• 検索結果がありません。

博 士 ( 医 学 ) 松 本 敏 明

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 医 学 ) 松 本 敏 明"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 医 学 ) 松 本 敏 明

学 位 論 文 題 名

単 純 性 血 管 腫 に 対 す る 色 素 レ ー ザ ー な ら び に ア ル ゴ ン レ ー ザ ー の 治 療 効 果 の 検 討

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    I

研究 目的

  

色 素レ ― ザ― を用 いた 単純 性血 管腫 の治 療は、従来のアルゴンレーザ―療法の問題点を 解決 した 方 法と して 、現 在レ ーザ ー治 療の 主流を占めている。しかし包素レ―ザ―の有効 性に つい て 従来 のア ルゴ ンレ ーザ 一療 法と 系統的に比較した報告はほとんどない。著者は 単純 性血 管 腫に 対し てア ルゴ ンレ ーザ ーお よび色素レ―ザーを用いて治療を行ない、レー ザ― 治療 か らみ た組 織型 分類 、二 種の レー ザ―の適切な照射条件の設定、組織学的および 臨床 的経 過 から みた 各々 のレ ーザ ―の 治療 効果の相違ならびに二種のレーザーで治療を行 ない 長期 経 過観 察の でき た218症 例に っ いて 、そ の治 療効 果を 比較 し、統計学的分析を行 なっ た。

    H

単純 性 血管 腫の 組織 型分 類と 部位 別分 布

  

レー ザ― 光の 皮膚 内深 達性 とレ ーザ ― 療法の治療効果から、単純性血管腫の組織型を浅 在 型と 全眉 型の 二型 に分 類し た。 浅在 型 は血管腫組織が主として真皮上層に限局して分布 す る も の で 、 全 層 型 は 血 管 腫 組 織 が 真 皮 下 層 に ま で お よ ぶ も の と し た 。

  

対象 は434例の 単純 性血 管腫 とし 、こ の組 織型 比率 と身 体部 位別 分布にっいて検討した

。 こ の 結果 、浅 在 型は

137

例(32め、 全層 型は

297

(68

めで あっ た。 また 部 位分 布で は顔 面 ・ 頸 部 で は 躯 幹 ・ 四 肢 に 比 較 し て 浅 在 型 血 管 腫 が 多 か っ た (

p

O

 005)     m

至 適レ ーザ ー照 射条 件の 検討

  

単純 性血 管 腫に 対す るア ルゴ ンレ ―ザ ーと色素レーザ―の至適照射条件を検討し た。ア ル ゴン レ― ザ ―治療の至適照射条件は、出力51V ‑照射時間O.2秒・スポット径4 mmで、エ ネ ルギ ー密 度 は約8 J/cm2で あった。色素レーザ―治療の至適エネルギー密度は7 J/cm ( 照 射時 間450ロsec、照 射ス ポッ 卜径

5mm)

であ った 。

    IV

二種 の レー ザー 治療 効果 にっ いて の組 織学 的検 討

  

アル ゴン レ ―ザ ―治 療と 色素 レ― ザ一 治療の相違にっいて、組織学的に比較検討した。

照 射後

24

時 間 目の 組織 所見 は両 レー ザー 共に拡張血管内に赤血球の熱凝固変性が認められ 血 管壁 の変 性 壊死 も認 めた 。ア ルゴ ンレ ―ザ一照射部位では拡張血管周囲の正常な真皮や 付 属器 等ま で も非 特異 的な 熱凝 固変 性が 併発 し、 表在

n

度熱 傷様 の所見であった。一方、

包 素 レ ーザ 一治 療 部位 では 周囲 正常 組織 に対 する 熱変 性所 見は 軽微 であ っ た。 照射 後40 月 日の 組織 所 見で は両 者共 に真 皮上 層の 拡張血管は消失していたが、アルゴンレーザ一治 療 部位 では 真 皮上 層の 周辺 組織 に瘢 痕化 の所見を認めたが、色素レ―ザ一治療部位ではこ の 瘢痕 化は 極 めて 軽度 であ った 。

195

(2)

    V臨床効果の統計学的検討

1.対象。対象は北海道大学附属病院形成外科においてレーザー治療を行い、4〜6カ月 の経過観察ができた単純性血管腫症例218例である。対象症例を以下の三群に分類した。

A群(比較照射群):アルゴンレ―ザ一治療部位に隣接して色素レ―ザ一治療を行ない比 較検討した50症例。B群(追加照射群):以前に行なったアルゴンレ―ザー治療部位に包 素レ―ザ―で追加治療を行なった97症例。C群(色素レーザー単独照射群):アルゴンレ ー ザ ― 治 療 歴 が な く 、 色 素 レ ー ザ 一 単 独 で 治 療 を 行 な っ た 71症 例 。   対象とした218症例の治療部位別の内訳は顔面122例、頚部23例、躯幹17例、上肢36例

、および下肢20例であり、血管腫の深度は、浅在型が52fir4 (24X)で全層型は166例(76X) であった。各群における浅在型と全層型の比率では群間に有意差は認められなかった。

2.治療成績の評価方法。  治療効果の判定は1回のレ―ザー照射後4か月日で行ない、

色調の消退効果を組織分類別および部位別に判定した。

  包調の消退効果は三段階評価とし、赤色調が完全に消退したか、ほほ完全消退に近いも のを著効、治療前に比較して赤色調が種々の程度に軽快したものを有効、および治療前に 比較して全く消退していないかほとんど変化のないものを無効とした。副作用である皮膚 の癜痕化と包素沈着は、その程度によって三段階の評価とした。各々一見して著明なもの を高度 、中 等度 に認 めら れる もの を軽 度、 所見 の認められないものを無しとした。

  消退効果の統計学的処理は著効・有効と無効の二群間で行なった。治療成績の統計学的 検 定 方 法 に はklann‑Tthitney(U―test) を 用 いpく0.05を 有 意 と し た 。 3.結果。1)包素レーザ―治療を行なった部位では、著効は58{fl (36%)、有効は143 例(57%)、および無効は17{9(7%)であった。アルゴンレ―ザ―治療部位と比較でき たA群B群では、消退効果は包素レ―ザ―治療部位で有意に優れていた(pくO.01)。

2)瘢痕化は、A群B群のアルゴンレーザ一治療部位に比較して包素レ―ザー治療部位で は瘢痕化は認められなかった。(pく0, 01)。

3)色素沈着は包素レ―ザ一治療部位ではアルゴンレ―ザ―治療部位に比較して有意に軽 度で、回復期間も4か月以内と短かった(pく0. 01)。

4)単純性血管腫の組織型別では、包素レ―ザーの消退効果は浅在型症例52例では著効例 が39UJ (75X)と有意に多かった。一方、全層型の症例166例では著効例は19例(11めと少 なく 、 不 完 全 な 消 退 を 示 す 有 効例が130例(78めと 有意 に多 かっ た(pくO.01)。

5)身体各部位による色素レーザーの消退効果の違いは、顔面と頚部が他の部位に比較し て極めて良好であった(pくO. 01)。

6)四肢や躯幹にある血管腫のアルゴンレ―ザー治療は副作用が生じやすく限界があった が、 色 素 レ ― ザ ー に よ り 安 全 な治療 が可 能と なり 総合 的な 治療 効果 は向 上し た。

    VJ‑考案

  本研究は二種の興なったレーザーを用い、その治療の効果の相違にっいて検討した。消 退効果にっいては浅在型では両者共に一回の照射で著明に消退するが、全層型では表層の みが軽快して深在部の血管腫は残存し数回の治療が必要であった。臨床効果はアルゴンレ ーザ一治療部位では種々の程度の瘢痕化が出現するために、包素レーザ―治療部位のほう が治療効果が優れていた。この臨床効果の差異は両者の発振形式の相違、すなわちアルゴ ンレーザーの連続発振形式が問題であり包素レーザーのパルス発振形式によるところが大 である。連続発振形式では血管腫組織の熱緩和時間を越えて照射することとなり、皮膚の 血 管 腫 以 外の 組織に 熱的 損傷 を与 えて 瘢痕 化を 生じ るこ とに なる と考 えられ る。

    vu結語

  本研究は単純性血管腫に対する包素レ―ザ―ならびにアルゴンレーザーによる治療を行 ない、その治療効果の相違に関して基礎的および臨床的に検討した。この結果、色素レ―

ザーは従来のアルゴンレーザーに比較して単純性血管腫症例の治療に安全で、かつ治療成 績も良好であり、非常に有用であることが認められた。

    ‑196一

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

単純性血管腫に対する色素レーザーならびに アルゴンレーザーの治療効果の検討

I研究目的

  単純性血管腫に対する色素レーザーとアルゴンレーザーの治療効果の相違について基礎 的ならびに臨床的な比較検討を行なった。

n研究方法

  二種のレーザー治療の効果の相違にっいて、以下の項目について比較検討を行なった。

1.単純性血管腫の組織型分類と部位別分布。2.至適レーザー照射条件の検討。3.組織学的 見 地 か ら み た ニ 種 の レ ー ザ ー 治 療 効 果 の 相 違 。4臨 床 効 果 の 統 計 学 的 検 討 。 1.単純性血管腫の組織型分類と部位別分布

  単純性血管腫の組織型を浅在型と全層型の二型に分類した。浅在型は血管腫組織が真皮 上眉に限局して分布するもので、全層型は血管腫組織が真皮下層にまでおよぶものとした

。434例の単純性血管腫の組織型比率と身体部位別分布にっいて検討した。組織型では浅 在型は137ffl (32%)、全層型は297J (68%)であった。また部位別分布では顔面・頚部では 躯 幹 ・ 四 肢 に 比 較 し て 浅 在 型 血 管 腫 が 多 か っ た ( pく O.  005)。 2.至適レーザー照射条件の検討

  単純性血管腫に対するアルゴンレ―ザーと色素レーザ―の至適照射条件を検討した。ア ルゴンレーザ一治療の至適照射条件は、出力5W.照射時間O.2秒・スポット径4mmで、エ ネルギー密度は約8 J/cm゜であった。色素レーザー治療の至適エネルギー密度は7J/cm ( 照射時間450ロsec、照射スポッ卜径5舳)であった。

3.組織学的見地からみた二種のレーザー治療効果の相違

  二種のレーザ―治療の相違にっいて、組織学的に比較検討した。照射後24時間目の組織 所見は両レーザー共に拡張血管内に赤血球の熱凝固変性および血管壁の変性壊死を認めた

。アルゴンレーザ一照射部位では拡張血管周囲の貞皮や付属器等に非特異的な熱凝固変性 が併発し、浅達性n度熱傷様の所見であった。ー方、包素レーザ一治療部位では周囲組織 に対する熱変性所見は軽徽であった。照射後4ケ月目の所見では両者共に真皮上層の拡張 血管は消失していた。アルゴンレーザ―治療部位では真皮上層の周辺組織に瘢痕化の所見 を 認 め た が 、 包 素 レ ― ザ ― 治 療 部 位 で は こ の 瘢 痕 化 ほ 極 め て 軽 度 で あ っ た 。

― ・197 ‑

彦 夫 彦 武征 英 浦 山 田 大犬 松 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(4)

4臨床効果の統計学的検討

  対象とした218症例を三群に分類した。A群(比較照射群):アルゴンレーザ一治療部 位に隣接して包素レーザー治療を行ない比較検討した50症例。B群(追加照射群):以前 に行なったアルゴンレーザ一治療部位に色素レーザーで追加治療を行なった97症例。C群

(包素レーザ一単独照射群):アルゴンレーザー治療歴がなく、色素レーザー単独で治療 を行なった71症例。218症例の治療部位別の内訳は顔面122例、頚部23例、躯幹17例、上 肢36例、および下肢20fflであり、血管腫の深度は、浅在型が52例(24めで全層型は166例

(76めであった。

  治療効果の判定は1回の照射後4か月目で行ない、色調の消退効果等を組織分類別およ び部位別に判定した。色調の消退効果は、著効、有効、無効の三段階評価を行い、瘢痕化 と色素沈着の副作用も同様の三段階評価を行なった。また治療成績の統計学的検定方法に はhtann‑Whitney(U−test)を用いpく0.05を有意とした。

  臨床効果の結果は以下の点が認められた。1)包素レーザ―治療部位では、著効80例(

36%)、有効121例(57%)、および無効17例(7%)であった。アルゴンレ―ザ―治療 部位と比較できたA群B群では、消退効果は包素レーザー治療部位で有意に優れていた(

pく0. 01)。2)瘢痕化は、A群B群のアルゴンレ―ザ―治療部位に比較して色素レーザ ー治療部位では瘢痕化は認められなかった。(pくO. Ol)。3)色素沈着は色素レーザ一 治療部位ではアルゴンレーザー治療部位に比較して有意に軽度で、一遇性変化であった(

pく0. 01)。4)単純性血管腫の組織型別では、色素レーザーの消退効果は浅在型症例52 例では著効例が41W (782;)と有意に多かった。ー方、全層型の症例166例では著効例は39 例(24粉と少なく、不完全消退を示す有効例が110例(66めと有意に多かった(pく0. 01)

。5)身体各部位による色素レーザーの消退効果の違いは、顔面と頭部が他の部位に比較 して極めて良好であった(pく0. 01)。

m結語

  本研究は単純性血管腫に対する包素レーザーならびにアルゴンレ―ザーによる治療を行 ない、その治療効果の相違に関して基礎的および臨床的に検討した。この結果、色素レー ザーは従来のアルゴンレーザーに比較して単純性血管腫症例の治療に安全で、かつ治療成 績も良好であり、非常に有用であることが認められた。

  本研究は、単純性血管腫に対する色素レーザーとアルゴンレーザーの二種のレーザー治 療効果の検討を基礎的および臨床的に系統的な分析を行い、包素レーザー治療の有用性を 証明した独創的研究である。以上のことから、博士(医学)学位に妥当なものと判断され る。

‑ 198

参照

関連したドキュメント

 CTD-ILDの臨床経過,治療反応性や予後は極 めて多様である.無治療でも長期に亘って進行 しない慢性から,抗MDA5(melanoma differen- tiation-associated gene 5) 抗 体( か

 がんは日本人の死因の上位にあり、その対策が急がれ

 スルファミン剤や種々の抗生物質の治療界へ の出現は化学療法の分野に著しい発達を促して

内輪面の凹凸はED注射群程ではないが,粘膜上皮の

糞で2日直して嘔吐汚血で12時間後まで讃明さ れた.髄外表の他の部分からは比較的早く菌が

 少子高齢化,地球温暖化,医療技術の進歩,AI

次に、第 2 部は、スキーマ療法による認知の修正を目指したプログラムとな

前項では脳梗塞の治療適応について学びましたが,本項では脳梗塞の初診時投薬治療に