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博 士 ( 医 学 ) 松 薗 嘉 裕

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 松 薗 嘉 裕

学 位 論 文 題 名

Detection of measles virus from clinical samples using        the polymerase chain reaction

(ポリメレ―スチェーンリアクション法を用いた臨床検体からの麻疹ウイルスの検出)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  麻疹 は一般的 には臨床 像の明か な疾患で ある。しかし、母親からの移行抗体が存在する 乳児 期や、免 疫グロプ リンの投 与を受け ている場合、ワクチンの投与を受けている場合は 非典 型的な経 過をたど る。この ような症 例においては、血清学的な診断が勧められている が診断までに時間を要し、多くの症例では後方視的な診断となり実用的には十分ではない。

迅速 で感度の 良い麻疹 診断のた めに、逆 転写反応(以下RTと略す)に引き続きポリメレー スチ ェーンリ アクショ ン法(以 下PCR法と略 す)を用 い麻疹ウイ ルスゲノムを検出する方 法が 報告され ている。今回我々は、RT−PCR法により麻疹患児の臨床検体から麻疹ウイルス RNAの迅速検出(24時間以内)を試みたので報告する。

[対象]

麻 疹 ウ イ ル ス 株 陽 性 コ ン ト ロ ー ル と し てVero細 胞 で 分 離 し たLEC株 を 用 い た 。 臨 床 検体 対 象検体 は、CDCの診 断基準で臨 床的に麻 疹と診断 された患 児(7カ月 一14歳、

男児16例、女児16例)32例か ら採取し た血清32検体、咽頭ぬぐい液16検体、中枢神経症状 を 呈 し た 児4例 の 髄液9検 体 、血 清5検 体 、非 典 型的 経 過 を呈 し た 麻疹 患 児2例の 血 清1 検体 、咽頭ぬ ぐい液2検体である。咽頭ぬぐい液の一部を除きすぺて凍結保存検体である。

非 典 型症 例 の1例は6カ月男児 で、周囲に 麻疹の流 行あり麻 疹様の発 疹を認め たが発熱 、 咳 嗽 、コ プ リック 斑を認め なかった症 例、もう1例は11カ月 男児で、1カ月前に 麻疹患児 と接 触した為 に予防的にァーグロプリンを投与されており、4日間の発熱、非麻疹様丘疹、

肺 炎 の 所 見 を 詔 め た が 、 コ プ リ ッ ク 斑 は 認 め な か っ た 症 例 で あ る 。 陰性 コントロ ールは、 非麻疹患 児10例の咽 頭ぬぐい液10検体、血清10検体、麻疹以外の中 枢神経系感染症患児10例の髄液10検体を用いた。

[方法]

  血清 あるいは 髄液は60.Ooogで2時間超 遠心分離し、得られた沈渣からRNAを抽出した。

咽頭 ぬぐい液 は200ロ1の燐 酸緩衝液 を加え以 下同様の 方法でRNAを得 た。RTは逆転写酵素 (Rous―assocトated virus2reverse transcrlptase)とrandom hexadeOXYnucleotldeプラ イ マ ーを 用 い、42℃1時間行な い次いで95℃5分間で逆 転写酵素 を不活化 した。得 られた 相 補 的DNAの 増 幅は 、 感度 を 上 げる た め2ステップ(Nested PCR)で行なっ た。Godecらが

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設定したプライマーを用いて35 サイクルの初回増幅し、ついでその内側に新たに20 塩基の プライマーを設定し25 サイクルの2 回日増幅を行なった。1 サイクルは denaturatlon 94 ℃ 一分間、 anneallng 55 ℃一分問、extenslon 72 ℃一分間行ない、増副産物は1 .4 %アガロー スゲルに電気泳動しエチジウムプロマイド染色で観察した。

   増 幅 産 物 の 同 定 は 2 種 類 の 制 限 酵 素 に よ る 切 断 パ タ ー ン に よ り 行 な っ た 。   PCR 法による実験は少なくとも 2 度施行した。

  PCR 法を施行した19 例の同一検体について血清麻疹IgM 抗体の測定をELISA 法で行なった。

[結果]

感度この RT −PCR 法の系における検出感度は、標準株として用いた麻疹LEC 株のRNA で50 fg まで検出が可能であった。

特異性得られた増幅産物を制限酵素AluI と RSAI で処理、期待されるサイズに切断され ることにより確認した。

臨床応用 RT ―PCR 法により、血清 32 検体中24 検体(75X) に、咽頭ぬぐい液 16 検体中13 検体 (81. 3X )に、全例32 例中27 例(84. 4X) において陽性結果を得た。陽性であった検体は、発 疹出現 2 日前から発疹出現後 8 日目までであった。1 例でコプリック斑出現 1 日前の血清 検体から陽性結果を得た。 RT −PCR 法により得られた増副産物の制限酵素による切断パター ンは、すぺて予想されたサイズであった。麻疹脳炎4 例中3 例の髄液で陽性結果を得た。

陽性のものは中枢神経系症状出現後 0 日目が1 例、 1 日目が2 例で、それ以後は陰性であっ た。非典型的経過の 2 例は陽性結果を得た(1 例は後方視的な抗体測定で麻疹感染が証明 された)。血清Igld 測定による検索の陽性率は、測定した19 例中13 例が陽性で68, 4X であっ た 。 陰 性 コ ン ト ロ ー ル ヘ の コ ン タ ミ ネ ー シ ョ ン は 見 ら れ な か っ た 。

[考察]

   麻疹は、予防接種によるコントロールの努カにもかかわらず現在でも一般的で感染性の 高い疾患である。

   本研究においてRT −PCR 法による麻疹ウイルスRNA の検出率は84,4 %であり従来の診断方法 よりも優れていた。また、凍結保存血清からRNA を検出できたことは、検体の入手、保存、

輸 送 が 容 易 で 、 後 方 視 的 な 診 断 や 多 施 設 間 で の 研 究 が 可 能 で あ る 。   RT ーPCR 法により陽性結果を得たのは、発疹出現2 日前から発疹出現8 日後までで、この ことから従来考えられていたより麻疹ウイルス血症が長いことが示唆された。また早期の 迅速診断により、潜伏期間中の麻疹の診断が可能で、臨床の場で麻疹の疑いのある児の早 期 隔 離 等 に よ り 院 内 感 染 や 流 行 を よ り小 さ く抑 え る こと が 可能 と 考え ら れた 。    さらに、非典型的な経過を呈する麻疹、母体からの移行抗体が残存する乳児期の麻疹や、

なんらかの理由でガンマグロプリンの投与を受けている児における修飾麻疹の診断が可能 であった。また、麻疹ワクチンの接種を受けている児の麻疹の診断や、抗体産生の見られ ない症例の麻疹感染の診断にも有用と考えられた。また、中枢神経系合併症を呈した麻疹 において、発症早期の髄液から陽性所見を得たが、発症 6 日目以降比較的早く検出されな くなることが判明した。

  RT −PCR 法による検索は、麻疹の迅速診断、非典型的麻疹の診断、合併症の診断に有用で

あった。 RT ーPCR 法は麻疹診断法として有用な手段になりうる。

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教 授    皆川知紀 副査    教 授    長嶋和郎 副査    教 授    高田賢藏 副査    教 授    小林邦彦      学 位 論 文 題 名

Detection of measles virus from clinical samples using     the polymerase chain reaction

(ポリメレースチェ―ンリ アクション法を用いた臨床検体からのlf;Hウイルスの検出)

  麻 疹 は 一 般 的 に は 臨 床 像 の 明 か な 疾 患 て あ る 。 しか し、 移行 抗体 が存 在す る乳 児期 や、

免 疫 グ 口 ブ リ ン の 投 与 、 ワ ク チ ン の 投 与 を 受 け て い る 場 合 は 非 典 型 的 な 経 過 を た ど る 。 こ の よ う な 非 典 型 的 な 症 例 で は 、 主 に 血 清 学 的 な 診 断 が 用 い ら れ る が 時 間 が か か り 、 か つ 後 方 視 的 な 診 断 で あ る 。 迅 速 で 感 度 の 高 い 麻 疹 診 断 法 の 確 立 の た め に 、 申 請 者 は 、 RT―PCR法 の 有 用 性 に つ い て 種 々 の 臨 床 像 を 呈 し た 麻 疹 感 染 症 の 検 体 を 用 い て検 討を 行っ た 。

    [ 対 象 ] 麻 疹 ウ イ ル ス 陽 性 コ ン ト 口 ー ル はVelo細 胞 で 分 離 し たLEC株 を 用い た。 臨床 検 体 は 、CDCの 診 断 基 準 で 麻 疹 と 診 断 さ れ た 患 児 の 血 清 、 咽 頭 ぬ ぐ い 液 、 中 枢 神 経 症 状 を 呈 し た 児 の 髄 液 、 血 清 、 非 典 型 的 経 過 を 呈 し た 麻 疹 の 血 清 、 咽 頭 ぬ ぐ い 液 、 巨 細 胞 肺 炎 で 死 亡 し た 免 疫 不 全 症 の ホ ル マ リ ン 固 定 肺 組 織 、SSPEの 咽 頭 ぬ ぐ い 液 、 末 梢 単 核 球 、 生 検 脳 組 織 ( ホ ル マ リ ン 固 定 ) な ど で あ る 。 陰 性 コ ン 卜 口 ー ル は 、 非 麻 疹 患 児 の 咽 頭 ぬ ぐ い 液 、 血 清 、 麻 疹 以 外 の 中 枢 神 経 系 感 染 症 の 髄 液 で あ る 。 .   [ 方 法 ] 血 清 や 髄 液 は60,OOOgで2時 間 超 遠 心 分 離 し 、 得 ら れ た 沈 渣 か ら グ ア ニ ヂ ン 法 でRNAを 抽 出 し た 。 逆 転 写 反 応 はrandom hexacleox'ynucleoticleプ ラ イ マ ー を 用 い 、 420C1時 間 行 な い 、95℃5分 で 逆 転 写 酵 素 を 不 活 化 し た 。 得 ら れ た 相 補 的DNT.kの 増幅 は、

2ス テ ッ プ(Nested PCR)で 行 な っ た 。Codecら が 設 定 し た プ ラ イ マ ー を 用 い て 初 回 35サ イ ク ル 、 つ い で そ の 内 側 の プ ラ イ マ ー を 設 定 し25サ イ ク ル の 増 幅 を 行 な っ た 。 増 副 産 物 は1.4%ア ガ 口 ー ス ゲ ル に 電 気 泳 動 し ェ ヂ ジ ウ ム プ 口 マ イ ド 染 色 で 親 察 し た 。 増 幅 産 物 の 同 定 は 2種 類 の 制 限 酵 素 に よ る 切 新 バ タ ー ン に よ り 行 な っ た 。   [ 結 果 ] 感 度 : こ のRT―PCR法 の 系 に お け る 検 出 感 度 は 、 標 準 株 と し て 用 い た 麻 疹 LEC株 のIRNAで50fgま て 検 出 が 可 能 で あ っ た 。 特 異 性 : 得 ら れ た 増 幅 産 物 を 制 限 酵 素 AILiIとRSAIで 処 理 、 期 待 さ れ る ザ イ ズ に 切 新 さ れ る こ と に よ り 確 認 し た 。 典 型 的 な 麻 疹 で の 検 出 率 : 血 清32検 体 中24検 体 (75° 。 ) に 、 咽 頭 ぬ く ゛ い 液16検 体 中13検 体

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(81 .3 °o )に、全体で32 例中27 例(84.4 °^)に陽性であった。ウイルスRNA 陽性は、

発疹出現2 日前から発疹出現後8 日目まで認められた。1 例でコブリック斑出現1 目前の 血清で陽性だった。麻疹脳炎4 例中3 例の髄液で陽性だった。陽性のうち、中枢神経系症 状出現後0 日が 1 例、1 日が2 例で、それ以後は陰性であった。非典型的経過例(抗体測 定で麻疹感染を証明)は何れも陽性だった。血清IgM 測定による検素の陽性率は、測定 した19 腕中13 例が陽性で68.400 であった.陰性コント口ールへのコンタミネーションは 見られなかった。巨細胞肺炎のホルマリン固定肺組織でウイルスRNA が検出できた。

SSPE の脳脊髄液は3 例中1 例に陽性、末梢単核球は 2 例に陽性だった。SSPE のホルマ リン固定脳組織では、封入体陽性例でウイルス RNA 陽性であったが、封入体陰性例で は陰性であった。

   [考察]麻疹は、予防接種によるコント口ールの努カにもかかわらず現在でも一般的 で感染性の高い疾患である,本研究においてRT ―PCR 法による麻疹ウイルスRNA の険出 率は 84.4?0 であり従来の診断方法よりも優れていた。また、凍結保存血清からRNA を検 出できたことは、検体の入手、保存、輪送が容易で、後方視的な診断や多施設間での研 究が可能である.典型的麻疹で、RT −PCR 法により陽性結果を得たのは、発疹出現2 目 前から発疹出現8 日後までと、従来考えられていたより麻疹ウイルス血症が長く存在す ることが示唆された。また早期の迅速診断により、潜伏期間中の麻疹の診断が可能で、

臨床の場で麻疹の疑いのある児の早期隔離等により院内感染や流行をより小さく抑える ことが可能と考えられた。さらに、非典型的な経過を呈する麻疹、移行抗体が残存する 乳児期の麻疹や、なんらかの理由でガンマグ口ブリンの投与を受けている児における修 飾麻疹の診新が可能であった。また、麻疹ワクヂンの接種を受けている児の麻疹の診断 や、抗体産生の見られない症例の麻疹感染の診断にも有用と考えられた。中枢神経系合 併症を呈した麻疹において、発症早期の髄液から陽性所見を得たが、発症2 日目以降比 較的早く検出されなくなることが判明した。ホルマリン固定組織からのウイルスRNA の検出が可能であったことから、本法は保存された古い組織での検索にも用いられると 考えられる。SSPE 患児の末梢単核球にウイルス RNA 陽性であったことから、持続感染 は単核球にもあることが推測された。以上から、RT ーPCR 法による検索は、麻疹の迅速 診断、非典型的麻疹の診断、合併症の診断に有効であるばかりではなく、ホルマリン固 定された保存組織におけるウイルスRNTA 検出にも応用出来る点で、有用な手段となり うると考える。

   本研究は、麻疹ウイルスゲノム検出におけるRT −PCR の有用性を、典型、非典型、及

び神経系麻疹などの臨床検体を用いて証明した。特に、本法により、通常の麻疹におけ

るウイルス血症は予想外に長い反面、脳炎等に於ける髄液中の消失が著しく早いことを

見出した点、 SSPE で末梢単核球に持続感染している可能性のあること、またホルマリ

ン固定組織からのウイルスRNA の検出が可能であることを証明した点を、審査員一同

は評価し、博士(医学)の学位に値するものと判定した。

参照

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