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博士(獣医学)谷山弘行 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)谷山弘行 学位論文題名

Pathomorphological Studies of Pancreatic Islets  . of Spontaneous Diabetes IVIellitus in Cattle

(ウシの自然発生糖尿病の膵島病変に関する病理形態学的研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ウシを始めとする草食動物における糖尿病の発生は極めて少をい とされている。現在まで、糖尿病と正確に診断されたウシの報告例 は12例に過ぎをい。これらの報告例で弦、臨床病理学的所見が主に 述 べられ 、高血糖症、低インシュリン血症、多尿、多飲多渇、謝 痩、・さらにはケトーシス、昏睡などが認められている。一方、病理 学的変化はこの中の数例について記述され、膵島の萎縮、減数、p 細胞の消失あるい弦空胞変性、リンパ球の膵島浸潤をどが記載され ている。

  本論文で弦、ウシの慢性糖尿病ならびに持続性ウイルス性下痢症 に見いだされた急性糖尿病を形態学的に検索し、ウシの自然発生糖 尿病の膵島病変を明らかにするとともに、本病の病理発生について 考察した。

1ウシの慢性糖尿病に見られた膵島病変

  検索 した本 病5例(6〜 48ケ月爺 )に共 通して認められた特徴 的変化は、膵島の萎縮と減数、膵島の代償性腫大ならびにりンパ球 性膵島炎であった。とくに膵島の減数辻顕著であり、単位面積(7 x7 mm2)当 た り の 膵 島 数 敬 対 照 牛 の20〜80$で あ った 。 萎 縮 し

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た 膵 島 の 直 径 は、 対 照 牛 が110〜230p皿 で あっ た の に 対 し、20

〜130pmであった。これらの萎縮した膵島は、細胞質に極めて乏し く、円形ないし楕円形の核を持つ細胞で構成されていた。残存した 膵島の免疫組織化学的検索で敬、インシュリン(声)陽性細胞の含 有率 はO〜35冨 で、こ のほか グル カゴン (ロ) および ソマトスタ チ ン (8)陽 性 の 細 胞が 僅 か に 認めら れた。 電子顕 嶺鏡下 では 、 萎縮した膵内分泌細胞は、無顎粒かあるいは僅かの分泌穎粒を含む 細胞質に乏しい細胞であった。分泌穎粒敬電子密度の高い球形の芯 と、それを取り巻く電子密度の低い層からをる2重構造を示す怨細 胞顎粒であった。

  一 方、代 償性に 腫大した膵島は、空胞変性を示す細胞で構成さ れ、 これら の細胞 は、免 疫組 織化学 的に脱 顎粒し たp細胞であっ た。空胞変性細胞弦電子顕微鏡下で敬、細胞質内に、腫大あるいは 崩壊した糸粒体と拡張した滑面小胞体、高電子密度の芯とこれを取 り巻く広い空隙を持った分泌顎粒が疎に認められた。また細胞間隙 に弦、崩壊した細胞小器官が散在していた。

  リンパ球浸潤を特徴とする膵島炎敬、萎縮膵島よりも腫大膵島に 好発していた。リンパ球は膵島内あるいは膵島周縁に浸潤し、膵内 分泌細胞は空胞変性,.壊死を示し、まれに石灰小球の沈着を伴ってい た。また、線維化を伴う慢性化した膵島炎も散見された。抗ウシIgG 抗体による免疫組織化学では、萎縮膵島にはIgGの沈着は認められな かったが、腫大膵では4例の膵島内分泌細胞の細胞質にIgGの沈着が 認められた。

  以 上のよ チに、 萎縮膵島では声細胞が完全あるい敬顕著に欠落 し、腫大した膵島ではp細胞が空胞変性あるいは崩壊していた。こ れらの所見は、本病の膵島病変がp細胞の選択的変性・崩壊に始ま ることを示している。また、腫大膵島へのIgGの沈着は膵内分泌細

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胞 に 対 す る 自 己 抗 体 の 存 在 を 、 腫 大 膵 島 に 好 発 し た り ン パ 球 性 膵 島 炎 弦 膵 島 に お け る 細 胞 性 免 疫 異 常 を 示 す も の で 、 ヒ ト の イ ン ス リ ン 依 存 性 糖 尿 病 (IDDI4)の 慢 性 型 に 見 ら れ る 病 理 組 織 像 に 極 め て 類 似 す る も の で あ っ た 。 以 上 か ら 、 今 回 認 め ら れ た ウ シ の 慢 性 糖 尿 病 の 膵 島 病 変 の 発 生 に 敬 、 自 己 免 疫 が 強 く 関 与 す る も の と 考 え ら れ た 。   こ の ほ か 、 膵 島 に は 石 灰 小 球 (1例 ) や 膵 内 分 泌 細 胞 の 細 胞 質 内 に は グ リ コ ・ ゲ ン の 沈 着(2例 ) が 認 め ら れ た 。 前 者 はpsamcmoma bodyに 類 似 し た 構 遣 を 示 し 、 変 性 ・ 壊 死 に 陥 っ た 膵 内 分 泌 細 胞 に お け る 異 栄 養 性 石 灰 沈 着 と 解 さ れ た 。 後 者 強 高 血 糖 症 に 続 発 し た 二 次 的 変 化 と 解 さ れ 、p細 胞 の 空 胞 形 成 に 、 一 義 的 に は 関 与 し て い を い も の と 考 え ら れ た 。

2ウ シ の 持 続 性 ウ イ ル ス 性 下 痢 症 (BVD) ウ イ ル ス 感 染 症 に 続     発した急性糖尿病の膵島病変

  BVDウ イ ル ス に 持 続 感 染 し た30{9の ウ シ を 病 理 組 織 学 的 を ら び に 免 疫 組 織 化 学 的 に 検 索 し 、 そ の 中 の4例 (6 48ケ 月 齢 ) に 続 発 性 急 性 糖 尿 病 を 見 い だ し た 。 こ の4例 を 含 む 全 例 の 消 化 管 に は 慢 性 のBVD病 変 が 認 め ら れ 、 か つ 抗 BVDウ イ ル ス 抗 体 を 用 い た 免 疫組織・イヒ学的検索で、消化管菰膜上,皮紐胞.ならびに粘膜固有層のり ンパ球に、BVDウイルス抗原が証明された。

  膵 島 の 膵 内 分 泌 細 胞 譲 単 位 面 積(50x50 pca12)当 た り 、 対 照 牛 4359 $に 減 少 し て い た 。 大 部 分 の 膵 内分 泌 細 胞 は 空 胞 変 性 を 示 し 、 免 疫 組 織 化 学 的 に は 著 し い 脱 顎 粒 を 示 すp細 胞 で あ っ た 。 こ れ ら 空 胞 変 性 を 示 す 膵 内 分 泌 細 胞 の ほ か に 、 細 胞 質 の 好 酸 性 濃 縮 、 核 濃 縮 あ る い は 核 崩 壊 な ど を 示 す 細 胞 も 認 め ら れ た 。 ま た 、 リ ン パ 球 の 浸 潤 を 特 徴 と す る 膵 島 炎 が し ぱ し ぱ 認 め ら れ た 。 リ ン パ 球 は 膵 島

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周縁あるいは膵島内に浸潤し、膵内分泌細胞弦著しく腫大あるいは 空胞変性を示していた。

  抗ウシIgG抗体を用いた免疫組織化学的検索では、全例の膵島の 膵内分泌細胞の細胞質に、IgGの沈着が認められた。また、膵内分 泌 細 胞 は 抗BVDウ イ ル ス 抗 体 に 反 応 を 示 さ を か っ た 。   以上の膵島病変は、糖尿病の急性期の変化と考えられ、p細胞の 減数と空胞変性による脱顛粒が、本病発症の直接的成因と考えられ た。一方、残存した正常膵島の膵内分泌細胞に誼有糸分裂像が、ま た、抗インスリン抗体に陽性反応を示す膵島外膵内分泌細胞の増 加、膵管上皮細胞の過形成が認められた。これらは減退したインス リン分泌缶に対する代償性の変化とみなされるが、インスリン欠 乏を完全に代債し得る程の変化ではをいと考えられた。リンパ球性 膵島炎ならびに膵島へのJgGの沈着弦、本膵島病変の組織発生に細 胞性免疫および液性免疫の異常が深く係っていることを示唆するも のであった。さらに、BVDウイルス抗原が膵内分泌細胞には証明 されなかったことから、本例における糖尿病の発生機序は、ウイ ルス感染に端を発する自己免疫機構の異常が関与するヒトのIDDM に お け る そ れ と 同 じ 範 疇 に 入 る も の と 考 え ら れ た 。

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学位論文審査の要旨 主 査 ′ 教 授    板 倉 智 敏 副 査    教 授    菅 野 富 夫 副 査    教 授    橋 本    晃 副査    助教授    橋本善春

学 位 論 文 題 名

Pathomorphological Studies of Pancreatic Islets     of Spontaneous Diabetes h/IellituslnCattle     (ウシの自然発生糖尿病の膵島病変に関する病理形態学的研究)

  ウシをはじめとする草食獣における糖尿病の発生は極めて少ない。申請者は、ウシに自然発生 した慢性糖尿病と、持続性ウイルス性下痢症( BVD)ウイルス感染に続発した急性糖尿病の膵島 病変を形態学的に研究した。

  慢性糖尿病に関しては、5例(648か月齢)を検索した。これら5例に共通して、以下の特徴 的病変が認められた。まず、膵島の減数が顕著であり、単位面積当たりの膵島数は、対照牛の20

〜 80%であった。残存した膵島は萎縮し、ここでは、B細胞が完全あるいは顕著に欠落していた。

一方、代償性に腫大した膵島も認められ、ここではB細胞が空胞変性あるいは崩壊していた。こ れらの所見は、本病の膵島病変がB細胞の選択的変性・崩壊に始まることを示していた。腫大し た膵島の膵内分泌細胞の細胞質にはIgGの沈着が認められ、これは膵内分泌細胞に対する自己抗 体の存在を示していた。また、腫大した膵島にはりンパ球性膵島炎が好発し、これは膵島におけ る細胞性免疫異常を示唆していた。以上の変化は、ヒトのインスリン依存性糖尿病の慢性型に酷 似 し 、 膵 島 病 変 の 発 生 に は 自 己 免 疫 が 強 く 関 与 す る も の と 考 え ら れ た 。   次に、BVDウイルスに持続感染した30例のウシを、組織学的ならびに免疫組織化学的に検索し、

その中の4例(6〜48か月齢)に続発性糖尿病を見いだした。これら4例の膵島の膵内分泌細胞 は、単位面積当たり、対照牛の43〜 59%に減少していた。萎縮した膵島は脱顆粒したB細胞で構 成され、膵内分泌細胞の細胞質にはIgGの沈着が認められた。また、リンパ球浸潤を特徴とする 膵島炎がしぱしば認められた。以上の膵島病変はニ糖尿病の急性期の変化と考えられた。本例の 糖尿病の発生には、膵内分泌細胞にBVDウイルス抗原が証明されなかったことから、ウイルス感 染に端を発する自己免疫機構の異常が関与するものと解された。

  以上のように、申請者は、ウシの糖尿病に関し、形態学的立場から多くの知見を提供した。よ って審査員一同は、谷山弘行氏が博士(獣医学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認 めた。

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参照

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