第5章 性格特性の違いによる心理劇の効果
第1節 性格特性別に見た変化の分析
心理劇に参加した気持ちや心理劇に参加したことによって生じる考え方 の変化などは,参加者の性格によって異なることが予想される。
そこで,実践1,実践2の参加者を性格特性別にし,第3セッション終了 時に参加国が書いた「振り返り票」から算出した各因子得点と,第1セッシ
ョン終了時に参加者が書いた「振り返り票」から算出した各因子得点の差を もとにして分析を行った。
なお,それぞれの性格の分類にあたっては,事前に実施した5因子性格検 査の結果をもとに,参加者を分類しようとしている性格特性因子の得点順に 並べ,中央値をもとに二分した。(5因子性格検査に見いだされる特性因子 の名称は本来,中立的なもので,内向性一外向性,分離性一愛着性,自然十一 統制性,非情動性一情動性,現実性遊戯性とされているが,これ以降の記述 は便宜上,それぞれ外向性,愛着性,統制性,情動性,遊戯性と表記する)
表5−1 各因子得点を用いて性格特性高群・低群を比較した結果
(得点の差=第3セッションの因子得点一第1セッションの因子得点)
好感度i有意差検定 子得点i(T検定)の フ差くSD)i結果
意欲 有意差検定 子得劇(T検定)の フ差(SD)i結果
洞察 有意差検定 子得創(T検定)の フ差(SD)i 結果
恥ずかしさi有意差検定 子得点 (T検定)の フ差(SD) 結果 α35(α87), N・S α74(α28)}N.S 1!B(0.63)iP〈α} α00(α16)i N.S 外向性低群(N=7)
O向性高群(N=7) α48(α69)i α86(α70)i α66(α54)iT・24d倒2 一α25(α・8)i α60(α78)}MS α89(α38)i N.S 燗α68)i阯s 一α14(α45)i凡S
愛着性低群(N=7)
、着性高群(N=7) α30(α74)i
、86(、671i
mαα77)i 一α11(α24)i
α45(α92)}阯S α63(α54)iNS 繊α68)i阯s 一α11(α45)iNε
統制性一群(N=7)
攝ァ性高群(N=7) α33(α63)i α94(α4Di α91(α71)i 一α14(α24)i 情動性低群(N=7)
贒ョ性高群(N=7)
α43(α80>iN.S …(・飢!i阯s α86(α72)}MS 一・21(・・911阯・
。、。(藤 …(・45)i
1.24(α65)i 鋼。39)i
α67(α88)i凡S 0・89(α64)… N・S・ α62(α40)…P〈つ喝 一α32(α24)lP〈価 遊戯二二群(N=7)
V戯性高群(N=7) α13(α56)i α86(α43)i 1鰍α73)iT・24碓12 一α07(α19)iT・22d伺2
※欠損値のあった参加者のデータは除外した
表5・1に見られるように,外向性の高群と低群との間に,第3セッション と第1セッション間の洞察性因子得点の差については有意な違いが見られ た。また,遊戯性の高群と低回との間に,第3セッションと第1セッション 間の洞察性因子得点の差については有意な違いが見られた。さらに,恥ずか
しさ因子得点の差にも,10%水準ではあるが違いが見られる傾向があった。
表5−2 外向性の低群・高群の洞察因子得点の平均値(標準偏差)
第1セッション終了後 第3セッション終了後 門 群
高 群
1. 33
(0.43)
1。 86
(Q、54)
2 76
(G.66>
2, 52
(0、60)
//ノ/・/づ、今タ〆・・ 二 . ノ三:∬ゑ4争
@ 〜
@ /
@ /
/
@二乞/幻 学/・・
・易穿2印.膨・・/唾・ 房/・ ※
二1三1∬1三 〆 / ノ均2:吻卿 /ノ /
㌶㌘%ξ議%望 1 /
罵却低群 {高群
蕩謙譲㍗膨乙義
弓∵/ン瀞贈 / /
ッ・/∬4・寸・
[ ∫r ・ ////
・身/. Q1三乞・・∵ 腔考∬・篤1・・
D〆/ 冠/ .・ / ク ピ // 9 / / ズ 弓、つ//// 〆 包
セッション1終了後 セッション3終了後
図5−1 外向性の高群・低群の洞察因子得点の変化
表δ一2,図δ・1に見られるように,外向性の高群の者よりも外向性の低群 の者の方が,洞察因子得点に関して,大きな上昇が見られた。
表5−3 遊戯性の低群・高群の洞察因子得点の平均値(標準偏差)
第1セッション終了後 図3セッション終了後 低 総
高 群
1. 76
(0,54)
三. 48
(0。50)
2. 38
(0.62)
2. 86
(0.60)
.◎.勾滋:招・冠∬1・ゑ/ /
/・/2 / / / // 〆
@ / /
@ /
@ 今 7 ラ /
恐▽朗 / ノ / / /
纈タ低群 {高群
ズ
/汐/・ノ ワぐ
7驚τr ピ 乞、 〃傷 一・.り 轡・・∴懸物・ ∫1・/1/ 〆 . /
@蝋纈 与… / /
@..6 ・あ
@ タ ズ ・
@ ピ@ / セッション壌終了後 セッション3終了後
図5−2 遊戯性の高群・低群の洞察因子得点の変化
表5−3,図5−2に見られるように,遊戯性の低群の者よりも,遊戯性の高 群の者の方が,洞察因子得点が大きく上昇するという傾向が見られた。
表5−4 遊戯性の低群・高群の恥ずかしさ因子得点の平均値(標準偏差)
第1セッシ葺ン終了後 第3セッション終了後 飛 群
高 群
1. 50
(o.41>
1。 61
(0。43)
1, 18
(0.28>
1. 54
(0.44)
客㌘乙 /ズ/
oワ ズ〃グ/マ / ク
/ 〆 ゾ ピ 〆
@ /窺㌧1図∫2弓 忌
←
、三
@ノニ、
/乞 / ノ 〃
A㌘1隔∫・ 吻
/謡窪ゑ2り㌘ /
篇夢 低群 齠モ一一高群
2ノ//形う
e賜%冠.、
E男 ズ ♪/
^ るレ.
/ / 〆 /
@ダ・艀タ
@ 忽乞、∵%・鷲
落盤7㌘∵/し身∫
/ ピ / /
zる
@/ 〆 / 〆 / ♂ ズ ラ / つ午 諺
r8〕編唾/:1一, / /
セッション1終了後 セッション3終了後
図5−3 遊戯性の高群・低群の恥ずかしさ因子得点の変化
表5・4,図5−3に見られるように,遊戯性の高群の者よりも遊戯性の低群 の者の方が,恥ずかしさ因子得点に関して,大きな低減が見られた。
心理劇自体,ある意味では自然の遊戯に近いものと考えられ,遊びの自由 と開放性を備えたものであると捉えられているため,ここでは性格特性の中 の遊戯性(遊戯性現実性)に着目して,分析を進めていくこととする。こ の特性の特徴は,辻(1998)によると, 感覚,感情,イメージ,思考,活動 などが日常的な現実経験の枠内におさまりきらず,あふれ出てくる「豊穣さ
(abundance)」にある。この豊穣さに身をまかせていると,人は多少とも非 日常的な経験へと「遁走(fugue)」あるいは「超越(transcendence)」するこ とになる。しかし,遊びの世界に遁走しても,人はまた現実の世界に舞い戻 ってこなければならない。それゆえ,この2つの世界を自由に行き来できる 柔軟性をもつ必要がある。遊戯性はこの柔軟性をも意味している。 とされ
ている。