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博士(農学)藤田泰仁 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)藤田泰仁 学位論文題名

乳業用乳酸球菌のプラスミドに関する研究 学位論文内容の要旨

  豊富な 栄養素を 含む牛乳 は、夕ンパ ク質3.1%、 脂質3.6%、糖質4.6%、無機質0.7% 前後の 組成から なり、ビ タミンB群の 含量が高 く、有機 酸としてクエン酸を0.1%程度含 ん でい る 。発 酵 乳 製品 の ス ター ターとし て用いら れる乳酸 菌は、牛 乳中の糖 質の99% を占め るラクト ースを分 解する乳酸 発酵でエ ネルギー を獲得し、遊離アミノ酸の少ない 条件下 でカゼイ ンの分解 からアミノ 酸要求性 を満たし 、また、クエン酸を分解しピルピ ン酸か らジアセ チルを生 じさせてい る。その 結果、製 品には特有のテクスチャーやフレ ー バ ー が 付 与さ れ る 。し か し、 中 温 性チ ー ズス タ ー ター と し て用 い られ る 乳 酸球 菌 (Lactococcus lactis)では、これらの性質が比較的不安定であることが知られている。本 研究で は、これ らの諸性 質がプラス ミドに関 わるもの であることを明らかし、基礎的な 知見を得る目的でそれぞれの遺伝子を解析した。

  本研究の結果を要約すると以下のとおりである。

  1.農 林 水産 省 畜 産試 験 場 で保有 するLactococcus lactisから プラスミ ドDNAを抽出 し 、ア ガ ロー ス ゲ 少電 気 泳 動法 により分 析した結 果、供試37株全てに プラスミ ドが存 在 し、 そ の大 き さ は1から80 MDa、1から12種類の多 様な分布 パターン が示され た。さ らに、 キュア1Jン グ処理に よるプラス ミドの脱 落が、ラ クトース発酵性、プロテイナー ゼ生産性やクエン酸資化性に関与することが確かめられた。

  2.己. 1actisにおける形質転換法を開発する目的でプロトプラストの形成と再生条件を 検 討し 、 リゾ チ ー ムと 粗a‑ア ミラ ーゼ処理 による効 率的なプ ロトプラ スト形成 法を開 発 した 。 粗a‑ア ミラ ー ゼ は、 夾雑 するプロ テアーゼ 活性によ る溶菌促 進効果に 加えて 何らか の細胞壁 保護効果 を働かせて いること が示唆さ れた。また、浸透圧調節剤として 20% ス ク ロー ス を用 い 、2.5 mM塩 化マ グ ネ シウ ム 、2.5 mM塩化 カルシウ ム、2.5%ゼ ラチンを加えた細胞壁再生用培地を開発した。

  3.工, 1actisのプロト プラストを用いポ1Jエチレング1Jコール(PEG)処理による形質 転 換法 の 条件 を 検 討し た 。 マレ イ ン酸 緩 衝 液中PEG6000(終 濃度24%)室温30分処埋 に よ り 、 エ リス ロ マ イシ ン 耐性 プ ラ スミ ドpAM piでl04/メgDNAの形 質 転換 効 率 が得 られた。

  4. さら に 、エ レ ク トロ ポ レー シ ョ ンに よ る形 質 転 換法 の 条 件を 検 討し た 。40 mM DL― ト レ オニ ン を含 む 培 地で 培養 した対数 増殖期の 細胞を0.3Mス クロース に懸濁し 、 0.2 mmギ ャ ッ プ キ ュ ベ ッ ト を 用 い て 、 電 圧10 kV/cm、 電 気 容量25 pF、 抵 抗200Qの 条 件 で1回 パ ル ス 印 加 す る こ と で 、 ベ ク タ ーpGKV21を 用い た 場 含にl05/メgDNAの形 質転換効率が得られた。

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  5.ラクトース非発酵性となった工. 1actisプラスミドフリー株を受容菌として用い、ラ クト ースプラス ミドの形 質転換に よルラク トース発 酵性が回 復すること を確認した。L lactisでは 、ホスホエ ノールピ ルピン酸 依存ホス ホトラン スフェラ ーゼ系(PEP ‑ PTS) によ るラクトー ス輸送系 が知られ 、細胞内 に取り込 まれたラ クトース‑6‑リン酸はホス ホ‑p‑ガ ラクトシダ ーゼにより分解される。そこで、ホスホ ロ^ガラクトシダーゼを大 腸菌 にクローン 化して解 析した。 ホスホ・ ロ・ガラ クトシダ ーゼ活性を 発現した4.4kb XhoIフ ラグ メ ン トは 、 塩基 配 列 の解 析 か ら468アミノ 酸をコー ドするlacG遺 伝子を含 み、Staphylococcus aureusやLactobacillus caseiの1acG遺伝子とそれぞれ82%,54%の DNAレベ ル で の相 同 性 を示 し た。1acG遺 伝 子の 上流に は568アミノ 酸をコー ドするPEP

‑ PTS系のlac E遺伝子が存在していた。

  6.ク ェン酸利用 性工,ぬctisのいくっかの株で8.3 kbクエン酸プラスミドを確認し、

制 限酵 素 地 図を 作 製 した 。 ベク タ ーpGKV259にEco RIヱ ニ ー クサ イ トで 連 結後 、L. lactisに導入した。クエン酸利用性己,Iactisから得られたプラスミドフリー株では、クェ ン酸 バーミアー ゼ遺伝子 の導入に よルクエ ン酸利用性が回復し、クエン酸非利用性己.

1actisに導 入した場合 でも菌体 内へのク エン酸の取り込みが認められたことから、この 遺 伝子 単 独 でク エ ン酸の取 り込みを行 い、その 他のクェ ン酸代謝 に関わる 酵素の遺 伝 子は染色体上にコードされると示唆された。さらに、工. 1actis 13675のクエン酸プラス ミ ドか ら サ ブク ロ ーン化し た2.2 kb BglH‑ XbaIフラグメ ントの解 析から、442アミノ 酸 をコ ー ド する 疎 水 性膜 夕 ンパ ク 質 のク エ ン酸 パ ー ミア ー ゼ遺 伝 子 が同 定 された 。   7.工 , 1actis5株のプラスミドからプロテイナーゼ活性を発現するフラグメントをク ローン化し、工, 1actis 565由来のプロテイナーゼ遺伝子(prtP冫については、完全な長 さの塩基配列を決定した。制限酵素地図から既に報告のある工, 1actisのプロテイナーゼ 遺伝 子(prtP冫と相同 性が高い 細胞壁結 合型セリ ンプロテ イナーゼ であると示唆された が、プロモーター領域にわずかな違いが認められた。さらに、己. Iactis 565由来prtPの 塩 基配 列 解 析か ら 、このプ レプロ構造 を含め1960ア ミノ酸を コードす るプロテ イナー ゼ は 、 活 性 中 心 がAsp30、His94、Ser433の 三 つ 組 み 触媒 基 で 構成 さ れ、Bacillus subtilisのセリンプロテイナーゼと相同性が高いことが示された。己.1actis Wg2,763, SK11の プロ テ イ ナー ゼ とそ れ ぞ れ29、31、66ア ミ ノ酸 が 異 なっ て いた が 、 特徴的な シ グナ 少 ベ プチ ド 、メンブ ランアンカ ーなどの モチーフ は保存さ れていた 。prtP遺伝 子 の上 流 に は、ATリ ッチなプ ロモーター 領域をは さんで逆 向きに転 写される きわめて 保 存性 の 高 いprtM遺伝 子が存在 し、その産 物は分泌 型リポタ ンパク質 で、プロ テイナ

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えられている。lciAはこれに対する免疫作用を持つ98アミノ酸のべプチドをコードし ている.。1cnDはその上流の1cnC(完全にはクローン化されなかった)とともにバクテ リオシンの分泌輸送系を構成している。さらに、lcnDを含む領域をプローブとして用 い、やはルバクテリオシン活性を発現する9.5 kb Eco RIフラグメントをクローン化し たが、これは1cnD丶lcnM、1cn N. 1ciMで構成されるラクトコクシンMオベ口ンと同 定された。

‑ 220

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

乳業用乳酸球菌のプラスミドに関する研究

  本 論 文は 、 和文160頁 、図40、表12、 引 用 文献334、7章から なり、ほ かに参考 論文 17編が付されている。

  Lactococcus lactisは主とし て発酵乳 製品のス ターターとして用いられる乳酸菌であ り、牛乳 中のラク トースを 分解して乳 酸を生成 し、カゼ インを分解することで、製品に 特有のテ クスチュ アーやフ レーバーを 与えてい る。しか し、これらの産業上重要な性質 は比較的不安定であり、その原因の解明が期待されていた。

  本 研 究で は 、こ れ ら の諸 性質 がプラスミ ドに関わ るもので あること を明らか にし、

基礎的な 知見を得 る目的で 、それぞれ の遺伝子 を解析し たもので ある。結 果は、第3章 実験の部で以下の8つの節により述べられている。

  第1節 で は 、 プ ラ ス ミ ド の 分 布 に つ い て 述 べ ら れ 、 次 の 内 容 が 含 ま れ て い る 。   農林水産 省畜産試 験場で保 有するLactococcus lactisを実験材料として用い、プラス ミドDNAを アガ ロ ース ゲ ル 電気 泳 動法 に よ り検 出 した 結 果、 供試37株全 てにプラ スミ ドが確認 された。 さらに、 キュアリン グ処理に よるプラ スミドの脱落が、ラクトース発 酵性やクエン酸資化性に関与することが確かめられた。

  第2節 で は、 プ ロト プ ラ スト の 形成 お よ び再 生 法に つ いて 述べられ 、次の内 容が含 まれている。

男 哉

房 誠

田 葉

冨 千

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

  工. Iactisでは、PEP‑PTS系によるラクトース輸送系が知られ、細胞内に取り込まれた ラクト ース‑6‑リン 酸はホス ホ‑p‑ガラク トシダー ゼにより分解される。クローン化され た4.4 kb XhoIフラ グメント はホスホ‑p‑ガラクト シダーゼ活性を大腸菌で発現し、塩基 配列の解析から、Staph ylococcus aureusのlacG遺伝子と相同性が高いことが確かめられ た 。lacG遺 伝 子 の 上 流 に は PEP‑PTS系 の 酵 素 IIの 存 在 が 認 め ら れ た 。   第6節 で は 、 ク エ ン 酸 利 用 性 に つ い て 述 べ ら れ 、 次 の 内 容 が 含 ま れ て い る 。   クエン酸プラスミドの導入により、己. Iactisでのクエン酸パーミアーゼの発現が認め られた 。サブク ローン化 した2.2 kb Bgl II‑XbaIフラ グメント の解析から 、442アミノ 酸 をコ ー ド する 疎 水性 膜 タ ンパ ク 質の ク エ ン酸 パ ー ミア ー ゼ遺 伝 子 が同 定 され た 。   第7節 で は 、プ ロ テイ ナ ー ゼ生 産 性に つ い て述 べ ら れ、次の 内容が含 まれてい る。

  工, 1actis5株からプロテイナーゼ活性を発現するフラグメントをクローン化した。さ ら に、 塩 基 配列 の 解析 か らこの プレプロ 構造を含 め1960アミノ酸 をコード する細胞 壁 結合型プ口テイナーゼ遺伝子(prCP)は、Bacillus subtilisのセリンプ口テイナーゼと相同 性 が高 い こ とが 示 され た 。prtP遺伝 子の上流 には、ATリ ッチなプロ モーター 領域をは さ んで 逆 向 きに 転 写さ れ るprtM遺伝 子 が存 在 し 、そ の 産物 は 分 泌型 リ ポ タン パ ク質 で 、 プ ロ テ イ ナ ー ゼ の 活 性 型 へ の 成 熟 に 関 わ る と 考 え ら れ て い る 。   第8節 で は 、バ ク テリ オ シ ン生 産 性に つ い て述 べ ら れ、次の 内容が含 まれてい る。

  工. 1actis DRC‑1の バクテリオシン生産性には、プラスミドpDRl‑6が関与しているこ とを明 らかにし た。クロ ーニング で得られ た、バクテ リオシン活性を発現するHin dIII 4.0 kbフラグ メントは 、ラクト コクシンAオベロン の一部であると同定され、1cnD.lcn A,1ciAの完 全なオー プンリー デイング フレーム を含んでい た。さら に、lcnDを含 む領 域をプ ローブと して用い 、やはル バクテリ オシン活性 を発現す る9.5 kb Eco RIフラグ メ ン ト を ク ロ ー ン 化 し た が 、 こ れ は ラ ク ト コ ク シ ンMオ ベ ロ ン と 同 定 さ れ た 。   以上、Lactococcus lactisにつレ】て産業上重要な性質としてのラクトース発酵性やプ口 テ イナ ー ゼ 生産 性 がプ ラ スミド に関与す ることを 明らかにし 、これら の遺伝子 を解析 し 基礎 的 知 見を 得 た。 こ れらは 乳業用乳 酸球菌の 分野におい て基礎的 及び産業 的な貢 献を果たすものである。

  よ っ て 、審 査 員一 同 は 別に 行 っ た学 力 確認 試 験 の結 果 と併 せ て 、本 論 文の 提 出 者 藤 田 泰 仁 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 が あ る も のと 認 定し た 。

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