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博士(農学)佐藤幸生 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)佐藤幸生 学位論文題名

アカク口ーバうどんこ病の病原ならびに      発病生態に関する研究

学位論文内容の要旨

  ア カクローバうどんこ病は、わが国においては1975年秋に北海道で初めて発見され、19 79年 までには全国各地で確認され、アカクローバの重要病害のーっとなった。本研究は、

本病 の病原菌を明らかにし、分類学的位置に関する検討を行うとともに、本病の発病にお ける 特徴をアカクローバの生育経過との関係から明らかにすることを目的に行ったもので ある 。

  本 病菌の子のう殻を1984年9月 末北海道で初めて発見し、その形態から本邦初産のEry‑

siphe trifolii Grevilleと同 定し た 。本 病菌 は、うどんこ病菌の基本的属Erysipheと Microsphaera両属 の定義に関わる重要な問 題を含み、分類学的位置に関して論議されて いる 菌のーつである。両属菌の検討によって、Micros̲phaerat―rifolii (Greville) Braun が創 設された(Braun、1981),が、うどんこ病菌の研究者の間で必ずしも受け入れられて いな いこと、宿主がマメ科に限定されているがかなり大きな種であることから、Zheng and Chen(1987)の本 菌をErysipheとす る 見解 を支 持した。本病菌の分類学的位置に関する 知見 を得るために、本病菌と26種類のマメ科植物に発生するうどんこ病菌の分生子とその 発芽 管の形態を比較した。その結果、分生子の大きさは、発生する植物、採集地、採集時 期を 異にしてもある一定の範囲に治まり比較的安定した形質であり、それぞれの菌は特徴 的な 大きさを示すことから、分生子の大きさは分類学的に重要な形質であることを指摘し た。 アカクローバうどんこ病菌を用いた実験で、温度によって形成される分生子の大きさ が有 意に異なるとされたが、それら測定値はいずれも著者の測定値の範囲内であり、分生 子の 大きさは形成される条件によって変動するため分類の基準として用いるバきでなぃと する 従来の説を再検討すべきであることを初めて指摘した。

  分 生子の発芽管の形態は、とくにマメ科植物上の菌におぃて付着器の形態、細胞数、長 さ、 太さが多様である。本病菌は比較的単純な形態の付着器を形成するErysiphe polygoー ni型の 発 芽管 とす る従来の指摘を確認した 。分生子と発芽管の形態による菌の属あるい は種 の分類・同定は困難であると考えられたが、宿主植物によっては分類・同定上有効と 考え られる。その上で、本病菌の分生子は長さが32一36 fim、幅が18←20 Umで、他の植 物上 の菌と比較して幅の広い特徴を有する菌であることを明らかにし、分類学的新知見を 加え た。

  本 病菌と7種のマメ科植物に発 生するうどんこ病菌に関して、接種試験による寄生性を 比較 した。その結果、本病菌はアカクローバなどシャジクソウ属植物の他、ルピナス、ラ ッセ ルルピナス、レンゲ、ヘヤリーベッチにも寄生性を有し、本来の宿主植物属を超えて

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寄 生 性を 有す ると する従来の報告を確認すると共に、本病菌は他の7種の植物上の菌とは 寄 生性を異にすること、シャジクソウ属植物に寄生性を有 するのは本病菌だけであること を 初 めて 明ら かに した。後2者の事実は 、本病菌の寄生性における特徴を示すと同時に、

本 病 菌 は シ ャ ジ ク ソ ウ 属 植 物 と と く に 密 接 な 関 係 に あ る こ と を 示 し て い る 。   アカクローバの生育と本病発病との関係から、本病の発 病における特徴を明らかにする た め に、 発病 程度 を異 にす るア カク 口一 バ2品種を1個体毎にポッ卜栽培し、アカクロー バ の生育にともなう本病の発病経過を検討した。その結果 、アカクロ―バの生育初期には 発 病の激しい時期が存在するが、発病が一旦減少し、その 後開花期、越冬芽発生期、越冬 後 の開花期のいずれの生育ステージ内でも生育にともなっ て発病が増加すること、またそ れ ら生育ステージの進展にともなって発病程度の上限が高 くなることを初めて明らかにし た 。個々のアカクロ―バの発病経過についてみると、生育 にともなって発病が増加する時 期 には、発病葉率が減少した個体よりも増加した個体が多 く、発病が減少傾向にある時期 に はく発病葉率の減少する個体が多いことを確認した。一 方で、個々のアカクローバの生 育 にともなう発病葉率は必ずしも増加するだけでなく時期 によって減少する場合もあり、

発 病 程 度 の 順 位 が 必 ず し も 平 行 移 動 的 に は 推 移 し な 。 、 こ と を 明 ら か に し た 。   気 温の 推移 と本 病の発病経過との関係を検討した結果、開花期に おける高温下(26.O℃ 以 上)での発病増加あるいは越冬芽発生期における低温下 (10.O℃前後)での発病増加は

、 菌 の生 育適 温(24℃ 前後 、Stavely and HanSOR,1966)では説明できず、また越冬芽発 生 の 初期(20℃前 後)は、菌の生育適温 から見て発病には好適と考えられるが実際には発 病 を認めず、本病の発病には気温の影響よりもアカクロ― バの生育にともなう抵抗性の低 下 が大きく関与していることを初めて明らかにした。

  さらに、本病の発病程度の判定方法に関する問題点を指 摘し、発病程度の判定には、越 冬 後の開花後期までの継続した発病調査が不可欠であり、かつ用いlた集団の中での評価な し には判定できなぃことを明らかにした。本病に対するア カクローバの抵抗性個体として

、 越冬後の開花後期まで発病程度が低く推移した個体を選 抜し、それら選抜個体の有効性 に ついて検討した。その結果、開花時期における発病程度 は親株の発病程度をよく反映し

、 抵抗性個体からのクロ―ンは発病程度が低く、感受性個 体からのそれは発病程度が高く

、 本病に対する抵抗性個体選抜の有効性を実証した。

  葉の生長と本病の発病との関係を、自然感染下で検討し た。その結果、アカクローバの 葉 の出葉順に発病する傾向が認められること、未展開葉で は発病が認められず展開葉での み 発病が認められること、展開葉の中でも生長途中の葉で は発病が認められることが極め て 少なぃこと、小葉が長さまたは幅が最大長あるいは最大 長近くに達した葉で発病が認め ら れることを初めて明かにした。また、開花時期における 生育にともなう発病増加は、小 葉 長が最大長に達した、発病し易い葉の増加によることを 明かにした。さらに、葉の生長 程 度とうどんこ病菌の感染、菌糸生育および過敏感反応と の関係を接種試験により検討し た 。その結果、アカクロ―バの個体の抵抗性・感受性とは 関わりなく、未展開葉では感染 率 が低く、過敏感反応による感染阻止率が著しく高く、菌糸の生育程度が少な。、こと、葉 の 生長にともなって感染率が高くなり、最大長に達した展 開葉で最も高く老化葉では若干 低 下すること、葉の生長にともなって過敏感反応による感 染阻止率が著しく低下し、同時 に 菌糸生育が良好になる傾向を認め、本病の発病はアカク ローバの葉の生長と深く関わる 特 徴を有していることを初めて明らかにし、未展開葉の抵 抗性には、ファイ卜アレキシン

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の関与を示唆し た。

  以上、うどん こ病菌の分類学上重要な問題を含む本病菌は、分生子世代の形態および寄 生性における特 徴のみならずァカクローバの生育あるいは葉の生長にともなう発病生態に お け る 特 徴 か ら も 、 ア カ ク ロ ―/ヾ , と の 関 わ り が 極 めて 深い もの と結 諭さ れた 。

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   学位 論 文審 査 の 要旨 主 査    教 授    生 越    明 副 査    教 授    木 村 郁夫 副査   教授   喜久田嘉郎

    学位論文題名

アカクローバうどんこ病の病原ならびに発病生態に関する研究

  本 論 文 は 和 文 で 記 さ れ 、 図24、 図 版4、 表38を 含 む 総 頁 字 数213か ら な り 、7章 をもって構成されている。

  アカクローバうどんこ病は、わが国では1975年秋北海道で初めて発見されて以来、全国 各地で認められ、アカクロ―バの重要病害のー っとなった。本研究は、本邦産アカクロー バうどんこ病の病原とその分類学的位置を明ら かにすると共に、本病の発病における特徴 をア カク ロー バの 生育 経過 との 関係 か ら明 かに する こと を目 的に 行っ たも ので ある。

  本病菌と種々のマメ科植物に発生するうどん こ病菌について、分生子世代の形態と寄生 性を比較した。その結果、分生子の大きさは、 変異の幅を有するものの、それぞれの菌で 特徴的な大きさを示すことを初めて明らかにし 、分生子の大きさの分類学的重要性を指摘 した。また、分生子の発芽管は従来から指摘さ れているように多様な形態であることを確 認した。その上で、本病菌は分生子の幅と長さ の比が大きく幅の広い特徴を有する菌であ ること、また本病菌はアカクローバ以外の植物 にも寄生性を有するとする従来の報告を確 認すると共に、他の7種のマメ科植物に発生する 菌とは寄生性を異にし、シャジクソウ属 植物に特異的に寄生性を有する点が特徴である ことを初めて示し、うどんこ病菌の分類学 上重要な問題を含む本病菌の分類学的位置およ び特徴に関して新たな知見を加えた。本邦 産アカクロ―バうどんこ病の病原菌は、以上の 結果およぴ子のう殻の形態から本邦初産の

,Erysiphe trifolii Grevilleと同定すると共 に、分類学的位置として、Erysiphe属にと どめるとするZheng and Chen (1987)の見解を支持した。

  次に、本病の発病における特徴を明らかにす るために、ポッ卜栽培したアカクロ―バを 用いて発病経過を検討した。その結果、本病は 発病の個体差が大きく、アカクローバの品 種・生育ステージによって異なること、アカク ローバの生育初期に発病の激しい時期が存 在するが、一旦発病が減少すること、その後開 花期、越冬芽発生期、越冬後の開花期のい ずれの生育ステージでも、生育にともなって発 病が増加すること、アカク口―バの生育ス テージが進展するにともなって発病程度の上限 が高くなることを明らかにした。生育にと もな う発 病増 加は 、菌 の生 育適温(24.0℃、Stavely and‑Hanson,1966)よりも高温下(

26.0℃前後)でも 低温下(10.O℃前後)でも認められ、菌の生育適温では説明できなぃこ とを示し、本病の発病には、アカクロ―バの生 育が深く関わり、発病増加はアカクロ―バ

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の生育にともなう抵抗性の低下と密接に関わることを明らかにした。さらに、発病の個体 差が大きく、品種・生育ステ―ジによって個体差の幅が変化すること等、本病の発病程度 の判定方法に関する問題を指摘し、発病程度の判定には、越冬後の開花後期までの継続し た発病調査が不可欠であることを明らかにした。そして、本病に対する抵抗性個体の選抜 には、越冬後の開花後期まで発病が低く推移した個体が有効であることを明らかにした。

  アカクローバ葉の生長程度とうどんこ病の発病との関係を、自然感染下で検討した結果

、本病はアカクローバの葉の出葉順に発病すること、未展開葉、生長途中の葉では著しく 発病しにくく、生長が最大長に達した葉で発病が認められること、アカクロ―バの生育後 期における本病の発病増加は、この最大長に達した発病し易い葉の増加によることを初め て明らかにした。さらに、接種試験によって、アカクローバ葉の生長程度とうどんこ病菌 の感染、過敏感反応、菌糸生育との関係を検討した結果、アカクローバ個体の感受性・抵 抗性に関わらず、出葉間もなぃ未展開葉で感染率が著しく低く、菌糸生育も少なぃのに対 して、葉の生長にともなって感染率が増加し、小葉が最大長に達した展開葉で感染率がも っとも高く、菌糸生育も良好であること、老化葉では感染率が若干低下すること、さらに 未展開での低い感染率は、被侵入細胞の過敏感反応によることを示し、本病の発病はアカ ク ロ ー バ の葉 の 生長 と 深 く関 わ る 特徴 を 有す る こ とを 初 めて 明 ら かに し た。

  以上、うどんこ病菌の分類学上重要な問題を含む本病菌は、分生子世代の形態および寄 生性における特徴のみならずアカクロ―バの生育あるいは葉の生長にともなう発病生態に お け る 特 徴か ら も、 ア カ クロ ― バ との 関 わり が 極 めて 深 い菌 と 結 諭さ れ た。

  以上の研究成果は問題であったアカクロ―バうどんこ病菌の分類的位置を明らかにし、

またその発生生態に新知見を与えた点で、学術上応用上貢献するところ大きく、高く評価 される。よって審査員一同は、最終試験の結果と合わせて、本論文の提出者佐藤幸生は博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

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