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 これまで,学生および教師を対象として実践した研修について,経過観察 や評定尺度により,参加者の態度や考え方の変化をとらえて分析してきた。

また,5因子性格検査から得られた性格特性(遊戯性)の違いが見られる参 加者に対する事例分析も行った.その結果をもとに,教師を対象としたカウ

ンセリング研修において心理劇的アプローチが自己理解および自己発見に どのように有効であるかを考察することとする。

 考察にあたっては,実践1(学生グループ)と実践2(教師グループ)の 違いにもとつくもの,教師グループのドラマの展開内容にもとつくもの,性 格特性の違いによる心理劇の効果にもとつくもの,心理劇的アプローチから 得られる効果にもとつくものとに分けて行うこととする。

 第1節 実践1(学生グループ)と実践2

      (教師グループ)の違いについての考察

 それぞれの経過観察による分析より,実践1(学生グループ)の内容が,

淡々としたものであり表層的に流れてしまったのに比べ,実践2(教師グル ープ)では,ドラマの内容も#2,#3では,主役が抱えている問題の本質 を探っていくといった形のものとなり,ドラマを通して自己開示することに よるカタルシス効果も得られた深いものとなった。また,他の参加者も単に 主役が構成していくドラマに参加したり,客観的に見たりするというだけで はなく,主役に自分を置き換えて主役の感じていることを共有したり,生徒 役を演じることによって,生徒理解につながる体験をしたりすることを通し て,自分自身のことを振り返ることができている。

 また,セッションの終了後に書いてもらった「振り返り票」をもとに,進 行に伴う参加者の変化を分析したところ,実践1(学生グループ)では,「意 欲因子」,「洞察因子」において有意な変化が見られたものの,「好感度因子」,

「恥ずかしさ因子」については望ましい変化が見られなかった.それに対し て,実践2(教師グループ)においては,「好感度因子」,「意欲因子」,「洞 察因子」,「恥ずかしさ因子」の全ての因子において有意に望ましい変化が見

られた。

 これは,当然のことながら,実践1(学生グループ)を終えた段階での反 省点をもとに,実践2(教師グループ)でのプログラムを変更したことにも

よると思われるが,最も大きな理由として考えられるのはグループの凝集性

にあると考えられる。言い換えれば,教師グループというものは集まった段 階で既に,対児童・生徒,対保護者,対同僚教師および管理職へのかかわり

という点で共通の悩みを抱えた集団として成り立っている。そのような集団 の中でセソションが進行し,ドラマが展開していくことになるため,共感性 も高まり,参加者にとっては相手の立場になって感じたり考えたりすること が求められる役割取得も容易であり,手持ちの情報を相手の立場に立って再 構成し,自分の問題として捉えることもスムーズにできたものと思われる。

また,主役を演じる者にとっても,自分の悩みを理解してもらえるという点 では,安心できる場と認知できているため,抵抗があまりなく自己開示もし ゃすく,自分の問題に対して深く洞察を進めていくことができたものと思わ

れる。

 また,監督役割をとった筆者が現職教員であったということも影響してい ると考えられる.実践1(学生グループ)の場合はセッションが進むにつれ て薄れてはきたものの,監督と参加者の間に距離が感じられ,ぎこちなさが あった。しかし,実践2(教師グループ)の場合,参加者の中には監督であ る筆者と初対面の者もいたが,初めから,どこかにお互い同僚であるという 安心感があったように思える。

 以上,述べてきた点は本来,グループを扱う上では全て監督自身の問題で あるとも言える.A.A.シュツェンベルガー(1970)が セラピストが最初にな すべきことは,自己とメンバーとの間にコミュニケーションの道を開き,そ して全員相互間に寛容な,さらに親密な対人関係を設定することである と 述べているように,グループの凝集性を高めるのも,監督と参加者の関係を

うまく築き上げるのも監督の最も重要な仕事である。ドラマに入る前にウォ ーミングアップを行うのは,単に参加者自身の自発性を高めドラマ世界への 橋渡しをするためだけのものではない。自分自身の姿を他人の前にさらけ出 すには,許容的で寛容,親密な思いやりのあるグループにおいて,最もよく さらけ出すことができる。したがってドラマに入る前のウォーミングアップ において,お互いの間によい関係を生じさせ,そのグループに参加している 様々な人との問,およびそれと監督の間に結びつきを生じさせる必要がある

のである。

 さらにもう1点,大きな違いが生じた理由として,それぞれの研修にメン バーが参加した形態によるものが考えられる。実践1(学生グループ)は大 学における授業の一環として行ったもので,言わば義務出席であったのに対

して,実践2(教師グループ)は事前に案内文を配り希望を募っての自由参 加という形で行った。すなわち,初めの段階から,この研修に対するレディ

ネスが教師グループには整っていたものと考えられる。

 以上のようなことを総合的に考えてみると,一般性として述べることはで きないが,筆者のような不慣れな監督にとっては,学生を対象として実施し た研修より,同僚である教師を対象にした研修の方が心理劇的アプローチに よる研修の効果はあったと言えよう。

 第2節 教師グループのドラマの展開内容についての考察

 #2で主役は授業中,私語が多く,勝手に教室を抜け出す生徒への対応を 問題として挙げた。しかし,ドラマを進めていくうちに,問題となっている のはその生徒への対応という単なる一つの事象ではなく,このような状態の クラスになってしまっていることが自分の弱みになってしまっていること であると,自己を内省するという方向に展開していった.また,#3におい ても主役は学校を休みがちな女子生徒が朝から登校してきたとき,どのよう な対応をすればよいのか困ったことがあったという内容を初めのシーンと

して設定した。ところが,ドラマを進めていくうちに,自分が過去にその生 徒に対してとった行動には特に問題はなく,一番の悩みは学級経営がうまく いっていないということから生じてくるプレッシャーが大きいということ に気がついた。そして,#2と同様,自己を内省し見つめなおすという方向 にドラマが展開していった。#3でのドラマの展開がこのようになったのは,

少なからず#2のドラマの影響があったものと思われる。しかし,この研修 に参加している教師が全て10年以上の教職経験をもつ中堅教員であること を考えると,児童・生徒とのかかわりを単に,一教師と一児童・生徒のみの 関係性だけで対処するのには無理があることが既に経験から分かっている ものと思われる。学級担任である教師が児童・生徒とかかわっていく上で,

重要な鍵を握っているのは学級経営であるとも言える。それを行っていくに あたっては,教師自身,学校という組織の一員であるため,背後にある学校 の体制というものが大いに影響をもたらしてくる。他学年,あるいは同学年 であっても他のクラスというものが存在しているため,その中においてもう まく調和を保っていかなければならない。当然のことながら,学級を担当す る一教員にとって,学校自体の管理責任者である校長,実質的に教員をまと め教育活動全般をスムーズに運営させていこうとする教頭,学年の責任を負 う主任,さらには同僚教師との関係も大いに影響を及ぼしてくるものである。

また,個々の児童の保護者というのも,学級経営を行っていく上では大きな 要因となっている。これらの点を考えてみると,この2つのドラマの展開が,

同様に,一児童・生徒にどのようにかかわればよいのかという悩みから,学 級経営についての問題へと移り,さらには自己を内省するという方向に進ん だのは,このグループのもつ特質から考えるとうなずけるものであったよう

に思える。

 #3のドラマ終了後,「何が自分の問題の本質なのかを考えることができ た。それをどう解決していくのかがこれからの課題であるが,もう少し劇を 進めていくと,それが見えてくるのであろうかと思った」という感想が得ら れている.#2の場合も同様であるが,ドラマを通して主役が提示した(あ

るいはドラマを進めていく中で見えてきた)問題を解決するというところま では至ってはいない。その点においては,そこまでもっていくには監督であ る筆者の技量が未熟であったと言わざるを得ない。しかし,筆者は教師に対 するカウンセリング研修のねらいを,児童理解はもちろんのこと,教師自身 が置かれている状況(自分の意志とは関係なく組織の一員として遂行しなけ ればならないことや,自分自身とそのまわりを取りまく人間との関係性)を しっかりと把握することに置いていた。すなわち,自分自身を客観的に見つ め直し,自己理解を深めることを目的としたものである。したがって,この 研修を通して得られた自己に対する新たな発見や気づきが,今後の児童・生 徒とのかかわり方や職場での人間関係の改善へのきっかけとなってくれる

ものとなればよいと筆者は考えている.また,このようなねらいでの研修を もつとするならば,今回の場合のように,教職経験の少ない教師を対象とす るよりも,ある程度,教職経験を積み,物事を多面的な方向から見つめてい くことができるようになった中堅教員を対象にした方が有効ではないかと

感じた。

 第3節 性格特性の違いによる

       心理劇の効果についての考察

 実践1,実践2の初めに実施した5因子性格検査の結果をもとに,性格特 性別に分類を行い,研修に参加した後の気持ちや参加したことによって生じ る考え方の変化を分析した。その結果,遊戯性の高群と低潮との問に,第3 セッションと第1セッション間の洞察因子得点の差について有意な違い(遊 戯性高群が遊戯性低群に比べてより大きく上昇)が見られた。また,恥ずか

しさ因子得点の差にも,10%水準ではあるが違い(遊戯性低群の方が遊戯性 高群に比べそより大きく低減)が見られる傾向があった。

 実践2について,遊戯性の高群にあたる2名についての事例分析を行った

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