置づけられるかを,監督の問いに対して,その場所に動いて表示する。「教師になる前,どれぐらい教師に なりたかったか」という問い(問1)に対して参加者の位置は次のようになった。
間を置いて,0が手を挙げたので主役に決定する。肯定的な方向へ動こうとしたときの気持ちを聞くと,
クラブに一生懸命にかかわれたことや,教え子から電話もあり一緒に飲もうといった連絡も落ち込んでい るときにあったからだと語った。そこで,その気持ちを表現してもらう人を0がしを指名し,登場しても らったが,0とは職場も同じであったこともあり,別の思いが出てきてしまい,うまく表現できないとい うことで,Qが代役を引き受けることになる。続いて他の気持ちを。に聞いてみると,他の人から得た情 報によると,自分の勤めている県は,他の県よりも給料が高いという情報を得たので,うれしく思えたと いう。そこでその思いを表現する人にKになってもらうこととした。また,「その2つの気持ちだけでは 一番肯定的なところまで動いたのではないか」とたずねると,「いや,他の職業の方がバブルの時代にはた
くさん給料をもらえていたから」と答えた。
また,「職場で自分の思い通りにいかないところもある」ということであった。そこで,その気持ちを NとMが演じることになった。
監督の合図で,oを中心として, Q.KN.Mがそれぞれのメッセージをアドリブをきかせながら表現し,
押したり引いたりといった動作を加えながら,質問があった後の0の動きを再現した。0は(自分で体を 動かすことなく,されるがままに身をゆだね)しっかりとセリフを聞いていた。さらに,今度はPに0役 を演じてもらい,0自身は観客側からその光景を眺めてみた。
シェアリング
冗談交じりに,0は,「なんて私はお金と権力に弱いのだろうと思った」と語った。しかし,お金という よりもやはり子どもに引っ張られて動いたというのが一番大きな要因であったのであろうし,生徒が先生 を支えているという感じはあまり目には見えなかったが,もっとあったのではないかという意見が多数出 た。また,職場で自分の思い通りにいかないという気持ちは,0自身が子どものためにもつと,うまく接 する手立てがあるのにという気持ちから生まれてくるものであって,決して否定的なものではないという 意見も出た。
(感想)
K: 〈恋人さがし〉どきどきした。教師になっての気持ちは見ていて,改めて考えさせられ,今の自分を見 つめることにつながった。動いた移動距離というのは自分の心の中にある揺れだと思った。その揺れ を口に出して表現するのはなかなか難しいものだと感じた。
1.:
M:
N:
初めての経験だったが,面白かった。しかし,なかなか自分の枠は捨てられないものだとも感じた。
最初はよく分からないので少し不安だったが,やっていくにつれて気にならなくなった。主役の劇を 見ながら自分自身と同じ点,同じことでも異なる感じ方をしている点に気づくことができた。
心理劇にふれるのは全く初めてで,期待と不安とで,どちらかというと不安のほうが多かった。知っ ている人も少なく,最初は落ち着かなかったが,次第にみんなですることが分かってくると,違和感 もなくなって,興味深く参加することができた。また,みんなはそれぞれ自分を素直に表現されるの だなと感心した。
O: 今日やったことがよかったのかどうかよく分かりませんが,自分自身は楽しかった。
P: 周りの人の様子が分からないとなかなか自分が出せないなあと自分を振り返った。
Q: 自分の思いを知らない人の前で表現するのは,自分にとってはとても難しいことであると感じた。
R; 遅れて,少々戸惑いがあったので,すんなりとはいかないところがあるかと思ったが,案外,すんな りと場に入っていけたのでよかった。
(1)好感度について
参加者全員が,心理劇というものは初めての体験であった。そのため,オ リエンテーションでの心理劇についての説明のときには,全員が緊張した様 子で,質問などの発言は,全く見られなかった.これは,Mの「最初はよく 分からないので不安だった」や,Nの「心理劇に触れるのは全く初めてで,
期待と不安とで,どちらかと言えば,不安の方が多かった」といった感想に 書かれていた内容からもうかがえる。
ウォーミングアップの部屋の探索および出会いのゲームは,体を実際に動 かす賦活系のものであり,緊張を解きほぐすためにも,有効なものであった
と思われる。「恋人探し」では,笑いが起こり,台(1982)のいう ウォーミ ングアップは遊びである という捉え方が,参加者全員に浸透し,遊びのも つ楽しさ,自由さを体験できていたのではないかと推察される。
劇化表現では,主役の0は,終始,笑顔を絶やすことなく楽しく参加し ていた。補助自我的役割をとったQ.K.N。Mも,それにつられてセリフにもア
ドリブを加えながら,楽しく参加できていた。
しかし,初めて心理劇というものを体験することへの抵抗は薄れたとは思 われるものの,このセッションにおいては,心理劇の本来目的とする自己理 解や他者理解につながるものとしての評価が正しく得られたとは考えられ
ない。
(2)意欲について
このグループは,元々,案内文を配布して希望者を募るという自由参加の 形をとったものであるため,初めから心理劇に参加する意欲は,ある程度あ ったものと思われる。しかし,R.KOの3名は遅れての参加となった。Rから は事前に遅れる理由を聞いていたが,:Kは実施場所が分からずに探し回って いたとのこと,0はすっかり忘れてしまっていて,急に気がついて,あわて て来たとのことであった。何か無意識の抵抗が働いていたのかもしれない。
部屋の探索で,特にPは活発に動き回り,かがみ込んでコンセントの位 置を調べたり,置いてある箱の中を調べたりしていた。
「心のものさし」の「教師になる前,どれぐらい教師になりたかったか。」
という質問に対して,Kは肯定的な方向の壁に張り付くような動作を見せた。
理由を問うと,長い日寺間をかけ,詳細に説明をした。また,Pは否定的な方 向に動いた者の,K同様,その理由については自発的に詳細な説明を加えた。
劇化表現では,それまでは発言の少なかった0が,他の参加者の様子をう かがいながらではあるが,自ら手を挙げ主役となった。
全体を通してみると,参加者それぞれが様々な場面において意欲的に取り 組めているように感じられてはいたが,「周りの人の様子が分からないと,
なかなか自分を出せない。」といった感想も見られた.自由に,意欲的に振舞 えているように見えても,実際のところは,かなりのとまどいを覚えながら 参加していたものと思われる。
(3)洞察について
「心のものさし」では教師になる前となった後での気持ちの移り変わりを 見ることになった。教師になった後の満足度が否定的な方向に動いた者が5 名(P.Q.R.K.N)あった。その理由としては,「教師アイデンティティーが できていない」「昔に比べると情熱が冷めてしまった」「これでいいのか」と いった自己を内省するもの,また,「やり甲斐はあるが,それに対する同僚 をも含めた社会全般からの評価といったものはどんなものか疑問」「こども が難しくなってきた」といった悩みもでてきた.少なくとも現在の自分の置 かれている状況を頭で整理し考え,言葉で表すということで,自分自身を客 観的に見つめなおすということはできたように思われる。
劇化表現では0が主役となったが,その内容は決して深まりのあるもの とはならなかった。しかし,他の参加者からは0が表現した「職場で自分の 思い通りにいかない」という気持ちは,「0自身の子どものためにもつとう まく接することができるのにといった気持ちから生まれてくるものであっ て否定的なものではない」といった0の気持ちを肯定的に理解しようとす る発言が見られた。また,Mは「主役の劇を見ながら自分自身と同じ点,同 じことでも異なる感じ方をしている点に気づくことができた」と感想を書い
ている。
(4)恥ずかしさについて
ウォーミングアップの段階から,できるだけ自分の思っていることや考え ていることを開示するような内容を組んでいった.そのためにはまず,心を 許しあえるグループの形成が必要である.このグループは出会いのゲームの