教師に対する心理劇的アプローチによるカウンセリング研修
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(2) を演じる者にとっても,自分の悩みを理解しても. より大きく低減)が見られる傾向があった。事例. らえるという点では,安心できる場と認知されて. 分析を行ったところ,遊戯性の高群にあたる者は. おり自己開示もしゃすく自分の問題に対して深. 深くドラマの世界に入り込み,浮き彫りにされて. く洞察を進めていくことができたものと思われ. くる自分の問題について考えを深めていこうと. る。参加形態の違いによる影響もあるとは思われ. する姿勢が伺われた。それに対して,遊戯性の低. るが,今回の場合,学生を対象として実施した研. 群にあたる者は,役割を演じることに対しての抵. 修より,教師を対象にした研修の方が心理劇的ア. 抗は次第に薄れてきたものの,ドラマはドラマで. プローチによる研修の効果はあったと言える。. 現実とは違うという線引きがあったように思え. (2)教師グループのドラマの展開内容について. る。今回は偶然,主役を演じることにはならなか. ドラマの展開が#2,#3では同様に,一児童・. ったが,主役を演じて自分自身の問題を提示し,. 生徒にどのようにかかわればよいのかという悩. 他の参加者の前で自己洞察を深めていくとなる. みから,学級経営についての問題へと移り,さら. と間違いなく強い抵抗を示したものと思われる。. には自己を内省するという方向に進んでいった。. 主役の選択には十分な注意を払う必要があるで. これは,この研修に参加している教師が全て10. あろう。. 年以上の教職経験をもつ者で構成され,児童・生. (4)心理劇的アプローチによる効果について. 徒とのかかわりを単に,一教師と一児童・生徒の. 参加者から,実際に生徒役を演じることによ. みの関係性だけで対処するのには無理があるこ. り,クラスの雰囲気を実際に感じとれ,考えてい. とを実感としてもっていたからであろう。ドラマ. ることが深く理解できたという役割交換,あるい. を通して問題を解決するにはいたらなかったが,. は他者の役割を取得し演じることによる効果が. 自己に対する新たな発見や気づきが,今後の児. 認められた。また,頭の中で考えていたことを,. 童・生徒とのかかわり方や職場での人間関係の改. 他の人の言葉を実際に出して表現することが,こ. 善へのきっかけとなってくれるものとなればよ. んなにも自分に迫ってくることに意外な思いが. いと願っている。このようなねらいでの研修をも. したと,まさに「今,ここで」,直接,肌で感じ. つならば,今回の場合のように,ある程度,教職. たことをもとに試行錯誤を繰り返すことを通し. 経験を積み,物事を多面的な方向から見つめてい. ての自己発見,自己洞察が行えるという効果も認. くことができるようになった中堅教員を対象に. められた。しかし,怖さを感じるという印象を受. した方が有効ではないかと思われる。. けた者がいたように,心理劇的アプローチの適用. (3)性格特性の違いによる心理劇の効果について. にあたっての危険性についても十・分配慮してお. 性格特性別に分類を行い,分析したところ,実. かなければならない。. 践2の遊戯性の高群と低群との間に,第3セッシ. 4.今後の課題. ョンと第1セッション間の洞察因子得点の差に. 筆者自身,監督としての技量を高めていくこと. ついて有意な違い(遊戯性の高群が遊戯性の低群. はもちろんのこと,今後はできるだけ簡単で安全. に比べてより大きく上昇)が見られた。また,恥. に主役体験ができ,相互研修としても活用できる. ずかしさ因子得点の差にも,10%水準ではあるが. 構成的なものを取り入れていきたい。. 違い(遊戯性の低群の方が遊戯性の高群に比べて. 主任指導教官 夏 野 良 司.
(3) 学 位 論 文. 教師に対する心理劇的アプローチによる. カウンセリング研修. 学校教育専攻 生徒指導コース. 学籍番号M99152K 稲. 垣. 真. 介.
(4) はじめに 近年,教育現場においては,いじめ・不登校・学級崩壊といった問題を抱 え,教員はその対応に悩み続けている。単に,教材研究をし,その内容を子 どもたちに分かりやすく教え授けるというだけではなく,そのねらいの一部 あるいはその過程において,これらの問題を念頭に置きながら取り組んでい るのは言うまでもない。といっても,現状は,その問題もケースによって様々. であるため,手引き書や処方箋があるわけでもなく,多くは担任教師の裁量. に任されている部分が多いと思われる。ところが,筆者自身の10年間の教 職経験を振り返ってみると,実際のところ,目の前にある教材や行事をこな していくことに精一杯で,自分自身の教師としての役割はいかにあるべきか を立ち止まって考えたり,一人一人の児童が何を考え,どう感じているかを 理解しようと努めたりすることを怠りがちであったと言わざるを得ない。. そこで,筆者は本大学に入学し,今一度,自分自身を見つめ直し,児童理 解を図るため,カウンセリングの基本について学び始めた。そのような中,. 筆者は平成11年6月に夏野教授の勧めもあって心理劇のワークショソプに 参加することができた。そこでは,劇を演じていく中で,本来,見えてくる はずのない他人の感情というものが表現されながら進行していくため,他人 の立場にたって物事を考えることができ,私自身の今まで取ってきた役割意 識の変容をもたらす機会が得られたように感じた。また,即興で演じていく ために,自発性が求められ,その場に臨機応変に対応しながら役割行動を取 ることの難しさを感じたと同時に,今後の教師生活の上において,この経験 が生かされるものであると確信した。. 以上のことから,私を含む,教師にとって心理劇というものが,児童理解. および教師としての役割行動の再認識に効果のあるものではないかと考え るに至った。そこで,研究を進めていくにあたって,まずは筆者自身が数多 くのワークショップに参加し,ドラマ体験をすることを通して監督役割とし ての技量を身につける必要があると考え,現在における心理劇の権威者であ るともいわれる,磯田雄二郎,磯田由美子,高良聖,増野肇,小笠原美江, 金子賢各先生方のグループに参加させていただいた。. 1.
(5) 次. 目. はじめに 1. 第1章 問題と目的 第1節 心理劇とは. 1. 第1項心理劇の理論 1 第2項 日本における心理劇の展開 3. 第3項 心理劇の手順 4 第4項 心理劇の構成要素 第5項 心理劇の技法. 6. 8 9. 第2節 学級経営における教師の役割 第3節 教師に対するカウンセリング研修への 心理劇の適用について. 10. 第4節 先行研究における心理劇参加者の変化. 11. 第5節 研究の目的と仮説. 12 13. 第2章 方法 第1節 手続き. 13. 第1項対象 13 第2項 実施期間と実施方法. 13. 第2節 分析方法 第1項 5因子性格検査について 14 第2項 評定尺度について 16. 14. 第3章 心理劇の実践1(学生グループ). 19. 第1節 プログラムの構成. 19. 第2節 結果. 20. 第1項 経過観察を通しての分析. 20. 第2項 評定尺度による分析 36 第3項 実践1を終えての問題点 39 ii.
(6) 41. 第4章 心理劇の実践2(教師グループ) 第1節 プログラムの構成. 41. 第2節 結果. 42. 第1項経過観察を通しての分析 42 第2項 評定尺度による分析. 62 66. 第5章 性格特性の違いによる心理劇の効果. 66. 第1節 性格特性別に見た変化の分析 第2節 経過観察を通しての分析. 69. 第1項 遊戯性の高群にあたる者の事例分析. 69. 第2項 遊戯性の低群にあたる者の事例分析. 72. 第6章 考察 第1節 実践1(学生グループ)と実践2(教師グループ)の 違いにもとつく考察. 74 74. 第2節 教師グループのドラマの展開内容についての考察. 76. 第3節 性格特性の違いによる心理劇の効果についての考察 第4節 心理劇アプローチから得られる効果についての考察. 77 79. 81. 第7章 研究の問題点と今後の課題. 81. 第1節 研究の問題点 第2節 今後の課題. 83. おわりに. 84. 要約. 85. 引用文献・参考文献. 90. Appendix 謝辞. 111.
(7) 第1章. 問題と目的. 第1節 心理劇とは 心理劇の創始者モレノ(1951)は“心理劇とは,ドラマの方法によって人間. 存在の真実,および環境場面の現実を探求する科学なのである”と述べてい る。すなわち,人間を探求することを目的としているものであるといえる。 増野(1977)は“ドラマを通して,演者に対して,監督および補助自我と呼 ばれる治療者が,自由な役割,隠されていて錆びついている自己を発見する のを助けるものであり,そのような努力を通して,新しい自己を発見するの を観客も見守ることによって授けるものである”としている。また,かくし て,心理劇を“舞台という自由で安全な世界の中で,被治療者がいろいろな 役割をいろいろな状況下で演じることによって,自己実現,自己洞察を可能 にするよう,補助自我や監督,それに観客が授けていく集団精神療法なので ある”と定義づけている。また,モレノの言葉にもどって定義するならば“心 理劇とは,ドラマ的方法によって人間存在を分かろうとする試み”であると 捉えている。. また,高良(1998)によると“心理劇は集団心理療法の一つの技法であり,. 非言語的,特にアクションを介在しているところにその特徴を有する。すな わち,即興的なドラマ表現を媒介として個人に自己理解(時には他者との相 互理解),あるいは自己洞察をもたらすことを期待した心理療法”であると している。. 現在,我が国で使われている「心理劇」という用語は,個人に焦点を当て る「サイコドラマ」,集団の課題に争点を当てる「ソシオドラマ」,役割機能. の発展を目指す「ロールトレーニング」を総称した呼び方であり,さらに, 「ロールトレーニング」は「ロールプレイング(役割演技)」として発展し. てきている。いずれの方法も,アクションを基盤においているところで共通 している。. 筆者は教員に対して心理劇的アプローチを試みることから,治療的意味合 いは薄め,心理劇をドラマ的手法を通して,日常生活をしていく上での自己 に対する気づき,あるいは課題意識をもつことに役立てるものとして活用し たいと考えている。. 第1項 心理劇の理論 北原(1983)は教育場面における心理劇を活用することで,児童に対してで 1.
(8) はあるが,(a)直面している問題の解決が可能である (b)自己についての洞. 察を深め,道徳性の内面深化を助長させることができる (c)他者の感情を. 感受する能力を発達させ,対人関係における自己や他者に対する共感的理解 や態度を養うことができる (d)訓戒や叱責を演劇という形を通すことで受 け入れやすいものにすることができる (e)人前で自己を表現する能力や態 度を促進することができる (f)演技者と観客が一体となることにより,なご やかな仲問意識を形成することができるとしている。 また,金子(1992)は,心理劇の効用として(a)日常生活の改善 (b)自己へ の気づきの即時性 (c)カタルシス (d)他者の見直し (e)共感性を高める (f)ファンタジーの現実化を挙げている。. 筆者は心理劇の効用を,台(1986)の考えをもとに3点に絞ってまとめるこ ととする。. 1.遊戯性と創造性. 芝居を人前でするということを考えると,恥ずかしさが先行し,うまくで きないのではないかと抵抗を覚えるかもしれない。しかし,心理劇は演ずる こと自体が焦点なのであって,見せること,そのためにうまく演ずることが 不可欠なのではない。むしろ,自然の遊戯に近いものと考えられ,遊びの自 由と開放性を備えたものであると捉えられる。希望や理想などのように,頭 で考えていることを,身体で表現してみると,想像していたのとは著しく異 なる場合がある。これらの体験は,やり直し可能な仮想の場面で練り直され るであろう。「今,ここで」考えながら話し,話しながら演じ,演じながら 考える。全てを即興的に演じていくものである。それは,観念にとらわれて いたことへの反省にもなるし,演じた結果に開けてくる新しい場面に対する 気づき,あるいは新しい創意にもつながるものである。. 2.カタルシス効果と共感性. 心理劇は,身体表現を伴うだけに,適切な状況において,これまで抱え ていたことを表現することによって,一層強く心的内容の浄化,解除,除 去といったカタルシスが行われる。また,こうしたカタルシスは,同時に 観客にも影響を与え,他人に対する三方の転換をもたらすような洞察をも しばしば伴ってくる。また,演者のとる(あるいは過去にとってきた)行 動に対して,理解や共感を覚えることができると考える。すなわち,個々 の心の成長と,演じたり,見たりする人々相互の間柄の発展とを同時に果 たすような仕組みになっている。 2.
(9) 3.自発性. 参加者は,まず観客として,見るものとしては最低の自発性の段階にある。. つぎには観客席から立ち上がって発言することで,一歩,自発性を高める。 そして最後に,観客席を離れて舞台に上がり,身体を動かして演ずる者にな ることで,最高の段階に至る。希望して特定の役割を演ずる場合のみでなく,. 与えられた場面の中で図らずもとった役割によって自発性が高められるこ ともある。自発性は役割行為とともに発現することが前提であり,単に役割 をとることから,自発的に個性的に演ずることへ,さらに新しい役割を創造 することへと,自発性の度合いは段階的に高まってくる。この自発性の発展 は台(1986)によると,まず場面の性格,つまり監督がその場面において何を. 期待するかにかかわっていると述べている。その期待とは,(a>習慣化され た文化遺産や制度化された社会的ルールに活力を与えること (b)新しい技 術や産物,新しい環境を作ること (c)新しい,突発的な状況に適切に応じ ること (d)パーソナリティーを自由に表現することであるとしている。参. 加者からの課題提示に対して,監督はこのような可能性を求めて場面設定を 行って,自発性の発展を求めるものであるとしている。. 第2項 日本における心理劇の展開 心理劇は1951年,外林大作・松村康平がモレノ(Moreno,J.L.1889−1974). によって創始されたサイコドラマを日本に紹介し,1956年には「心理劇研 究会」が発足した。その後,外林は学校での生活指導,日常生活の中での心 理劇の活用に向かって,また,松村は国際的な心理劇活動と関係学の実践論 の確立へと歩んでいった。. そのような中,1981年目本においてザーカ・モレノ女史を招いてのワーク ショップがもたれた。それは,“これまで日本において心理劇を進めてきて いた干たちにとっては衝撃的なものであった”と増野(1990)は述べている。 そのドラマは,あくまで一人の主役を中心にして,丹念にドラマを作り上げ る方式であり,ドラマ性を高めるために,役割交換をはじめとして,様々な 技術が示されながら進んでいくものであった。そして,ドラマが終わると, シェアリングが行われ,ドラマがグループ全体へと発展するものであった。 ザーガ・モレノ女史の温かい雰囲気,繰り広げられるドラマと技術,主役が 示す感情の高まり,シェアリングによる全体への波及といったものが多くの 人に衝撃を与え,「モレノ・ショック」と呼ばれるようになった。これはそ れまで呼ばれていた「心理劇」と区別して「古典的サイコドラマ」と呼ばれ るようになり,「東京サイコドラマ研究会」が発足(現在は東京サイコドラ 3.
(10) マインスティテユート)され,増野肇,高良聖,前田ケイ,佐藤豊,そして 磯田雄二郎・由美子夫妻を中心に研究が進められてきている。 「古典的サイコドラマ」とは増野(1990)によると,“カタルシスだけでな・. く洞察をももたらすものである”と述べられている。その目的とすることは,. 主役の抱えている課題をドラマの形式の中で明らかにしていくことであり,. 明らかにされた課題を自発性をもってその場で克服することを助けていく ことである。一人の主役に集中して監督も補助自我も,事実を明らかにする ことに協力し,それを克服することを助ける。それが成功したとき,その一 人の主役の表した人間としての姿が,観客をも含む他の人たちに共感され, 他の人たちの課題にもつながるとしている。. また,その一方ではロールプレイよりもロールテイクを必要とされる人た ちを対象に,台,佐伯,迎といった人たちによる,あまり深くしない形での 集団そのものを対象とした日本的な心理劇も発展してきている。 精神療法として活用された報告としては,増野(1990),台(1984)などが, そして最近では島谷(1996),小笠原(1996),平田ら(1998)など数多くのもの. がある。また,教育方面においても,心理劇やロールプレイングを用いた実 践報告を宮本(1961),笛木(1965),石井・時田(1974),北原(1983),台(1986),. 金子(ユ992),江橋(1996),石渡・武藤(1998),西村(1999)らによって数多く. なされている。. 第3項 心理劇の手順 1セッションは「ウォーミングアップ」「ドラマ」「シェアリング(話し合 い)の3段階から成立している。 1.ウオーミングアップ A。A.シュツェンベルガー(1970)によると,“セラピストが最初になすべき. ことは,自己とメンバーとの間にコミュニケーションの道を開き,そして全 員相互間に寛容な,さらに親密な対人関係を設定することである”と述べて いる。これがウォーミングアップであり,それによってグループ間には同時 に熱意が生じてくるとしている。人間が自分自身の姿を友達の前にさらけ出 すには,理解にあふれ,許容的で寛容,親密な思いやりのあるグループにお いて,最もよくさらけ出すことができる。グループに熱意が欠けていたり, 深い対立があったりすると,提案者に対して距離をかまえ,演技者に批判的 となり,傍観者とかでしゃばり的になるというわなに陥り,治療的にも教育 的にも《自己の概念のみをそこにあてはめようとする》ところの嗜虐的,被 4.
(11) 虐的な不健康な状態となる。したがって行為前のウォーミングアップにおい て,お互いの問によい関係を生じさせ,そのグループに参加している様々な 人の間,およびそれと監督の間に結びつぎを生じさせる必要があるとしてい る。. 具体的な方法としては言語的なものと非言語的なものとに分けることが できる。台(1982)によると,“非言語的なものの方が心理劇の導入には有効. であるが,これで出発すると次に言語的なものへ移行する際に,どうやって よいか困ってしまうことがあるため,両方のやり方を知った上で,参加者の 種類や状態や心理劇の経験とからみ合わせて,臨機に組み合わすのが適当で ある”と述べている。. 最終的にこのウォーミングアップという段階は,日常生活下問から,つぎ. に進んでいこうとするドラマ世界への橋渡しとなるべきものにならなけれ ばならない。. 2.ドラマ. 当然のことながら,心理劇の中心となる部分である。場面設定から始まり,. 様々な技法を駆使することにより,非現実的な世界を作り上げていくもので ある。. A.A.シュツェンベルガー(1970)は“心理劇とは,自己自身を縛るものから. 逃れ出た自由な人間が,やはり自己自身から逃れ出て自由になった観客の中 で演じる演劇であり,全員が自分自身から逃れ出て自己の生活を生きぬき, 舞台のうえに再発見する劇である。”と述べている。普段の生活の中で,知 らず知らずのうちにとっていた(とってしまっていた,あるいはとらされて いた)役割を舞台の上で演じてみることによって,客観的に見つめることが できる。そして,なぜそのような役割を取っていたのかということに気づき,. 劇を続けることによって,次第に新たな視点からの役割を演ずることができ るようになるであろう。すなわち,日常生活で演じている役割から自らを解 き放ち,劇を通して自己の再発見をすることは,人間のあり方を変化させ得 るものである。. 芝居を人前でするということを考えると,恥ずかしさが先行し,うまくで きないのではないかと抵抗を覚えるかもしれない。しかし,心理劇は演ずる こと自体が焦点なのであって,見せること,そのためにうまく演ずることが 不可欠なのではない。むしろ,自然の遊戯に近いものと考えられる。試行錯 誤しながら演じることは,たった一つの行為,言葉の裏にある迷いや悩みを 知ることになり,観念にとらわれすぎた行動をしていたことに気づいたり, 5.
(12) 演じた結果生まれてきた新たな場面での創意を促したりすることにもつな がるものである。. また,観客にとっても,ドラマを通して自己を客観視できたり,無意識を 意識化できたり,他人の温かさを体験したり,自分に自信をもてたりといっ た変化をもたらすものでもある。. 3.シェアリング. これは,主演者を含めた参加者全員が,ドラマを通して感じたこと,ある いは自分自身の体験の中で思い出したことなどを表明する場である。A.A。 シュツェンベルガー(1970)によると,(a)主演者が,自分だけ演技していた 孤立状態から,抜け出ることができ,他の参加者がそれぞれの感情や経験を 表現することによって,主演者と同じ問題をもっていたことが分かる (b) 他の参加者たちの経験や,この問題とその役割のとり方に対する観点などを, 主演者が参照することができる (c)参加者全員が,自己表現をすることが できる(集団的カタルシス) (d)研修のための心理劇であっては,グルー. プの《今,ここで》の技法的側面が検討され,また演技内容と,その場のグ ループ・ダイナミックスとの関連が検討される (e)メンバーが,グループ において《今,ここで》生じていたことを理解するという,5っの目的をも っているとされている。. 筆者は,この場をドラマ同様,必ずしも何らかの結論を導き出さなければ ならないものであるとは捉えていない。むしろ,今後,日常生活をしていく. 上での気づきや課題意識をもつことへとつながっていくものであればよい と考えている。. 第4項 心理劇の構成要素 心理劇はその構成要素として以下の5つが挙げられる。しかし,5つ全て が揃わなければ成り立たないというものではない。 1,演者. 台(1982)によると,“演者とは,ドラマの場面で役割演技をしてある種の. 学習を行い,自分の知的・情緒的側面や行動・態度を変容する一人または一群. の人々である”とされている。ドラマの目的はこの演者のニーズによって, 治療であったり,精神保健のためであったり,教育のためであったり,自己 開発のためであったりする。また,ドラマにおいて主演者になる人というの は,初めから課題意識をもって参加している者もいれば,ウォーミングアッ 6.
(13) プの段階で刺激を受け,次第に自発性を伸ばし主演者としての役割を取るこ とになる場合もある。. 2.観客. 本来,観客というのは演技を見る人であるが,心理劇の場合,演者と同じ 人である。ある場面では主演者であったものが次には観客となり,観客であ ったものが次には主演者になったりもする。心理劇においては原則として見 学をするだけの観客というものは存在しない。観客の機能の最も大きなもの は演者を支援することにある。演者は観客に同一化し,観客の眼を肌で受け 取り,観客の眼を通じてその動きを修正し,自分の構えを変え自分を顧みる。. また,観客も演者によって支持される立場にもある。さらにはシェアリング においての観客からの発言がドラマを大きく意味づけるものとなる。 3.舞台. 1936年につくられたというビーコンの心理劇場の舞台は円形3段で,さ らに第4の舞台といわれるバルコニーが設けられている。モレノは1段目を 懐胎の段階,2段目を成長の段階,3段目を行為の段階,そしてバルコニー を神の段階と位置づけていた。しかし,それほどまでの理想的な設備が絶対 に必要とはされていない。舞台というのは,現実と隔離された,かっこっき の特別な世界を作ることが目的で,そのような世界の存在感を作るための道 具ともいえる。しかし,増野(1990)によると,“対象によってはそのような. 世界を作り出すことが抵抗になる場合もあり,むしろ日常の場の中で,ウォ. ーミングアップを入念に繰り返すことで雰囲気を作り出していったほうが よい”ともされている。現在では,メンバーの人たちが自由に体を動かせる 程度の広さをもった部屋があればよく,その中に舞台らしきものはない方が やりやすいという結論である。. 4.補助自我. 補助自我は,劇を演じる人が自発的に行為しやすいように,行為する人の 気持ちをくんで適度な働きかけをしたりする。あるときは,その人の自我を 支えたり,またあるときは適度な刺激を与えることで,その人の中に葛藤を 起こさせたりする。主演者の世界に入り込み主演者の一部となって,その気 持ちを整理し,焦点をあて,強調していく。もう一人の自分や相手役になっ たり,人間以外のものになったりすることもある。ときには,同調し,言え ない部分を表現することもあるし,かくれた部分,反対の部分を表現するこ 7.
(14) ともある。心の中にある不安,投影された悪口となって強く刺激することも. ある。そこで,補助自我を演じる人の自発性が十分野発揮できたときに主演 者の自発性も高まる。さらに,補助自我は,監督の分身でもあり,監督の意 向をくんで,必要な役割を演じることが要求されている。 5。監督. エンカウンターなどにおけるファシリテーターと違って,心理劇における 監督の方がより指示的,保護的なかかわりが強い。すなわち,心理劇の全体 の責任者であり,積極的にリーダーシップをとることがその有効性を高める とされている。台(1982)は“監督の仕事として第一に,新しい発展を引き出 す自由な発想をもつこと。参加者の自発性に対して鋭くレスポンスできる感 受性と集団場面の動きに対する正しい判断力。第二に,種々の特性をもつ参 加者を受け入れる包容力と場面を的確に展開させうる決断力が要求される” としている。その責務は重大であるため,監督としての自分以外にスタッフ がいない場合には,スーパーバイザーが必要であるとされている。. 第5項心理劇の技法 高良(1998)によると実際のセッションで使用される具体的な技法は大き く三つ挙げられるとされている。 1.役割交換法(Role reversal). 例えば,即興のドラマにおいて,母親と娘が対話している場面で,それま で母親を演じていた者がかわって野冊を,それまでの娘役は母親役をとると いうように役割の交換という方法である。これによって,他者の立場から自 分を見つめるということを可能にする。また,他者の現実を内側から知る手 がかりを得ることになり,有効に参加者の洞察を促すことができる。場の展 開が膠着しているとき,役割交換を行うことによって,次の新たな展開をも たらすことが少なくない。 2.二重自我法(Double). 主役である演者に,「もう一人の自分」を参加者の中から選んでもらい,. その自分役の他者と相互的な交流をするという方法である。この場合,「も う一人の自分」の役割を「ダブル」と呼ぶ。監督の意図を直接,演者に伝え ることのできるダブルの役割の意味は大きく,ときには主役の知覚する力量 の上をいき,その場にいない他者に関する解釈を求められる。また,必要に 8.
(15) 応じて,主役の中にある側面の一つを誇張したり,あるいは否定したりしな がら,主役自身が自らを理解するための援助を行う。したがって,ダブルは 重要な補助自我の一つである。 3.鏡映法(Mirror). 自己の役割を自分ではない他者に演じてもらうことによって,あたかも, 鏡を見るかのように自分を観察することを可能にするという方法である。例 えば,ドラマの途中で,主役が混乱してどのように進めていいのかとまどっ てしまったとき,一旦その主役をその場から離れさせ,代わりに他のメンバ ーに同じ状況を再現してもらう。この一連の自分への観察によって,自己へ の新たな気づきを獲得することが可能になる。. 第2節 学級経営における教師の役割 教師が,いじめ・不登校・学級崩壊といった問題に対応していくために,ま. ず考えなければならないものに学級経営がある。学級経営の内容を簡約に表 現すれば,すべて児童と教師の人間関係にあるともいえる。教育現場におけ る基底的な側面として,教師と児童の問に信頼関係が成立しないかぎり正常 な教育的諸活動はありえないものといえる。. 当然のことながら,学級担任の役割は多様であり複合的であるといえる。 しかし,学級経営者としての教師の役割が複雑であるからといって,型どお りの役割を遂行していくだけでは問題である。教師として果たすべき役割さ. え演じていればよい,あまり面倒な問題には触れずにすまそう,という担任 の役割意識では,魅力ある学級を創造することは不可能である。もし,役割 さえ果たせればよい,という学級担任であるとすると,それはまさに,池島 (1998)のいう“硬直化したロールテイキング”に他ならず,主体的な要求も 成長も望めるものではない。. 学校の中で,教師は当然のことながら,児童との関係において教師役割を 演じ続けていかなければならない。教師と児童の関係で,常に教師は教え授 けるという役割を演じ,児童は教わるという役割だけを単に演じているとす ると,魅力のある人間関係は作りえないものである。魅力ある学校生活を創 造するのは教師集団の責任である。いじめ・不登校・学級崩壊といった問題 に対処していくためには,その基盤となる学級生活が児童にとって満足のい くものでなければならないのは当然のことである。魅力的な学級,すなわち 創造的な人間関係を形成するためには,教師自身がとっている役割行動を客 9.
(16) 観的にみる目を養い,児童のニーズに合わせた役割の変革が必要とされるは ずである。. しかし,実際のところ,学級経営というものは,対児童との関係のみで成 り立つものではない。教師自身,学校という組織の一員であるため,その背 後には学校の体制というものが大いに影響をもたらしている。他学年,ある いは同学年であっても他のクラスというものが存在しているため,その中に おいてもうまく調和を保っていかなければならない。当然のことながら,学 級を担当する一教員にとって,学校自体の管理責任者である校長,実質的に 教員をまとめ教育活動全般をスムーズに運営させていこうとする教頭,学年 の責任を負う主任,さらには同僚教師との関係も大いに影響を及ぼしてくる ものである。また,個々の児童の保護者というのも,学級経営を行っていく 上では大きな要因となっている。. すなわち,魅力的な学級を形成していくためには,児童理解はもちろんの こと,教師自身が置かれている状況(自分の意志とは関係なく組織の一員と して遂行しなければならないことや,自分自身とそのまわりを取りまく人間 との関係性)をしっかりと把握した上での自己理解を深めておかなければな らない。. 第3節. 教師に対するカウンセリング研修への 心理劇の適用について. 島谷(1998)はカウンセリング研修について“自己や他者の心情や体験を理 解する感性をのばすこと一「気づき」の発展が求められるものである。だが,. そこではときに実習より講義が多く,この目的がどれだけ果たされるかが問 われている。”と述べている。当然のことながら,心理劇は実技をともなう ものである。また,言語のみならず行為を媒介とした相互作用がなされるた め,強いカタルシスと新しい環境認知にともなう気づきをもたらし,自他へ の一層の理解を促すものであるという点から,カウンセリング研修に心理劇 的アプローチが有効ではないかと考え,導入することとした。. オーストラリアでは,最近,心理劇が治療というよりは,むしろ一般市民 の自己開発を目的として活用されてきている。自己開発とは,現在の自分に あきたらず,もっと変化したいという願望から生まれてくるものである.増. 野(1990)は“現在の社会は変化も速く,そこについていくのがやっとで あり,毎日がいつのまにか流されていくと感じている人は多い。そのような なかで自分を見失ってしまうような不安もある.社会の中である役割をもつ 10.
(17) ているとその役割が次々と行動を要求する。そのようなものから自由になる 場として,瞑想をはじめとした様々な状況がある.心理劇の場もその一つで ある。”と述べている。心理劇では,舞台という特別な空間を前提として認め ることによって,役割から自由になることが容易であり,自分のとっていた 役割を客観的に見つめることができる。一般的に,日々,目の前にある教材 や行事をこなすことに追われているとされる教師にとって,いったん立ち止 まり,自己から距離をとって自身を見つめ直す機会は必要とされると思われ る。. そのために,カウンセリング研修として,自己を探求でき他者の立場を理. 解しながら創造していく心理劇を教師自身が体験することは有効な手段で あると考えられる。. 第4節. 先行研究における心理劇参加国の変化. モレノによって創始された心理劇は,その基本的要件は共通にしながら, 個人の治療を目的としたものから,ロールトレーニングとして新入社員のた めの研修に至るまで様々に展開してきている。ここでは,学校教育に携わる 集団に対して実践されたものに絞って,その効果を捉えることとする。 心理劇による効果の実証的研究である評価を,増野(1990)は心理劇を通し. て起こった様々な変化を統合し,肌で感じるものを客観的なスケールの中で 表現するのは難しいと述べている。また,山口(1997)は,心理劇において量. 的なデータに基づく実証的研究を難しくさせている視点として,質問紙は 「時点」における自己の認識に焦点をあてているため,参加者の情感あふれ. る体験や,随時得られる気づきが規定された回答からこぼれ落ちてしまう危 惧があると述べている。実際のところ,心理劇実施にあたっての,参加者の 変化を,尺度などを用いて効果測定をしているものは,ほとんど見当たらな い。そこで,ここでは主に,その実践報告や参加者の感想から,参加者の変 化を見ていくことにする 『戸田(1991)は現職教員31名に,家庭訪問時における登校拒否児へのかか. わり方のトレーニングとして心理劇を適用している。5回のセッションを繰 り返すうちに,一方的な指導下態度での教師中心のかかわり方や義務的,困 惑的,遠慮的態度でのかかわり方から,登校拒否児の心情にそったかかわり 方へとかかわり方が変化したとしている。したがって,教師トレーニングへ の心理劇の適用は,登校拒否児への援助として効果的であったと述べている。. それは,教師の心理劇を通しての,子ども役割体験,同一役割再体験,ロー 11.
(18) ルプレイング体験が,かかわり方の変化や深化につながったものと捉えてい る。また,小里ら(1996)は教育学を学ぶ院生,学生と大学派遣の現場の教員 を対象として,心理劇の位相に生じる「ずれ」の認識とそれへのかかわり方 を体験的に学ぶことを様々な方法で行っている。その中で,臨床者としての 学校教育相談者の養成にとっていかに有効であるかを考察し,(a)役割と役 割の関係の持ち方 (b)所属集団 (c)時間の推移 (d)場面状況のずれを認. 識することで,特定の役割に埋没しがちな問題を,まわりの人や物との関係 にも目を向けて考える姿勢が育つとしている。さらに,島谷(1999)は心理劇. 的ロールプレイングを教師のカウンセリング研修に導入している。そして, SD法(The Ssmantic Differential Method:意味微分法)の尺度を指標と してその効果を検討しているあその結果,「他人」「対人関係」「このグルー プ」に対して,「柔軟性」「活動性」「魅力度」「信頼性」の4冊子全てが有意. に高くなり,心理劇を体験することで,他者に対してより,柔らかく,活動 的で,信頼できる方向に変化すると考察している。. 第5節 研究の目的と仮説 このように先行研究においては,心理劇を適用することによる,トレーニ. ングとしての効果やグループ内での人間関係が深まるという効果が得られ たと報告されている。しかし,その中には,教師という集団を対象として心 理劇を適用したものとしての特徴といったものは見えてきていない。一般的 に教師は常に,子どもへの援助というコンサルティの職業上あるいは役割上 の課題遂行における問題を抱えている。そういった意味からすると,教師に 対してカウンセリング研修を行うということは,共通の悩みを抱えた特別な 集団に対しての試みということになる.その中で,自己受容し,客観的に自 分をみることで問題の新しい展開へのヒントを発見する可能性を探るもの として活用できるのではないかと考えている。. そこで,本研究では,対象が教師であるということに焦点を当てて,カウ ンセリング研修において心理劇的アプローチが,自己開発という視点から,. 職場で役割をとる上での自己理解および自己発見にいかに有効であるかを 検証することを目的とする。また,いかに共通の悩みを抱えた集団といえど も,参加者の性格特性によりセソションの進行に伴う参加者の態度や考え方 の変化に違いが生じると思われるため,その点についても分析し考察を加え る。. 12.
(19) 第2章 方法 第1節 手続き 第1項 対象 本研究では,教師集団を対象とした心理劇的アプローチによるカウンセリ ング研修の効果の検証をねらいとしているが,他のグループとの比較による. 検討も行いたい。そこで,実践1として心理劇体験の全くないA県B女子 大学の心理学を専攻している大学院生(学生グループ)と,実践2として,. 同じく心理劇体験の全くないA県C大学の大学院に通う現職教員(教師グ ループ)の2グループを対象に実施した。. 学生グループは10名で,教師グループは8名で行った。なお,各グループ. には監督(筆者)1名とビデオ撮影者1名(学生グループではN教授がス ーパーバイザーを兼ねて,教師グループでは同僚)が参加した。. 第2項 実施期間と実施方法 学生グループは2000年の4.月から5.月にかけて,臨床心理の授業として. 組まれている時間枠の内,4時間(週1回90分)を設定(表2−1)した。教 師グループは事前に案内文(Appendix参照)を配布し,希望者を募り,7.月 に実施(表2−2)した。. いずれもオリエンテーションをした上で,セッションを3回設けるという 構成で行った。. 表2・1学生グループの日程 オリエンテーション 4/25 (火) P0:40∼12:10. セッション1. セッション2. セッション3. 5/9(火). 7/16(火). 7/23(火). P0:40∼12:10. P0:40∼12:10. セッション2. セッション3. P0:40∼12:10. 表2−2 教師グループの日程 オリエンテーション 7/17 (月) P7:00∼18:00. セッション1 7/17 (月). 7/19 (水) P8100∼19:30. P8100∼19:30. 13. 7/24 (月) P8:00∼19:30.
(20) 実施場所は,学生グループはA大学内の教室,教師グループはC大学内 の集会室に設定(図2−1)した。 ,.償撫四二烈__. (カーテ蕩. (教師グループ) 入口. @舞. 台. 舞. 観 客 席. 台. 観 客 席. @. ビデオ. @. 0. rデオ. @漁_. .庶烈. 入口. 図2・1 各グループの実施場所配置図. 教師グループの場合も学生グループ同様,カーテンのある方を舞台にしょ うとしたが,固定の設置物があり障害となるため舞台を反対側に設定した。 教師グループの実施開始時間が夕暮れ時であり,外の雰囲気が時間の経過と ともに大きく変化するため,あらかじめカーテンを引き,照明をつけた。. 第2節 分析方法 ビデオに記録した2っの実践内容の経過やセッション後に書かれた感想 を資料として用い,それぞれのグループ内での参加者の様子や変化を分析し た。また,参加者の性格特性による違いも出てくると思われるため,事前に 5因子性格検査を実施することとした。さらに,補助的な意味合いで,評定 尺度によるセッションの進行に伴う参加者の変化の分析も試みた。. 第1項 5因子性格検査について 辻ら(1997)によって作成されたものであり,これは150項目よりなる質問. 紙形式の尺度で,各項目は「全くちがう」から「全くそうだ」までの5ポイ ントで回答するようになっている。この性格検査は,(a)内向性一外向性 (b). 分離性一愛着性 (c)自然歩一統制性 (d)非情動性一情動性 (e)現実性一. 遊戯性の5つの因子により構成されている。それぞれの因子の本質と特徴は 14.
(21) 以下の表2−3のようにまとめられる。 表2−35因子の本質と特徴(辻ら」997) 名. 称. 本質. 一般的特徴. 内向性一外向性. 活動. 控え目な/積極的. 臆病・気おくれ/無謀・躁. 分離性一愛着性. 関係. 自主独立的/親和的. 敵意・自閉/集団埋没. 自然性一統制性. 意志. あるがまま/目的合理性. 無為怠惰/仕事中毒. 非情動性一情動性. 情動. 情緒の安定した/敏感な. 感情鈍麻/神経症. 現実性一遊戯性. 遊び. 堅実な/遊び心のある. 権威主義/逸脱・妄想. 病理的傾向. 1980年代の終わりごりから,5因子の頑健性や普遍性を確認する研究が 次々と出てきていたが,第5因子の解釈に疑問を抱き,それぞれの理論やデ ータをつき合わせて再検討した結果,「遊戯性(playfulness)」と解釈し構成. したところに特徴を有するとされ,従来,普遍的であるとされていた「勤勉 誠実性(conscientiousness)」と「協調性(agreeableness)」の2因子も日本. 人の重視するパーソナリティーを必ずしも適切には代表していないとして 解釈の変更が加えられている。 表2−45因子性格検査の超特性と要素特性(辻ら,1998) 超特性. L内向性一外向性. 要素特性 ①非活動今一活動,②服従一支配,③独居一群居,④興奮回避一興奮追求,. ⑤注意回避一注意獲得 E.分離性一愛着性. ①冷淡一温厚,②競争一強調,警戒一信頼,④非共感一共感,⑤自己尊重 一他者尊重. 皿.自然二一統制性. ①大まか一几帳面,②無頓着一頓着,③無責任一責任感,④衝動一自己統 制,⑤無計画一計画. W.非情動性一情動性 ①のんぎ心配性,②弛緩一緊張1③門門うつ一下うつ,④自己受容一自己 批判,⑤気分安定一気分変動 V.現実性一遊戯性. ①保守一進取,②実際一空想,③芸術への無関心一関心,④内的経験への 鈍感一敏感,⑤堅実一奔放. この5因子モデルは,(a)多様なパーソナリティーの全体を,包括的に,. わかりやすく,体系化するものであること (b)他のすぐれた心理学の諸理 論,諸研究と整合させること (c)質問紙による性格検査を基礎づけるため 15.
(22) の理論として構成すること (d)超特性や要素特性の長所・短所を正確にバ. ランスよく記述して,その名称もできる限り中立的なものにすることに留意 し,作成されたものである。最後の中立化は,今までの性格検査における特 性記述のほとんどが一方の極は好ましく,他方は好ましくないと価値判断さ れるものとなっていたとされている。. 第2項 評定尺度について 心理劇の進行に伴い,あるいは心理劇に参加した結果,参加者にどのよう な変化が生じたかを把握する観点を明確にする必要があると考えた。そこで 各セッションが終了することに,「振り返り表」を各参加者に記入させた。 この「振り返り表」は岩本ら(1991)がロール・プレイングに参加した小学生. を対象に,セッションを体験したことによって生じる気持ちや考え方の変化 などを捉えるために開発したものである。この質問紙を筆者が大人用の質問. 紙(4件法で回答)に作り変えて使用した。「振り返り票」(30項目)を本. 実践に入る事前の段階で実施したパイロットスタディーおよび本実践に参 加した被検者の合わせて28名に回答させた。このようにして収集した28 名分のデータを利用して因子分析(主因子法 バリマックス回転)を行った。. この30項目の質問を因子分析する場合,28人という調査者数は不当に少な いと考えられるが,今回の因子分析では,質問項目間の大まかなまとまりか たを把握することが目的であるため,あえて利用した。因子分析の結果,一 つの因子にまとめることができそうな項目については,項目間相互に有意な 相関があるかどうか,項目の素点の分布に著しい偏りがないかどうか,さら に,一つの因子を構成すると考えられる項目相互の得点の分布を散布図に描 いて「外れ値」がないかどうかを確かめ,因子を構成する項目を整理した。. そして,固有値の推移から3∼6因子解が妥当だろうと考え,3∼6因子解 の因子分析を行った。そして,因子の解釈のしゃすさから4因子解を採用し た。. このような過程を経て,一つの因子にまとめることが出来そうな項目(一. つの因子に対する負荷量が0.38以上で,他の因子との負荷量の差が0.2以 上ある項目)をそれぞれの因子の解釈に用いた。第1因子の解釈に用いた項 目は,項目9「見ていて面白いなと思った」,項目11「いつもの研修よりや る気が出た」,項目15「劇を見ていて楽しかった」,項目4「思ったことが できて楽しかった」,項目1「劇をして面白いと思った」,項目13「つらい 気持ちになっている人の気持ちがよく分かった」,項目14「劇を見ていて, その役の人の気持ちがよく分かった」,項目8「ふだんの自分の生活を振り 16.
(23) 返ってみた」,項目6「他の人は上手にやると感心した」,である。項目の内. 容から考え,第1因子を「好感度因子」と解釈した。第2因子の解釈に用い た項目は,項目24「劇をするとか意見をいうとかこの時問に自分の考えて いることを出せた」,項目16「自分の考えていることをいい表すことができ た」,項目17「本気で劇の登場人物になっているように感じた」,項目29「劇. だからふだんの生活とは関係ないと思う」,項目5「やっている人の気持ち が出ていて感心した」である。項目の内容から考え,第2因子を「意欲因子」. と解釈した。第3因子の解釈に用いた項目は,項目21「これからどうずれ ば人とうまくやっていけるのか考えてみようと思った」,項目30「自分の一 言が相手にどんな気持ちを与えているのかを考えてみた」,項目7「どうし たら人と仲良くなれるのか考えた」である。項目の内容から考えて,第3因 子を「洞察因子」と解釈した。第4因子の解釈に用いた項目は,項目2「や ろうと思ったけど恥ずかしくて勇気が出なかった」,項目12「とても恥ずか しかった」,項目22「やっている人は恥ずかしそうにやっていた」,項目23 「やろうと思う気がしなかった」である。項目の内容から考えて,第4因子 を「恥ずかしさ因子」と解釈した。(表2−3). 以上のような分析を経て得たそれぞれの因子は,セッションの進行中やセ. ッション終了後にどのような変化が参加者にみられたのかをとらえる観点 として利用した。なお,欠損値のあるものは,以降の分析から除外した。ま た,各セッションが終了することに,「振り返り票」を参加者に記入させ,. それぞれのセッションの進行に伴う,参加者の変化をとらえる指標の一つと した。具体的には,それぞれの因子の解釈に用いた質問項目の素点の合計(負. の負荷量の場合には,逆転して加算)を因子得点とし,この因子得点を各セ ッション間で,1要因3水準の分析により比較した。 さらに,心理劇に参加した気持ちや心理劇に参加したことによって生じる 考え方の変化などが,参加者の性格によって異なることが予想される。そこ. で,参加者に対して性格検査(5因子)を行い,性格特性を分類し,第1セ ッションから第3セッションにかけて,どのような因子に変化が見られたの かを分析する。. 17.
(24) 表2−3振り返り表についての因子分析結果. No. 質問項目(表現を一部簡略化). (N=28). 因子1因子2因子3因子4共通性. 9丁目いて面白いなと思った. 0.74. 11いつもの研修よりやる気が出た. 0.66. 15劇を見ていて楽しかった. 0.53. 4思ったことができて楽しかった. 0.58. 1劇をして面白いと思った. 0.67. 13つらい気持ちになっている人の気持ちがよく分かった. 0.58. 14劇を見ていて,その役の人の気持ちがよく分かった. 0.46. 8ふだんの自分の生活を振り返ってみた. 0,38. 6他の人は上手にやると感心した. 0.28. 24劇をするとか意見をいうとか考えていることを出せた. 0.83. 16自分の考えていることをいい表すことができた. 0.77. 17本気で劇の登場人物になっているように感じた. 0.65. 29劇だからふだんの生活とは関係ないと思う. 0.42. 5やっている人の気持ちが出ていて感心した. α34. 21どうすれば人とうまくやっていけるのか考えてみようと思う. 0.76. 30相手にどんな気持ちを与えているのか考えてみた. α64. 7どうしたら人と仲良くなれるのか考えた. 0.64. :ilili{lili{i. 2恥ずかしくて勇気が出なかった. 0.67. 12とても恥ずかしかった. 0.78. 22やっている人は恥ずかしそうにやっていた. 0.37. 23やろうと思う気がしなかった. α18. 固有値. 4.30 3.00 2.55 2.10. 寄与率(%). 20.45 14.31 12」5. ※主成分分析バリマックス回転 ※破線で囲んだ負荷量をもつ質問項目をもとに因子の解釈を行った。. 18. 9.98.
(25) 第3章. 心理劇の実践1(学生グループ). 第1節 プログラムの構成 参加者は全員,これまでに心理劇の体験をしたことのない者ばかりであっ たため,心理劇的アプローチがスムーズに図れるように,まずはオリエンテ ーションとして心理劇に関する簡単な知的学習を行うこととした。そしてセ ッションの内容を簡単なものから,次第に抵抗の大きいものへと移行してい けるように配慮した。また,それぞれのセッションの流れにおいても,役割 を演じるのに抵抗を少なくし,かつ,演じようとする意欲を高めていくため にウォーミングアップからの導入を心掛けた。. 事前に5因子性格検査を行い,さらに,各セッション後(#1.2.3) にも振り返り票および自由記述の感想を記入してもらう。. #0(オリエンテーション):5因子性格検査. 異型紹介 表3−1 ず2人ずつの組になってお互いに. セッションの概要 #0. ミ介をしあう.その後,その相手に. ォって,できる限りその相手の仕 ヌも真似ながら全員の前で紹介を. ・5因子性格検査 E他己紹介 Eシェアリング. #1. する。. ・心理劇について (説明) Eジェスチャーゲーム(ウォーミングアップ). Bシェアリング. E心のものさし(劇化表現). Eシェアリングおよび振り返り票. #1. 心理劇について(説明). #2. ・プレゼントあげる (ウォーミングアップ). 理劇のルーツ,要素(主演者・補. E困っている場面のドラマ(仮想). 艨E観客・舞台・監督),使用され. Eシェアリングおよび振り返り層. @(役割交換法・二重自我法・鏡 jおよびセッションの流れについ ネ単な知識理解を図る。. #3. ・準備体操(ウォーミングアップ). E困っている場面のドラマ(現実). Eシェアリングおよび振り返り票. Wェスチャーゲーム(ウォーミングアップQ). 一人の演者が舞台の上で,自分で考えたジェスチャーをとり,観客がそ れを見て何をしているところか想像する。 心のものさし(劇化表現). 部屋の両端を気持ちの最も肯定的・否定的な場所として位置づけ,今の 自分の気持ちがどのあたりの場所に位置づけられるか,監督の出すそれぞ 19.
(26) れの問いに対して,その余所に動いて表現する.さらに主役を決定し,そ の人が前の問いから次の問いに動いたときの心の動き(頭の中で考えてい たこと)を,補助自我役割的な人に演じてもらい,言葉と同時に動作も加 え表現してもらう。. シェアリング #2:プレゼントあげる(ウォーミングアップ). 参加者のだれかが喜んでくれるであろうと思われるものを想像(現実に 存在する物でも架空の創造物でもよい)し,その人にその物のよさや使い 方などを説明しながら動作を加えてプレゼントする。 困っている場面のドラマ(仮想). 一人の人が何か困っている場面を想像して演じる.そこに具体的には何. も知らない他のだれかがやってきて対応をするという設定でドラマを演 じる。これは全てが即興で二人の関係においてドラマが演じられていくも のとする。. シェアリング #3:準備体操(ウオーミングアップ.). 参加者全員がそれぞれ一つずつ簡単な体操を考え,みんなで準備体操を する.自分の番が回ってきた時には,なぜその準備体操を考えたのか理由 もっけて説明する。. 困っている場面のドラマ(現実). 実際の生活の中で困った出来事をドラマにしていく.単にその出来事を 再現するというのではなく,そのドラマの展開は,今,ここで演じられて いる中で即興で進んでいくものとする。. シェアリング. 第2節 結果 第1項 経過観察を通しての分析 1,オリエンテーション:参加者10名(A.B.C.D.E。EG.H.1.J)+監督. +N教授. 90分の授業枠の内,始めの30分程度は今後の授業の進め方などについ ての説明.その後,セッションの内容に入っていった。 20.
(27) (経過). 5因子性格検査 性格タイプを分類するための資料とするため,参加者全員に性格検査を行った。. 他己紹介. まず,2人ずつの5組になって,約3分ずつの自己紹介を行う。その時,相手の話を傾聴し,できれば仕 草など,話すときの特徴なども見ておくようにする。自己紹介がすむと,全員が椅子に座って円になり, ペアを組んでいた相手になったつもりで,その人の紹介をする。. A:黒のワンピースにオレンジのカーディガン,やや大人っぽい感じ 周りを見回していたが,監督が促すと挙手をして始める。 〔Hになって〕. 西宮の甲子園球場の近くに住んでいる。(体の前で手をくるくると回す動作を交えながら)友達はいいな あというが,結構,酔っ払いのおじさんが多いところである。家はお寺で父が住職母,兄,弟がいて,兄 は結婚している。その姪がとてもかわいい。発達心理には興味はなかったが,その姪を見ていると興味がで てきた。. B:青いシャツにジーンズのスカート,眼鏡をかけてロングヘアー 「早いことやっといた方がよい」と言って,話し始める。 〔Dになって〕. 父,母それに兄弟は兄と弟の二人いるが,弟には昔,意地悪をしていたのですごく嫌われている。実家に は拾ってきた犬がいて大阪から兵庫の田舎に引っ越したがずっと一緒で,いつも心の支えになってくれて いた。今は一人暮らしをしている。彼氏がいてすごく大好きなので,院生控え室などでみんなに話をしたが ったが,きっと話し出したらとまらなくなるからずっと言うのを我慢していた。. C:白いセーターにスカーフ,眼鏡をかけていて,落ち着いた感じ 〔Jになって〕. 幼稚園のころから地元に住んでいる。自己紹介をするたびに何をいっていいのかいつも困る。いつもダレ ダレとしてるので趣味といわれても困る。. D:黒いセーターにジーパン,眼鏡をかけていてロングヘアー 〔Bになって〕. 特技は小・中学校で朝鮮学校に通っていたので朝鮮語ができるということだったが,今はヒアリングし かできなくなってしまった。今の内にもう一度話せるようになっておきたいと思っている。最近ゴルフを始 めたが,あまりに下手なので,教えてくれたおじさんに怒られてしまった。本屋に行くとなかみにこだわら ず,表紙のきれいなものとかを買ってしまうので,わけのわからない本がたまってきてしまっている.. E:紺のセーターに黄土色のロングスカート 〔Gになって〕. 食べることに興味があって,いろいろなお店をよく知っている。友達に飲みに行く店などもよく紹介し. 21.
(28) ている。おっちょこちょいな性格。. F:ジーンズのジャンパーにジーパン 〔1になって〕. 鳥取から出てきて一人暮らしを4年している。兄と弟の男兄弟にはさまれているため,父にはとてもかわ いがられ,自由にのびのびと育った。ワインのコルク栓に色をつけたり,紙粘土で物を作ったりするのが趣 味。. G:セーターに白のジーパン,眼鏡をかけていて髪の毛を縛っている 〔Fになって〕. 全日空のホテルの中華料理屋でバイトしている。芸能人がたくさんくるが,中には感じの悪い人がいる。 一生懸命走って汗をかいていても,他人からは急いでいるように見られないのが嫌だ。間食はあまりせず, ご飯を男の旨みたいにガバッと食べる。. H:白いトレーナーにジーパン 〔Aになって〕. 24歳なので,多分年上だと思う。家族は父と母と妹と私。家族とはいろいろ衝突があったが,今は大切さ が分かっている。性格は明るくて素直だといわれてきているが,裏を返せば単純なんだと思う。昔は食べ物 の好き嫌いが多かった.今は銀杏と三つ葉だけが食べられない.昔,木の葉丼が食べられず,捨ててしまっ たので,家から放り出されてしまったのをよく覚えている。. 1:横じまのセーターにジーパン 〔Fになって〕. 滋賀県出身。家族はすごく仲がよく,みんなで散歩とかによく行ったりする。幼稚園の時から音楽が好き で,歌を歌うのも好き。. 」:白いブラウスに紺のパンツ 〔Cになって〕. 鳥取県出身で,一人いる兄は結婚していて子どもが一人いる。飽きっぽいがやろうと思ったらすぐに動き 出すので,鳥取県を転々としていた。相談室を作りたいと思って,すぐに学校の先生も辞めてしまった。. シェアリング. 人に紹介されるとうまく整理されて言れているような気がして,なるほどと思って頭に入りやすい。直 接聞くよりも,ろ過されたものだろうから,インパクトも強いような気がする。また,自己紹介なら,相手 を見て自分で間を取りながら言えるが,今回は自分のことを言われているのにじっとしていなければなら. なかったので,恥ずかしかったところもあるといった意見も出た。監督が,Dに彼氏の話のことがみんなに 知れてしまったことについて聞くと,「特に嫌な気はしなかったが,自分のことについて言ってくれる人が 嫌な人だったら家族構成とかいわれるのすら嫌だったかもしれない」と語った。. 22.
(29) (分析). 参加者10名中,8名は20代の学生であった。他己紹介では,それぞれ が相手の仕草を真似ながら演じるというところまではいかなかったものの, 臨床を目指すものの集まりであったためか,相手の話はしっかり傾聴できて おり,細部まで正確に覚えていて,ほとんどの者が時間をかけての詳しい紹 介となった。しかし,途中,あまりにも時間がかかるため,簡単な紹介でよ. いと指示したこともあってか,E.LGの3名は短いあっさりとした紹介です んでしまった。. Dは,結果として,他己紹介をしたことによって,今までみんなの前では 話題にしたことのなかった恋人のことが知られてしまうことになり,注目を 浴びることとなった。しかし,Dは,元々,話したかった内容であったこと もあり,特に抵抗は感じなかったと語ったように,そのことで自分に話題が 向けられると,意気揚揚と滑らかな口調で語っていた。 グループ全体としては,同じ授業を選択するなどして,普段から顔を合わ せている院生同士でありながらも,年齢が違うためか,それぞれお互いにど こかよそよそしさが感じられた。しかし,セソションそのものに対しては積 極的で,それぞれが意欲的に参加しているように感じられた。 2.セッション1:参加者9名(A.B.C。D.F.G.H.1。J)+監督+N教授 (経過) ジェスチャーゲーム(ウォーミングアップ.). 最初は監督が指示をするので「ポーズをとってもらいたい」というと,すぐにCが(挙手をして)でて くる。(手を額の前でかざすポーズ)を取ってもらい,何をしているところか想像してもらうと,観客から 様々な反応がかえってきた。監督はその反応に対して季節や場所,何を考えているかなど具体的な質問をか えしていく。日焼けをしないようにバス停から大学まで歩いているという場面や,山の頂上に立って,地平 線を眺めているという場面が想像された。次はHが出てきて,自分で考えたポーズをとる。少し考えてから ノロムゆ ユエコィィロムゐ コサ. マ で ム カ. へ ヘ ユ. ロ ザ. んセロトあすマ ハ. ヤ マ. けロ ム ロ. ア にロヤヤ ア つ マ ア ひ ヒトソ じ. ぽ. 田吻の雪ぐ子乞組渉冒ρて7こ耶一ノ勺乞ど0。観各刀、b,刀、了)いい月反乞兄丈い曳貝おりかどりか悩んぺごいる. ところであるとか,合格発表の張り出しを自分で探しているところ,さらには少し悪さをして謝っている ところ,願い事をかなえて欲しいところといったふうにその場面の想像が膨らんでいった。そのポーズをと ったH:にどのような場面かを聞いてみたところ,「目の前にクリームパフェやイチゴパフェが並んでいて どれにしようか悩んでいるところ」と語った。. 慣れてきたため,今度は同じく一人でポーズをとるが,その周りに人がいることを想定するようにと条 件を加えた。少し問があいて,Dが前に出てきて(しゃがみこんで両手をあごに当てたポーズ)をとった。. 観客からデートの待ち合わせで彼が遅れてきているので待っているところであるとか,幼稚園ぐらいの子 どもと話をしているところであるといった反応がかえってきた。ポーズをとっていたDに聞いてみたとこ. 23.
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