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博 士 ( 医 学 ) 兼 松 伸 枝

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 兼 松 伸 枝      学位論文題名

松 果 体 メ ラ ト ニ ン リ ズ ム の 光 調 節 機 構

‑lnVlV0m |CrodialySiS 法を用いた実験的研究一

     学位論文内容の要旨

I緒  言

  松果体から分泌されるメラトニンの血中濃度には顕著なサ一カディアンリズムが認められ,生 物時計の有カな指標の1っになっている。松果体におけるメラトニン合成は光の二重支配を受け,

光を介してりズムの位相が調節され,また分泌亢進時には光により速やかに抑制される。光によ るメラトニン合成の調節は,網膜,視交叉上核,頸部交感神経節を介して行われるが,リズム調 節と光抑制が同じ機構で行われているかどうかは不明である。本研究の目的は,ラットを用いて メラトニン合成に対する光の二重効果を同時に測定することにより,背後にある神経機構の相違 を明らかにすることである。まずメラトニン合成の光抑制反応における,波長特性と時刻依存性 を検討し,行動リズムを指標とした生物時計の位相反応と比較した。次に松果体マイク口ダイア リシス法により,細胞外液中メラトニンを測定し,同一個体で光の二重効果を解析した。更に,

松果体や生物時計に対し光と類似した効果を持っとされるコリン作動薬,カルバコールを視交叉 上 核 内 に 投 与 し , メ ラ ト ニ ン 抑 制 反 応 と り ズ ム 位 相 反 応 を 同 時 に 測 定 し た 。

u実験材料と方法

  実験1:実験には明暗サイクル(6ー18時明)下で飼育したWistar系ラットを用いた。24時,

あるいは4時に1.5x iot。photon7cnf/secの 緑色(520nm)あるいは赤色(660nm)の単色光 を3分間ラットに照射した後,経時的に断頭屠殺し,松果体メラトニン含量と血漿メラトニン濃 度をRIA法にて測 定した。また,連続暗でフリーランしている行動リズムの活動期開始5時間 後(CT17)あるい は10時間後(CT22)に,前述の 二種の単色光を照射し,光 照射前後各々3週 間の行動リズムの周期と位相を解析した。

  実験2:松果体マイク口ダイアリシス法により,逆転明暗サイクル(19―7時明)下で飼育し たラットの松果体細胞外液中メラトニンを,無麻酔無拘束下で30分毎連続4日間測定した。1日

(2)

目 は 明 暗 サ イ ク ル 下 で ,2日 目 以 降 は 連 続 暗 の 下 で透 析 を 行 い ,2日 目 のC T17, ある い は CT22に200Luxの 白 色 光 を3分 間 照 射 し た。

  実 験3:逆 転 明 暗 サイク ル下で 飼育し たラ ットを 用い,4日 間の松 果体マ イク口 ダイ アルシ ス を行 っ た 。 透 析2日 目 に 眼 球摘 出 に よ ル ラッ ト を 盲 目 とし , カ ル バ コ ール (1n mole/0. 5lu PBS)をCT17, ある い はCT22に 一 側 の 視交 叉 上 核 内 に注 入 し た 。

m結  果

  同一光 子量 の単色 光照射 による 松果 体,及 び血漿 メラト ニンの 抑制 は,24時 では赤色光よりも 緑色 光 で 大 で あ った が ,4時 では 両波長 でほ ぼ等し かった 。また ,24時 と4時との 比較で は,24 時の赤 色光照 射で は,松 果体メ ラトニ ンは一 過性 の低下 を示し たのみ で, 血漿メ ラトニンは有意 の低 下 を 示さ なかっ たの に対し ,4時の照 射では 松果体 ,血漿 メラ トニン とも速 やかに 抑制 され た。 緑 色 光照 射でも ,4時のメ ラト ニン抑 制反応 は,24時より も早く 生じた 。ー方 ,フ リーラ ン 行動 リ ズ ム のCT17あ る いはCT22に お け る 同 一光 子 量 の 単 色 光照 射 は , 緑 色光 ,赤色 光共 に行 動 リ ズ ム に 有 意 の 位 栢 反 応 を 起 こ し た が , 反 応 量 は 赤 色 光 よ り 緑 色 光 で 大 で あ っ た 。   マ イ ク 口ダイ アリ シスで 測定し た松果 体細 胞外液 中メラ トニン リズム は, 個体内 では4日間 安 定した 一定の パ夕 一ンを 示した が,個 体間で は位 相や形 に違い がみら れた 。細胞 外液中メラトニ ンは ,CT17あ る い はCT22の 白 色光 照 射 に よ り有 意 な 低 下 を 示し た 。CT17の 光照 射によ るメラ トニ ン の 低 下 は90分 後 に は回 復 した が,CT22の光照 射では ,照射 当日 には回 復しな かった 。一 方, 細 胞 外 液 中 ,メ ラ ト ニ ン リズ ム位相 は,CT17の光照 射で照 射翌日 に有 意な後 退を示 し,CT 22の照射 では 有意に 前進し た。

  カルバ コー ルの視 交叉上 核内注 入は ,松果 体細胞 外液中 メラト ニン に対し ,抑制反応,リズム 位相反 応のど ちら も生じ させな かった 。

IV考  察

  ラット 松果体 及び血 漿メ ラトニ ンの光 抑制反 応及び 行動 ルズム の位相 反応は,緑色域の光で効 果 が大 であり ,従来 の報告 と一致 した 。ラッ ト網膜 には口 ドプ シンが 存在し,その光吸収スペク ト ル の 極 大 は500nm付 近 に あ る の で, 光 に よ る松 果体メ ラトニ ンの 抑制反 応及び 生物時 計の 位

(3)

  行動 リ ズ ム 位 相 反応は ,CT22の 赤色光 照射で 緑色光 より 有意に 小さか ったが ,同一 位相 であ る4時の メラト ニン抑 制反 応には 差がな かった 。従 って, メラト ニン光 抑制は メラ トニン リズム の位 相反応 より も閾値 が低いと考えられ,網膜からの光伝達経路に差違のあることが示唆された。

  松 果体細 胞外液 中,メ ラトニ ンリ ズムに も,光 照射に より 位相反 応が見られたが,行動リズム では 数日を 要し たのに 対し, メラト ニン リズム でほ照 射の翌 日には 反応が完了した。また細胞外 液中 ,メラ トニ ンの光 抑制に も時刻 依存 性が認 められ た。こ の結果 は,マイクロダイアルシス法 を用 いるこ とに より, 従来の断頭法では検出できなかった光によるメラトニン合成の二重支配が,

同一 個体で 解析 可能な こと, また, 松果 体メラ トニン が生物 時計の より直接的な表現系であるこ とを 示して いる 。

  カ ルバコ ールはin vivoでは唯 一,サ ―カデ ィア ンリズ ムに対 し,光 に類 似した 効果が 報告さ れて いる物 質で ,光情 報の伝 達には アセ チルコ リンの 関与が 示唆さ れていた。しかし従来の研究 では ,行動 リズ ムが解 析されており,メラトニンリズムを指標に解析した本研究では,カルバコ―

ルの 光類似 効果 は認め られな かった 。ア セチル コリン が網膜 視床下 部路の伝達物質である可能性 は低 いと考 えら れる。

V結  語

  ラッ トを用 い,光 の松 果体メ ラトニ ン抑制 反応と ,生 物時計 を介す るりズム位相反応とを比較 し, 以下の 結果を 得た。

  1. 光に よる松 果体メ ラトニ ン合 成の抑 制は波 長と照 射時刻 に依 存し, 緑色光 が赤色 光よ りも 抑 制 効 果 が 大 き く , 同 一 波 長 で は 4時 の 方 が 24時 よ り も 効 果 が 大 き い 。   2.4時 の光照 射で ,メラ トニン 光抑制 反応 と,行 動リズ ムの位 相反応 には乖離が認められた。

網膜 視床下 部路は 機能的 に異な る機 構を含 む可能 性があ る。

  3. 同一 個体か ら連続 測定し た松 果体細 胞外液 中メラ トニン は著 明なサ ーカデ ィアン リズ ムを 示し ,光抑 制反応 とりズ 厶位相 反応 を同時 に示し た。

  4. 松 果 体 細 胞 外 液 中 メ ラ ト ニ ン リ ズ ム の 位 相 反 応 は 光 照 射 の 翌 日 に 完 了 し た 。   5. コリ ン作動 薬カル バコー ルの 視交又 上核内 投与は 松果体 細胞 外液中 メラト ニンに 変化 を与 えな かった 。アセ チルコ リンが 生物時計や松果体への光情報の伝達に関与している可能性は低い。

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学位論文審査の要旨

  松果体から分泌されるメラトニンの血中濃度には暗期に高値をとる顕著なサ―カディアンリズ ムが認められ,生物時計の有カな指標の1っとなっている。松果体におけるメラトニン合成は光 の二重支配,すなわち生物時計を介したメラトニンリズム位相の調節と光によるメラトニン合成 の抑制を受けているが,その神経機構に関しては不明な点が多い。本研究では,ラットを用いて メ ラ ト ニ ン 合 成 に 対 す る 光 の 二 重 効 果を 解析 し, 背後 に ある 神経 機構 を検 討 した 。   まず光の波長および照射時刻により反応の差異を検討する目的で波長520nmの緑色光と波長6 60nmの赤色光を暗 期の24時と4時に3分間照射し,照射前後の松果体メラトニン含量および血 漿メラトニン濃度 をradioimmunoassayにて測定 した。また同じ単色光を用いて,恒常暗で フリーランしている自発行動ルズムの位相反応を光パルス法にて測定し,生物時計を介する光の 作用を解析した。その結果,メラトニン光抑制反応には波長および時刻依存性のあることが示さ れ,赤色光照射より緑色光照射で,また24時より4時の光照射でより大きな反応が認められた。

さらに,赤色光照射では,メラトニン抑制反応とりズム位相反応には乖離が認められ,2っの反 応の光刺激伝達機構に差異のあることが示された。

  メラトニン合成に対する光の効果をさらに詳しく解析する目的でin vlvo microdialysis法

(体内微量透析法)を松果体に適用し,同一個体から松果体細胞外液中メラトニンを30分間隔で 4日間にわたって測定した。その結果,メラトニン光抑制反応とメラトニンリズム位相反応を同 時に測定することができ,個体レベルでの解析が可能となった。また従来,数日の移行期を経て 完了すると考えられていたりズム位相反応が,メラトニンリズムでは光照射の翌日にtますでに完 了していることがわかり,メラトニンリズムが生物時計のより直接的な指標であることが示され た。さらに,松果体メラトニン合成や生物時計に光と類似した作用を持っとされてきたコルン作 動薬,カルバコールを生物時計の局在部位であり,網膜から松果体に至る経路に存在する視交叉 上核内に投与して,メラトニン光抑制反応とりズム位相反応を同時に測定したが,カルバコ―ル

(5)

制反応によるものか,生物時計の振動停止あるいは内的脱同調によるものかを決める実験では,

松果体メラトニンリズムは連続照明から連続暗に移行後直ちに出現し,しかもそのルズム位相は 照明条件を変化させた位相に依存しなかったことから,メラ卜ニンリズムの消失は光による抑制 反応の結果と結論した。

  口頭発表において,加藤教授より,松果体に挿入した透析プローブの位置によるメラトニンリ ズムの差異にっいて,阿岸教授より,ヒトにおけるメラトニン光抑制反応およびりズム位相反応 の波長依存性,紫外線のメラトニン合成に対する影響にっいて,斉藤和雄教授より,メラトニン 光抑制反応の時刻依存性と覚醒レベルとの関係にっいて質問があったが,申請者は概ね妥当な解 答 を 行 っ た 。 ま た 加 藤 , 阿 岸 両 教 授 に は 個 別 に 審 査 を 受 け , 合 格 と 判 断 さ れ た 。   本研究は,松果体メラトニン合成の光による調節機構の解明にin vlvo microdialysis法を導 入して,個体レベルでの解析を初めて可能にした新しい研究であり,学位の授与に値すると考え る。

参照

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