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松本亀次郎編纂の日本語教材 ̶語法型教材を中心に̶

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(1)

1.はじめに

1939

年に著した「隣邦留学生教育の回顧と将来」で、「隣邦の留学生教育には明治 三十六年以後今日迄三十七年間の歳月を打込み、日本語の教授と著述には全精力を注ぎ、

老生が直接間接に教育した学生諸氏は満支両国に充満して居られる」と回顧している1)

松本亀次郎が、最初に日本語教師として教壇に立ったのは、1903年嘉納治五郎が院長を 務める宏文学院でであった。そして、1908年に中国の京師法政学堂に教習として招聘さ れ、4年間日本語を教えた後帰国。東京府立第一中学校教諭となるが、1年後の

1914

年 神田に日華同人共立東亜高等予備学校を創立して校長となる。しかし、1923年の関東大 震災で校舎は焼失、公的支援を受け再建するが経営的な問題もあり日華学会と合併、1925 年からは教頭、1931年からは名誉教頭となる。1935年に東亜高等予備学校は日華学会の 傘下となり、東亜学校と改称。そして、松本亀次郎は

1945

9

月に

79

歳の生涯を閉じた。

近年、松本亀次郎については、魯迅や周恩来などの教師として、また、日中交流に尽く した教育者として知られるようになり、研究も行われるようになったが、その日本語教材 についての研究はまだ殆ど行われていない。本稿では、松本亀次郎の編纂した教材を概観 した上で、語法型教材である『日本語教科書』、『日本語のはじめ』、『訳解日語肯綮大全』

3

種の教材の内容・構成と文法学習項目から、それぞれの特徴を明らかにすると同時に、

それらにどのようなつながりがあるのか、特に『訳解日語肯綮大全』が松本亀次郎にとっ てどのような位置付けの教材なのかを探ることが目的である。

2.松本亀次郎編纂の日本語教材

松本亀次郎の著した日本語教材の全容を概観し、それぞれがどのようなタイプの教材か を見る。著作者として松本亀次郎の名前がある教材及び、宏文学院で中心となって作成し たことがその書に明記してある教材は以下の通りである。また、松本亀次郎の名前は記し てはないが、中国から帰国後、校長・教頭・一教師として勤めた東亜高等予備学校、後の

̶

語法型教材を中心に

̶

吉岡 英幸

キーワード

松本亀次郎・『日本語教科書』・『訳解日語肯綮大全』・『日本語のはじめ』・

文法学習項目

(2)

東亜学校で編纂された教材もともに記す。それぞれの教材の発行年も併記しておくが、筆 者が調査の対象とした教材が初版でない場合は、初版の発行年をかっこで示した。

A 『言文対照漢訳日本文典』松本亀次郎著、1904

7

B ― 1 『日本語教科書第一巻』宏文学院編纂、(1906

6

月)1906年

8

月再版  ―

2 『日本語教科書第二巻』宏文学院編纂、1906

7

 ―

3 『日本語教科書第三巻』宏文学院編纂、(1906

8

月)1908年

2

月再版

C 『日語日文教科書』宏文学院編纂、松本亀次郎講述、1907

8

D 『漢訳日本語会話教科書』松本亀次郎著、(1914

6

月)1938年

2

18

E 『漢訳日本口語文法教科書』松本亀次郎著、1919

10

F ― 1 『日本語読本巻一』東亜高等予備学校、1926

8

月  ―

2 『日本語読本巻二』東亜高等予備学校、1926

9

G 『日本文語文法課本』東亜高等予備学校、1927

10

H 『日語会話』東亜高等予備学校、1928

2

I ― 1 『日本語のはじめ第一編』東亜高等予備学校、(1932

11

月)1936年

7

4

― 2 『日本語のはじめ第二編』東亜高等予備学校、1932

12

― 3 『日本語のはじめ第三編』東亜高等予備学校、1933

3

J 『訳解日語肯綮大全』松本亀次郎著、(1934

7

月)1939年

4

9

K 『現代口語教本』東亜学校、1937

1

L 『華訳日本語会話教典』松本亀次郎著、1940

9

このうち、松本亀次郎が単独の編纂者となっている教材は

A、D、E、J、L

5

種、C が「松本亀次郎講述」とあるので、これを含めると

6

種ということになる。B

― 1

は、

「例

言」に「松本亀次郎氏主として之を編纂し、日本語科諸教授、特に三矢重松、難波常雄、

臼田寿恵吉、穂苅信乃、佐村八郎、松下大三郎、菊池金正、小山佐文二、鶴田健次氏等の、

校閲批評訂正を経たるものなり」とあるように、松本亀次郎が中心となって作成したもの であり、学習項目の選択や分類などに対する彼の考えが強く反映されていると見ていいで あろう。B

― 3

の序でも「此の口語語法用例三巻は、余が宏文学院長の命を承けて、編述 する所なり。明治三十八年一月、稿を起し、三十九年二月、稿を脱す。」とあり、松本亀 次郎の日本語教育観を

B

の教材から汲み取ることに問題はないと思われる。他の東亜高 等予備学校・東亜学校編纂の教材については、松本亀次郎がどのような形で作成に関わっ たかを示す資料はないが、彼の他の著書と比較することにより関与の度合いがある程度わ かるであろう。

明治期の教材をその内容・構成で分類すると、文法解説が中心となっている文典型教 材、文型的な学習項目を中心に構成された語法型教材、読解教材、会話教材、模範として の文章例を集めた作文教材、仮名や漢字学習のための文字教材の

6

種類2)に分けること ができる。文典型教材は中国語や朝鮮語など対象学習者の母語で解説されたものが一般的 であるが、文法にしぼって解説したもののほかに、文字、発音、文法、会話など日本語を 総合的に理解させることを目的としたものもある。また、語法型教材は、教室で教師が使 用することを前提として、学習項目の量や提出順が考えられた構成となっているものと、

文法学習項目ごとにそれぞれの用法を示す例などがあげてあり、対訳などにより自学自習 ができるようなものがある。上記の教材を分類すると、次の

4

種類に分けられる。

(3)

文典型教材・・・・・・・・A、C、E、G、K 語法型教材・・・・・・・・B、I、J

読解教材・・・・・・・・・F 会話教材・・・・・・・・・D、H、L

A、C、E、G、K

は、日本語の文法体系を理解させる目的で編纂されたもので、Aは品詞

ごとに文語と口語を対照するなどして文法を解説、Cと

G

が文語を、Kが口語を中心に 解説したものである。D、H、Lは、場面や話題ごとに会話例を示したものである。Fは、

口語と文語の

2

部構成となっており、F

― 1

は口語は第

1

部が

50

課、第

2

部が

38

課、文 語は

25

課で構成されている。F

― 2

は口語文が

40

課で、文語文が

50

課の構成である。

対訳はなく、課毎に漢字仮名交じりの日本語の文章が載っている。各課の本文は、易か ら難へと配列されてはいるが、語法型教材のように各課の文法学習項目が明示されておら ず、短めの文章を本文として載せるという体裁になっているため読解教材に分類される。

『日本語読本巻三』は未見である。語法型教材は次章で詳しく見る。

3.語法型教材の内容・構成

B

の『日本語教科書』は、1巻が

86

課の構成となっており、1課「片仮名五十音」から

23

課「数字」までが発音と仮名表記及び数で、24課から

86

課まで「指示代名詞 日用器 具 は何ですか」「指示代名詞 日用器具 どれ」「指示代名詞 衣服草木 の」というよ うに学習項目を各課に見出しとして明示している。24課を例にとると、初めに

「机、

腰掛、

テーブル、椅子、紙」などの語彙をあげてから、「これは何ですか。これは鉛筆です。」と いうように本文になっている課もある。「序」は中国語で書かれているが、内容は全て日 本語で書かれており、中国語の対訳などはない。「例言」で、名詞数詞の教授に多数の時 間を費やすのは得策ではなく、適宜数課に分けて語法と共に習得させること、学習者の習 得が困難なものは助詞、助動詞の用法、及び副詞、接頭語、接尾語であるため、それらの 用例を多く提出したとしている。また、「記憶練習に便ならしむる為め、多く問答体を採 用せり」とし、本文は多くが対話の形式をとっている。

2

42

課、

3

巻が

59

課の構成になっ ており、体裁は

1

巻と同じである。各課の学習項目はテンスや文体、助詞、助動詞の用法 の整理、複合動詞などの用法が中心となっている。学習項目から見て、2巻には初級レベ ルのものもあるが

1

部中級のものもあり、2巻と

3

巻は現在のレベルで言うとそれぞれ初 中級、中級に当たると言えるであろう。また、表記の面で、24課から

26

課まで漢字以外 片仮名表記となっているが、27課

28

課は平仮名表記というように、双方の仮名に慣れる ように平仮名と片仮名が交互に使用されている。本書は、教室で教師の指導のもとで使用 されることを前提とした教科書として作成されたものである。

I

の『日本語のはじめ』も中国語の説明や対訳はなく、日本語だけで記されている。1 編は「発音・仮名」の

20

課の構成となっていて、最初の「教授に関して」では、発音練 習などの具体的な指導の方法が記してある。2編は、40課の構成で、最初の「教授に関し て」に、「本編は短い句の基本型と日常の用語とを主眼として」あるように、1課から「こ れは机です。それも机です。」「これはあなたの(鉛筆)ですか。はい いいえ」「その時 計は先生のです」というように各課の見出しに学習項目を明示し、その学習項目の用例文

(4)

を本文としている。課の終わりに練習を載せている課もある。3編は

30

課の構成で、「主 として、副詞・接頭語・接尾語・助詞・助動詞の一部で、中にも用法が紛わしくて、特に 注意を要する様なもの」を学習項目に選んだ「第二編の補足」であるとしている。本書も 教室で使用するための教科書として編纂されたものである。また、表記については、『日 本語教科書』と同じように、1課から

3

課まで片仮名、4課から

6

課までは平仮名という ように仮名を交互に使用している。

J

の『訳解日語肯綮大全』は、1編仮名と音韻が

13

課、2編語法応用会話が

144

課、3 編日本口語文法大綱が品詞概説と文章概説の

2

部、4編文語用例一斑、5編外来の新語と 時事文という構成であり、すべてのページの上段の日本語に対し下段にその中国語の対訳 があるというように、全体構成から見ると文典総合教材の構成内容をもっているが、全体 のうち

2

編に約

7

割のページを割いていること、「緒言」の中で

2

篇について、「本篇は此 の書の本幹である」と言っているように、語法の使い方を示すことを柱にするというのが 編纂方針であることが明らかであることから、語法型教材に分類される。教室で教師の指 導のもとに使用される教科書として作成されたものというより、自学自習用を想定した日 本語学習書である。本書はすべてのページが上段に日本語、下段にその中国語訳がついて いる。本書の中心である

「語法応用会話」

は、

1

課からそれぞれ

「は、

です、か」

「どれ」 「の、

と」というように各課の見出しに学習項目を明示し、その語句を含む用例文を対話の形で あげている。本文の前に関連語彙を挙げている課もあるところは、Bと同様である。表記 は

1

課から

3

課まで、仮名の部分は片仮名、4・5課は平仮名というように交互に表記を 変えているのも

B

I

と同様である。

この

3

つの語法型教材の学習項目の提出順序を見ると、初めの

15

課分は以下のように なっている。Bは仮名や数字が終わった

24

課から見ていく。

文 法 項 目 B日本語 J譯解 I はじめ

~は~です(これは何ですか) 24 1 1

どれ(どれですか) 25 2 2

の(梅の木はこの木です) 26 3 2

が (どなたが岳飛さんですか) 27 4,5 3

に、の(ここに手袋があります、それは私のです) 28 5 3,4 はい。さようです(あすこが受付ですか。はい) 29 6 2

左、右、前、後、上、下 30 7 6

います、おります(狐はどこにいますか) 31 8 7

を(牛は何を食いますか) 32,33 9 11

ん、ない、ません(雨は降らん、降らない) 34 10 12

て、で(春が来て鶯が鳴く) 35 11 26

ている、ておる(あなたは何をしていますか) 36,37 12 22

へ(この家はどっちへ向いていますか) 38 13 9

で、でした、ました(2円50銭で買いました) 39 10,15 17,18

~本、~枚(この部屋に窓掛が幾枚ありますか) 40 15,16,17 15

(5)

B

J

の文法項目の提出順は非常によく似ている。細かく見ていくと、Jの

1

課から

52

課 までが

B

I

巻、Jの

53

課から

90

課までが

B

2

巻、Jの

91

課から最後の

144

課が

B

3

巻の学習項目とほぼ一致する。しかも、見出しの各課の学習項目の一致だけでなく、

J

の各課の本文の内容の多くが

B

の中の例文と一致する。正確には、語法を中心とした本 文だけで

3

巻という全体量の多い

B

と比べ、1巻で全体が

5

編あり、しかも対訳があるた め語法の本文に多くの量が避けない

J

は、かつて作った

B

の中から適当な例文を選んで 載せたというふうに考えられる。それに対し

I

は、Bや

J

とは提出順もあまり一致してい ないことがわかる。

4.『日本語教科書』『日本語のはじめ』『訳解日語肯綮大全』の文法学習項目

語法型教材である

B

の『日本語教科書』、Iの『日本語のはじめ』、Jの『訳解日語肯綮 大全』の具体的な文法学習項目を見てみたい。初級文法項目がどのぐらい採られているか を調べるため、

B

は中級レベルの学習項目が多い

3

巻を除いた

1

巻と

2

巻を対象とする3)

。 I

は学習内容が「発音・仮名」となっている

1

編を除いた

2

編と

3

編、Jは

2

篇の「語法 応用会話」全体を対象とする。調査の方法としては、現代の日本語教材の初級文法学習項 目を基に決められた日本語能力試験

4

級、3級の「文法」の各項目がどのぐらい重なって いるかを見ていく。受給表現

「あげる、

もらう、くれる」のように複数の語彙が項目となっ ている場合は、一つでも出てくればその課の数を記した。編纂者が学習すべき文法項目と して意識して例文に入れたかどうか疑わしいものもあるが、その例文が文法項目として出 てくるものはすべて採った。例えば『日本語教科書』の第

1

巻の

15

課に出てくるものは

1 ― 15

のように示した。

1)4

級の文型

A.文法事項 A ―Ⅰ 文型、活用等

B教科書 Iはじめ J訳 解

疑問詞を含む文「は」+疑問詞 1―24 2― 1 1 疑問詞を含む文 疑問詞+「が」 1―27 2― 4 5 形容詞 現在形/過去形/否定形 1―52 2―27 21 形容詞のテ形 Aくて 1―66 2―29 61 形容詞の連用形+動詞 Aく+V 1―67 2―11 77 形容詞+名詞 A+N 1―52 2―18 21 形容詞+の Aの 1―60 2―28 形容動詞 現在形/過去形/否定形 1―56 2―30

形容動詞のテ形 ANで 2―30 61

形容動詞の連用形+動詞ANに+V 1―68 3― 4 61 形容動詞+名詞 ANな+N 1―65 2―30 61

形容動詞+の ANなの 1―66

(6)

A ―Ⅱ 助詞、指示語、疑問詞等

存在文 NにNがある/いる 1―28 2― 7 5 存在文 NにNがQある/いる 1―40 2―15 16 所在文 NはNにある/いる 1―28 2― 4 8 動詞 現在形/過去形/否定形 1―34 2―12 10

動詞の自他NがV/NをV 2― 4 56

動詞のテ形Vて 1―35 2―16 11

動詞のテアル形 Vてある 1―65 56

動詞のテイル形 Vている 1―36 2―22 12

動詞のナイデ形Vないで 3―16 68

名詞述語文の現在形/過去形/否定形 1―39 2―13 18 名詞述語文のテ形Nで 1―48 2―20 29 名詞+の+名詞NのN 1―30 2― 2 3 名詞+の(後の名詞省略)私のだ 1―28 2― 3 連体修飾+名詞 私の買った本 1―61 2― 2 5

疑問詞 何 1―24 2― 1 1

疑問詞 だれ/どなた 1―27 2― 2 4

疑問詞 いつ 1―64 2―25 19

疑問詞 いくつ 1―65 2― 5 30

疑問詞 いくら 1―39 2―16 15

疑問詞 どこ 1―28 2― 4 5

疑問詞 どれ 1―25 2― 2 2

疑問詞 どう 2―37 3― 9 87

疑問詞 どんな 1―54 2―20 23

疑問詞 どのぐらい 2―11 29

疑問詞 なぜ/どうして 1―46 2―26 18

疑問詞+か 何か 1―67 3―11 30

疑問詞+も+否定 何も〜ない 2― 2 43

これ、それ、あれ 1―24 2― 1 1

この、その、あの 1―26 2― 3 3

ここ、そこ、あそこ 1―28 2― 4 5

こちら、そちら、あちら 1―38 2― 9 14

が 友達が来た(主語) 1―35 2―12 6

を 私はパンを食べる(目的語) 1―32 2―11 9

(7)

を 家を出る(起点等N+を+自) 1―42

に ここに本がある(場所) 1―28 2― 7 5 に バスに乗る(到達点) 1―51 3― 3 34 に 7時に起きる(時間) 1―78 2―22 19 に 本を買いに行く(目的) 1―46 2―19 67 に 1日に3回行く(期間に回数)

で 公園でテニスをする(場所) 1―63 2―33 31 で バスで行く(手段方法) 1―73 2―23 32 で 木で机を作る(材料) 2―17 3―16 69 で 病気で学校を休む(理由) 1―57 2―34 69 で 全部で百円(数量) 1―39 2―20 17 へ 東京へ行く(方向) 1―38 2―11 13

と 本とノート 1―41 2― 5 68

と 妹と(いっしょに) 2―15 2―34 30

と 友達と会う(動作の相手) 1―77 68

から、まで 家から学校まで(場所) 1―51 3―13 21 から、まで 1時から3時まで(時間) 1―50 2―26 21

や 切手やはがき 1―41 2―21 14

は 私は学生だ 1―24 2― 1 1

は テニスは外でする(目的語) 1―39 37

は 酒は飲まない(否定と共に) 2―13 2―30 は 私は行くが、兄は行かない(対比) 1―60 2―19 14 も 私は行く。兄も行く。 1―51 2― 1 18

も 本もノートもある 1―45 2―20 14

格助詞+は/も へは、へも、には 1―56 2―14 14

か 本かノート 1―65 3―16 60

か 行くか行かないか 1―85 51

など 本やノートなど 1―56 2―28 29

ぐらい 30人ぐらい 1―84 3―15 63

だけ 果物だけ食べた 2―11 2―16 64

しか 果物しか食べない 2―27 3―16 78 て 朝起きて散歩する(単純接続) 1―35 2―26 11

て 本を見て歌う(副詞的,方法) 1―35 11

て 風邪をひいて休んだ(理由) 1―66 36

が すいませんが本を貸して下さい 1―66 2―26 20 か これはあなたの本ですか 1―24 2― 1 1

か 先生ですか、学生ですか 1―85 51

(8)

B.表現意図等

ね 今日はいい天気ですね 2― 2 2―21 30 よ その本はおもしろかったですよ 2―17 2―39 60 わ 私もいくわ

中 1年中暑い

たち/ども/方 私たち/あなた方 1―84 3― 1 52 あまり〜ない あまり食べない 1―65 3―22 47

1〜10000/一つ(数) 1―23 2―10 15

枚/冊/本等(助数詞) 1―40 2―15 16

〜月/〜日/〜曜日 1―46 2―24 19

〜時〜分(時刻) 1―49 2―26 20

〜時間/〜分間(時間) 1―50 2―25 21

依頼 Nを下さい 1―58 26

依頼 〜て下さい 1―58 2―36 26

依頼 〜ないで下さい

依頼 Nを/Vて下さいませんか 1―84 52

勧誘 Vましょう 1―46 2―19 68

勧誘 Vませんか 1―81

希望 Nがほしい 1―67

希望 Vたい 1―64 2―34 32

逆説 〜が 1―45 2―19 34

同時 V時 1―65 2―23 25

同時 Vながら 1―67 90

前後 Vてから 1―78 33

前後 Vた後(で) 2―40

前後 V前(に)

推量 でしょう/だろう 1―78 2―17 44

並立 VたりVたり 2―40 60

変化 Aく/ANに/Nになる 1―46 2―16 29 変化 Aく/ANに/Nにする

変化 もう+肯定/否定 1―34 2―17 10 変化 まだ+肯定/否定 1―34 2―25 10

名称の導入 〜というN 1―62 3―6 3

理由 〜から 1―43 2―19 36

(9)

2)3

級の文型

A.文法事項 A ―Ⅰ 文型、活用

A ―Ⅱ 助詞、指示語等

B教科書 Iはじめ J訳 解

受身 V(ら)れる 1―72 2―33 39

敬語 おVになる 1―68 3― 1 58

敬語 V(ら)れる 2― 6 2―32 58

敬語 おN 1―86 2― 8 28

敬語 おVする  

敬語 おVいたす 2―38 117

敬語 (お)Aございます 1―53 2―27 56 敬語 AN/Nでございます 1―43 2―34 19

使役 V(さ)せる 1―71 2―34 38

使役+受身 V(さ)せられる 1―72 39

〜ずに Vず(に) 60

文の名詞化 〜の 1―56 2―22 57

文の名詞化 〜こと 1―69 3― 4

文の名詞化 〜ということ 2―25

補助動詞 Vていく/てくる 1―66 2―26 123

補助動詞 Vてみる 1―85 2―36 51

補助動詞 Vてしまう 1―78 3― 2 60

補助動詞 Vておく 2― 5 3― 1 57

こんな、そんな、あんな 1―74 65

こう、そう、ああ 2― 6

縮約形 〜ちゃ 3―30

までに 9時までに来て下さい 2―22 3― 9

も 50万円も持っている 65

ばかり テレビばかり見ている 1―80 3― 1 65 でも お茶でも飲もう(例示) 2―14 3―30 30 疑問詞+でも 何でも/だれでも 1―56 2―37 35 とか 本とかノートとか 2―36 2―40 86 し 頭もいいし体も丈夫だ 2― 7 2―40 59

の いっしょに行くの 2―40

(10)

B.表現意図

だい どうしたんだい かい いっしょに行くかい Aさ/ANさ 暑さ/きれいさ

らしい 男らしい人 1―80 46

Aがる/ANがる 暑がる/嫌がる

意志 V(よ)うと思う 1―65 3―17

意志 〜つもりだ 2―18 3―10 70

意志 V(よ)うとする 1―65 3―16

意志 Vことにする 1―70 3― 5 70

意志 Nにする 2―14 2―40 67

依頼 おVください 1―84 127

依頼 (さ)せてください  

引用 〜と言う 1―41 2―34 3

開始 Vはじめる

開始 Vだす 1―66 3―27 123

過度 Vすぎる 2―31 60

可能 Vことができる 1―73 2―32 40

可能 V(ら)れる 1―73 2―32 40

勧告 〜ほうがいい 2―34 108

希望 Vたがる

義務 〜なければならない/いけない 1―70 3― 8 37

逆説 〜のに 1―74 3―10 41

許可 〜て(も)いい/てもかまわない 1―70 3― 2 69 禁止 〜てはいけない/てはならない 1―69 3―10 36

禁止 〜な  

経験 Vたことがある 2―20 3―13 62 継続 V続ける

終了 V終わる

受給 あげる/もらう/くれる 1―58 2―30 26 受給 〜てあげる/もらう/くれる 1―58 2―31 26 受給 さしあげる/いただく/下さる 1―82 3― 6 50 受給 〜てさしあげる/いただく/下さる 1―82 50

条件 〜ば 1―65 2―37 33

(11)

条件 〜たら 1―68 2―37 35

条件 〜なら 1―64 2―37 35

条件 〜と 1―65 2―37 33

状態放置 〜まま 2―23 75

譲歩 〜ても/でも 1―74 2―39 33

疑問詞+ても/でも 1―75 42

推量 〜と思う 1―64 2―25 32

推量 〜らしい 1―80 46

推量 〜かもしれない 1―66 3―4 47

推量 〜はずだ/はずがない 2―30 3―10 71

推量 〜ようだ 1―73 2―20 72

伝聞 〜そうだ 1―68 2―33 73

難易 Vやすい 1―60 28

難易 Vにくい 1―60 3―27 43

比較 〜は〜より 1―53 22

比較 〜と〜とどちら/〜ほう 1―48 24

比較 〜ほど〜ない 2―10 62

比喩 〜よう 2―12 64

不必要 〜なくてもいい/かまわない  

方法 〜かた 1―66 2―29 131

命令 V命令形 1―84 58

命令 Vなさい 1―57 2―36 25

目的 Vため(に) 1―67 41

様態 〜そう 1―68 2―39 73

理由 〜ので 1―66 2―37 43

理由 〜ため(に) 1―70 61

〜は〜が 私は犬が好きだ 1―56 2―29 23

〜は〜が 象は鼻が長い 1―44 2―20 36

〜がする 音がする/においがする 118

Vことがある 休むことがある 88

Vことになる 話すことになった 1―65 3―14

〜のだ どこへ行ったのですか 1―63 2―20 32 疑問詞+〜か だれが来たかわかる 1―85 3―15

〜かどうか 来たかどうか知らない 3―15

〜ように言う 来るように言った 1―68 72

〜ようにする 忘れないようにする 2―20 72

〜ようになる わかるようになる 1―65 119

(12)

上記の文法学習項目をまとめると次の表のようになる。

最も学習項目の重なりが多いのは

B

の『日本語教科書』で

86%、 J

の『訳解日語肯綮大全』

82%

と非常に高い比率を示している。これに対し

I

の『日本語のはじめ』は

70%

と、

他の二つと比べればそれほど高くない。また、4級を見ると、Bは

92%、J

87%

と非常 に高い数値を示しており、それぞれ

3

級より

4

級が高い数値であることから、より基本的 な文法項目に対する認識があったことがわかる。

5 まとめ

文法学習項目から見た場合、『日本語教科書』と『訳解日語肯綮大全』は、現代の初級 の基本的文法事項と考えられているものとの重なり具合が、それぞれ

87%、82%

と非常 に高い比率を示している。日本語教材は、作成されたその時の社会のナマの日本語を写す ものであり、100年近い時間の隔たりを考えれば、誤差があるのは当然である。この

2

種 の教材は、基本的文法事項をほぼ網羅していると考えていいであろう。第二次大戦期以前 の日本語教材を広く見渡しても、このように高い数値を示す教材はそれほど多くない。編 纂者である松本亀次郎の日本語教育能力の高さを示していると言える。

『日本語教科書』は、松本亀次郎が案を起草し、宏文学院の日本語教師であると同時

に当時の一流の学者であった人々との検討過程を経て完成させたものであり、それだけに この教材に対し自信も愛着もあったと思われる。28年後に出版することになった『訳解 日語肯綮大全』の中心に「語法応用会話」を据えたこと、同時にその文法項目の選択、提 出順を『日本語教科書』のそれとほぼ同じ項目・提出順にしたことはそれを物語ってい る。また、本文についても、適当なものを適宜選んで『日本語教科書』から採用し、必要 なものを付け加えるという方針をとっている。しかし、『訳解日語肯綮大全』の作成にあ たっては、ただ『日本語教科書』をまねるわけではなく、中国人留学生の予備教育の学習 書として何が必要かを熟慮し、日本語学習に最も重要で有効な「語法」が日本語の文法体 系の中でどのようになっているかを理解させるため

3

編の「口語文法大綱」を、口語と文 語の混交文である当時の新聞雑誌を理解できるようにするため

4

編の

「文語用例一斑」

を、

また新聞を理解するため必要になる外来の新語のため

5

編の「外来の新語と時事文」の章 を設けたのである。「緒言」で松本亀次郎は、「顧みるに予は中華学生諸子に、日本語を教 授すること、已に三十年余り、・・・日語教授の新諦と、学生の日語を学ぶに何が進歩を

Vところだ 行くところだ 2―13  32

4級 3級 計 AⅠ AⅡ 小計 B

項目数 115 100 215 44 83 127 88 B日本語 106(92%) 79(79%)185(86%) 39(88%) 73(88%)112(88%) 73(83%)

Iはじめ 90(78%) 61(61%)151(70%) 37(84%) 63(76%)100(78%) 51(58%)

J訳 解 100(87%) 77(77%)177(82%) 37(84%) 70(84%)107(84%) 70(80%)

(13)

妨げる覆蓋となって居るかと言うことは、詳悉して遺さぬ積りである。其処で老後の思出 に、此の書を著して敢て世に問うことにした。」と言っているが、『訳解日語肯綮大』は松 本亀次郎の語法型教材の集大成と位置づけるべき教材なのである。一方、『日本語のはじ め』は、東亜高等予備学校の誰が作成に携わったかは明らかではない。この教科書の後に 作られた『訳解日語肯綮大全』の文法項目の選択基準や配列の方針は『日本語教科書』の それと変わっていないことは既に見てきた。したがって、もし松本亀次郎が中心となって 作ったものであれば、この

2

種の教材と似ていたはずである。また、構成から見ても

3

編 のうち

1

編を発音と仮名にさいており、音声器官を図で示したり丁寧な指導法をあげたり しているのも、他の

2

種の教材とは異なっている。こうしたことを考えると、本書は松本 亀次郎が全く関与しなかったとは考えにくいが、作成作業の中核となったのは、単独もし くは複数の東亜高等予備学校の他の教師ではないかと考えられるのである。この『日本語 のはじめ』が出版される前年の

1931

年に、東亜高等予備学校の創立者である松本亀次郎 は、それまでの教頭から名誉教頭といういわば窓際に移されるという境遇にあったが、こ うした状況と無関係ではないように思われる。

付 記 本文の引用文献の旧字体や旧仮名遣いなどの表記に関しては、原則として現代表記 の基準にのっとり書き改めた。

   また、本稿執筆に当たって使用した資料の調査・収集は、早稲田大学特定課題研究助 成費(課題番号

2004A–358)の成果である。

1)松本亀次郎(1939)参照

2)筆者は吉岡(2000)で、明治期の日本語教材を文典型教材、語法型教材、読解教材、会話教材、

文字教材の5種類に分類したが、その後作文教材が発見できたため、ここでは6種類とした。

3)筆者は吉岡(1999)で、『日本語教科書』の文法学習項目を調査したが、そのときは1巻のみを 対象としたため、2巻をも対象とした今回の調査とは結果が異なる。

参考文献

関正昭(2002)『日本語教育史研究序説』スリーエーネットワーク 平野日出雄(1982)『日中教育のかけ橋松本亀次郎伝』静岡教育出版

平野日出雄(1986)「中国人留学生の日本語教育の歴史と松本亀次郎の功績『日本語教育』60号 二見剛史(1982)「教育者松本亀次郎に関する一考察」『鹿児島女子大学研究紀要』第3巻1号 二見剛史(1992)「東亜学校と松本亀次郎―戦時下の動向を中心として―」『国立教育研究所紀要』第

121集

松本亀次郎(1931)『中華五十日游記附中華教育視察紀要・中華留学生教育小史』東亜書房 松本亀次郎(1939)「隣邦留学生教育の回顧と将来」『教育』第7巻4号岩波書店

吉岡英幸(1999)「明治期の日本語教材」『日本語教育史論考』凡人社

吉岡英幸(2000)「明治期の日本語教科書の「文型」」『日本語研究と日本語教育』明治書院

参照

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