転写産物が得られた ことから,

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VLR‑likeは遺 伝子 の再 構成 をお こ なう こと が示 唆さ れた。 よって,VLR‑likeをVLRCと 命 名 し た 。VLRCで は ぎ ル .ロ ビ由 来のLRRNTとLRRCTを含 む 転写 産物 が発 現さ れる 。 また,LRRCTでも 遺伝子の再構成が生じるものの,その多様性は低いことが示唆された。

PI‑PLC処 理実 験か ら,VLRCはGPIアン カー 型夕 ンバ ク質 であ る こと が示 され た。 立体 構 造 の 予 測 を お こ な っ た と こ ろ ,VLRCのLRRCTに はVLRAお よ びVLRBが 有 す る 多 様 性に富む突出構造が存在しなかったことから ,他のVLRと異なる立体構造を持つことが予 測さ れた。VLRCの組織発現分布を調べたところ,末梢血自血 球で最も発現が高かった。

しかし,その発現量はVLRBの発現量と比較し て60 ‑‑‑100倍程度低く,免疫刺激による発 現 亢 進 も 見 ら れ な か っ た 。◎FISH解析 の結 果か ら,VLRAお よびVLRBは同 一染 色体 上 に離 れて存在していることが示された。◎探索の結果,約400個のLCGを同定した。多く のLCGは膜貫通領 域を持ち,レセプターとして機能していることが示唆された。レセプタ ー 型LCGは ロ . ロ と 同 様 にLRR関 連 ド メ イ ン(LRR,LRRNT,LRRCT)の み か ら な る LRR型 と ,LRR関 連 ド メ イ ンとIg様 ドメ イン を含 むLRR/Ig型 に大 別さ れた 。ま た, こ れ ら の 遺 伝 子 群 の LRRの 数 や 配 列 は 遺 伝 子 に よ っ て 異 な っ て い た 。

【 考察】

@ 本 研 究 で 同 定 さ れ たVLRCは 完 全 なLRRNTとLRRCTを 有 し て い る こ と か ら , 最 も 原 始 的な 構造を維持するVLRであることが示唆された。また,LRRNTが多様性に寄与せず,

LRRCTの 多 様 性 も 低 い こ と か ら ,VLRCで はLRRが主 たる 多様 性を 創出 する こと が示 唆 さ れ た 。VLRCはVLRBと 同 様 にGPIア ンカ ー型 夕ン バク 質で あり , かつC末 端に は多 量 体形成に重要な複 数のシステイン残基を持つことから,VI」RCは膜表面に発現するレセプ タ ー型 以外に,分泌型として放出される可能性が ある。VLRBの発現を誘導する免疫刺激 で もVLRCの 発現 が誘 導さ れず ,正 常 状態 での 発現 量も 低い ことから,VLRBとは異なる 機 能を 有す るこ とが 示唆 され た。VLRCのLRRCTに は可変性に富む突出構造が存在せず,

そ の配 列の 多様 性が 低い こと からVLRBと は異 なる 抗原 結合 様式をとり,VLRBとは異な る 抗原 を認 識す る可 能性 があ る。 ま た, ◎染 色体 進化 の過 程でVLRAとVLRBが離れたこ とは,組換えや遺伝子変換を抑制し,両遺伝子の機能的分化を促進した可能性がある。◎現 在,ウニゲノムやナヌクジウオゲノムでは,toll‑like receptorなどのパターン認識レセプタ ー(PRR)が著 しく 増加 して いこ とか ら ,LCGはPRRと して 機能 して いる 可能 性が ある 。

【結 論】

本研究と最近の研究報告を合わせると,生物はその進化の過程で二種類の生体防御戦略を獲 得した ことが示唆される。すなわち,第一の戦略は遺伝子重複 によってPRRの数と種類を 増加させることで進入してくる抗原に対抗する戦略である。第二の戦略は少数の遺伝子が多 様性を 創出する機構を獲得し,進入してくる抗原に対抗する戦略である。また,VI亅Rは抗 体が認識しにくい糖鎖を認識することから,抗体に替わる実験試薬や診断試薬,治療薬とし て使用 できる可能性がある。したがって,VLR研究は生物学と医学をつなぐトランスレー ショナル・リサーチとなり得る。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 准教授

有賀 小野江 笠原 畠山 岩渕

学 位 論 文 題 名

    正 和則 正典 鎮次 和也

Variable lymphocyte receptor の遺伝学的解析

  学位 申請 者笠 松純 の学 位論 文審 査 は、 平成21年2月4日午 後1時から2時まで 医学研究 科 長室 にお いて 行わ れた 。

((学位論文の内容要約))

  Variable lymphocyte receptor(VLR)は無顎脊椎動物(ヤツヌウナギ類とメクラウナギ類)

に固有の抗原レセプター分子であり、T細胞レセプ夕一やB細胞レセブターと同様に遺伝子 の再 構成 によ って多様性を獲得する。現在までに 瓰脳およびVLRF3の2遺伝子が同定され ている。抗原特異的なVLRBが血清中に分泌され、かつ主要な凝集反応因子であることから、

VLRは抗体として機能してい ることが明らかとなっている。申請者は、@新規VLR遺伝子の 単離 ・同 定、 @メクラウナギVLR遺伝子の染色体マッピング、◎ナメクジウオVLR様遺伝 子の同定にっいて、それそれ得られた研究成果を発表した。@では相同性検索によって同 定した新規VLR遺伝子、VLRCの遺伝学的解析と発現解析からその機能について議論した。

次い で、 ◎で は同一染色体上に2っのVLR遺伝子が 連鎖していることから、染色体進化に 伴うVLRの機 能分化に ついて議論した。次いで、◎ではVLRのドメイン構造と類似した多 数の遺伝子群をナメクジウオゲノムから同定し、その機能にっしヽて推察した。最後に申請 者の研究成果および近年報告されている研究結果を総合的に概観することにより生物の抗 原 認 識 戦 略 の 多 様 性 に つ し ヽ て 言 及 し 、VLR研 究 の 医 学 へ の 応 用に つい て論 じた 。

((質疑応答の内容))

  有賀正教授から、生体内におけるVLRの半減期および補体因子との関連性についての質 問があった。申請者はVLRの半減期につしヽては未だ不明であるが、免疫後の抗血清を用い ることで補体価が上がるという過去の研究を弓I用し、VLRと補体因子の相互作用が存在する 可能性があると回答した。次いで小野江和則教授より、申請者が同定した新規VLR遺伝子、

VLRCの遺 伝子 発現が非常に低いことから、VLRCがヒトイム丿グロブリン(Ig)Dのように 特殊な機能を有している可能性が指摘された。加えて、無顎脊椎動物がもっりンバ球の種 類にっいて質問があった。申請者は前者の質問に対しては、抗VLRC抗体を用いたウエスタ ンブロット解析からVLRCをタンバク質として検出していることを述ベ、VLRCが特殊な免疫 機能を有している可能性があると回答した。また後者の質問に対しては、VLRAおよびVLRB はそれそれ異なる細胞集団で発現されていることから 、少なくとも機能的に分化した2種 類のりンバ球が存在すると考えられると回答した。次 いで畠山鎮次教授からVLRの多量体

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化機構について質問があった。申請 者は培養細胞系でVLRが多量体構造を形成すること、

およびC末端側のシステイン残基が分泌型VLRで保存されているという過去の研究を引用 し、VLRの多量体化はヒトIgのように他のタンパク質因子(J鎖)を必要とせず、C末端の システイン残基によるジスルフィド結合によって生じる可能性を指摘した。次いで岩渕和 也准教授からりンバ球は単一のVLR分子を発現しているのか否か、また機能的に胸腺に相 当する器官が無顎脊椎動物に存在するのか否かについて質問があった。申請者は前者の質 問に対して、過去の研究から対立遺伝子排除が報告されていることを述ペ、無顎脊椎動物 のり ンバ 球は ヒ トのT細胞やB細胞と同様に単一のVLR分子を発現していると考えられて いると回答した。また後者の質問に対して、無顎脊椎動物では胸腺に相当する器官が発見 されていないと回答した。さらに、無顎脊椎動物の腸管縦隆起では幼生期にはりンバ球の 分裂が盛んに認められるが、同隆起は成体になると退縮することから胸腺と類似した免疫 学的・発生学的特徴を示すことについて述ベ、無顎脊椎動物では腸管縦隆起が胸腺として 機能している可能性があると回答した。最後に、指導教員である笠原正典教授から、本研 究の歴史的背景と今後の研究の展望について質問があったが、申請者は具体例を交え、適 切に回答した。

((学位 論文に対する審査員の評価))

  この論 文内容は、Immunogenetics誌やGenome Research誌等に掲載され、国際的に高く 評価され ている。審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や 取得単位 なども併せ、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するもの と判定し た。

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参照

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